この記事のポイント
- 創業計画書は数字に根拠が書けているかで決まります
- 売上高は客単価×席数×回転数×日数のように要素に分けます
- 必要な資金と調達方法の合計は一致させ、見積書を添えます
- 利益から返済元金と税金が払えるかまで確かめます
まず結論:創業計画書は、数字に根拠が書けているかで決まります
創業計画書で最も見られるのは、数字の根拠です。
日本政策金融公庫の定義は「新たに事業を始める方に事業計画等をご記入いただくもの」です。
様式の注記には、面談にかかる時間を短縮するために利用すると書かれています。
売上高・経費・資金計画のそれぞれに「なぜその数字か」を書けるかが分かれ目です。
様式に代えて自作の計画書も提出できますが、10項目は公庫が聞きたいことの一覧です。

公庫の様式は10項目。前半が「人」、後半が「数字」です
様式は10項目で、前半は経営者ご自身、後半は数字の話です。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | どのような目的、動機で創業するか |
| 2 経営者の略歴等 | 担当業務や役職、身につけた技能、取得資格 |
| 3 取扱商品・サービス | 商品と売上シェア、強み、販売戦略、客単価・営業日数 |
| 4 従業員 | 3か月以上の継続雇用を予定する人数 |
| 5 取引先・取引関係等 | 販売先・仕入先・外注先、掛取引の割合、回収・支払の条件 |
| 6 関連企業 | 関連する企業があれば記入 |
| 7 お借入の状況 | 事業・住宅・車・教育・カードなどの借入 |
| 8 必要な資金と調達方法 | 設備資金・運転資金と、その調達先 |
| 9 事業の見通し(月平均) | 創業当初と1年後の売上高・原価・経費・利益と、その根拠 |
| 10 自由記述欄 | アピールポイント、悩み、希望するアドバイス |
前半の「人」と後半の「数字」がつながっているかが、計画書の説得力を決めます。
ポイント
記入例は業種別に9種が公開されています。近い業種を先に読むと、根拠の書き方が分かります。
売上高は「客単価×席数×回転数×日数」で組み立てます
売上高は、月の合計額から書き始めません。要素に分けて掛け算で示します。
公庫の「売上高等の計算方法」では、飲食店などは「客単価×設備単位数(席数)×回転数」です。
計算例
例1:記入例(洋風居酒屋)の創業当初の月商(日曜定休・25席)
昼(月〜土) 900円×25席×0.8回転×26日=468,000円(記入例は46万円) 夜(月〜木) 4,500円×25席×0.6回転×18日=1,215,000円(同121万円) 夜(金、土) 4,500円×25席×0.9回転×8日=810,000円(同81万円) 合計 46万円+121万円+81万円=248万円(記入例の売上高①と一致)公庫の記入例を再計算した、一定の前提を置いた目安です。
回転数0.8や0.6のような小さな数字にも、「勤務時の経験から」と根拠が添えられています。
1年後は「創業当初の1.3倍(勤務時の経験から)」で322万円です。248万円×1.3=322.4万円で合います。

経費と利益は、原価率・人件費・返済原資の順で確かめます
利益は、売上高から売上原価と経費を引いた残りです。この残りから税金と返済元金が出ていきます。
| 項目 | 創業当初(月平均) |
|---|---|
| 売上高① | 248万円 |
| 売上原価②(原価率35%) | 87万円 |
| 人件費 | 70万円 |
| 家賃 | 20万円 |
| 支払利息 | 2万円 |
| その他(光熱費、広告宣伝費等) | 50万円 |
| 経費合計③ | 142万円 |
| 利益①-②-③ | 19万円 |
売上原価は248万円×35%=86.8万円で、四捨五入して87万円です。原価率の根拠は「勤務時の経験から」です。
人件費は従業員1人20万円、専従者1人(妻)10万円です。
アルバイト2人は時給1,300円×12時間×26日=405,600円で、約40万円です。合計70万円です。
利益は248-87-142=19万円です。
記入例の欄外には「所得税等の税金や借入金の返済元金はここから支払われます」とあります。
支払利息は「借入金残高×金利(年利)÷12ヵ月」で月額を出します。
実際の利率は、公庫の金利情報ページで確認します。
個人営業の場合、人件費に事業主分は含めません。家族の分は含めます。
必要な資金と調達方法は、合計を必ず一致させます
「必要な資金」と「調達方法」の合計は一致させます。記入例の欄外にも「金額は一致します」とあります。
計算例
例2:記入例の資金計画
設備資金 店舗内外装工事500万円+厨房機器150万円+保証金200万円+什器・備品類120万円=970万円 必要な資金 設備資金970万円+運転資金290万円=1,260万円 調達方法 自己資金360万円+父からの借入200万円+公庫700万円+他の金融機関0円=1,260万円 自己資金の割合 360万円÷1,260万円=28.6%公庫の記入例を再計算した、一定の前提を置いた目安です。自己資金の割合は要件ではなく、記入例の内訳です。
設備資金は見積書を添付し、支払済みなら領収書や請求書を添付します。
什器・備品の税務上の扱いは購入額で変わります。30万円未満の備品の取扱いは別の記事で整理しています。

失敗パターンは「根拠のない数字」と「使途と調達の不一致」です
計画書が固まらない典型は、記入例から外れた根拠のない数字です。
公庫は、適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められる方を対象にしています。
注意
・売上高を月の合計だけ書き、客数・単価・日数の内訳がない
・原価率や回転数に根拠がない
・必要な資金の合計と調達方法の合計が合わない
・設備資金に見積書が付いていない
・創業予定地が未定のまま申し込む
創業予定地について、公庫は理由を明記しています。
創業予定地が未定ですと、資金計画が定まらず、収支計画においても立地条件等を踏まえた売上予測や経費予測が立てられないため、創業計画が固まらないことになります。(日本政策金融公庫 創業支援サイト「Q&A」)
まずは出店地を決定したうえで申し込む、というのが公庫の案内です。
個人で始める場合は、税務署への開業届の提出も並行して進めます。
認定経営革新等支援機関が関わると、使える利率区分があります
税理士などの認定支援機関の関与で、特別利率Aの対象になる区分があります。
認定経営革新等支援機関とは、中小企業等経営強化法に基づき国が認定する専門家です。
新規開業・スタートアップ支援資金の利率欄には、次の区分があります。
補足
次の3つをすべて満たす方が特別利率Aの対象です。
①「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している、または適用する予定
②自ら事業計画書の策定を行っている
③認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)による指導および助言を受けている
3つの要件がそろって初めて対象です。税理士に頼めば利率が下がる、という単純な話ではありません。
利率の数値は見直されるため、本記事には書きません。公庫の金利情報ページでご確認ください。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
様式の10項目を埋め、根拠のメモを添えるところまではご自身でできます。
- 業種に近い記入例を読み、売上高の算式を決める
- 設備の見積書を集め、必要な資金の内訳を作る
- 自己資金・親族・公庫の内訳で、調達方法の合計を必要な資金に合わせる
- 原価率・人件費・家賃・その他経費を月平均で置き、利益を出す
- 利益から返済元金と税金が払えるかを確かめる
ここから先は、業態と立地によって答えが変わる個別判断です。
回転数を0.8と置くか、原価率を35%と置くか、1年後を1.3倍としてよいか。経験と地域事情の裏づけが要ります。
税理士が入ると、計画書の数字が「後で説明できる数字」になります
税理士が関与すると、計画書の数字と、開業後の帳簿・申告がつながります。
小松公認会計士・税理士事務所では、創業計画書の作成で次の作業を行います。
- 客単価・回転数・日数を、勤務時の実績や地域事情と突き合わせる
- 原価率と人件費の置き方を確かめ、収支と資金計画の整合を検算する
- 設備資金の内訳を見積書と照合し、必要な資金と調達方法を一致させる
- 利益から返済元金と税金を払えるかを試算し、月別収支計画書に展開する
- 開業後に試算表を作り、計画との差を毎月確認できる形にする
計画の根拠を残しておくことが、次の融資や決算の説明にも生きます。
開業後の見直しは、決算前3か月の打ち手にまとめています。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 公庫の様式ではなく、自分で作った計画書でも提出できますか?
提出できます。様式の注記に「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」とあります。ただし様式の10項目は公庫が確認したい内容の一覧なので、同じ項目を網羅しておくと面談が進みやすくなります。
Q2. 売上高の根拠は、どう書けばよいですか?
業種に合う算式で分解します。飲食店・理容・美容などは「客単価×設備単位数(席数)×回転数」、店舗売りは「1㎡当たりの売上高×売場面積」です。記入例のように、回転数や原価率にも「勤務時の経験から」と根拠を添えます。
Q3. 必要な資金と調達方法の合計が合わないと、どうなりますか?
記入例の欄外に「金額は一致します」と明記されています。使途の合計と調達の合計がずれていると、資金計画が定まっていないことになります。設備資金は見積書、支払済みなら領収書・請求書を添えて金額を固めます。
Q4. 税理士に頼むと、金利が下がりますか?
単純にはなりません。特別利率Aの対象は、中小会計要領等を適用し、自ら事業計画書を策定し、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けている方です。3要件がそろって初めて対象で、利率の数値は公庫の金利情報ページでご確認ください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。日本政策金融公庫 国民生活事業「創業計画の書き方」、「創業計画書」様式、「創業計画書(記入例)(洋風居酒屋)」、「【参考】売上高等の計算方法について」、「新規開業・スタートアップ支援資金」制度概要、中小企業庁「認定経営革新等支援機関」の内容を扱っています。基準利率・特別利率の具体的な利率、融資の審査基準や面談の内容、信用保証協会の保証料率、都道府県や市区町村の制度融資の条件、創業計画書セルフチェックリストの項目、借入金や支払利息の税務処理は扱っていません。記事中の計算例は公庫の記入例を再計算したもので、一定の前提を置いた目安です。融資の可否や金額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 日本政策金融公庫 国民生活事業「創業計画の書き方」https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/
- 日本政策金融公庫「創業計画書(記入例)(洋風居酒屋)」https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei01_250401c.pdf
- 日本政策金融公庫「【参考】売上高等の計算方法について」https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei08_121115.pdf
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
- 中小企業庁「認定経営革新等支援機関」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/index.html
創業計画書は、数字の根拠を一緒に組み立てます
売上高の算式、原価率と人件費の置き方、必要な資金と調達方法の一致、利益から返済元金と税金が払えるかの確認。創業計画書は、どの数字にも「なぜその数字か」を添える必要があります。書き方に迷っている項目と、業種・立地・開業予定日をお知らせください。代表税理士が、記入例との照らし合わせから月別収支計画書への展開、開業後の試算表の作成まで通して対応します。
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