この記事のポイント
- 専ら従業員の慰安のための運動会などの通常要する費用は交際費等から除かれます
- 社内の者だけの飲食は、1人1万円以下でも交際費等から除く特例の対象外です
- 役員だけの会や、自己都合の欠席者に代わりの現金を渡す会は、給与として課税しない扱いから外れます
- 取引先を招く周年行事の費用は原則として交際費等で、祝儀は差し引けません
まず結論:社内行事は、専ら従業員の慰安のための通常の費用なら福利厚生費です
運動会や懇親会、創立記念の祝賀会の費用は、2つの問いに分けて考えます。
- 法人税:交際費等として、損金(税金の計算で差し引ける費用)が制限されるか
- 所得税:参加した人の給与として課税されるか
専ら従業員の慰安のために通常の金額で行う行事なら、原則としてどちらにも当たりません。
分かれ目は、次の4つの線引きです。
- 対象:役員だけ、一部の人だけの会になっていないか
- 金額:1人当たりの会社負担が、通常の範囲か
- 社外:取引先など、社外の人を招いていないか
- 現金:参加しない人に、代わりのお金を渡していないか
どれかを外すと、交際費等や給与として扱われることがあります。

法人税では、専ら従業員の慰安のための通常の費用が交際費等から除かれます
法人税では、専ら従業員の慰安のための通常の費用は交際費等から除かれます。
交際費等の相手には、自社の役員や従業員も含まれます(租税特別措置法関係通達61の4(1)-22)。そのうえで、次の費用が除かれます。
専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
(租税特別措置法61条の4第6項1号)
国税庁は「福利厚生費などとされます」と説明しています(タックスアンサーNo.5261)。
社内の行事での飲食は、通達が交際費等に含まれない例を挙げています。
創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用
(租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)-10(1))
鍵になる言葉は「慰安のため」「おおむね一律に」「通常」の3つです。
社員旅行・食事の支給・人間ドックの目安は、福利厚生の線引きの記事で解説しています。
社内の飲み会は「1人1万円以下」の特例を使えません
社内の者だけの飲み会は、1人1万円以下でもこの特例の対象外です。
特例の「飲食費」の定義から、次の費用が除かれているためです。
専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。
(租税特別措置法61条の4第6項)
1万円は政令の基準です(同法施行令37条の5第1項)。接待飲食費の50%を損金にできる枠も、同じ理由で使えません。
交際費等は、原則として全額が損金になりません(タックスアンサーNo.5265)。
1万円の特例の要件と800万円の枠は、交際費の記事で解説しています。
計算例
例:従業員30名全員に案内し、全員が参加した懇親会(飲食代240,000円)
1人当たり 240,000円 ÷ 30名 = 8,000円 社内の者だけの飲食 → 1万円以下でも特例は使えません 判定 → 従業員の慰安のための通常の費用といえるか金額は一定の前提を置いた目安です。通常の金額かは、会社ごとの事実で決まります。
社内の飲み会は、福利厚生費の条件に当たるかが分かれ目です。
所得税では、通達36-30の条件を満たせば参加者に課税されません
参加者が受ける飲食などの利益は、次の条件なら課税されません。
使用者が役員又は使用人のレクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することにより、これらの行事に参加した役員又は使用人が受ける経済的利益については、使用者が、当該行事に参加しなかった役員又は使用人(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を除く。)に対しその参加に代えて金銭を支給する場合又は役員だけを対象として当該行事の費用を負担する場合を除き、課税しなくて差し支えない。
(所得税基本通達36-30)
課税しない扱いから外れるのは、自己都合の欠席者に代わりの金銭を渡す場合と、役員だけの会です。
注意
欠席者に渡したお金は、業務で参加できなかった人の分も給与です(同通達の注)。自己都合の欠席者5名に5,000円ずつなら、25,000円が給与です(一定の前提を置いた例)。このとき参加した人の分も、課税しない扱いから外れます。
金額が大きすぎる行事も外れます。国税不服審判所の裁決は、重く見る点をこう述べています。
レクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきである
(国税不服審判所 平成22年12月17日裁決)
社員旅行の事案で、従業員1人当たり241,300円の会社負担が多額とされ、給与と認定されました。
給与を払う会社は、所得税を源泉徴収(差し引いて納付)します(所得税法183条1項)。
この事案では、源泉所得税の納付を求める処分と不納付加算税(納付遅れの加算税)も適法とされました。
数年に1度の行事を1年当たりに割り、少額とする主張も認められませんでした。
会社負担が多額かどうかは、行事ごとに1人当たりで確かめます。

取引先を招く周年行事は、原則として交際費等です
取引先を招く創立記念の祝賀会は、原則として交際費等です。通達の例示は次のとおりです。
会社の何周年記念又は社屋新築記念における宴会費、交通費及び記念品代
(租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)-15(1))
ただし、費用が主として社内向けの飲食(61の4(1)-10)に当たる場合は除かれます。書類を保存した1人1万円以下の飲食費も除かれます。
ポイント
国税庁のQ&A「記念式典に要した交際費等の金額」は、得意先を招き、宴会費1人1万円超の式典の例です。総額1,000万円が交際費等で、祝儀100万円は差し引けず雑収入としています。
取引先を形式的に呼んだ社内の飲み会も、社内の飲食とされることがあります。
得意先等の従業員を形式的に参加させていると認められる場合には、社内飲食費に該当することがあります。
(国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」平成18年5月・Q5)
補足
消費税の一般課税(実額で控除する方法)では、飲食店や会場への支払いは原則として課税仕入れです。給与に当たるお金は対象外です(消費税法2条1項12号)。控除には帳簿と請求書等の保存が要ります(同法30条7項)。

4つの線引きを外した処理は、否認や指摘の対象になります
主な処理と根拠を並べます。
| 処理の例 | どうなるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 役員だけの慰労会を福利厚生費にする | 給与として課税しない扱いの対象外 | 所得税基本通達36-30 |
| 希望者だけの二次会も福利厚生費にする | 「おおむね一律」「通常」に当たるかが問題 | 措置法通達61の4(1)-10 |
| 自己都合の欠席者に代わりのお金を渡す | お金は給与。参加者の分も課税しない扱いの対象外 | 所得税基本通達36-30 |
| 周年行事の費用から祝儀を差し引く | 差し引けず、祝儀は雑収入 | 国税庁のQ&A |
| 1人当たりの会社負担が大きい行事 | 参加者の給与とされ、源泉徴収の対象 | 平成22年12月17日裁決 |
役員だけの会は法人税でも「従業員の慰安」に当たらず、交際費等か役員給与かを判断します。
役員給与なら、定期同額給与などに当たらない限り損金になりません(法人税法34条1項)。
交際費等かどうかは、科目名ではなく使い道で決まります(措置法61条の4第6項)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
行事の前後に、ご自身で整えられるのは次の4つです。
- 案内した範囲と参加者の名簿を、行事ごとに残す(取引先は分けて書く)
- 会社負担の総額を人数で割り、1人当たりの額を出す
- 欠席者には、参加の代わりのお金を渡さない
- 飲食店や会場の請求書・領収書を、帳簿とあわせて保存する
「通常の金額」に当たるかは、行事の内容と会社の実情による個別判断です。
部署単位の会や、役員・社外の人が混ざる会の分け方も、事実ごとに変わります。
税理士が入ると変わるのは、行事ごとの判定と記録の残し方です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
ひとつめは、年間の行事の棚卸しと、福利厚生費・交際費等・給与の判定です。
ふたつめは、行事前の1人当たり会社負担の試算です。
みっつめは、案内文と参加者名簿の様式づくりです。
よっつめは、給与に当たる部分の源泉徴収の要否の判断です。
いつつめは、交際費等の集計と申告書への反映、消費税の課税仕入れの区分です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社員全員が参加した懇親会で、1人8,000円でした。1万円以下なので交際費になりませんか?
社内の者だけの飲食は、1人1万円以下でも交際費等から除く特例の対象外です(措置法61条の4第6項)。専ら従業員の慰安のための通常の費用といえれば、交際費等から除かれます(同項1号)。いえなければ、原則として交際費等です。
Q2. 参加しない社員に、代わりに5,000円を渡してもよいですか?
渡したお金は給与として課税されます。業務で参加できなかった人の分も同じです(所得税基本通達36-30の注)。自己都合の欠席者に渡すと、参加した人の分も課税しない扱いから外れます。欠席者への代わりのお金は、渡さない形で運用します。
Q3. 役員だけで慰労会をしました。福利厚生費にできますか?
役員だけを対象に会社が費用を負担する行事は、所得税基本通達36-30の課税しない扱いから外れます。法人税の除外も「従業員の慰安」のための費用です(措置法61条の4第6項1号)。交際費等か役員給与かを個別に判断します。
Q4. 創立記念パーティーに取引先を招き、祝儀をいただきました。費用から差し引けますか?
差し引けません。国税庁のQ&Aは、式典費用と祝儀を別の行為とし、総額を交際費等、祝儀を雑収入としています。社内で従業員等におおむね一律に出す通常の飲食が主なら、除かれます(措置法通達61の4(1)-15)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法61条の4第1項・第6項、同法施行令37条の5第1項、租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)-10・61の4(1)-15・61の4(1)-22、所得税基本通達36-30、所得税法183条1項、法人税法34条1項、消費税法2条1項12号・30条7項、国税庁タックスアンサーNo.5261「交際費等と福利厚生費との区分」・No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」、国税庁のQ&A「記念式典に要した交際費等の金額」と「交際費等(飲食費)に関するQ&A」(平成18年5月)、国税不服審判所の平成22年12月17日裁決の内容を扱っています。社員旅行・食事の支給・人間ドックの要件、1人1万円以下の飲食費の書類保存の記載事項、定額控除限度額と接待飲食費の50%の計算、慶弔見舞金、記念品・永年勤続表彰、従業員の家族が参加する行事、会費制で従業員が一部を負担する場合の処理、役員給与の事前確定届出給与・業績連動給与の要件、源泉徴収税額と不納付加算税の計算、消費税の簡易課税・2割特例・適格請求書発行事業者以外からの仕入れの経過措置、地方税への影響は扱っていません。交際費等の損金不算入(措置法61条の4)は、令和9年3月31日までに開始する事業年度について定められています。紹介した裁決は社員旅行の事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、通常の金額に当たるかは会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(61条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 租税特別措置法関係通達(法人税編)第61条の4関係「第1款 交際費等の範囲」(61の4(1)-10・-15・-22)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/08/08_61_4a.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔給与等に係る経済的利益〕(36-30)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5261「交際費等と福利厚生費との区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5261 Q&A「記念式典に要した交際費等の金額」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261_qa.htm
- 国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」(平成18年5月)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/5065.pdf
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成22年12月17日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/81/08/index.html
社内行事の費用を、福利厚生費で処理してよいか確かめませんか
社内行事の費用は、専ら従業員の慰安のための通常の費用なら福利厚生費として扱えます。役員だけの会や取引先を招く周年行事は、交際費等や給与になることがあります。自己都合の欠席者への現金や、1人当たりの負担が大きい行事も同様です。代表税理士が、年間の行事の判定と1人当たりの負担の試算から始めます。案内文と名簿の様式、源泉徴収の要否、申告書と消費税への反映まで通して確認します。行事の予算を決める前の段階でご相談ください。
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