この記事のポイント
- 据置期間は元金返済の開始を遅らせる制度で、期間中も利息は払います
- 公庫の返済方法は元金均等・元利均等・ステップ(段階)返済などです
- 1,000万円・7年・据置6か月なら、据置後の月々の元金は128,205円が目安です
- 資金繰り表は前月繰越+経常収支+経常外収支+財務収支=翌月繰越の構造です
まず結論:据置期間は「返済の免除」ではなく「元金返済の開始を遅らせる」制度です
据置期間とは、元金の返済を始めない期間のことです。
据置期間中も利息の支払は続きます。免除されるのではなく、元金の返済開始が後ろにずれるだけです。
日本政策金融公庫(以下、公庫)は、創業融資の特徴を公式に挙げています。「元金返済の据置期間を設定できること(5年以内)」です。
新規開業・スタートアップ支援資金も、「うち据置期間5年以内」と示されています。
公庫の返済シミュレーションでも、元金据置期間は0ヵ月から60ヵ月の範囲で入力します。
据置期間が終わると、残りの回数で元金を返します。そのため、月々の元金は据置なしより大きくなります。
補足
「5年以内」「0〜60ヵ月」は、公式が示す上限です。公庫は「実際のお借入金額、ご返済期間、元金の据置期間の上限等は資金によって異なります。」と示しています。

返済方法は元金均等・元利均等・ステップ返済 ― 公庫が公式に挙げる3つです
公庫の返済方法は、元金均等返済、元利均等返済、ステップ(段階)返済などです。
公庫は「ご返済は原則として月賦払いです。」と示しています。月賦払いとは、毎月返す方式のことです。
| 返済方法 | 毎月の返し方 |
|---|---|
| 元金均等返済 | 毎月の元金が一定です。利息は残高に応じて減るので、返済額は初回が最も多く、少しずつ減ります。 |
| 元利均等返済 | 元金と利息を合わせた毎月の返済額が一定です。初めは利息の割合が大きく、後になるほど元金の割合が増えます。 |
| ステップ(段階)返済 | 公式ページに名称のみ挙げられています。詳細は公庫の窓口でご確認ください。 |
元金均等と元利均等のどちらが有利かは、一概に決まりません。月々を平らにしたいか、初回が重くてもよいかで、見え方が変わります。
利息の算式は、公庫の月別収支計画書の記入ポイントにあります。「支払利息(月間)は、『借入金×年利率÷12ヵ月』で算出します。」という算式です。
計算例:1,000万円を7年で返すと、月々いくらになるか
据置の効果を数字で確かめます。前提は借入1,000万円、返済期間7年(84回・毎月)、固定金利です。
年利2.0%は説明のための仮置きです。実際の金利は、公庫の金利情報ページで確認してください。
計算例
例:借入1,000万円・年利2.0%(仮置き)・返済期間7年(84回)・毎月返済・固定金利
① 元金均等・据置なし:月々の元金 1,000万円 ÷ 84回 = 119,048円 初回利息 1,000万円 × 2.0% ÷ 12 = 16,667円 → 初回返済額 135,715円 ② 元金均等・据置6か月:据置中は利息のみ 16,667円/月 据置後の月々の元金 1,000万円 ÷ 78回 = 128,205円 ③ 元利均等・据置なし:毎月の返済額 127,674円(一定)一定の前提を置いた目安です。利息は各月の残高×年利÷12で計算しています。公庫も返済シミュレーションの結果を「あくまでも目安」と示しています。
| 方式 | 据置中の月々 | 据置後の初回返済額 | 総利息 |
|---|---|---|---|
| ① 元金均等・据置なし | ― | 135,715円 | 708,333円 |
| ② 元金均等・据置6か月 | 16,667円(利息のみ) | 144,872円 | 758,333円 |
| ③ 元利均等・据置なし | ― | 127,674円 | 724,645円 |
据置6か月にすると、据置後の月々の元金は①より9,157円増えます。据置中に軽くなった分は、据置後に上乗せされます。
総利息も、②は①より50,000円多くなります。

資金繰り表は「前月繰越+経常収支+経常外収支+財務収支=翌月繰越」の構造です
資金繰り表とは、お金の出入りと残高を月ごとに並べた表です。公庫がExcel様式と記入例を公開しています。
構造はひとつの式に集約できます。翌月繰越金=前月繰越金+差引過不足+経常外収支計+財務収支計です。
| ブロック | 主な行 |
|---|---|
| 経常収支の収入 | 現金売上・売掛金回収・受取手形入金・割引・その他 |
| 経常収支の支出 | 現金仕入・買掛金支払・手形決済・外注加工費・人件費・諸経費・支払利息・その他 |
| 経常外収支 | 経常外収入・経常外支出 |
| 財務収支の収入 | 借入金(当公庫)・借入金 |
| 財務収支の支出 | 借入金返済(短期)・借入金返済(長期) |
支払利息は経常収支の支出に、元金の返済は財務収支の支出に書きます。
ポイント
公庫の記入例(千円単位)を見ます。1か月目は前月繰越金39,847、差引過不足621です。経常外支出20,000、借入金返済(長期)2,000です。翌月繰越金は39,847+621-20,000-2,000=18,468です。この値が、翌月の前月繰越金に転記されます。
中小企業庁の「資金予定表かんたん作成ツール」も使えます。質問事項に数値を入れるだけで作れ、通常用と製造業用があります。
創業時は、公庫の月別収支計画書も使います。借入金返済額の欄には元金を書きます。
据置中は「元金の返済がない場合は0と記入します。」と示されています。
設備資金で機械を買うなら、設備投資で使える中小企業の税制も先に確認します。納税額の見込みが変わるためです。

失敗パターン:据置中に返済原資を積み立てない、税金と返済が重なる月を見ていない
よくある失敗は2つです。どちらも、資金繰り表を作れば事前に見えます。
1つ目は、据置期間中に返済原資を積み立てないことです。据置中の月々の支払は利息だけで、先の例なら16,667円です。
この軽さに慣れると、据置後の144,872円が急に来ます。据置期間は、据置後の返済額を毎月払える体質を作るための準備期間です。
公庫の月別収支計画書の記入例も、創業当初6か月は赤字で借入金返済額は0です。7か月目から利益が出る想定です。
2つ目は、税金と返済が重なる月に詰まることです。法人税や消費税の納付、賞与、保険料の年払いは、特定の月に集中します。
翌月繰越金がマイナスになる月を、資金繰り表で先に見つけることが大切です。
注意
経常収支が黒字でも、財務収支の返済で翌月繰越金が減り続けることがあります。損益は黒字なのに、現金が減る状態です。信用保証協会は、1本に借り換えると「毎月の返済額を軽減できる可能性があります」と示しています。ただし「借り換えできる保証制度とそうでないものがあります。」
取引先の倒産に備える経営セーフティ共済の掛金も、資金繰り表の支出にあらかじめ載せておきます。
ここまではご自身で、ここからは個別判断です
ご自身でできるのは、公庫の様式に数字を入れるところまでです。
- 公庫の返済シミュレーションに、金額・返済期間・元金据置期間・金利を入れて、月々の返済額を出す
- 資金繰り表の財務収支に、元金の返済を「借入金返済(長期)」として入れる
- 支払利息を経常収支の支出に入れる
- 翌月繰越金がマイナスになる月がないかを、据置が終わる月をまたいで確認する
ここから先は個別判断です。据置を何か月にするか、元金均等か元利均等かは、売上の立ち上がりと納税の時期で変わります。
小松公認会計士・税理士事務所では、返済計画を資金繰り表に落とし込む段階からご一緒しています。

税理士が入ると何が変わるか ― 月次の試算表と資金繰り表がそろいます
税理士が入ると、資金繰り表の数字に根拠がつきます。作業は次のとおりです。
- 毎月の試算表(月ごとの損益と残高をまとめた表)を作り、資金繰り表の【実績】列を埋める
- 法人税・消費税・源泉所得税の納付月と金額の見込みを、資金繰り表の支出に先に入れる
- 借入金の返済予定表から元金と利息を分け、財務収支と経常収支に振り分ける
- 据置期間が終わる月の翌月繰越金を確認し、必要なら追加の資金調達の時期を前倒しで検討する
- 公庫や金融機関への提出用に、資金繰り表の「算出根拠」欄を試算表の数字で裏づける
据置期間中こそ、月次の試算表で実績を追い、据置後の返済に耐える現金が残っているかを確かめます。
決算までに検討できる打ち手は、決算前3か月にできる法人の決算対策にまとめています。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 据置期間中は何も払わなくてよいのですか?
いいえ。据置期間は元金の返済を始めない期間で、利息の支払は続きます。公庫は「元金返済の据置期間を設定できること(5年以内)」と示しています。据置後は残りの回数で元金を返すため、月々の元金は据置なしより増えます。
Q2. 元金均等と元利均等は、どちらを選ぶべきですか?
一概には決まりません。元金均等は毎月の元金が一定で、元利均等は毎月の返済額が一定です。借入1,000万円・年利2.0%(仮置き)・7年の試算では、総利息は708,333円と724,645円でした。実額は公庫の返済シミュレーションでご確認ください。
Q3. 資金繰り表は、どの様式で作ればよいですか?
公庫がExcel様式と記入例を公開しています。前月繰越金、経常収支、経常外収支、財務収支から翌月繰越金を求める構造です。中小企業庁の「資金予定表かんたん作成ツール」(通常用と製造業用)も使えます。
Q4. 月別収支計画書の借入金返済額には、何を書きますか?
元金を書きます。公庫の記入ポイントは「元金の据置期間中など、元金の返済がない場合は0と記入します。」と示しています。支払利息は「借入金×年利率÷12ヵ月」で別に算出し、元金とは分けて扱います。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。日本政策金融公庫「お手続きの流れ 創業予定の方」「新規開業・スタートアップ支援資金」「Q&A」「返済シミュレーション(事業資金用)」「月別収支計画書(記入例)」「資金繰り表」様式・記入例、中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」、全国信用保証協会連合会の公表内容を扱っています。実際の金利、据置期間の可否と長さ、審査の結果、ステップ(段階)返済の仕組み、民間金融機関や自治体の制度融資の返済条件、信用保証料の料率、借入金や支払利息の税務処理は扱っていません。記事中の計算例は年利2.0%を仮置きした設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の返済額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 日本政策金融公庫「返済シミュレーション(事業資金用)」https://www.jfc.go.jp/n/finance/simulation.html
- 日本政策金融公庫「資金繰り表」様式(Excel)https://www.jfc.go.jp/n/service/xls/sikinguri_181120.xlsx
- 日本政策金融公庫「月別収支計画書(記入例)」https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/tukibetu_syuusikeikakusyo_rei191120.pdf
- 日本政策金融公庫「お手続きの流れ 創業予定の方」https://www.jfc.go.jp/n/finance/flow/tetsudukij_c.html
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html
据置期間が終わる前に、資金繰り表を一緒に作りませんか
据置期間中の支払は利息だけなので、据置後の返済額が見えにくくなります。資金繰り表を作れば、返済と納税が重なる月と、翌月繰越金がマイナスになる月を先に見つけられます。据置を何か月にするか、元金均等と元利均等のどちらにするかは、売上の立ち上がりと納税の時期によって変わります。代表税理士が月次の試算表と資金繰り表をそろえ、返済計画に根拠をつけるところまで通して対応します。
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