この記事のポイント
- 試験研究費は経費になるうえ、法人税額からも直接引けます(税額控除)
- 中小企業者等の控除率は12パーセント、増え方によって最大17パーセントです
- 控除できるのは法人税額の25パーセントまで。上乗せで最大35パーセントになります
- 申告書に書かなければ使えません。後からの遡りはできません
まず結論:試験研究費は、経費にしたうえで法人税からも引けます
新しい製品や技術の開発にかけた費用は、経費になるだけではありません。
その費用の一定割合を、法人税の額そのものから差し引くことができます。
これを税額控除といいます。所得を減らすのではなく、計算し終わった税額から引く仕組みです。
制度は2つに分かれています。中小企業者等が使うのが「中小企業技術基盤強化税制」です。
それ以外の法人が使うのが「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」です。
根拠は国税庁タックスアンサーNo.5444とNo.5442、租税特別措置法42条の4です。
| 項目 | 中小企業技術基盤強化税制 | 一般試験研究費の税額控除 |
|---|---|---|
| 使える法人 | 青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等 | 青色申告書を提出する法人 |
| 控除率 | 12パーセント(増減試験研究費割合が12パーセント超なら上乗せ・上限17パーセント) | 8.5〜14パーセント(増減試験研究費割合で変動) |
| 控除の上限 | 原則として調整前法人税額の25パーセント(一定の場合に上乗せ) | |
2つの制度を同じ事業年度に重ねて使うことはできません。どちらか一方を選びます。

「試験研究費」に当たるのはどんな費用か
対象になるのは、新しい知見を得るために行う試験研究の費用です。
国税庁は、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のための費用と定めています。
そのうえで、具体的に次のものを挙げています。
ポイント
対象は①原材料費、②人件費、③経費、④他の者に委託した場合にその委託先へ支払う費用、⑤技術研究組合法9条1項により賦課される費用です。いずれも売上原価等の原価の額は除かれます。
白衣を着た研究職だけの話ではありません。
対価を得て提供する新たな役務の開発(新サービス研究)も対象に含まれます。
これは、大量の情報を分析して法則を見つけ、それを使った新しいサービスを設計する取組みです。
設計したサービスが妥当だと確認するところまで、すべてが行われる場合に対象になります。
注意
人件費は誰の分でもよいわけではありません。専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限られます。社長が片手間に関わっただけの分は入りません。従事の記録を残すことが前提になります。
また、補助金などその費用に充てるため他の者から受け取る金額があるときは、その分を控除します。
新サービス研究のほうは、要件が細かく定められています。
情報解析専門家が、専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエアを使って分析すること。
その分析で見つけた法則を使って、新しいサービスを設計すること。
見つけた法則が予測と結果の一致度が高いなど妥当であると確認すること。
この3つがすべて行われる場合に、はじめて対象になります。
情報解析専門家とは、確率論および統計学に関する知識と情報処理の知識を有すると認められる者をいいます。
分析に使う情報にも決まりがあります。
大量の情報を収集する機能を持ち、その機能の全部または主要な部分が自動化されている機器・技術で集めた情報。
または、自社が持つ情報で、法則の発見が十分見込まれる量のもの。このいずれかです。
いくら引けるか ― 12パーセントと、法人税額の25パーセント
控除できる金額は、控除限度額と上限額の小さい方です。
中小企業者等の控除率は原則12パーセントです。
試験研究費が前より大きく増えた年は、控除率が上がります。
具体的には、増減試験研究費割合が12パーセントを超えると、超えた分の0.375倍が加算されます(上限17パーセント)。
増減試験研究費割合とは、過去3年の平均額と比べてどれだけ増えたかの割合です。
計算例
例1:試験研究費1,000万円・調整前法人税額400万円・試験研究費が前と同水準の場合
控除限度額=1,000万円 × 12% = 120万円 上限額=400万円 × 25% = 100万円 実際に引ける額=100万円(小さい方)例2:同じ条件で、増減試験研究費割合が20パーセントの場合
控除率=12% + (20% - 12%)× 0.375 = 15% 控除限度額=1,000万円 × 15% = 150万円 上限額=400万円 × 25% + 400万円 × 10% = 140万円 実際に引ける額=140万円増減試験研究費割合が12パーセントを超える事業年度は、上限が10パーセント分上乗せされます。
試験研究費割合が10パーセントを超える年にも上乗せがありますが、この2つは重ねて使えません。
上の例では、税額から140万円が消えます。開発にかけた1,000万円は、別に経費になっています。

使うには「中小企業者」に当たることが前提です
中小企業技術基盤強化税制は、中小企業者または農業協同組合等だけが使えます。
中小企業者は、原則として資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人です。
ただし、大きな会社に株を持たれていると外れます。
注意
発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人、または3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人は中小企業者から除かれます。加えて、過去3年の所得金額の年平均額が15億円を超える適用除外事業者も対象外です。
資本または出資を有しない法人は、常時使用する従業員1,000人以下であれば中小企業者に当たります。
資本金1億円超の会社は、一般試験研究費の税額控除のほうを検討することになります。

申告書に書かなければ使えません
この制度は、申告書への記載が適用の条件です。
控除の対象となる試験研究費の額と控除を受ける金額を確定申告書等に記載し、計算明細書を添付する必要があります。
決算が終わってから「あの開発費が対象だった」と気づいても、遡って使うことはできません。
だから、期中のうちに対象になる費用を拾い出して、区分しておく必要があります。
補足
適用できない事業年度も定められています。解散(合併による解散を除きます)の日を含む事業年度と清算中の各事業年度は対象外です。また、一般試験研究費の税額控除の適用を受ける事業年度も対象外になります。
もう一つ、減価償却資産の取得価額に試験研究費が含まれている場合の注意があります。
その試験研究費について税額控除を受けたときは、その資産について他の特別償却や他の税額控除を重ねて使えません。

当事務所での進め方
まず、決算を締める前に対象になりそうな費用を洗い出します。
試作品の材料費、開発に専ら従事している社員の給与、外部への開発委託費が典型です。
次に、過去3年の試験研究費を集計し、増減試験研究費割合と控除率を確定させます。
そのうえで、調整前法人税額の25パーセントという上限に当たるかどうかを見ます。
上限に当たる年は、開発費の支出時期そのものをご相談いただくこともあります。
最後に、明細書を作成して申告書に添付します。ここまでが一続きの作業です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 研究所がない会社でも使えますか?
使えます。制度は組織の形を条件にしていません。製品の製造や技術の改良・考案・発明のための試験研究の費用があるかどうかで判定します。対価を得て提供する新たな役務の開発(新サービス研究)も対象です。
Q2. 開発を外部に委託した費用も対象になりますか?
対象になります。他の者に委託をして試験研究を行う法人が、その委託を受けた者に対して支払う費用が試験研究費に含まれると定められています(国税庁タックスアンサーNo.5444)。
Q3. 補助金を受けて開発した場合はどうなりますか?
その費用に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した後の額が試験研究費になります。補助金分を含めたまま計算することはできません。
Q4. 決算後に対象費用に気づきました。今から使えますか?
使えません。控除の対象となる試験研究費の額と控除を受ける金額を確定申告書等に記載し、明細書を添付して申告することが適用の条件だからです。期中の区分経理が前提になります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサーNo.5441「研究開発税制について(概要)」、No.5442「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」、No.5444「中小企業技術基盤強化税制」の内容(令和7年4月1日現在法令等)を扱っています。特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型・No.5443)の細目、試験研究費割合が10パーセントを超える場合の控除割増率の詳細な当てはめ、一般試験研究費の税額控除における中小企業者等以外の法人に適用される特定の税額控除の不適用要件の細目、通算法人・グループ通算制度における取扱い、法人事業税・地方法人税への影響、補助金の収益計上時期は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、実際の税額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5444「中小企業技術基盤強化税制」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5444.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5442「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5442.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5441「研究開発税制について(概要)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5441.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5443「特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5443.htm
- e-Gov法令検索 租税特別措置法https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
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研究開発税制は、申告書に書いて初めて使える制度です。決算が終わってから気づいても遡れません。どの費用が試験研究費に当たるか、人件費をどこまで入れられるか、上限に当たらないかは、期中に整理しておくほど有利になります。代表税理士が御社の開発の中身を伺い、対象費用の拾い出しから明細書の作成まで通して対応します。
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