不動産譲渡所得

買換え特例で安い家に住み替えたら税金がかかります
売った金額との差額に課税される仕組み

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 買換え特例は非課税ではなく、課税の繰延べです
  • 売った金額より安い家に買い換えると、差額に課税されます
  • 国税庁の例では、1億円で売って7,000万円で買うと譲渡所得2,550万円
  • 3,000万円特別控除・軽減税率とは重ねて使えません

まず結論:買換え特例は「非課税」ではありません

「買換え特例を使ったので、税金はかからないと思っていました」。売却後にこう伺うことがあります。

買換え特例は、譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度であって、税金が消える制度ではありません。国税庁も「譲渡益が非課税となるわけではありません」と明記しています(タックスアンサーNo.3355)。

そして、繰延べが全額に及ぶのは売った金額以上の家に買い換えた場合だけです。

注意

子どもが独立して家が広すぎるので小さい家へ、駅近のコンパクトなマンションへ。こうした「住み替えで支出が減る」ケースこそ、その年に税金が出ます。

売った金額より安く買い換えると、その年に税金が出ます
売った金額より安く買い換えると、その年に税金が出ます

差額に課税される仕組み

国税庁は、売った金額より買い換えた金額が少ないときの計算を、次の3段階で示しています(タックスアンサーNo.3358・租税特別措置法36条の2、同施行令24条の2)。

「収入金額」の計算
売った金額-買い換えた金額

「必要経費」の計算
(売ったマイホームの取得費+譲渡費用)×(収入金額÷売った金額)

「譲渡所得」の計算
収入金額-必要経費

ポイントは2つです。差額そのものが収入金額になることと、取得費・譲渡費用は全額ではなく按分した分しか引けないことです。

逆に、売った金額以上の家に買い換えたときは収入金額が生じません。国税庁も、その場合は「売った年については譲渡所得がなかったものとされます」と説明しています。差が出るのは、住み替えで金額が下がったときだけです。

差が出るのは、住み替えで金額が下がったときだけです
差が出るのは、住み替えで金額が下がったときだけです

国税庁の具体例で確かめます

タックスアンサーNo.3358が挙げている例です。売った金額1億円、買い換えた金額7,000万円、売ったマイホームの取得費1,000万円、売るためにかかった費用500万円とします。

計算例

(1)収入金額

1億円-7,000万円=3,000万円

(2)必要経費

(1,000万円+500万円)×(3,000万円÷1億円)=450万円

(3)譲渡所得

3,000万円-450万円=2,550万円

3,000万円安く買い換えただけで、2,550万円の譲渡所得が出ます。取得費と譲渡費用の合計1,500万円のうち、引けるのは450万円だけです。

取得費・譲渡費用は全額ではなく、按分した分しか引けません
取得費・譲渡費用は全額ではなく、按分した分しか引けません

税額はいくらになるか

上の例で、長期譲渡所得として一般の税率(所得税15%・復興特別所得税は所得税額の2.1%・住民税5%)が適用されるものとして計算します。

項目買換え特例を使う場合3,000万円特別控除+軽減税率を使う場合
課税される譲渡所得25,500,000円55,000,000円
所得税3,825,000円5,500,000円
復興特別所得税80,325円115,500円
住民税1,275,000円2,200,000円
合計5,180,325円7,815,500円

この前提では買換え特例のほうが2,635,175円少なくなりました。ただし、これは税金が安くなったのではありません。

ポイント

買換え特例を使うと、買った家の取得費は前の家から引き継ぎます。次に売るときに、繰り延べた利益がまとめて出てきます。考え方は買換えの特例で買った家を売るときの取得費で整理しています。

右の欄は一定の前提を置いた目安です。3,000万円特別控除・軽減税率の要件を満たすかどうかは別途の判定になります。

重ねて使えない特例があります

国税庁は、買換え特例の適用を受ける場合、3,000万円の特別控除の特例や軽減税率の特例を重ねて受けることはできないとしています(相続した空き家についての特別控除を除きます)。

つまり、住み替えのときはどちらか一方を選ぶことになります。売る前に両方で試算しておかないと、選び直しはできません。

要件と有利判定の全体像はマイホームの買換え特例と3,000万円控除はどちらが有利かで扱っています。

補足

買換え特例には、居住期間10年以上・所有期間10年超・売却代金1億円以下といった要件があります。そもそも要件を満たさなければ、この記事の計算は不要です。まず要件、次に有利判定、という順で確認してください。

売る前に両方で試算しておかないと、選び直しはできません
売る前に両方で試算しておかないと、選び直しはできません

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

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よくある質問(FAQ)

Q1. 買換え特例を使えば、売った年の税金はゼロになりますか?

売った金額以下の家に買い換えた場合は、その差額に対して譲渡所得が生じます。ゼロになるのは、売った金額以上の家に買い換えた場合です。

Q2. 取得費と譲渡費用は全額引けますか?

引けません。(取得費+譲渡費用)×(収入金額÷売った金額)で按分した金額が必要経費になります(国税庁タックスアンサーNo.3358)。

Q3. 買換え特例と3,000万円特別控除は両方使えますか?

重ねて受けることはできません。軽減税率の特例も同様です。売る前にどちらが有利かを試算して選ぶ必要があります。

Q4. 買換え特例のほうが税額が少なければ、必ず有利ですか?

その年の税額は少なくなりますが、繰り延べた利益は次に売るときに出てきます。買った家の取得費は前の家から引き継ぐためです。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法36条の2、同施行令24条の2、国税庁タックスアンサーNo.3358・No.3355の範囲を扱っています。買換え特例の適用要件と適用期限の詳細、買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算、居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、住宅ローン控除との関係、事業用資産の買換えの特例、確定申告の添付書類は扱っていません。本記事の税額の計算は、長期譲渡所得として一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。所有期間、適用できる特例、他の所得の状況により結論は変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

住み替えは、売る前に試算しておくと選べます

買換え特例と3,000万円特別控除は、どちらか一方しか使えません。売買契約を結んだあとでは選び直せないため、売却の条件が固まった段階でのご相談をおすすめします。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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