この記事のポイント
- 創業融資の入口は公庫と信用保証協会付き融資の2本柱です
- 公庫の中心は新規開業・スタートアップ支援資金。限度額7,200万円・据置5年以内
- 保証協会付きは三者の仕組みで、対価として信用保証料がかかります
- 自己資金は平均で2割程度。要件ではなく、計画全体がしっかりしているかが重要です
まず結論:創業融資は「公庫」と「保証協会付き」の2本柱です
これから開業する方の融資には、大きく2つの入口があります。
ひとつは日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資です。
もうひとつは、信用保証協会の保証を付けて民間の金融機関から借りる方法です。
都道府県や市区町村が実施する制度融資も、多くはこの保証付融資を使います。
自己資金は「重要な要素のひとつ」であって、何割なければ借りられないという要件ではありません。
公庫のQ&Aは、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要だと示しています。

公庫の創業融資は「新規開業・スタートアップ支援資金」が中心です
対象は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方です。
ただし「適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限られます。
| 項目 | 設備資金 | 運転資金 |
|---|---|---|
| 使いみち | 店舗、機械などの設備 | 人件費や仕入など |
| 融資限度額 | 7,200万円 | |
| 返済期間 | 20年以内 | 10年以内 |
| うち据置期間 | 5年以内 | 5年以内 |
据置期間とは、元金の返済を待ってもらう期間です。その間の支払は利息だけになります。
金利は、契約時の利率が最後まで適用される固定金利です。基準利率と特別利率の区分があります。
創業期の方は、創業支援貸付利率特例制度により利率が原則0.65%引き下げられます。
雇用の拡大を図る場合は0.9%です。利率の数値は公庫の金利情報ページで確認してください。
創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できます。担保の有無は希望を伺いながらの相談です。
個人と法人で申込みに大きな違いはなく、どちらが有利ということもありません。
法人成りのタイミングは、融資ではなく税の面から検討します。
ポイント
公庫の融資は事業資金が対象です。資本金の払い込みに使う資金は対象外で、法人で創業する場合は設立登記後の法人が融資の対象になります。
保証協会付き融資は、協会が「保証人」になって金融機関から借りる仕組みです
信用保証協会は公的機関で、事業者が事業資金を借りるときに保証人となって融資を受けやすくします。
当事者は、事業者・金融機関・信用保証協会の三者です。
万が一返済が滞ると、協会が借主に代わって金融機関に立て替え払いをします。
ただし立て替え払いの後は、事業者が協会へ返済します。借金がなくなるわけではありません。
保証を使う対価として、所定の信用保証料を払います。料率は経営状況に応じた9つの区分から適用されます。
保証料は融資実行時に金融機関経由で払い、これ以外の費用はかかりません。
創業時には「創業関連保証」があります。保証限度額は3,500万円です。
対象は、1か月以内に事業を開始する具体的な計画がある個人や、事業開始から5年未満の方などです。
連帯保証人は、法人代表者以外は原則不要です。個人事業主は原則として保証人は不要です。
補足
同じ金融機関からの融資でも、協会の保証が付かない融資があります。これをプロパー融資といいます。経営実績のない創業時に協会の保証を受けるには、創業計画書が必要です。

自己資金は要件ではなく、計画全体の一部として見られます
自己資金の目安は、公庫の調査で「創業資金総額に占める割合は平均で2割程度」です。
公庫の「創業の手引」では、調達総額に占める自己資金の割合は平均22.9%と示されています。
これは融資先の平均であって、「2割なければ申し込めない」という要件ではありません。
計算例
例1:創業資金の総額1,000万円に、公庫調査の平均を当てはめる
1,000万円 × 22.9% = 229万円一定の前提を置いた目安です。
注意
公庫は自己資金について「着実に蓄積すること」を重視しています。申込みの直前にまとめて入金した資金は、どこから来たお金かを説明できるようにしておく必要があります。
返済額は「据置期間」と「返済期間」で決まります
公庫の「売上高等の計算方法」は、1か月の支払利息を「借入金残高×金利(年利)÷12ヵ月」で求めます。
計算例
例2:借入1,000万円・返済期間7年(84回)・元金据置6か月・元金均等・毎月返済
据置後の月々の元金=1,000万円 ÷(84回 - 6回)= 128,205円 初回の利息=1,000万円 × 2.0% ÷ 12 = 16,667円 据置期間中の支払=利息16,667円のみ 据置後の初回の支払=128,205円 + 16,667円 = 144,872円一定の前提を置いた目安です。年利2.0%は仮置きで、実際の利率は公庫の金利情報ページを参照してください。
据置期間中は利息だけの支払で済みますが、据置が終わると元金分が一気に乗ります。
店舗や機械を買う場合は、設備投資と消費税の課税事業者の選択も先に決めます。

どちらを選ぶかは、窓口・費用・保証人の3点で比べます
| 比較点 | 日本政策金融公庫 | 信用保証協会付き融資 |
|---|---|---|
| 申込窓口 | 公庫の支店(個人は創業予定地、法人は本店所在地の管轄支店) | 金融機関・協会・自治体や商工団体など |
| かかる費用 | 利息 | 利息+信用保証料 |
| 金利 | 固定金利。創業期は0.65%引下げ | 融資する金融機関が決めます |
| 保証人 | 創業期は原則として無担保・無保証人 | 法人代表者以外は原則不要。個人事業主は原則不要 |
| 創業時の限度額 | 7,200万円 | 3,500万円(創業関連保証) |
保証協会付きは保証料がかかる分、その費用を含めた総負担で比べる必要があります。
公庫は申込みから融資まで平均3週間程度です。
うまくいかない典型は「計画が固まっていない」「対象外の資金を混ぜる」です
公庫は「審査の結果、お客さまのご希望に沿えないことがございます」と明記しています。
否決や減額の理由は公式には示されていませんが、公式ページから逆算できる要点はあります。
対象は「適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限られます。
次の状態は、この要件を示しにくくなります。
- 計画の数字に根拠がない:売上や経費の見込みの根拠を説明できない
- 資本金を融資でまかなおうとする:資本金の払い込みに使う資金は対象外です
- 自己資金の経緯を示せない:公庫は「着実に蓄積」を重視しています
- 申込窓口を間違える:個人は創業予定地、法人は本店所在地を管轄する支店です
計画の中身を自分の言葉で説明できる状態にすることが出発点です。

ここまではご自身で、ここからは個別判断です
ご自身でできるのは、次の4点をそろえるところまでです。
- 必要な資金を、設備資金と運転資金に分けて金額の根拠とあわせて書き出す
- 自己資金の額と、その蓄積の経緯が分かる通帳を用意する
- 公庫の創業計画書の様式をダウンロードし、書ける欄を埋める
- 創業予定地の自治体のホームページで、制度融資の有無を調べる
ここから先は個別判断です。
どちらの入口を先にするか、いくら借りるか、据置を何か月にするかは事業の資金繰りで変わります。
手続そのものは開業の届出で整理しています。融資の準備と並行して進めます。
税理士が入ると変わるのは、計画の数字の裏づけと制度の使い分けです
ひとつめは、計画の数字の裏づけです。売上・原価・経費・返済額を月ごとに組み、根拠を示せる形にします。
ふたつめは、据置期間と返済期間の設計です。元金返済が始まる月に手元資金が足りるかを試算します。
みっつめは、必要資料の指示です。自己資金の経緯、設備の見積り、法人なら登記事項証明書を申込前にそろえます。
よっつめは、利率区分の確認です。
中小企業の会計に関する基本要領などを適用し、自ら事業計画書を策定する方が対象です。
そのうえで認定経営革新等支援機関(税理士など)の指導・助言を受けている方は、特別利率Aになります。
税理士に頼めば利率が下がる、という単純な話ではなく、3つの要件をそろえる必要があります。
小松公認会計士・税理士事務所では、創業計画の数字づくりから融資後の記帳・申告までを続けて担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 自己資金がほとんどなくても創業融資は申し込めますか?
公庫は「自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要」と示しています。融資先の平均は2割程度ですが、これは要件ではありません。計画全体で判断されます。
Q2. 日本政策金融公庫と信用保証協会付き融資は何が違いますか?
公庫は公庫自身が貸します。保証協会付きは金融機関が貸し、協会が保証人になる三者の仕組みで、対価として信用保証料がかかります。申込窓口も、公庫の支店か金融機関・協会・自治体かで異なります。
Q3. 法人を設立してから申し込むべきですか、個人でもよいですか?
公庫のQ&Aでは、個人と法人で大きな違いはなく、どちらが有利ということもありません。法人の場合は設立登記後の法人が融資の対象で、資本金の払い込みに使う資金は対象外です。
Q4. 据置期間とは何ですか?
元金の返済を待ってもらう期間で、新規開業・スタートアップ支援資金では5年以内で設定できます。据置中の支払は利息だけです。据置が終わると元金分が加わるため、売上の立ち上がり時期と合わせて決めます。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。日本政策金融公庫 国民生活事業の「創業融資のご案内」「新規開業・スタートアップ支援資金」「創業支援貸付利率特例制度」「創業Q&A」「創業の手引」、全国信用保証協会連合会の「信用保証協会と信用保証制度」「初めての融資と信用保証」「信用保証料」「創業をお考えの方」「信用保証のお申込の流れ」の内容を扱っています。具体的な金利の数値、信用保証料の料率、自治体ごとの制度融資の内容(利子補給や保証料補助の有無・金額)、公庫の中小企業事業向けの制度、審査の基準や否決・減額の理由、経営者保証免除特例制度の要件の細目、借入金の利息や保証料の税務上の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の返済額や融資の可否を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
- 日本政策金融公庫 創業支援サイト「Q&A」https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/faq/
- 日本政策金融公庫「創業の手引」https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_tebiki202605.pdf
- 全国信用保証協会連合会「初めての融資と信用保証」https://www.zenshinhoren.or.jp/basic/
- 全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/sogyo/
創業計画の数字は、申し込む前に一緒に組み立てましょう
公庫と保証協会付きのどちらを先にするか、いくら借りて据置を何か月にするかは、開業する事業の資金繰りで答えが変わります。自己資金の経緯の示し方、設備資金と運転資金の分け方、利率区分の要件をそろえられるかは、申し込む前に整理しておくと手戻りがありません。代表税理士が創業計画の数字づくりから伺い、融資後の記帳・申告まで通して対応します。
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