融資・資金調達

据置期間と返済計画
元金均等・元利均等の違いと、資金繰り表の作り方

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 据置期間は元金返済の開始を遅らせる制度で、期間中も利息は払います
  • 公庫の返済方法は元金均等・元利均等・ステップ(段階)返済などです
  • 1,000万円・7年・据置6か月なら、据置後の月々の元金は128,205円が目安です
  • 資金繰り表は前月繰越+経常収支+経常外収支+財務収支=翌月繰越の構造です

まず結論:据置期間は「返済の免除」ではなく「元金返済の開始を遅らせる」制度です

据置期間とは、元金の返済を始めない期間のことです。

据置期間中も利息の支払は続きます。免除されるのではなく、元金の返済開始が後ろにずれるだけです。

日本政策金融公庫(以下、公庫)は、創業融資の特徴を公式に挙げています。「元金返済の据置期間を設定できること(5年以内)」です。

新規開業・スタートアップ支援資金も、「うち据置期間5年以内」と示されています。

公庫の返済シミュレーションでも、元金据置期間は0ヵ月から60ヵ月の範囲で入力します。

据置期間が終わると、残りの回数で元金を返します。そのため、月々の元金は据置なしより大きくなります。

補足

「5年以内」「0〜60ヵ月」は、公式が示す上限です。公庫は「実際のお借入金額、ご返済期間、元金の据置期間の上限等は資金によって異なります。」と示しています。

据置期間は元金返済の開始を遅らせる制度で期間中も利息の支払は続きます
据置期間は元金返済の開始を遅らせる制度で期間中も利息の支払は続きます

返済方法は元金均等・元利均等・ステップ返済 ― 公庫が公式に挙げる3つです

公庫の返済方法は、元金均等返済、元利均等返済、ステップ(段階)返済などです。

公庫は「ご返済は原則として月賦払いです。」と示しています。月賦払いとは、毎月返す方式のことです。

返済方法毎月の返し方
元金均等返済毎月の元金が一定です。利息は残高に応じて減るので、返済額は初回が最も多く、少しずつ減ります。
元利均等返済元金と利息を合わせた毎月の返済額が一定です。初めは利息の割合が大きく、後になるほど元金の割合が増えます。
ステップ(段階)返済公式ページに名称のみ挙げられています。詳細は公庫の窓口でご確認ください。

元金均等と元利均等のどちらが有利かは、一概に決まりません。月々を平らにしたいか、初回が重くてもよいかで、見え方が変わります。

利息の算式は、公庫の月別収支計画書の記入ポイントにあります。「支払利息(月間)は、『借入金×年利率÷12ヵ月』で算出します。」という算式です。

計算例:1,000万円を7年で返すと、月々いくらになるか

据置の効果を数字で確かめます。前提は借入1,000万円、返済期間7年(84回・毎月)、固定金利です。

年利2.0%は説明のための仮置きです。実際の金利は、公庫の金利情報ページで確認してください。

計算例

例:借入1,000万円・年利2.0%(仮置き)・返済期間7年(84回)・毎月返済・固定金利

① 元金均等・据置なし:月々の元金 1,000万円 ÷ 84回 = 119,048円 初回利息 1,000万円 × 2.0% ÷ 12 = 16,667円 → 初回返済額 135,715円 ② 元金均等・据置6か月:据置中は利息のみ 16,667円/月 据置後の月々の元金 1,000万円 ÷ 78回 = 128,205円 ③ 元利均等・据置なし:毎月の返済額 127,674円(一定)

一定の前提を置いた目安です。利息は各月の残高×年利÷12で計算しています。公庫も返済シミュレーションの結果を「あくまでも目安」と示しています。

方式据置中の月々据置後の初回返済額総利息
① 元金均等・据置なし135,715円708,333円
② 元金均等・据置6か月16,667円(利息のみ)144,872円758,333円
③ 元利均等・据置なし127,674円724,645円

据置6か月にすると、据置後の月々の元金は①より9,157円増えます。据置中に軽くなった分は、据置後に上乗せされます。

総利息も、②は①より50,000円多くなります。

据置6か月にすると据置後の月々の元金は据置なしより9,157円増えます
据置6か月にすると据置後の月々の元金は据置なしより9,157円増えます

資金繰り表は「前月繰越+経常収支+経常外収支+財務収支=翌月繰越」の構造です

資金繰り表とは、お金の出入りと残高を月ごとに並べた表です。公庫がExcel様式と記入例を公開しています。

構造はひとつの式に集約できます。翌月繰越金=前月繰越金+差引過不足+経常外収支計+財務収支計です。

ブロック主な行
経常収支の収入現金売上・売掛金回収・受取手形入金・割引・その他
経常収支の支出現金仕入・買掛金支払・手形決済・外注加工費・人件費・諸経費・支払利息・その他
経常外収支経常外収入・経常外支出
財務収支の収入借入金(当公庫)・借入金
財務収支の支出借入金返済(短期)借入金返済(長期)

支払利息は経常収支の支出に、元金の返済は財務収支の支出に書きます。

ポイント

公庫の記入例(千円単位)を見ます。1か月目は前月繰越金39,847、差引過不足621です。経常外支出20,000、借入金返済(長期)2,000です。翌月繰越金は39,847+621-20,000-2,000=18,468です。この値が、翌月の前月繰越金に転記されます。

中小企業庁の「資金予定表かんたん作成ツール」も使えます。質問事項に数値を入れるだけで作れ、通常用と製造業用があります。

創業時は、公庫の月別収支計画書も使います。借入金返済額の欄には元金を書きます。

据置中は「元金の返済がない場合は0と記入します。」と示されています。

設備資金で機械を買うなら、設備投資で使える中小企業の税制も先に確認します。納税額の見込みが変わるためです。

資金繰り表は前月繰越金と経常収支と経常外収支と財務収支から翌月繰越金を求めます
資金繰り表は前月繰越金と経常収支と経常外収支と財務収支から翌月繰越金を求めます

失敗パターン:据置中に返済原資を積み立てない、税金と返済が重なる月を見ていない

よくある失敗は2つです。どちらも、資金繰り表を作れば事前に見えます。

1つ目は、据置期間中に返済原資を積み立てないことです。据置中の月々の支払は利息だけで、先の例なら16,667円です。

この軽さに慣れると、据置後の144,872円が急に来ます。据置期間は、据置後の返済額を毎月払える体質を作るための準備期間です。

公庫の月別収支計画書の記入例も、創業当初6か月は赤字で借入金返済額は0です。7か月目から利益が出る想定です。

2つ目は、税金と返済が重なる月に詰まることです。法人税や消費税の納付、賞与、保険料の年払いは、特定の月に集中します。

翌月繰越金がマイナスになる月を、資金繰り表で先に見つけることが大切です。

注意

経常収支が黒字でも、財務収支の返済で翌月繰越金が減り続けることがあります。損益は黒字なのに、現金が減る状態です。信用保証協会は、1本に借り換えると「毎月の返済額を軽減できる可能性があります」と示しています。ただし「借り換えできる保証制度とそうでないものがあります。」

取引先の倒産に備える経営セーフティ共済の掛金も、資金繰り表の支出にあらかじめ載せておきます。

ここまではご自身で、ここからは個別判断です

ご自身でできるのは、公庫の様式に数字を入れるところまでです。

  1. 公庫の返済シミュレーションに、金額・返済期間・元金据置期間・金利を入れて、月々の返済額を出す
  2. 資金繰り表の財務収支に、元金の返済を「借入金返済(長期)」として入れる
  3. 支払利息を経常収支の支出に入れる
  4. 翌月繰越金がマイナスになる月がないかを、据置が終わる月をまたいで確認する

ここから先は個別判断です。据置を何か月にするか、元金均等か元利均等かは、売上の立ち上がりと納税の時期で変わります。

小松公認会計士・税理士事務所では、返済計画を資金繰り表に落とし込む段階からご一緒しています。

税理士が入ると月次の試算表と資金繰り表がそろい返済計画に根拠がつきます
税理士が入ると月次の試算表と資金繰り表がそろい返済計画に根拠がつきます

税理士が入ると何が変わるか ― 月次の試算表と資金繰り表がそろいます

税理士が入ると、資金繰り表の数字に根拠がつきます。作業は次のとおりです。

  • 毎月の試算表(月ごとの損益と残高をまとめた表)を作り、資金繰り表の【実績】列を埋める
  • 法人税・消費税・源泉所得税の納付月と金額の見込みを、資金繰り表の支出に先に入れる
  • 借入金の返済予定表から元金と利息を分け、財務収支と経常収支に振り分ける
  • 据置期間が終わる月の翌月繰越金を確認し、必要なら追加の資金調達の時期を前倒しで検討する
  • 公庫や金融機関への提出用に、資金繰り表の「算出根拠」欄を試算表の数字で裏づける

据置期間中こそ、月次の試算表で実績を追い、据置後の返済に耐える現金が残っているかを確かめます。

決算までに検討できる打ち手は、決算前3か月にできる法人の決算対策にまとめています。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 据置期間中は何も払わなくてよいのですか?

いいえ。据置期間は元金の返済を始めない期間で、利息の支払は続きます。公庫は「元金返済の据置期間を設定できること(5年以内)」と示しています。据置後は残りの回数で元金を返すため、月々の元金は据置なしより増えます。

Q2. 元金均等と元利均等は、どちらを選ぶべきですか?

一概には決まりません。元金均等は毎月の元金が一定で、元利均等は毎月の返済額が一定です。借入1,000万円・年利2.0%(仮置き)・7年の試算では、総利息は708,333円と724,645円でした。実額は公庫の返済シミュレーションでご確認ください。

Q3. 資金繰り表は、どの様式で作ればよいですか?

公庫がExcel様式と記入例を公開しています。前月繰越金、経常収支、経常外収支、財務収支から翌月繰越金を求める構造です。中小企業庁の「資金予定表かんたん作成ツール」(通常用と製造業用)も使えます。

Q4. 月別収支計画書の借入金返済額には、何を書きますか?

元金を書きます。公庫の記入ポイントは「元金の据置期間中など、元金の返済がない場合は0と記入します。」と示しています。支払利息は「借入金×年利率÷12ヵ月」で別に算出し、元金とは分けて扱います。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。日本政策金融公庫「お手続きの流れ 創業予定の方」「新規開業・スタートアップ支援資金」「Q&A」「返済シミュレーション(事業資金用)」「月別収支計画書(記入例)」「資金繰り表」様式・記入例、中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」、全国信用保証協会連合会の公表内容を扱っています。実際の金利、据置期間の可否と長さ、審査の結果、ステップ(段階)返済の仕組み、民間金融機関や自治体の制度融資の返済条件、信用保証料の料率、借入金や支払利息の税務処理は扱っていません。記事中の計算例は年利2.0%を仮置きした設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の返済額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

据置期間が終わる前に、資金繰り表を一緒に作りませんか

据置期間中の支払は利息だけなので、据置後の返済額が見えにくくなります。資金繰り表を作れば、返済と納税が重なる月と、翌月繰越金がマイナスになる月を先に見つけられます。据置を何か月にするか、元金均等と元利均等のどちらにするかは、売上の立ち上がりと納税の時期によって変わります。代表税理士が月次の試算表と資金繰り表をそろえ、返済計画に根拠をつけるところまで通して対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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