この記事のポイント
- 登記の持分と資金の負担がずれると、差額は贈与になることがあります
- 夫名義・連帯債務のローンを共働きで返すと、返済の年ごとに妻から夫への贈与とされます
- 名義を直して贈与なしとされるのは、条件と時期を満たすときに限ります
- 売るときは持分ごとに譲渡所得を計算し、3,000万円控除も共有者ごとに判定します
まず結論:持分は出したお金に合わせ、売るときは持分ごとに申告します
夫婦で家を買うと、登記の持分と、実際に出したお金の割合がずれることがあります。
持分とは、共有の家でそれぞれが持つ割合です。
ずれた分は、夫婦の間の贈与として扱われることがあります。
売るときは、持分に応じて1人ずつ譲渡所得を計算します。
マイホームの3,000万円控除も、共有者ごとに判定します。
譲渡所得とは、売った代金から買った代金や売る費用などを引いたもうけです。

購入時:持分と負担がずれると、差額は贈与になります
他の人の名義で不動産を新たに取得すると、原則として贈与と扱われます(相続税法基本通達9-9)。
実際の購入資金の負担割合と所有権登記の持分割合が異なっている場合には、贈与税の問題が生ずることがあります。
(国税庁 タックスアンサー No.4411)
計算例
例:国税庁 No.4411 の例。3,000万円の家を夫2,000万円・妻1,000万円で買い、登記は2分の1ずつ
妻の持分に当たる額 3,000万円 × 2分の1 = 1,500万円 夫から妻への贈与 1,500万円 - 1,000万円 = 500万円 妻の贈与税(夫婦間は一般税率) (500万円 - 110万円)× 20% - 25万円 = 53万円 負担どおりの登記なら 夫3分の2・妻3分の1数値は、妻にその年ほかの贈与がなく、贈与税の配偶者控除も使わない前提の目安です(No.4408)。
国税庁の例でも、負担の割合どおりに登記していれば、贈与税の問題は生じないとされます。
その年にもらった合計が110万円を超えると、翌年2月1日〜3月15日に申告します(No.4402)。
ローンの返済でも、ずれは返済の年ごとに生じます
ローンも、借りた人以外が返した部分は、借りた人への贈与とみられます(昭和34年の国税庁の通達)。
共働きの夫婦が収入で共同して返していると認められるときは、所得の割合で負担したものとします。
名義は夫、ローンは夫婦の連帯債務で、共働きの収入から返す例があります。
連帯債務とは、2人とも借入金の全額を返す義務を負う借り方です。
ローン返済の年ごとに妻から夫に贈与があったものとされます。その年のローン返済額に妻の所得が夫婦の所得の合計に占める割合を乗じて計算した金額がその年の贈与額になります。
(国税庁 タックスアンサー No.4411 Q&A)
計算例
例:国税庁の質疑応答事例。4,500万円の家を2分の1ずつ共有し、連帯債務4,000万円を夫6・妻4で負担
夫が負担する借入金 4,000万円 × 60% = 2,400万円 夫の持分のための額 4,000万円 × 50% = 2,000万円 夫が妻に代わって負担する額 2,400万円 - 2,000万円 = 400万円頭金500万円は持分どおりに負担した前提で、数値は事例による一定の前提を置いた目安です。
妻に代わって負担する400万円は、夫から妻への贈与となります。
贈与とする金額は、年ごとに、その年に返した部分を基に計算します(昭和34年の通達)。
負担割合は、所得などに応じて合理的に定める必要があります(同事例)。
ペアローン(夫婦が別々に組むローン)でも、誰の借入れを誰の収入で返すかを確かめます。

持分を直すときは、条件と時期の決まりがあります
誤った名義を実際に取得した人の名義に直す扱いは、国税庁の個別通達にあります。
次のどちらかに当たり、決められた時期より前に直したときに限り、贈与がなかったものとされます。
- 名義人が名義人になっていることを知らず、その家を使用収益していない
- 名義を他人にしたのが過誤や軽率によるもので、取得した人の年齢などから確認できる
知らなかったことは、当時の状況などから確認できる場合に限ります。
使用収益とは、その家に住んだり、貸して収入を得たりすることです。
時期は、その家について最初の贈与税の申告や決定・更正があった日より前です。
上の条件に当たり、決められた時期より前に売ったときの定めもあります。
取得した人が代金を受け取り、代金で買った財産の名義などで確認できる場合に限り、同じ扱いです。
1つ目の扱いは、贈与税を免れる目的と認められると使えません。取得した人がすでにこの扱いを受けたときも、原則として使えません。
注意
夫婦で住む家は、名義人も住んでいるため、「使用収益していない」に当たるかを慎重に確かめます。条件に当たらなければ、ずれた分は原則どおり贈与です(相続税法基本通達9-9)。

売るとき:譲渡所得は持分ごと、3,000万円控除は共有者ごとです
共有の家を売ったときは、持分に応じて1人ずつ計算します。
共有のマイホームを売った人の譲渡所得の計算は、共有者の所有権持分に応じて行います。
(国税庁 タックスアンサー No.3308)
一緒に買った家なら、売った代金も取得費(買った代金など、建物は減価償却分を引く)も、持分で分けます。
マイホームを売ると、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります(No.3302)。
この控除は、特例を受けられる共有者1人につき最高3,000万円です。確定申告書も1人ずつ出します(No.3308)。
ここでいう持分は、登記の持分どおりと推定されます。
購入時の負担とずれていても、売るときは原則として登記の持分で計算します。
計算例は共有名義の不動産を売ったときの記事にあります。
代金を1人の口座にまとめたら、相手の取り分を渡した記録を残します。
代金の分け方と贈与税は、売却代金と贈与税の記事で扱っています。
失敗例:夫だけの名義の家を、夫婦の共有として申告した事例
登記と違う持ち主だと主張するには、それを示す証拠が必要です。
国税不服審判所の平成7年4月28日裁決の事例です。
登記が夫だけの家を売り、夫婦が2分の1ずつ申告して、それぞれ3,000万円控除を使いました。
夫婦は、資金の約半分は妻が親から借りたもので、共有の合意もあったと主張しました。
登記には、登記簿上表示される法律関係が実体法上も存在するものと推定される効力があり、登記簿上の法律関係が一応真正なものとして扱われる。
(国税不服審判所 平成7年4月28日裁決)
登記、契約書、代金の振込口座、代金で買った住まいの名義は、どれも夫だけでした。
妻の借入れは借用証書も返済もなく、事実と認められませんでした。
審判所は夫の単独所有と判断し、譲渡所得はすべて夫に帰属するとしました。
更正処分と過少申告加算税の賦課決定も、適法とされています。
売る直前に持分を移す名義変更も、対価がなければ原則として贈与です(相続税法基本通達9-9)。
控除を2人分にする狙いの注意点は、おしどり贈与と売却の記事にまとめています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
資料を集めて負担を書き出すまではご自身でできますが、扱いの判断は個別です。
- 登記事項証明書で、家と土地それぞれの名義と持分を確かめる
- 売買契約書と通帳で、頭金を誰がいくら出したかを書き出す
- ローンの契約書で、借りた人と、連帯債務かどうかを確かめる
- 返済した口座と、夫婦それぞれの年ごとの所得を一覧にする
ここから先は、事実関係と書類で結論が変わります。
- ずれた金額と、どの年の贈与になるか
- 名義を直す扱いの条件と時期に当たるか
- 売るとき誰がどの持分で申告し、控除を使えるか
補足
敷地だけを共有にし、家屋は共有にしていない形があります。この場合、家屋の所有者以外の人は、原則として3,000万円控除を受けられません(No.3308)。
税理士が入ると変わるのは、ずれの金額の確定と売るときの申告です
税理士が入ると、購入時から売った後の申告までを一続きで確かめられます。
ひとつめは、契約書・通帳・ローンの資料から、負担を年ごとに整理することです。
ふたつめは、贈与税の申告が要るかを確かめ、要る場合は申告書を作ることです。
みっつめは、名義を直す扱いの条件と時期を、登記の前に確かめることです。
よっつめは、持分ごとの譲渡所得と控除を試算し、共有者全員の申告書を同じ前提で作ることです。
小松公認会計士・税理士事務所では、名義と資金の整理から売却後の確定申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 夫婦で家を買うとき、持分はどう決めればよいですか?
3,000万円の家を夫2,000万円・妻1,000万円で買い、2分の1ずつ登記した例があります。国税庁は、差額500万円が夫から妻への贈与になるとしています。負担どおり夫3分の2・妻3分の1なら、贈与税の問題は生じないとされます(No.4411)。
Q2. 夫名義の家のローンを、共働きの収入で返しています。贈与税はかかりますか?
夫名義・夫婦の連帯債務の例では、返済の年ごとに妻から夫への贈与とされます(No.4411 Q&A)。贈与額は、その年の返済額に、妻の所得が夫婦の所得合計に占める割合を掛けた額です。その年にもらった合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません。
Q3. 持分が負担とずれていました。登記を直せば贈与税はかかりませんか?
名義人が名義を知らず使用収益もしていないか、登記が過誤や軽率によることが条件です(個別通達)。知らないことは当時の状況など、過誤や軽率は年齢などから確認できる場合に限ります。さらに最初の贈与税の申告や決定・更正の日より前に直したときに限り、贈与がなかったものとされます。名義を知らなかった場合の扱いは、贈与税を免れる目的と認められる場合などには使えません。
Q4. 登記は夫だけですが、妻も頭金を出しました。売るとき妻も3,000万円控除を使えますか?
控除を受けられるかは、共有者ごとに判定します(No.3308)。登記が夫だけの家を共有として申告した事例では、夫の単独所有とされました(平成7年4月28日裁決)。妻が出したお金は、原則として妻から夫への贈与と扱われます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサー No.4411(Q&Aを含む。根拠は相続税法9条・8条)・No.4402・No.4408・No.3302・No.3308、相続税法基本通達9-9、個別通達「共かせぎ夫婦の間における住宅資金等の贈与の取扱について」(昭和34年6月16日 直資58)、個別通達「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」(昭和39年5月23日 直審(資)22・直資68)の1・3・4・5、国税庁の質疑応答事例「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」、国税不服審判所の平成7年4月28日裁決(裁決事例集No.49 267頁)の内容を扱っています。贈与と扱われる金額の評価方法、年ごとの返済に対応する贈与額の具体的な計算、ペアローン固有の取扱い、贈与税の配偶者控除・住宅取得等資金の贈与税の非課税・相続時精算課税、住宅ローン控除の対象額、上記個別通達の7から12(更正・決定後の是正、贈与契約の取消し・合意解除)と個別の当てはめ、登記の手続と登録免許税・不動産取得税、贈与税の申告漏れに対する加算税、家屋と敷地の所有者が異なる場合の例外、3,000万円控除のその他の要件と譲渡所得の税額計算は扱っていません。記事中の計算例は国税庁の公表例の数値に基づく一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は、負担の割合、その年のほかの贈与、夫婦の所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4411 共働きの夫婦が住宅を買ったときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4411.htm
- 国税庁 質疑応答事例「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/36.htm
- 国税庁 個別通達「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640523/01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3308 共有のマイホームを売ったときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平7.4.28裁決、裁決事例集No.49 267頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/49/14/index.html
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夫婦で買った家は、登記の持分と、頭金やローン返済の負担がずれていることがあります。ずれた分は、購入時や返済の年の贈与になることがあります。売るときは持分ごとに譲渡所得を計算し、3,000万円控除も共有者ごとに判定します。代表税理士が、登記事項証明書・売買契約書・通帳・ローンの資料を拝見します。そのうえで、ずれた金額と売るときの申告の見込みを整理します。売買契約を結ぶ前の段階でご相談ください。
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