融資・資金調達

融資を受けた後の税務
借入金は収入にならず、利息と保証料の扱いが決算に効きます

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 借入金は返す義務のある負債で、益金にも収入金額にもなりません
  • 支払利息は損金・必要経費になり、消費税は非課税です
  • 信用保証料は前払費用として、保証期間に分けて費用にします
  • 返済した元金は費用にならず、税引後の利益から出ていきます

まず結論:借りたお金に税金はかかりません。効くのは利息と保証料の処理です

融資で口座に入った借入金は、法人の益金にも個人の収入金額にもなりません。

借入金は返す義務のある負債であって、もうけ(収益)ではないからです。

借りても所得は増えず、返しても所得は減りません。

決算に効くのは、次の3つの処理です。

①支払利息は、その期の損金・必要経費になります。

②信用保証料は、保証期間に分けて費用にします。

③返済した元金は、費用になりません。

項目法人税・所得税消費税
借入金の受入れ益金・収入金額にならない
支払利息損金・必要経費になる非課税
信用保証料前払費用として期間按分非課税
返済元金損金・必要経費にならない
借入金は返す義務のある負債であり益金にも収入金額にもなりません
借入金は返す義務のある負債であり益金にも収入金額にもなりません

借入金が益金にならない根拠は、法人税法22条2項の「収益の額」です

法人の益金は、取引から生じた「収益の額」に限られます。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。(法人税法22条2項)

借入れは、現金が増えると同時に、同じ額の負債が増える取引です。

会計上は収益ではなく、負債の増加として処理します。

22条4項は、収益の額を「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」で計算すると定めています。

したがって借入金は収益の額に当たらず、益金に算入されません。

注意

借入金を22条5項の「資本等取引」に当てはめて説明するのは、条文と合いません。資本等取引は資本金等の額の増減、利益や剰余金の分配、残余財産の分配に限られ、借入れは含まれません。益金にならない理由は、あくまで「収益ではない」ことです。

個人事業主も同じです。所得税法36条1項の収入金額は「その年において収入すべき金額」です。

借入金は返済義務を伴う金銭の受入れで、収入すべき金額には当たりません。

3月決算法人が令和8年10月1日に1,000万円を借りた仕訳は、次のとおりです。

(借)普通預金 1,000万円/(貸)長期借入金 1,000万円。益金はゼロです。

支払利息は、その期の損金・必要経費になります

借入金の利息は、法人では損金、個人では必要経費です。

法人税法22条3項2号は「販売費、一般管理費その他の費用」の額を損金と定めています。

所得税法37条1項も、業務について生じた費用を必要経費としています。

国税庁タックスアンサーNo.2210も、業務のための借入金の利息は必要経費になると示しています。

利息を損金にするには、期末までに債務が確定していることが要ります。

消費税では、貸付金の利子は非課税取引です(No.6201)。仕入税額控除の対象にはなりません。

計算例

例1:借入1,000万円・年利2.0%(仮置き)・7年・元金据置6か月・元金均等の毎月返済

据置期間中の月々の利息=1,000万円 × 2.0% ÷ 12 ≒ 16,667円 初年度6か月分の利息=1,000万円 × 2.0% × 6 ÷ 12 = 100,000円 据置後の月々の元金=1,000万円 ÷(84回 - 6回)≒ 128,205円 借入から12か月の利息合計=100,000円 + 据置後6か月分96,795円 = 196,795円

一定の前提を置いた目安です。金利は仮置きで、実際の利率は日本政策金融公庫の金利情報ページ等でご確認ください。

支払利息はその期の損金や必要経費になり消費税は非課税です
支払利息はその期の損金や必要経費になり消費税は非課税です

信用保証料は、保証期間に分けて費用にします

信用保証料は、支払った期に全額を損金にはできません。

保証付融資では、融資実行時に保証期間分の保証料を金融機関経由で支払います。

全国信用保証協会連合会は、保証料を「信用保証委託に応ずる対価」と説明しています。

税務では、この支払は前払費用に当たると考えられます。

前払費用とは、継続的に受ける役務の対価のうち、期末にまだ受けていない役務に対応する部分です。

国税庁No.5380は、前払費用を支出時に資産に計上し、役務を受けた時に損金にすると示しています。

保証料も、この原則に当てはめて保証期間で按分するのが自然な処理です。

1年以内に受ける役務の前払いは、継続適用を条件に支払時の損金にできます(法基通2-2-14)。

しかし、保証期間が1年を超える保証料は、この特例の対象になりません。

計算例

例2:保証期間84か月分の信用保証料350,000円(仮置き)を令和8年10月1日に一括払い

初年度(6か月分)の損金=350,000円 × 6 ÷ 84 = 25,000円 翌期以降の損金=350,000円 × 12 ÷ 84 = 50,000円/年 初年度末の前払費用=350,000円 - 25,000円 = 325,000円(資産に計上)

一定の前提を置いた目安です。保証料の料率は各信用保証協会の所定によります。

消費税では、信用保証料も非課税取引です(No.6201)。

返済した元金は損金になりません。利益があっても現金が残らない理由です

元金の返済は、費用ではありません。

令和9年4月から毎月128,205円を返す仕訳は、次のとおりです。

(借)長期借入金 128,205円/(貸)普通預金 128,205円。損金はゼロです。

利益が出ているのに現金が減っていく、という感覚の正体はここにあります。

日本政策金融公庫の創業計画書の記入例にも、利益の欄に次の注記があります。

「所得税等の税金や借入金の返済元金はここから支払われます。」

補助金は違います。返す必要がないお金なので、22条2項の「その他の取引」に係る収益の額として益金になります。

課税を先送りする処理は、補助金と圧縮記帳の記事にまとめています。

なお、所得税や住民税は必要経費になりません(No.2210)。

費用になる税金は、租税公課の損金算入の記事で確認できます。

返済した元金は損金にならず税引後の利益から支払われます
返済した元金は損金にならず税引後の利益から支払われます

決算で指摘を受けやすい3つの取り違え

実務で目にする間違いは、次の3つに集中します。

注意

①返済元金を経費に入れる
通帳の引落額をそのまま支払利息に計上すると、元金が費用に混ざります。利益が小さくなり、申告漏れの指摘につながります。
②信用保証料を支払った期に全額経費にする
保証期間が1年を超える分は前払費用です。翌期以降の分まで初年度で落とすと、その期の損金が過大になります。
③据置期間中の利息を資金繰りから落とす
元金の返済がない据置期間中も、利息は毎月出ていきます。例1なら月およそ16,667円です。

3つとも、帳簿の科目をひとつ取り違えるだけで起きます。

公庫の月別収支計画書は、支払利息を「借入金×年利率÷12ヵ月」で算出すると案内しています。

ここまではご自身で、ここからは個別判断です

ご自身でできるのは、資料を並べて金額を確かめるところまでです。

ポイント

用意していただきたいのは4点です。借入契約書、返済予定表、信用保証料の計算書か領収書、入出金のある通帳です。返済予定表で、毎月の引落額が元金と利息に分かれているかを見てください。

ここから先が個別判断です。

保証料をどの期間で按分するかは、保証期間と決算期の関係で変わります。

社長個人から会社が借りたお金は、公庫や銀行からの借入とは別の論点があります。

その扱いは役員貸付金と役員借入金の記事で確認できます。

同じ借入でも、決算期・保証期間・貸し手によって処理は変わります。

借入契約書と返済予定表と保証料の計算書と通帳を並べて金額を確かめます
借入契約書と返済予定表と保証料の計算書と通帳を並べて金額を確かめます

税理士が入ると何が変わるか

変わるのは、借入の3要素が帳簿と申告書に分かれて載ることです。

  1. 返済予定表から、毎月の引落額を元金と利息に分けて仕訳を組む
  2. 信用保証料を前払費用に計上し、決算で当期分だけを費用に振り替える
  3. 支払利息と信用保証料を、消費税の非課税仕入れに区分する
  4. 決算書の説明資料として、借入金の残高と年間返済額を一覧にする
  5. 月別の資金繰り表に、据置期間中の利息と据置後の返済元金を落とし込む

小松公認会計士・税理士事務所では、融資実行後の最初の決算で、この5つを確認しています。

借入の税務は、返済が終わるまで毎期一貫して処理してこそ意味があります。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 融資で受け取った1,000万円に、法人税や所得税はかかりますか?

かかりません。借入金は返す義務のある負債で、法人税法22条2項の「収益の額」にも、所得税法36条1項の「収入すべき金額」にも当たりません。益金・収入金額にならないため、所得は増えません。

Q2. 毎月の返済額は、全額を経費にしてよいですか?

できません。返済額のうち利息だけが損金・必要経費で、元金部分は負債の減少にすぎません。返済予定表で元金と利息を分け、利息のみを支払利息として計上します。

Q3. 信用保証料は、支払った年に全額経費にできますか?

保証期間が1年を超える場合は、原則として支払時に全額を損金にはできません。前払費用として資産に計上し、保証期間に応じて各期の費用にします(国税庁No.5380、法人税基本通達2-2-14)。

Q4. 支払利息や信用保証料に消費税はかかりますか?

かかりません。貸付金の利子と信用保証料は、消費税の非課税取引です(国税庁No.6201)。仕入税額控除の対象にならないため、帳簿では非課税仕入れとして区分します。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条(1項〜5項)、所得税法36条1項・37条1項、法人税基本通達2-2-14、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」、No.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」、No.6201「非課税となる取引」の内容を扱っています。支払利息が損金不算入となる特殊な制度、借入金の利息に係る源泉徴収、法人から役員への貸付けの認定利息、繰上返済した場合の未経過保証料の取扱い、金融機関ごとの金利や信用保証料の料率、自治体の制度融資の条件は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、金利・保証料はいずれも仮置きの一定の前提を置いた目安です。実際の税額や費用の額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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借入金・支払利息・信用保証料の処理は、初年度に型を決めるかどうかで翌期以降の手間と正確さが変わります。返済予定表と保証料の計算書をお持ちいただければ、元金と利息の区分、保証料の按分期間、消費税の区分までを一度に整理できます。代表税理士が借入の内容を伺い、決算書と資金繰り表への反映まで通して対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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