この記事のポイント
- ずっと自宅だった建物は、取得価額×0.9×償却率×経過年数を取得価額から差し引きます
- 償却率は耐用年数の1.5倍(1年未満切捨て)の旧定額法の率。木造は0.031です
- 経過年数は6か月以上の端数を1年、未満は切捨て。差し引く額は取得価額の95%が上限です
- 設備費・改良費(通常の修繕費を除く)も対象ですが、取得後の増改築は計算が異なります
まず結論:自宅の建物は「取得価額×0.9×償却率×経過年数」を差し引きます
マイホームを売るとき、建物の取得費は買った金額のままではありません。
建物は、使ったり年数がたったりすると価値が減るからです。
取得費は、売ったもうけ(譲渡所得)を出すときに差し引く、買った代金などの額です。
事業や貸付けに使っていない建物(非業務用の建物)について、国税庁は次の算式を示しています。
建物の取得価額×0.9×償却率(※1)× 経過年数(※2)= 減価償却費相当額(※3)
(国税庁 タックスアンサー No.3261)
根拠は所得税法38条2項2号と、所得税法施行令85条です。
建物の取得価額から減価償却費相当額(減った価値の分)を引いた残りが、建物の取得費です。
この記事は、買ってから売るまで、ずっと自宅として使った建物を扱います。
途中で貸した期間がある場合は、自宅を貸してから売るときの取得費の記事をご覧ください。

償却率は、耐用年数を1.5倍した年数で決まります
償却率は、構造ごとの耐用年数を1.5倍した年数から決まります。
耐用年数は、税法が構造と用途ごとに決めた年数です(耐用年数省令の別表第一)。
1.5倍した年数に1年未満の端数があれば、切り捨てます(所得税法施行令85条2項1号)。
その年数に対応する旧定額法の率を使います(同省令の別表第七)。
旧定額法は、毎年同じ額ずつ価値が減るとみなす計算方法です。
| 構造 | 耐用年数(住宅用) | 1.5倍した年数 | 償却率 |
|---|---|---|---|
| 木造・合成樹脂造 | 22年 | 33年 | 0.031 |
| 木骨モルタル造 | 20年 | 30年 | 0.034 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 | 70年(70.5年を切捨て) | 0.015 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 | 28年(28.5年を切捨て) | 0.036 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | 40年(40.5年を切捨て) | 0.025 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 | 51年 | 0.020 |
4mm超の金属造は国税庁の表になく、耐用年数省令の別表から当てはめた率です。
構造は、売る建物の登記事項証明書(登記簿の証明書)で確かめられます。
金属造の骨格材の肉厚など、登記で分からない点は、建築時の図面などで確かめます。
0.9を掛けるのは、旧定額法が取得価額から残存価額を引いて計算するからです。
旧定額法では、建物の残存価額は取得価額の10%です(耐用年数省令6条・別表第十一)。
ポイント
平成19年4月1日以後に取得した業務用の資産は、残存価額と95%の上限が廃止されました。自宅の計算は従前のとおりで、0.9を掛け、95%の上限もあります。国税庁が所得税基本通達38-9の2の説明(情報)で示しています。
経過年数は、6か月以上の端数を1年として数えます
経過年数は、建物の取得の日から譲渡の日までの年数です(所得税法38条2項)。
6か月以上の端数は1年とし、6か月未満は切り捨てます(所得税法施行令85条2項2号)。
たとえば18年5か月なら18年、18年6か月なら19年です。
国税庁の記載例(令和7年分の事例2)は、昭和61年3月から令和7年2月までを39年としています。
注意
端数の扱いは2か所で向きが逆です。1.5倍した耐用年数は、1年未満を切り捨てます。経過年数は、6か月以上の端数を1年とします。取り違えると、償却率や年数がずれます。

計算例:同じ2,500万円でも、木造は鉄筋コンクリート造の約2倍を差し引きます
同じ取得価額と年数なら、償却率が高い構造ほど差し引く額は大きくなります。
計算例
例:平成20年4月1日に取得した新築の自宅(建物2,500万円)を、令和8年10月1日に譲渡
経過年数 平成20年4月1日〜令和8年10月1日 = 18年6か月 → 19年 木造 25,000,000円 × 0.9 × 0.031 × 19 = 13,252,500円 木造の建物の取得費 25,000,000円 − 13,252,500円 = 11,747,500円 鉄筋コンクリート造 25,000,000円 × 0.9 × 0.015 × 19 = 6,412,500円 鉄筋コンクリート造の建物の取得費 25,000,000円 − 6,412,500円 = 18,587,500円数値は、購入時の諸費用を含めないなど、一定の前提を置いた目安です。
差し引く額は、建物の取得価額の95%が上限です(所得税法施行令85条1項・134条1項1号イ)。
木造は経過年数35年で上限に達し、建物の取得費は取得価額の5%になります。
上の例で35年なら、差し引く額は23,750,000円、取得費は1,250,000円です。
税額までの流れはマンション売却の税金の記事で整理しています。

計算の誤りで取得費がずれる3つの例
誤りの向きによって、申告漏れにも、納めすぎにもつながります。
- 業務用の耐用年数のまま計算する ― 22年の率0.046だと、木造の例の取得費は5,335,000円です
- 経過年数の端数を誤る ― 18年6か月を18年とすると、差し引く額が697,500円不足します
- 土地まで償却する ― 仮に土地2,500万円も含めると、差し引く額が13,252,500円多くなります
差し引くのは建物で、土地は購入代金などの合計額が取得費です(タックスアンサー No.3261)。
差し引く額が少なすぎると取得費が大きくなり、譲渡所得が少なく計算されます。
差し引く額が多すぎると取得費が小さくなり、税金を納めすぎることがあります。
設備費・改良費も対象ですが、買った後のリフォームや増改築は個別に確かめます
リフォーム費用のうち設備費・改良費は、建物の取得価額に加えて計算します。
取得費は、取得に要した金額と設備費・改良費の合計額だからです(所得税法38条1項)。
減価償却費相当額も、この合計額をもとに計算します(所得税法施行令85条1項)。
国税庁の手引きは、改良費に通常の修繕費は含まないとしています。
95%の上限も、設備費・改良費を含めた合計額が基準です(所得税基本通達38-9の2)。
また、取得後に増改築されている場合には、計算が異なりますので、税務署にお尋ねください。
(国税庁 令和7年分 譲渡所得の申告のしかた【参考2】29ページ)
買った後にリフォームや増改築をした家は、この記事の算式だけで済ませず、個別に確かめます。
どの工事が改良費に当たるかはリフォーム費用と取得費の記事で扱っています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
買った後のリフォームや増改築がなく、ずっと自宅だった家なら、概算はご自身でもできます。
- 登記事項証明書で、建物の構造と建築年月日を確かめる(金属造の肉厚は図面などで確かめる)
- 購入時の契約書で、建物の価額と取得した時期を確かめる
- 売却時の契約書と引渡しの書類で、譲渡の時期を確かめる
- 表の償却率と経過年数で、差し引く額を概算する
ここから先は、資料と事情で結論が変わります。
土地と建物の代金が分かれていない契約や、中古で買った家、増改築した家です。
相続や贈与で取得した家、一部を事業や貸付けなどに使った家も、個別に確かめます。
補足
マイホームの3,000万円控除は、譲渡所得から差し引く特例です(タックスアンサー No.3302)。控除を使う場合も、先に建物の取得費を計算します。適用を受けるには、一定の書類を添えた確定申告が必要です。
税理士が入ると変わるのは、率と年数の根拠と申告書への反映です
資料で計算の根拠を固め、申告書まで一貫させる点が変わります。
ひとつめは、登記事項証明書と契約書から、構造・取得の日・譲渡の日を確定することです。
ふたつめは、構造に合う償却率と経過年数を当てはめ、95%の上限を確かめることです。
みっつめは、土地と建物の取得価額を分ける根拠を整えることです。
よっつめは、リフォームの工事資料から、取得価額に加える額と計算を判断することです。
いつつめは、計算を譲渡所得の内訳書と確定申告書に反映し、特例の要件を確かめることです。
小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから取得費の計算、適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 平成19年4月以後に建てた家でも、0.9を掛けるのですか?
掛けます。自宅など業務に使っていない建物は、旧定額法に準じて計算します(所得税法施行令85条1項)。平成19年4月1日以後に取得した業務用の資産は、残存価額と95%の上限が廃止されました。自宅の計算は従前のとおりだと国税庁が説明しています。
Q2. 取得から35年以上たった木造の家は、建物の取得費がゼロになりますか?
ゼロにはなりません。差し引く額は建物の取得価額の95%が上限です(タックスアンサー No.3261)。木造は経過年数35年で上限に達し、取得価額の5%が取得費として残ります。取得後に増改築した家は計算が異なるため、個別に確かめます。
Q3. 自宅の一部を事業や貸付けなどの業務に使っていた場合も、この計算でよいですか?
所有期間を通じて、業務以外に使った部分の割合を確かめます。90%以上なら、全部を業務以外の用として計算して差し支えありません(所得税基本通達38-3)。90%に満たない場合は、業務に使った部分の扱いを個別に確かめます。
Q4. 令和8年度の税制改正で、この計算は変わりましたか?
変わっていません。所得税法38条と同法施行令85条、耐用年数省令の建物の表は、令和8年の改正の前後で同じです。施行前の改正にも変更はありません(令和8年10月時点)。なお、令和8年分の確定申告書は様式が変わります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法38条、所得税法施行令85条・120条・134条、減価償却資産の耐用年数等に関する省令4条・6条と別表第一・第七・第十一、所得税基本通達38-3・38-9の2とその説明(情報)、国税庁タックスアンサー No.3261・No.3302、国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」の【参考1】【参考2】と事例2の記載例の内容を扱っています。中古で取得した建物の耐用年数、相続や贈与で取得した建物、途中で貸したり事業に使ったりした期間がある建物、取得後に増改築した建物の計算方法、リフォーム費用が改良費と修繕費のどちらに当たるかの判定、土地と建物の取得価額の区分の方法、購入時の仲介手数料や登記費用の土地と建物への振り分け、取得の日と譲渡の日の判定の細目、れんが造・石造・ブロック造など表にない構造、3,000万円控除などの特例の要件、譲渡所得の税額の計算は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は建物の取得価額・構造・取得の日・譲渡の日によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3261 建物の取得費の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- 国税庁 令和7年分譲渡所得の申告のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/kisairei/joto/index.htm
- 国税庁 所得税基本通達 法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》関係https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/18.htm
- 国税庁 (非事業用資産の取得費の計算上控除する減価償却費相当額)所得税基本通達38-9の2の説明(情報)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/joto-sanrin/070918/17.htm
- e-Gov法令検索 所得税法施行令https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
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