法人税・節税

社用車の売却・下取りの税金
売却損益と消費税、自動車税の未経過分の扱い

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 売却損益は売った値段-帳簿価額。売った月までの償却費を入れても、その期の所得は同じです
  • 下取りは古い車の売却と新しい車の購入の2つの取引です。値引きと相殺しません
  • 自動車税・自賠責の未経過分は車の代金の一部で消費税の対象。リサイクル預託金は非課税です
  • 社長に安く売ると時価との差額が役員給与に。消費税は原則、時価のおおむね50%未満で時価課税

まず結論:売却損益は帳簿価額との差、下取りは売却と購入の2つの取引です

社用車を売ると、売った値段と帳簿価額の差が売却損益になります。

帳簿価額は、取得価額から償却した額を引いた、帳簿に残る金額です。

新しい車を買うときの下取りも、税務では古い車を売る取引です。

下取り価格を値引きと相殺せず、売却と購入に分けて記帳します。

下取りに出す車も、会社が売った資産です
下取りに出す車も、会社が売った資産です

売却損益は、売った値段から帳簿価額を引いて計算します

売却益は益金(税の計算上の収入)です(法人税法22条2項)。

売却損は損金(税の計算上の費用)です(同条3項)。

収益の計上は、原則として車を引き渡した日の事業年度です(法人税基本通達2-1-14)。

国税庁は、期中に売った資産の売却時までの減価分の計上を否定していません。

売った月までの償却費を計上してもしなくても、その期の所得は同じです。

計算例

例:3月決算で、期首の帳簿価額1,500,000円の車を9月に1,300,000円で売る

償却費(年480,000円と仮定)の6か月分 480,000円 × 6/12 = 240,000円 計上する 売却益 1,300,000円 -(1,500,000円 - 240,000円)= 40,000円 所得への影響 -240,000円 + 40,000円 = -200,000円 計上しない 売却損益 1,300,000円 - 1,500,000円 = -200,000円

金額は消費税を除いた、一定の前提を置いた目安です。

下取りは「古い車の売却」と「新しい車の購入」に分けます

国税庁は、下取りを販売会社の側から次のように説明しています。

下取りを伴う取引については、課税資産の譲渡等と課税仕入れの2つの取引が同時に行われていますので、それぞれ別個の取引として取り扱うことになります。

(国税庁 タックスアンサー No.6305)

法人の取引は、すべて「事業として」行うものです(消費税法基本通達5-1-1注2)。

そのため、課税事業者なら下取り価格も消費税がかかる売上げです。

新しい車の取得価額は、購入の代価が基礎です(法人税法施行令54条1項1号)。

下取り価格を差し引いた支払額を、取得価額にはしません。

計算例

例:買う車4,000,000円、下取り1,000,000円、古い車の帳簿価額600,000円(税抜)

分ける 取得価額4,000,000円/売却益 1,000,000円 - 600,000円 = 400,000円 相殺する 取得価額3,000,000円/売却益は記帳されない 簡易課税なら消費税(地方消費税を含む) 1,000,000円 × 10% ×(1 - 60%)= 約40,000円

簡易課税は、仕入れの消費税をみなし仕入率で計算する方法です。

使っていた車の売却は第四種事業です(消費税法基本通達13-2-9)。

そのみなし仕入率は60%です(タックスアンサーNo.6505)。

相殺すると、この売上げが申告から抜けます。金額は一定の前提を置いた目安です。

買い替える車が中古車なら、中古の社用車の耐用年数の記事もご覧ください。

見積書の内訳を分けて確かめます
見積書の内訳を分けて確かめます

自動車税と自賠責の未経過分は車の代金、リサイクル預託金は別です

買い手から受け取る自動車税と自賠責の未経過分は、車の代金の一部です。

自動車税は、4月1日の持ち主にかかる税です(地方税法146条・155条)。

年度の途中で売っても、その年度の分は原則として売り手にかかります(同法157条4項)。

国税庁の説明は、次のとおりです。

買主が支払う自動車税の未経過期間に対応する金額は、自動車税そのものとして都道府県に対して支払うものではなく、当該未経過の期間内に継続して乗用できる中古車の購入代金の一部として支払うものです。

(国税庁 質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」)

区分して表示しても、消費税がかかる車の代金に含まれます(消費税法基本通達10-1-6)。

自賠責保険料の未経過分も、同じく車の代金に含まれます(同事例)。

リサイクル預託金相当額は預託金の譲渡で、金銭債権の譲渡として非課税です(同事例)。

自動車税は4月1日の持ち主にかかります
自動車税は4月1日の持ち主にかかります

社長など役員に安く売ると、時価との差額が役員給与になります

社長に売った車の収益の額も、「引渡しの時における価額」(時価)です(法人税法22条の2第4項)。

時価より安く売った差額は、役員給与に含まれる経済的な利益です(同法34条4項)。

役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額

(法人税基本通達9-2-9(2))

一度きりの利益は、損金になりません(タックスアンサーNo.5202)。毎月おおむね一定の定期同額給与に当たらないためです。

消費税は、時価に比べ著しく低い売値だと、時価で課税されます(消費税法28条1項ただし書)。

目安は、時価のおおむね50%未満です(消費税法基本通達10-1-2)。

役員と使用人の全部に一律の値引率で売る場合などは除かれます(同通達)。

法人税には50%の線はなく、時価との差額が役員給与になります。

社長の側でも、差額は原則として給与の収入です(タックスアンサーNo.2508)。

計算例

例:時価1,000,000円・帳簿価額300,000円の車を社長に400,000円で売る(税抜)

法人税の売却益 1,000,000円 - 300,000円 = 700,000円 役員給与(損金にならない) 1,000,000円 - 400,000円 = 600,000円 消費税 時価の50%(500,000円)未満なので、時価1,000,000円で課税

金額は一定の前提を置いた目安です。時価は、買取査定などの資料で示せるようにします。

退職金として車を渡す場合は、退職金の現物支給の記事をご覧ください。

少額減価償却資産にした車は、売った代金がそのまま益金です

取得した期に全額を損金にした車は、差し引く帳簿価額がありません。

青色申告の中小企業者等は、一定額未満の資産を使い始めた期に全額損金にできます(措置法67条の5)。

損金経理と明細書の添付が要件で、年300万円が上限です。

基準は、令和8年4月1日以後の取得分が40万円未満、それより前は30万円未満です。

この特例で損金にした額は、法人税では取得価額に含めません(同条4項)。

一括償却資産は、20万円未満の資産を36か月均等で損金にする方法です(法人税法施行令133条の2)。

注意

一括償却資産にした車を売っても、残りを一度に損金にはできません。36か月の計算を続けます(法人税基本通達7-1-13注)。

申告の誤りにつながるのは、次の5つの処理です

次の処理は、申告の誤りにつながります。

  • 下取り価格を値引きと相殺する ― 売却損益が漏れ、新しい車の取得価額も小さくなります。
  • 未経過分を消費税の対象外にする ― 自動車税と自賠責の未経過分も課税売上げです。
  • リサイクル預託金を車の代金に含める ― 非課税の預託金の譲渡を課税にしてしまいます。
  • 時価を確かめずに社長に売る ― 役員給与と消費税の時価課税を見落とします。
  • 一括償却資産の残りを一度に落とす ― 売った期にまとめて損金にはできません。

注文書と買取明細の内訳を、1行ずつ分けて記帳することが出発点です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で整えられるのは、次の4点です。

  1. 固定資産台帳で、その車の帳簿価額と償却の方法を確かめる
  2. 本体価格・値引き・下取り価格を分けた注文書をもらう
  3. 買取明細で、未経過分とリサイクル預託金の額を確かめる
  4. 古い車を引き渡した日と、新しい車の納車日を記録する

社長に売る場合の時価をどの資料で決めるかは、個別判断です。

償却費の一部が損金にならなかった車や、期末をまたぐ引渡しも、個別の確認が要ります。

売る前に、記帳の分け方を確かめます
売る前に、記帳の分け方を確かめます

税理士が入ると変わるのは、記帳の分け方と申告書への反映です

小松公認会計士・税理士事務所では、売却や買替えの前から次の作業を行います。

ひとつめは、注文書と買取明細に沿って仕訳を分けることです。

ふたつめは、償却費の扱いを含めた売却損益の計算です。

みっつめは、消費税の課税・非課税と、簡易課税の事業区分の確認です。

よっつめは、社長に売る場合の時価の確認と、役員給与の計算です。

いつつめは、役員給与などの調整を申告書に反映することです。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 下取りに出した車の価格は、新しい車の値引きとまとめて処理してよいですか?

分けて処理します。国税庁は、下取りを伴う取引を2つの別個の取引としています(タックスアンサーNo.6305)。会社の側では、古い車の売却と新しい車の購入です。法人税でも、売却損益と新しい車の取得価額を別々に計算します。

Q2. 期の途中で売った車の、売った月までの減価償却費は計上できますか?

差し支えないと考えられます。国税庁は、期中に売った資産の売却時までの減価分の計上を、法令が否定する趣旨ではないと説明しています。計上してもしなくても、その期の所得は同じです。償却費の分だけ売却時の帳簿価額が下がり、売却益が増えるためです。

Q3. 買取店から自動車税の未経過分を受け取りました。消費税はかかりますか?

消費税の対象です。国税庁の質疑応答事例は、自動車税の未経過分を車の購入代金の一部としています。区分して表示しても、資産の譲渡等の対価に含まれます。自賠責保険料の未経過分も同じです。リサイクル預託金相当額は非課税です。

Q4. 社長に社用車を安く売るときは、何に気をつければよいですか?

法人税では、時価との差額が役員給与になります。一度きりの利益は定期同額給与に当たらず、損金になりません(タックスアンサーNo.5202)。消費税は、時価のおおむね50%未満で売ると原則、時価で課税されます(消費税法基本通達10-1-2)。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項・3項、22条の2第4項、34条4項、法人税法施行令54条1項1号・133条の2、租税特別措置法67条の5第1項・3項・4項、法人税基本通達2-1-14・7-1-13・9-2-9、消費税法28条1項ただし書、消費税法基本通達5-1-1・10-1-2・10-1-6・13-2-9、地方税法146条・155条・157条4項の内容を扱っています。あわせて、国税庁タックスアンサーNo.6305・No.6505・No.5202・No.2508、国税庁の質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」、国税庁「特定資産の圧縮記帳(措置法65条の7関係)と譲渡資産の減価償却費」、国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」を参照しています。売った月までの償却費の具体的な計算方法、償却超過額がある車・特別償却や圧縮記帳を受けた車・リース車両の売却、完全支配関係がある法人への売却、未経過分とリサイクル預託金の法人税上の経理処理、名義変更がされずに売り手に課された自動車税の精算、軽自動車税、中古車の時価の評価方法は扱っていません。社長に売った場合の源泉徴収税額と社長個人の所得税額、本則課税での仕入税額控除への影響、適格請求書の交付、少額減価償却資産の特例の対象となる中小企業者等の範囲、個人事業主が車を売る場合の所得税も扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は帳簿価額・売却価額・経理処理によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

社用車を売る前・買い替える前に、記帳の分け方を確かめませんか

社用車の下取りは、新しい車の値引きではなく古い車の売却です。売却損益は、売った値段と帳簿価額の差で計算します。自動車税と自賠責の未経過分は、消費税のかかる車の代金に含めます。リサイクル預託金相当額は非課税です。社長に売るときは、時価との差額が役員給与になります。消費税は、売値が時価のおおむね50%未満なら原則として時価で課税されます。代表税理士が、注文書と買取明細の読み分けから申告書への反映まで通して対応します。車を売る前、下取りの契約をする前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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