この記事のポイント
- 原則の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内です
- 延長できるのは1か月で、会計監査人がいれば4か月以内です
- 申請書の期限は延長する事業年度終了の日までです
- 延長した期間には利子税がかかります
まず結論:申請書は、決算が始まる前に出します
法人税の確定申告書の提出期限は、決算日の2か月後です。
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
(法人税法74条1項)
この期限は、申請すれば1か月延ばせます。
ただし申請書の提出期限は、延長しようとする事業年度が終わる日までです。
3月決算なら、令和8年3月期を延ばす申請は令和8年3月31日までです。
延長できるのは1か月です
使う条文は、法人税法75条の2です。
条件は、定時株主総会が2か月以内に招集されない常況にあることです。
当該申告書の提出期限を一月間(次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該各号に定める期間)延長することができる。
(法人税法75条の2第1項)
理由は、定款等の定めと、会社に特別の事情があることの2通りです。
会計監査人を置き、定款等の定めで3か月以内に総会が招集されない常況なら、4か月を超えない範囲で月数が指定されます(同項1号)。
ポイント
定款等の定めを理由にするときは、定款等の写しを添付します(同条4項)。定款に「決算日から3か月以内に招集する」とある会社は、この理由が使えます。決算日そのものを動かす方法は決算期の変更の記事をご覧ください。

申請の期限は、事業年度終了の日までです
いちばんの落とし穴は、申請書の期限です。
前二項の申請は、第一項に規定する申告書に係る事業年度終了の日までに、
(法人税法75条の2第3項)
決算日を1日でも過ぎたら、その期の延長はできません。
国税庁の手続案内も、提出時期を「事業年度終了の日まで」としています。
一度承認されれば、翌期以降も自動で続きます。
やめるときは、その事業年度終了の日までに届出書を出します(同条7項)。
補足
申請書の提出から15日以内に承認も却下もなければ、延長されたものとみなされます(同条8項が準用する法人税法75条5項の読替え)。期限管理という点では青色申告の承認申請の記事と同じ発想です。
延長された期間には、利子税がかかります
申告期限が延びると、納付の期限も同じ日まで延びます(法人税法77条)。
そのかわり、2か月を過ぎた期間には利子税がつきます。
当該事業年度終了の日の翌日以後二月を経過した日から同項の規定により指定された期日までの期間の日数に応じ、年七・三パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税をその計算の基礎となる法人税に併せて納付しなければならない。
(法人税法75条7項。同法75条の2第8項が準用します)
実際の割合は、これより低くなります。
国税庁の公表資料では、令和8年の利子税の割合は年1.3パーセントです。
計算例
例1:令和8年3月期・中小法人・所得の金額1億円・1か月延長
法人税額 8,000,000円 × 15% + 92,000,000円 × 23.2% = 22,544,000円 原則の期限 令和8年5月31日 延長後の期限 令和8年6月30日 利子税の対象期間 令和8年6月1日から6月30日まで = 30日 利子税 22,540,000円 × 1.3% × 30 ÷ 365 = 24,000円税率の根拠は租税特別措置法42条の3の2と法人税法66条1項です。

見込みの額を先に納めると、利子税は減ります
利子税は、未納の税額に対して計算します。
一部を納めれば、その翌日以後は残りの額だけが対象になります。
延滞税の額の計算の基礎となる国税の一部が納付されたときは、その納付の日の翌日以後の期間に係る延滞税の額の計算の基礎となる税額は、その納付された税額を控除した金額とする。
(国税通則法62条1項。同法64条3項が利子税に準用します)
そこで、原則の期限までに見込みの額を納めておく処理が実務で行われています。
実務では「見込納付」と呼ばれます。
計算例
例2:例1の会社が令和8年5月31日までに22,540,000円を納めた場合
6月1日以後の基礎となる法人税額 22,544,000円 - 22,540,000円 = 4,000円 利子税 1万円未満のため計算の基礎から切り捨て = 0円 例1との差 24,000円 - 0円 = 24,000円納めすぎた分は、申告のあとで還付されます。
資金が足りないときの選択肢は、税金が払えないときの記事で扱います。
消費税は、別に届出書を出さないと延びません
法人税の延長は消費税には及ばず、専用の届出書で1か月延ばします。
前条第一項の規定にかかわらず、当該課税期間の末日の翌日から三月以内とする。
(消費税法45条の2第1項)
法人税の延長を受けている法人だけが出せる届出書です。
提出期限は、適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日までです。
消費税にも利子税がかかります(同条4項)。
計算例
例3:消費税の納付税額が3,000,000円で、6月30日に申告・納付した場合
届出書あり 利子税 3,000,000円 × 1.3% × 30 ÷ 365 = 3,200円 届出書なし 無申告加算税 150,000円 + 延滞税 6,900円 = 156,900円 差 156,900円 - 3,200円 = 153,700円
地方税と総会の日程も、あわせて動かします
地方税には、別の手続があります。
法人事業税は、知事の承認を受けて3か月以内に申告納付します(地方税法72条の25第3項)。
法人住民税は、法人税の申告期限が延長された旨を知事に届け出ます(同法53条61項)。
事業税は承認、住民税は届出で、国税とは別に手続が必要です。
延長した期間には、地方税でも延滞金がかかります(同法65条・72条の45の2)。
定時株主総会は、毎事業年度の終了後の一定の時期に招集します(会社法296条1項)。
注意
議決権の基準日を定めた場合、株主が権利を行使できるのは基準日から3か月以内です(会社法124条2項)。決算日を基準日にしている会社は、総会をそこから3か月より先に置けません。
つまずくのは、だいたいこの5つです
実際に多いのは、次の形です。
- 申請書を決算日までに出していない ― その期は延長できず、期限後申告になります
- 延長したからと納付も先に延ばす ― 利子税がつきます
- 消費税の届出書を忘れる ― 消費税だけ期限を過ぎ、無申告加算税がかかります
- 地方税の承認と届出をしていない ― 事業税と住民税が期限後の扱いになります
- 延長しても決算が固まらない ― 延びた期限を過ぎれば期限後申告です
計算例
例4:例1の会社が申請書を出しておらず、6月30日に期限後申告・納付した場合
無申告加算税 22,540,000円 × 5% = 1,127,000円 延滞税 22,540,000円 × 2.8% × 30 ÷ 365 = 51,800円 合計 1,178,800円 例1の利子税24,000円との差 1,154,800円申請書1枚の有無で、100万円を超える差がつきます。
5パーセントは調査通知前に自分で申告した場合の割合です(国税通則法66条8項)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 定款を開き、定時株主総会の招集時期の定めを読む
- 直近3期の総会の開催日を並べ、決算日から何か月後かを数える
- 今期の決算日を書き出し、申請書の提出期限を確認する
- 消費税の課税事業者かどうかを、前々期の課税売上高で確かめる
ここから先は個別判断です。
「特別の事情」で申請するか、定款を変えてから申請するかで結論が変わります。
中間申告との関係は、中間申告の記事をご覧ください。

税理士が入ると変わるのは、期限の管理と納付額の試算です
ひとつめは、申請書の提出期限の管理です。決算日までに出せるよう逆算します。
ふたつめは、理由の選び方です。定款等の定めか特別の事情かを決めます。
みっつめは、見込みの納付額の試算です。当期の月次から金額を出します。
よっつめは、消費税の届出書と、地方税の承認申請・届出の提出です。
いつつめは、翌期以降の決算スケジュールの組み直しです。
この特例は、決算日を過ぎてからでは申請できません。
小松公認会計士・税理士事務所では、申請書の作成から納付額の試算まで担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 決算が終わってから、この特例を申請できますか?
できません。法人税法75条の2第3項は、申請を「事業年度終了の日までに」しなければならないと定めています。決算日を過ぎてから申請しても、その事業年度の申告期限は延びません。その期は原則どおり2か月以内に申告するか、期限後申告になります。来期分として申請しておくことはできます。
Q2. 申告期限が延びれば、納付も後回しにできますか?
納付の期限も申告期限まで延びますが、利子税がかかります。法人税法75条7項は、事業年度終了の日の翌日以後2か月を経過した日から延長後の期限までの日数に応じた利子税を納めると定めています。令和8年の利子税の割合は年1.3パーセントです。原則の期限までに見込みの額を納めておけば、その分は計算の基礎から外れます。
Q3. 法人税を延長すれば、消費税も自動で延びますか?
延びません。消費税は消費税法45条の2の届出書を別に出す必要があり、提出できるのは法人税の延長の特例を受けている法人だけです。延長後の期限は課税期間の末日の翌日から3か月以内です。届出書を忘れると消費税だけが期限後申告になり、無申告加算税がかかります。
Q4. 地方税は何もしなくてよいのですか?
別の手続が必要です。法人事業税は道府県知事の承認を受けて3か月以内に申告納付します(地方税法72条の25第3項)。法人住民税は、法人税の申告期限が延長された旨を知事に届け出ます(同法53条61項)。延長した期間には地方税でも延滞金がかかります(同法65条・72条の45の2)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法66条・74条・75条・75条の2・77条、租税特別措置法42条の3の2・93条、消費税法45条・45条の2、国税通則法62条・64条・66条・118条・119条、地方税法53条・65条・72条の25・72条の45の2・321条の8、会社法124条・296条、国税庁「延滞税の割合」、国税庁の手続案内C1-17およびD1-2の内容を扱っています。通算法人に係る読替え(法人税法75条の2第11項、地方税法72条の25第5項)、外国法人の確定申告書の提出期限の延長の特例(法人税法144条の8)、災害その他やむを得ない理由による期限の延長(法人税法75条、国税通則法11条)、清算中の法人・残余財産が確定した場合の取扱い、税務署長による延長の処分の取消しや月数の変更(法人税法75条の2第5項)、国および地方公共団体に準ずる法人の申告期限の特例、法人税の申告書の電子申告義務、地方税の延滞金の割合の特例、地方法人税および特別法人事業税の申告期限、利子税および延滞金の損金算入の可否の詳細、青色申告の承認の取消しとの関係は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は所得の金額・延長された月数・納付の日によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(66条・74条・75条・75条の2・77条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「消費税法」(45条・45条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
- e-Gov法令検索「国税通則法」(62条・64条・66条・118条・119条)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(42条の3の2・93条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「地方税法」(53条・65条・72条の25・72条の45の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税庁「延滞税の割合」(利子税特例基準割合を含む)https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
- 国税庁 C1-17「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_12.htm
- 国税庁 D1-2「消費税申告期限延長届出手続」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/0020003-179_01.htm
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法人税の確定申告書の提出期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内ですが、定時株主総会が2か月以内に招集されない常況にあるときは1か月延長できます。会計監査人を置いている場合は4か月を超えない範囲で月数が指定されます。ただし申請書の提出期限は、延長しようとする事業年度終了の日までです。決算作業が始まってからでは、その期は間に合いません。延長された期間には利子税がかかるため、原則の期限までに見込みの額を納めるかどうかの判断も必要になります。消費税は別の届出書、法人事業税は知事の承認、法人住民税は知事への届出です。代表税理士が、定款と総会の日程の確認、申請書の作成、見込みの納付額の試算、消費税の届出書と地方税の手続、翌期以降の決算スケジュールの組み直しまで、通して対応します。決算日を迎える前にご相談ください。
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