この記事のポイント
- 3,000万円控除は、二世帯住宅でも所有者ごとに判定します
- 共有なら、要件を満たす共有者1人につき最高3,000万円です
- 土地だけの親は3要件をすべて満たすときだけ使え、家屋を持つ子と合わせて3,000万円までです
- 軽減税率は、売った年の1月1日で家屋・敷地ともに10年超であることが必要です
まず結論:二世帯住宅でも、3,000万円控除は所有者ごとに判定します
二世帯住宅でも3,000万円控除は所有者ごとに判定し、親と子で結論が分かれることがあります。
売った利益から最高3,000万円を引ける特例です(租税特別措置法35条)。
対象は、原則として、売った人が住む家屋と、家屋とともに売る敷地です。
この条文と関係する通達に、二世帯住宅だけの定めはありません。
共有のマイホームを売った場合には、この特例の適用を受けることができるかどうかは共有者ごとに判定します。
(国税庁 タックスアンサー No.3308)

名義の形で、親と子それぞれの結論が変わります
家屋(またはその持分)を持ち、そこに住む人は、要件を満たせばそれぞれ最高3,000万円です。
| 名義の形 | 親 | 子 |
|---|---|---|
| 土地も家屋も親子の共有 | 自分の持分で最高3,000万円 | 自分の持分で最高3,000万円 |
| 土地は親、家屋は親子の共有 | 家屋の持分と土地で最高3,000万円 | 家屋の持分で最高3,000万円 |
| 区分登記で各自が住戸と敷地の持分を所有 | 住戸と敷地の持分で最高3,000万円 | 住戸と敷地の持分で最高3,000万円 |
| 土地は親、家屋は子だけ | 3要件をすべて満たすときだけ、子の残りの枠 | 家屋で最高3,000万円 |
| 土地も家屋も親だけ | 最高3,000万円 | 持分がないため対象外 |
表は、親も子も住み、ほかの要件も満たす前提です。区分登記のない行は、建物全体が親子それぞれの住まいと認められる場合の結論です。
表の2行目の親の欄は、国税庁の質疑応答事例を参考にしています。
したがって、甲所有の家屋(持分2分の1)とその敷地の全部について、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用して差し支えありません。
(国税庁 質疑応答事例「共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合」)
照会はもう一人の共有者が別の家に住む事案で、子世帯も住む場合は個別判断です。
持分ごとの計算は共有名義の不動産を売ったときの記事で扱っています。
「土地は親、家屋は子」だと、親の控除は3要件しだいです
土地だけを持つ親は、原則としてこの特例を使えません(No.3311)。
次の3要件をすべて満たせば、例外として使えます。
- 敷地を家屋と同時に売ること
- 家屋の所有者と敷地の所有者が親族で、生計を一にしていること
- 敷地の所有者が、家屋の所有者と一緒にその家屋に住んでいること
控除は2人合わせて3,000万円までで、家屋の所有者から先に差し引きます。
二世帯住宅では、「生計を一にする」かが問われます。
親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
(所得税基本通達2-47(2))
家計を分けた暮らしがこの例外に当たるかは、個別判断です。
計算例
例:親の土地に二世帯住宅を建てて売却。売った利益(譲渡益)は土地4,000万円、家屋0円
家屋は親子の共有:親は3,000万円を控除 → 課税1,000万円 → 税額2,031,500円 家屋は子だけ・生計が別:親は控除なし → 課税4,000万円 → 税額8,126,000円 家屋は子だけ・3要件を満たす:子の控除0円、親が3,000万円を控除 → 税額2,031,500円 生計が別の場合との差 8,126,000円 − 2,031,500円 = 6,094,500円税率は令和8年分の20.315%で、所得税15%、その2.1%の復興特別所得税、住民税5%です。
令和9年分以後は、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%になり、合計は同じです。
軽減税率は使わず、建物全体を親子それぞれの住まいとみるなど、一定の前提を置いた目安です。
3要件の詳細は家と土地で名義が違う自宅の売却の記事をご覧ください。

区分登記の有無で変わるのは、「誰がどの部分を持つか」です
区分登記は名義を住戸ごとに分ける登記で、判定の仕方は変わりません。
構造上区分され独立して住める住戸は、別々に所有できます(建物の区分所有等に関する法律1条)。
区分登記の有無にかかわらず、所有者が住まない部分は、控除の対象から外れることがあります。
政令は、居住用以外の部分があれば、居住用の部分に限るとしています。
根拠は租税特別措置法施行令20条の3第2項と23条1項です。
子世帯の部分が親の居住用に当たるかは、公表資料に定めがなく個別判断です。
住まいを区分所有にして一部だけ売る場合も、通達に定めがあります。
残りが独立して住める家なら対象外です(措置法関係通達31の3-10・35-6)。
軽減税率は、家屋と敷地がともに10年を超えるかを所有者ごとに見ます
3,000万円控除と軽減税率の特例(租税特別措置法31条の3)は、重ねて使えます(No.3305)。
控除後の利益のうち6,000万円以下の部分は所得税10%、超える部分は15%です(同条1項)。
所有期間の要件は、売った年の1月1日で、家屋と敷地がともに10年を超えることです。
一方でも10年以下なら、家屋も敷地も使えません(措置法関係通達31の3-3)。
建て替えた家屋は、建てた日の翌日から数えます(租税特別措置法31条2項)。
建て替えて10年以下なら、土地が古くても軽減税率は使えません。
補足
所有期間は持分ごとに見ます。あとから買った家族の持分は、買った日の翌日から数えます(租税特別措置法31条2項・質疑応答事例)。名義が違う敷地の所有者も、3要件が必要です(措置法関係通達31の3-19)。家屋の所有者に課税される譲渡益が残るときは、2人そろって軽減税率を申告します。

失敗パターン:二世帯住宅で控除を使えなくなる5つの形
名義・住み方・売る相手しだいで、控除が0円になることがあります。
- 住んでいない人の持分 ― 別の家に住む子の持分は、原則として対象外です
- 生計が別の、土地だけの親 ― 3要件の2つめを欠き、控除を使えません
- 親の持分を同居の子が買い取る ― 子は直系血族で「特別の関係がある人」です
- 家屋の所有者が前年・前々年に特例を使った ― 敷地だけの所有者も使えません(質疑応答事例)
- 親世帯の部分だけ壊し、その下の土地を売る ― 残りが住める家なら対象外です
以前住んでいた人は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売れば対象です。
転勤などで家族と離れ単身で暮らす場合も、別の扱いがあります(措置法関係通達31の3-2・35-6)。
生計を一にする親族や、売った後に同居する親族への売却も対象外です(No.3302)。
家屋を共有にするための売却や持分の一部の売却も対象外です(措置法関係通達31の3-11・35-6)。
注意
5つめは国税不服審判所の平成26年2月17日裁決です。二世帯住宅とする目的で増築した部分に、子の家族が住んでいました。両親の死亡後に家と土地を相続した子が、親世帯の部分を壊して、その下の土地を売りました。残った部分に台所・便所・浴室・居室があり、特例は適用できないとされました。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
名義と住み方の整理はご自身でできますが、控除の配分と居住用の範囲は個別判断です。
- 登記事項証明書で、土地と家屋の名義・持分・取得の日を確かめる
- 建物が住戸ごとに区分登記されているかを確かめる
- 親世帯と子世帯の誰が、どの部分に住んでいるかを書き出す
- 前年・前々年にこの特例などを使った家族がいないか、申告書で確かめる
ここから先は、子世帯部分の扱い、生計の判定、所有期間、売る相手などで結論が変わります。

税理士が入ると変わるのは、所有者ごとの判定と申告のそろえ方です
登記と暮らしの実態から、所有者ごとに特例を使えるかを判定します。
譲渡価額と取得費を土地・家屋・持分に分け、一人ひとりの譲渡益を出します。
生計や居住の実態を示す資料と、添付書類をそろえます。
売買契約の前に、同時に売るか、売る範囲と相手を確認します。
親と子の確定申告書と譲渡所得の内訳書を、同じ前提で作ります。
小松公認会計士・税理士事務所では、名義の確認から適正申告まで、ご家族分を担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 親子で共有している二世帯住宅を売ると、2人とも3,000万円控除を使えますか?
共有のマイホームは、特例を使えるかを共有者ごとに判定します。要件を満たす共有者1人につき最高3,000万円です(タックスアンサーNo.3308)。住んでいない共有者の持分は原則として対象外です。特例を使う人は一人ひとり確定申告をします。
Q2. 土地は親、建物は子の名義です。親も3,000万円控除を使えますか?
原則は家屋の所有者が対象です。敷地だけの所有者は、3要件をすべて満たすときに使えます。要件は、同時に売る、親族で生計を一にする、家屋の所有者と一緒に住む、です。控除は2人合わせて3,000万円までで、家屋の所有者が先です(No.3311)。
Q3. 区分登記をしている二世帯住宅は、扱いが変わりますか?
区分登記では住戸ごとに所有権が分かれるため、住戸の名義人と住む人の組み合わせで判定します。親が子世帯の住戸も持つ場合や、片方だけを売る場合は個別判断です。措置法関係通達31の3-10なども関わります。
Q4. 同居する子に親の持分を売る場合、親は3,000万円控除を使えますか?
使えません。子などの直系血族は「特別の関係がある人」に当たり、その人への売却は対象外です。根拠は租税特別措置法施行令20条の3第1項と23条2項です。共有持分の一部だけを売る場合も対象外です(措置法関係通達31の3-11・35-6)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法31条・31条の3・35条、同施行令20条の3・23条、措置法関係通達31の3-2・31の3-3・31の3-10・31の3-11・31の3-19・35-4・35-6、所得税基本通達2-47、建物の区分所有等に関する法律1条、国税庁タックスアンサーNo.3302・No.3305・No.3308・No.3311、国税庁の質疑応答事例「共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合」「3年に1回の適用と租税特別措置法関係通達35-4の取扱い」「家屋の所有期間が異なる場合における居住用財産の軽減税率の特例の適用範囲」、国税不服審判所 平成26年2月17日裁決の内容を扱っています。裁決は当時の法令にもとづく個別の事案の判断です。子世帯の部分が所有者の居住用に当たるかの判断基準、「生計を一にする」の具体的な判定、別棟の二世帯住宅の扱いと敷地の分け方、店舗や賃貸部分がある家屋の按分、土地・家屋・持分ごとの取得費と譲渡価額の按分方法、住まなくなった家屋に生計を一にする親族が住み続けている場合の取扱い(措置法関係通達31の3-6)、相続した家屋の空き家特例と相続税の小規模宅地等の特例、買換え特例、譲渡損失の特例、住宅借入金等特別控除との関係、名義を変えたときの贈与税、住民税の軽減税率は扱っていません。記事中の計算例は、二世帯住宅の全体が居住用と認められることなど、一定の前提を置いた目安です。実際の税額は、取得費・譲渡費用・所有期間・名義と住み方によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第31条の3・第35条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 タックスアンサー No.3308「共有のマイホームを売ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3311「家屋と敷地の所有者が異なるとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3311.htm
- 国税庁 質疑応答事例「共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/07.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成26年2月17日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/94/06/index.html
二世帯住宅を売る前に、親と子それぞれの控除を確かめませんか
二世帯住宅の売却は、土地と家屋の名義、区分登記の有無、親子の家計の分け方で結論が変わります。代表税理士が、登記と暮らしの実態から、所有者ごとに特例を使えるかを判定します。譲渡益の計算から、親と子の確定申告書まで同じ前提で作成します。売買契約の前にご相談ください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り