この記事のポイント
- 家が建っているなら、土地は家屋と一緒に売る敷地だけが対象です
- 敷地かどうかは家屋と一体で使っていたかで判定します(通達31の3-12)
- 家の隣でも、地元の会に無償で貸したゲートボール場は敷地に当たらないとされました
- 自分が住まない別の家との間に塀などがないと、建築面積の割合で分けた裁決があります
まず結論:「敷地」かどうかは、家屋と一体で使っていたかで決まります
マイホームを売ると、売った利益(譲渡所得)から最高3,000万円を引ける特例があります。
土地が対象になるのは、原則として、住んでいた家屋と一緒に売る敷地です。
居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡
(租税特別措置法35条2項1号)
敷地の範囲は、国税庁の措置法通達(法令の解釈を示した文書)が定めています。
譲渡した土地等が措置法第31条の3第2項に規定する居住の用に供している家屋の「敷地」に該当するかどうかは、社会通念に従い、当該土地等が当該家屋と一体として利用されている土地等であったかどうかにより判定する。
(措置法通達31の3-12)
この通達と後で見る31の3-18は、通達35-6で3,000万円控除にも準じて使われます。
基準は、世間一般の常識(社会通念)から見て、家屋と一体で使っていた土地かどうかです。

判断の材料は、土地の位置・面積・使い方です
結論として、土地の使い方などを総合して判断します。
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審理する機関)は、こう判断しています。
敷地と居住用家屋の位置及び面積、その現況と従前からの利用状況等種々の要素を総合して、当該居住用家屋と一体として利用されている土地等をいうものと解される。
(国税不服審判所 平成7年12月18日裁決)
措置法35条と通達31の3-12には、敷地の広さの上限は書かれていません。
広い土地でも一体で使っていれば敷地になり得ますが、別の用途の部分は外れることがあります。
使える・使えない・個別判断の線引き
家が建っている場合、対象は家屋と一緒に売り、家と一体で使っていた部分です。
| 売る土地 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 家屋と一緒に売る、家と一体の庭など | 対象 | 措置法35条2項1号・通達31の3-12 |
| 家屋と同時に売る、敷地の一部 | 対象 | 通達31の3-18(1) |
| 家を残して、敷地の一部だけを売る | 対象外 | 通達31の3-18(1) |
| 地元の会に無償で貸し、出入口も別だった土地 | 対象外とされた例 | 平成7年12月18日裁決 |
| 同じ土地にある、自分が住まない独立した別の家の敷地 | 対象外とされた例 | 令和2年6月19日裁決 |
| 貸駐車場や畑として使っていた部分 | 個別判断 | 通達31の3-12 |
「対象外とされた例」は、その事案の事実にもとづく判断です。

敷地の一部だけを売るときは、家屋と同時かどうかが分かれ目です
家屋が残っている場合、敷地の一部は家屋と同時に売るときだけ対象です。
当該譲渡が当該家屋の譲渡と同時に行われたものであるときは、当該譲渡は措置法第31条の3第1項に規定する譲渡に該当するが、当該譲渡が当該家屋の譲渡と同時に行われたものでないときは、当該譲渡は同項に規定する譲渡には該当しない。
(措置法通達31の3-18(1))
家に住み続けながら庭の一部を売ると、家屋と同時ではないため対象外です。
家と敷地の一部を売った後に残りの土地を売っても、家屋と同時ではないため対象外です。
家屋が災害でなくなった後や、取り壊した後の敷地の一部の売却は、別の扱いです(同(2))。
取り壊してから売るときの要件は、取り壊して土地だけを売る記事をご覧ください。
注意
家の一部を壊し、その下の土地を売った事案があります。残った家は台所・便所・浴室・居室がそろい、住み続けていました。このため、特例は使えないとされました(平成26年2月17日裁決)。

同じ土地に別の家があるときは、建築面積の割合で分けた裁決があります
この裁決では、自分が住んでいない別の家の敷地部分は対象外とされました。
令和2年6月19日裁決の事案では、親の家と子の家が同じ土地に建っていました。
2棟は2階の一部が渡り廊下でつながり、それぞれ玄関・台所・風呂・便所を備えていました。
審判所は、2棟はそれぞれ独立した家で、合わせて1つの家とは認めませんでした。
2棟の間に塀などがなく、敷地の境がはっきりしませんでした。
そこで、各家屋の建築面積(建物を真上から見た面積)の割合で分けています。
計算例
例:令和2年6月19日裁決の数値(建築面積は、登記上で最も広い階の床面積で代用)
親の家 51.84㎡ + 子の家 62.74㎡ = 114.58㎡ 特例の対象になる割合 51.84㎡ ÷ 114.58㎡ = 約45.2% (税務署の方法)延べ床面積 77.76㎡ ÷(77.76㎡ + 108.11㎡)= 約41.8%延べ床面積の割合は、階数の違いで結果が大きく変わるとして採られませんでした。
割合は裁決の面積から当事務所が計算した、一定の前提を置いた目安です。
2棟を1つの家とみるかの考え方は、家を2つ持つ人の記事で扱っています。

失敗パターン:人に貸していた土地まで「敷地」に含めた
家と別の使い方をしていた土地まで含めると、申告を直されることがあります。
平成7年12月18日裁決では、1,567㎡の土地のうち397.70㎡がゲートボール場でした。
審判所は、次の事情から、この部分は敷地に当たらないと判断しました。
- 出入口が、家への通常の出入口と別だった
- 地元の長寿会と無償の貸借契約を結び、会が管理していた
- 公益のための貸付地として、固定資産税が免除されていた
税務署は更正(申告の内容を直す処分)をし、過少申告加算税(申告不足への加算税)も課しました。
審判所は、どちらの処分も適法としています。
次のような申告も、見直しの対象になり得ます。
- 家を売った後、残した土地の売却にも控除を使う
- 貸駐車場や畑の部分まで、敷地として申告する
- 独立した子の家が建つ部分まで、自分の家の敷地に含める
計算例
例:家と土地を一緒に売り、譲渡所得が3,000万円。うち1,000万円分が貸駐車場の部分と仮定(長期譲渡所得)
全部を敷地として申告:3,000万円 - 控除3,000万円 = 0円 → 税額0円 駐車場部分が敷地でない場合:敷地部分 2,000万円 - 控除2,000万円 = 0円 駐車場部分 1,000万円 × 20.315% = 2,031,500円控除額は、特例の対象になる部分の譲渡所得が上限です(措置法35条1項)。
20.315%は、所得税15%、その2.1%の復興特別所得税、住民税5%の合計です(令和8年分)。
令和9年分以後は復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税(所得税の1%)が加わります。合計は同じです。
数値は一定の前提を置いた目安で、実際の税額は資料によって変わります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
土地の使い方を資料で整理するまではご自身でできますが、線引きは個別判断です。
- 登記簿や公図(法務局にある土地の図面)で、売る土地の範囲と面積を確かめる
- 写真や図面で、庭・駐車場・畑などの使い方を整理する
- 人に貸していた部分があれば、契約書と期間を確かめる
- 家屋と同時に売る範囲を、売買契約書の案で確かめる
ここから先は、事情で結論が変わります。
一体で使っていたといえるか、対象部分の割合をどう出すか、取得費をどう分けるかです。
補足
3,000万円控除には、敷地のほかにも要件があります。たとえば、前年・前々年にこの特例などを受けていないことです(措置法35条2項)。全体像は3,000万円特別控除の記事で確認できます。
税理士が入ると変わるのは、敷地の範囲の根拠と申告への反映です
ひとつめは、登記・図面・写真・契約書から、敷地の範囲と根拠を整理することです。
ふたつめは、対象外の部分があるとき、譲渡価額と取得費を分けて計算することです。
みっつめは、家屋と同時に売る範囲と時期を、売買契約の前に確認することです。
よっつめは、計算の明細を譲渡所得の内訳書にまとめ、確定申告書に反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、売る前の範囲の確認から適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 家に住み続けたまま、庭の一部だけを売っても3,000万円控除は使えますか?
使えません。通達31の3-18は、家屋が残っているとき、家屋と同時でない敷地の一部の譲渡を対象外としています。家屋と一緒に売る部分は対象です。家屋が災害でなくなった後や、取り壊した後の売却は別の扱いです。
Q2. 敷地が広いと、3,000万円控除の対象から外れますか?
措置法35条と通達31の3-12に、敷地の広さの上限は書かれていません。基準は、家屋と一体として利用されていたかどうかです。裁決は、位置・面積・利用状況などを総合して判断するとしています。一部を別の用途に使っていれば、外れることがあります。
Q3. 家の隣の土地を人に貸していました。敷地に含めてよいですか?
使い方しだいで、個別の判断になります。平成7年12月18日裁決は、地元の会に無償で貸したゲートボール場を敷地に当たらないとしました。出入口が家と別で、会が管理していた土地です。貸していた期間や管理の実態を、契約書などで確かめてください。
Q4. 同じ土地に、親の家と子の家が建っています。土地は全部対象ですか?
全部とは限りません。令和2年6月19日裁決は、2棟がそれぞれ独立して住める家だった事案です。自分が住んでいない家の敷地部分は、対象外とされました。塀などで境が分からないため、各家屋の建築面積の割合で分けています。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法35条1項・2項、租税特別措置法関係通達31の3-12・31の3-18・35-6、国税不服審判所の平成7年12月18日裁決・令和2年6月19日裁決・平成26年2月17日裁決の内容を扱っています。計算例の税率は、措置法31条1項・復興財確法13条・防衛財確法・地方税法附則34条によります。裁決は、当時の法令にもとづく個別の事案の判断です。居住用家屋の判定、住まなくなってからの売却期限、特別の関係がある人への売却、前年・前々年の適用制限など敷地以外の要件の詳細、家屋を取り壊した後や災害で滅失した後の敷地の譲渡の要件、店舗兼住宅の居住部分の計算式、家屋と敷地の所有者が異なる場合、被相続人の居住用財産(空き家)の特例、軽減税率の特例、取得費と譲渡価額の按分方法、譲渡所得の内訳書と申告書の書き方、住民税の手続は扱っていません。記事中の計算例は、裁決の面積と一定の前提を置いた目安です。実際の金額は、土地の使い方・面積・取得費・譲渡費用によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第35条 居住用財産の譲渡所得の特別控除)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて 31の3-12(居住用家屋の敷地の判定)・31の3-18(居住用家屋の敷地の一部の譲渡)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti31/07.htm
- 国税庁 租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて 35-6(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱いの準用)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti35/01.htm
- 国税不服審判所 平成7年12月18日裁決(裁決事例集No.50 140頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/50/10/index.html
- 国税不服審判所 令和2年6月19日裁決https://www.kfs.go.jp/service/JP/119/03/index.html
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