融資・資金調達

融資を受けるための決算書の見え方
提出資料と経営者保証免除の2つの要件

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 公庫・信用保証協会が公式に挙げる提出書類は確定申告書・決算書・試算表です
  • 公式に明記された決算書の着眼点は経営者保証免除特例の要件です
  • 要件は役員への貸付金等がないこと減価償却前経常利益か債務超過です
  • 決算書はよく見せるのではなくあるがままを説明できる状態にします

まず結論:決算書は「よく見せる」のではなく「説明できる」状態にします

融資の申込みで求められるのは、あるがままの決算書を説明できることです。

日本政策金融公庫は試算表などを、信用保証協会は確定申告書(決算書)を提出書類に挙げています。

金融機関が決算書のどこを見るかは、公式には細かく公表されていません。

公式に明記されている数少ない着眼点が、公庫の経営者保証免除特例制度の要件です。

要件は2つです。役員への貸付金等がないことと、減価償却前経常利益または債務超過の状態です。

ただし、これは経営者保証を免除するための要件です。融資そのものの可否基準ではありません。

融資の申込みでは、あるがままの決算書を説明できる状態にしておくことが大切です
融資の申込みでは、あるがままの決算書を説明できる状態にしておくことが大切です

提出を求められる資料は、公庫と信用保証協会が公式に挙げています

まず、公式ページに書かれている提出書類を押さえます。

公庫のよくあるご質問は、「営業の内容・状況がわかる資料」の用意を求めています。

決算や申告を終えていない場合は、「試算表など営業の内容・状況が分かる資料」とされています。

試算表とは、月ごとの売上や経費、資産と負債を集計した途中経過の表です。

全国信用保証協会連合会は、申込時の主な提出書類に「確定申告書(決算書)」を挙げています。

資料挙げている機関公式の記載
確定申告書(決算書)信用保証協会申込時の主な提出書類(5)
試算表など営業の内容・状況が分かる資料公庫決算や申告を終えていない場合
資金繰り表公庫「ご商売の状況の確認に活用」する様式
見積書公庫設備資金の申込の場合
資産・負債がわかる書類公庫面談の際に準備
商業登記簿謄本・印鑑証明書信用保証協会申込時の主な提出書類(6)(7)

見積書と資産・負債がわかる書類は、公庫の手続案内(創業予定の方向け)に載っています。

決算書は「出して終わり」ではなく、面談で資産・負債の中身を説明する前提の資料です。

保証協会は「上記以外に必要な書類はケースによって異なります」とも記しています。

申し込む融資や都道府県で異なるため、窓口で確認してください。

経営者保証免除特例の要件が、公式に書かれた「決算書の着眼点」です

決算書のどこが見られるかは、この特例の要件を読むのが確実です。

経営者保証とは、会社の借入れを社長個人が連帯して保証することです。

公庫の経営者保証免除特例制度は、「経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人の方」が対象です。

税務申告を2期以上している法人の要件は、次の(1)と(2)の両方です。

ポイント

(1)法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていること
「事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないこと」をいいます。
(2)次のいずれかを満たすこと
ア 最近2期の決算期において、減価償却前経常利益が2期連続して赤字でないこと
イ 直近の決算期において債務超過となっていないこと

(1)は、貸借対照表の役員貸付金を見れば分かります。

(2)は、損益計算書の経常利益と減価償却費、貸借対照表の純資産を見れば分かります。

つまり、役員貸付金・減価償却前経常利益・純資産の3点が、公式に示された着眼点です。

税務申告を2期終えていない方は、(1)の要件のみが問われます。

要件を満たすと経営者の保証が免除され、利率の上乗せはありません。

役員貸付金がなぜ生まれ、税務上どう扱われるかは役員貸付金と役員借入金の記事をご覧ください。

この要件は保証免除のためのもので、融資可否の基準ではありません。

役員貸付金と減価償却前経常利益と純資産の3点が公式に示された決算書の着眼点です
役員貸付金と減価償却前経常利益と純資産の3点が公式に示された決算書の着眼点です

減価償却前経常利益と債務超過は、決算書の数字を足し引きすれば分かります

2つの指標は、決算書の数字から簡単に計算できます。

減価償却前経常利益とは、経常利益に減価償却費を足し戻した金額です。

減価償却費は、過去に買った設備の代金を分割して費用にしたものです。その期に現金は出ていきません。

そのため、経常利益が赤字でも、減価償却前では黒字になることがあります。

債務超過とは、負債が資産を上回り、純資産がマイナスになっている状態です。

計算例

例1:経常利益△50万円・減価償却費80万円の法人

減価償却前経常利益=△50万円+80万円=+30万円 経常利益は赤字でも、要件アの見方では赤字ではありません

例2:資産合計1,000万円・負債合計1,200万円の法人

純資産=1,000万円-1,200万円=△200万円 純資産がマイナス=債務超過。要件イには当てはまりません

いずれも一定の前提を置いた目安です。

例1の30万円は、その期の事業から残った現金の目安です。税金と元金の返済は、ここから支払うことになります。

年間の元金返済額がこれを上回ると、不足分は手元の資金から出ていきます。

例2のように債務超過でも、要件アを満たせば特例の対象になり得ます。アとイはいずれかでよいためです。

赤字が続いたときの税務上の扱いは、欠損金の繰越控除の記事で整理しています。

つまずきやすいのは、役員貸付金・仮払金・試算表の3点です

申込前に見直したいのは、説明のつかない残高と、直近の資料の欠落です。

注意

①役員貸付金を残したまま提出する
社長が会社のお金を引き出したままだと、貸借対照表に役員貸付金が残ります。事業上の必要が認められない貸付けなら、特例の要件(1)を満たしません。
②仮払金・立替金を放置する
使い道の分からない仮払金は、面談で「資産・負債がわかる書類」を求められたときに説明できません。
③試算表がない
決算から月日が経っているのに直近の数字がないと、今の営業の状況を示せません。

いずれも「融資が否決される」と公式に書かれているわけではありません。

しかし、説明できない残高は、そのまま金融機関からの質問になります。

役員貸付金は、返済するか、役員報酬との関係で解消するかを決算前に検討します。

なお、信用保証協会は「赤字だけを理由に保証をお断りすることはありません」と公表しています。

赤字の原因や経営意欲、事業計画などを総合的に検討するとされています。

赤字そのものより、赤字の理由を説明できるかが問われます。

役員貸付金と仮払金の残高と直近の試算表の有無を申込前に見直します
役員貸付金と仮払金の残高と直近の試算表の有無を申込前に見直します

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身でできるのは、決算書の3点を確認し、資料を揃えるところまでです。

  1. 直近2期の確定申告書と決算書の控えを用意する
  2. 貸借対照表の役員貸付金・仮払金の残高を確認する
  3. 経常利益に減価償却費を足し、減価償却前経常利益を出す
  4. 資産合計から負債合計を引き、純資産がプラスかを確認する
  5. 決算から月日が経っていれば、直近の試算表を用意する

ここから先は、会社ごとの事情で答えが変わる個別判断です。

役員貸付金をどう解消するかは、役員報酬の水準や社長個人の資金と関わります。

報酬の決め方は役員報酬の設計の記事で扱っています。

赤字の原因をどう説明するか、資金繰り表をどこまで作り込むかも、業種と資金使途で変わります。

設計は個社ごとに異なります。数字が固まる前にご相談ください。

決算書の確認と資料の準備までがご自身で、解消方法と説明の組み立ては個別判断です
決算書の確認と資料の準備までがご自身で、解消方法と説明の組み立ては個別判断です

税理士が入ると、決算書に「説明資料」と「直近の数字」が加わります

税理士が関わると、提出する資料の中身が変わります。やることは次のとおりです。

  • 月次の試算表を作成し、決算後の営業状況を示せるようにする
  • 公庫の様式に沿った資金繰り表を作成する
  • 減価償却前経常利益・純資産・役員貸付金の推移を一枚にまとめる
  • 赤字の原因と改善策を、決算書の数字と結びつけて文章にする
  • 役員貸付金や仮払金の解消を、決算前の処理と役員報酬の設計に反映する
  • 公庫・保証協会の提出書類一覧に沿って、必要資料を指示する

小松公認会計士・税理士事務所では、これらを決算業務の延長として行います。

補足

中小企業庁には早期経営改善計画策定支援があります。認定経営革新等支援機関(税理士など)の支援を受けて経営改善計画を策定する事業です。策定費用の2/3が補助されます(計画策定支援費用は上限50万円)。計画には損益計画と資金繰表(実績・計画)が含まれ、進捗を金融機関等に報告します。

決算書を作り変えるのではなく、あるがままの決算書に説明を添えるのが税理士の役割です。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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  • お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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よくある質問(FAQ)

Q1. 役員貸付金があると融資は受けられませんか?

公式にそう書かれたものはありません。公庫の経営者保証免除特例制度では、「事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないこと」が要件の一つです。保証免除の要件であり、融資可否の基準ではありません

Q2. 経常利益が赤字でも、特例の要件は満たせますか?

要件アは「減価償却前経常利益が2期連続して赤字でないこと」です。経常利益△50万円でも減価償却費80万円なら、減価償却前では+30万円です。イ(債務超過でないこと)との選択でもあります。

Q3. 決算から時間が経っている場合、何を出せばよいですか?

公庫は「試算表など営業の内容・状況が分かる資料」を挙げています。決算や申告を終えていない場合の案内ですが、直近の状況を示す試算表を用意しておくと、面談で説明しやすくなります。

Q4. 赤字決算だと信用保証協会の保証は受けられませんか?

全国信用保証協会連合会は「赤字だけを理由に保証をお断りすることはありません」と公表しています。赤字の原因や経営意欲・事業計画などを総合的に検討するとしています。ただし、審査の結果、希望に添えない場合もあると記されています。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。日本政策金融公庫 国民生活事業「経営者保証免除特例制度」「お手続きの流れ 創業予定の方」「よくあるご質問 個人・小規模企業の方」、全国信用保証協会連合会「信用保証のお申込の流れ」「よくあるご質問」、中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」の内容を扱っています。融資の金利や信用保証料の料率、民間金融機関の審査基準、自己資本比率などの財務指標の目安、役員貸付金の認定利息や給与課税の取扱い、経営者保証免除特例制度の要件3から7、中小企業事業の制度は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。融資の可否や条件を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

融資の申込前に、決算書をお見せください

役員貸付金の残高、減価償却前経常利益、純資産の状態は、決算を組む前なら返済や役員報酬の見直しを検討する時間があります。申込みの直前では、あるがままを説明するしかありません。代表税理士が決算書と直近の試算表を拝見し、金融機関に説明できる資料の形まで通して対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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