法人税・節税

社宅で役員報酬を見直す
賃貸料相当額の計算と、給与課税されない3つの条件

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 役員から賃貸料相当額を受け取れば給与課税されない(国税庁No.2600)
  • 小規模住宅は耐用年数30年以下なら132平方メートル以下、30年超は99平方メートル以下
  • 🔴 現金の住宅手当や役員本人が直接契約する家賃負担は給与として課税される
  • 床面積240平方メートル超などの豪華社宅は算式が使えない

まず結論:社宅なら「家賃の差額」が給与になりません

会社が負担した家賃のうち、賃貸料相当額(ちんたいりょうそうとうがく)を超える部分は、役員の給与になりません。

役員報酬を月20万円増やして家賃を払えば、その20万円は給与として課税されます。一方、社宅として貸し、役員から賃貸料相当額を受け取っていれば、差額は給与として課税されません

注意

「家賃をタダにできる制度」ではありません。受け取るべき賃貸料相当額は算式で決まっており、下回れば差額が給与になります。

社宅として借り上げたマンション
社宅は要件を満たせば給与として課税されません

給与課税されないための3つの条件

国税庁タックスアンサーNo.2600は、給与として課税される場合を3つ挙げています。

国税庁が示す課税される場合満たすべき条件
役員に無償で貸与する場合 → 課税① 賃貸料相当額を受け取っていること
賃貸料相当額より低い家賃を受け取る場合 → 差額が課税② 受け取る額が賃貸料相当額を下回らないこと
現金支給の住宅手当入居者が直接契約する家賃負担 → 社宅と認められず課税③ 会社が契約当事者となり家主に支払っていること

実務でいちばん多い誤りは③です。契約の名義を会社に変更し、会社が家主へ支払う——この形が出発点です。

賃貸料相当額の計算:まず「小規模な住宅」かを判定します

賃貸料相当額は、社宅の床面積によって「小規模な住宅」と「それ以外の住宅」に分けて計算します。

建物の法定耐用年数小規模な住宅となる床面積
30年以下132平方メートル以下
30年を超える99平方メートル以下

区分所有の建物では、共用部分の床面積をあん分して専用部分に加えたところで判定します。鉄筋コンクリート造は30年を超えるため基準は99平方メートル、木造は30年以下のため基準は132平方メートルです。

小規模な住宅の場合:3つの算式の合計額

次の(1)から(3)までの合計額が、1か月当たりの賃貸料相当額になります。

算式
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2パーセント
(2)12円 ×(その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3平方メートル)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22パーセント

計算例

鉄筋コンクリート造(法定耐用年数30年超)・床面積70平方メートルの分譲マンションを、会社が月20万円で借りて役員に貸すケースです。建物の固定資産税の課税標準額を800万円、敷地の固定資産税の課税標準額を1,200万円と仮定します。

項目計算金額
(1)建物800万円 × 0.2%16,000円
(2)床面積12円 ×(70 ÷ 3.3)254円
(3)敷地1,200万円 × 0.22%26,400円
賃貸料相当額(1)+(2)+(3)42,654円/月

役員から毎月42,654円を受け取っていれば、会社が負担している差額157,346円に給与課税は生じません。年間では約188万円が、役員の給与にならずに会社の費用になる計算です。

注意

上記の課税標準額は説明のための仮定です。実際は固定資産税の課税明細書や市区町村発行の証明書で確認してください。他から借り受けた物件は貸主等への確認が必要です。

賃貸料相当額の計算
「賃貸料相当額」をきちんと徴収することがポイントです

小規模な住宅でない場合

小規模な住宅に当たらない場合は、自社所有か、他から借り受けたものかで計算方法が変わります。

(1)自社所有の社宅の場合

次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。

  • イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 12パーセント ※法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく10パーセントを乗じます
  • ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 6パーセント

計算例

建物の課税標準額3,000万円・敷地4,000万円・法定耐用年数30年超の場合

(3,000万円 × 10% + 4,000万円 × 6%)÷ 12 = 45万円/月

(2)他から借り受けた住宅等を貸与する場合

会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上記(1)の算式で算出した金額とのいずれか多い金額になります。

いわゆる豪華社宅は算式の適用がありません

世間一般の社宅とはいえない、いわゆる「豪華社宅」の場合は、これまでの算式は使えません。通常支払うべき使用料に相当する額が、そのまま賃貸料相当額になります。

  • 床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額・支払賃貸料・内外装の状況等を総合勘案して判定する
  • 床面積が240平方メートル以下でも、一般の住宅にはないプール等の設備役員個人のし好を著しく反映した設備等があれば、いわゆる豪華社宅に該当する

床面積だけの基準ではない点にご注意ください。

使用人(従業員)の場合は基準がゆるやかです

従業員(使用人)に社宅や寮を貸す場合は、基準がゆるやかです。従業員から1か月当たり賃貸料相当額の50パーセント以上を受け取っていれば、給与として課税されません(国税庁タックスアンサーNo.2597)。賃貸料相当額は小規模な住宅と同じ3つの算式の合計額になります。

役員(No.2600)使用人(No.2597)
受け取るべき額賃貸料相当額の全額賃貸料相当額の50パーセント以上
小規模でない住宅の扱い別の算式(12%・10%・6%/家賃の50%と比較)床面積による区分なし(3つの算式の合計額)
豪華社宅の除外あり規定なし

使用人兼務役員の場合や、年の途中で役員に就任した場合は、いつの分から役員の基準で計算するかを確認する必要があります。

実務で崩れやすい4つのポイント

1. 社宅規程がない

誰に、どの水準の住宅を、いくらの負担で貸すのか。規程がないと「特定の役員だけへの利益ではないか」という疑問に答えにくくなります。

2. 固定資産税の課税標準額を確認していない

他から借り受けた物件では貸主などへの確認が必要です。「家賃の10パーセント程度」といった概算で運用していると、金額の根拠を示せません。

3. 役員負担分を実際に受け取っていない

規程で決めていても、給与から差し引く等の事実がなければ「受け取っている」ことになりません。毎月の給与計算に反映されているかをご確認ください。

4. 会社契約への切替えを忘れている

役員個人の契約のまま会社が家賃を払うと、社宅の貸与とは認められません。名義を会社に変えられるか、導入前に確認しておきましょう。

役員会議
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役員社宅について小松公認会計士・税理士事務所ができること

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よくある質問(FAQ)

Q1. 役員に住宅手当を月10万円支給する場合と、社宅にする場合とで何が違いますか?

現金支給の住宅手当は社宅の貸与と認められず、全額が給与として課税されます。社宅なら、賃貸料相当額を受け取っていれば差額に給与課税は生じません。

Q2. 賃貸料相当額はどうやって調べればよいですか?

建物と敷地それぞれの固定資産税の課税標準額が必要です。自社所有は課税明細書、借り受け物件は貸主等に確認します。

Q3. 床面積200平方メートルのマンションは社宅にできますか?

できます。ただし小規模な住宅には当たらず、賃貸料相当額は別の算式で計算します。借り受けなら家賃の50パーセントと自社所有算式の多い方です。240平方メートル以下でも設備次第で豪華社宅に当たることがあります。

Q4. 従業員の社宅も同じ計算になりますか?

算式は同じ3つの合計額です。ただし従業員は賃貸料相当額の50パーセント以上を受け取れば給与として課税されません。使用人兼務役員の取扱いはあらかじめご確認ください。

免責事項

本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料(国税庁タックスアンサーNo.2600・No.2597はいずれも令和7年4月1日現在法令等)に基づく一般的な解説です。記事中の計算例で用いた固定資産税の課税標準額および家賃は、計算方法を示すための仮定であり、実在の物件の数値ではありません。実際の賃貸料相当額は物件ごとに異なりますので、必ず固定資産税の課税明細書等でご確認ください。いわゆる豪華社宅に該当するかどうかは各種の要素を総合勘案して判定されるため、本記事では床面積以外の具体的な基準は示していません。個別の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

社宅は「導入前」に設計しないと、後から直せません

社宅は、契約者・支払者・役員負担額のどれか一つがずれるだけで、全額が給与課税になることがあります。すでに個人契約で住んでいる物件を会社契約に切り替えられるかを含め、導入前の段階でご相談ください。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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