この記事のポイント
- 消耗品は消費した日の属する事業年度の損金が原則です
- 期末に未使用のまま残った分は貯蔵品(棚卸資産)として翌期に繰り越します
- 事務用消耗品などで毎期おおむね一定数量・経常的に消費・継続適用なら取得時の損金が認められます
- 決算月だけの大量購入や処理の不統一は、要件を外れて指摘を受けやすい買い方です
まず結論:消耗品は「使った期」の損金が原則です
決算前に事務用品や包装材をまとめ買いする社長は多いです。
買っただけでは、その期の損金にはなりません。消耗品は、消費した日の属する事業年度の損金が原則です。
根拠は法人税基本通達2-2-15です。
ただし、例外があります。事務用消耗品などで、毎期おおむね一定数量を取得し、経常的に消費するものです。
これを継続して取得した期の損金にしている場合には、認められます。
期末に買った分を損金にできるかは、「何を」「いつもの量で」「毎期同じ扱いで」買ったかで決まります。

使わずに残った消耗品は「貯蔵品」という棚卸資産です
期末に未使用のまま残った消耗品は、棚卸資産として翌期に繰り越します。
棚卸資産の定義は法人税法2条20号にあります。
商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で、棚卸しをすべきものとして政令で定めるものです。
その政令が法人税法施行令10条です。6号に「消耗品で貯蔵中のもの」と明記されています。
これが貯蔵品です。買ったけれども、まだ使っていない消耗品のことです。
損金の額に入るのは、その事業年度の収益に係る売上原価などの原価の額です(法人税法22条3項1号)。
期末に残った棚卸資産の価額は、法人が選定した評価の方法で評価します(法人税法29条1項)。
使い切っていない分は当期の損金から外れ、貸借対照表の貯蔵品に載ります。
収益と損金の計算は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従います(法人税法22条4項)。
特例:法人税基本通達2-2-15の4つの要件
通達は、一定の消耗品に限り、取得した期の損金にすることを認めています。
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。
出典:法人税基本通達2-2-15(消耗品費等)
要件を分けると4つです。
| 要件 | 通達の文言 | 確認すること |
|---|---|---|
| ①品目 | 事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産 | コピー用紙・文具・段ボール・チラシ・サンプルなどに当たるか |
| ②数量 | 各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得 | 毎期の購入量が大きくぶれていないか |
| ③消費 | 経常的に消費するもの | 日常の業務でつねに使うものか |
| ④経理 | 継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入 | 毎期同じ処理を続けているか |
4つすべてを満たしたときに「これを認める」という定めです。原則そのものが変わるわけではありません。
ポイント
「おおむね一定数量」「経常的に消費」に数値の基準は置かれていません。通達の文言どおり、御社の毎期の購入量と使い方の実績で判断します。
注書きも置かれています。製品の製造のための費用としての性質を持つ分は、製造原価に算入します。

計算例:コピー用紙60万円で原則と特例はいくら違うか
原則と特例で、当期の損金は期末に残った分だけ違います。
計算例
例:3月決算法人が3月にコピー用紙を1箱1,200円×500箱購入。期末までに300箱を消費し、200箱が未使用で残った
1,200円 × 500箱 = 600,000円(購入額) 1,200円 × 300箱 = 360,000円(当期に消費した分 → 原則として当期の損金) 1,200円 × 200箱 = 240,000円(期末未使用分 → 貯蔵品として翌期へ繰り越し) 4つの要件を満たし継続適用している場合 → 600,000円の全額を当期の損金にすることが認められる仮に置いた数値による、一定の前提を置いた目安です。
差は240,000円です。この差が出るのは、特例の4つの要件を満たしている場合だけです。
翌期には逆のことが起こります。貯蔵品にした240,000円は、翌期に消費したときの損金になります。
特例は、損金を増やす制度ではありません。損金にする期を、消費した期から取得した期に動かす制度です。
指摘を受けやすい買い方:決算月だけの大量購入・処理の不統一・数量の急増
指摘を受けやすいのは、4つの要件のどれかが崩れている買い方です。
注意
①決算月にだけ、通常の数量を超えてまとめ買いした
「各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得」に当たらない可能性があります。
②利益が出た期だけ取得時に損金にし、他の期は消費時に損金にした
「継続して」の要件に反します。
③事業の規模は変わらないのに、当期だけ購入量が急に増えた
経常的に消費するものといえるかが問われます。
④販売する商品や製造用の材料を、事務用消耗品と同じ扱いにした
対象は事務用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物などに限られます。
「期末に買えば全額経費」という考え方は、通達の原則と逆です。
通達の「これを認める」は、毎期の実態が要件に沿っていることが前提です。
期末に残った数量が例年より大きく増えていれば、貯蔵品として計上する検討が必要です。

名前が似ていても別の制度で判定するもの
消耗品費として支払っていても、別の制度で判定するものがあります。
パソコンや机のように、繰り返し使うものは消耗品ではありません。減価償却資産です。
金額が小さい場合は、少額減価償却資産の特例の対象になるかを別に確認します。
家賃や保険料のように、期間に対応して発生する費用は前払費用です。
前払費用には法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)という別の定めがあります。消耗品とは判定が異なります。
貯蔵品として計上した消耗品が傷んだり、使えなくなったりした場合は、棚卸資産の評価損の論点になります。
補足
本記事で扱うのは、法人税基本通達2-2-15の対象となる消耗品だけです。少額減価償却資産・一括償却資産・短期前払費用の要件は、それぞれ別の定めで判定します。消耗品と同じ基準では判断できません。
ここまではご自身で、ここからは個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の3点です。
- 消耗品費の内訳を品目ごとに分け、事務用消耗品・包装材料・広告宣伝用印刷物などに当たるかを見る
- 過去数期の購入量と、当期の購入量を並べて比べる
- 決算日時点で未使用のまま残っている数量を数え、記録を残す
期末に現物を数えていないと、貯蔵品の金額を出せません。
ここから先は個別判断です。「おおむね一定数量」に当たるかは、御社の過去の実績との比較で決まります。
取得時の損金にする処理を一度採ると、翌期以降も同じ処理を続ける必要があります。
決算までにできることの全体像は、決算前3か月の打ち手にまとめています。

税理士が入ると何が変わるか
税理士が入ると、要件の確認と継続適用の管理が毎期の作業として仕組みになります。
具体的にやることは次のとおりです。
- 消耗品費の内訳を品目別に分け、2-2-15の対象品目と、減価償却資産・前払費用などを切り分けます
- 過去数期の購入量と当期の購入量を比べ、「おおむね一定数量」の要件に沿っているかを確認します
- 期末の未使用分を数えた記録をもとに、貯蔵品として計上する金額を決めます
- 取得時に損金とする処理を採るか、消費時に損金とする原則で行くかを決め、翌期以降も同じ処理を続けます
- 決算書と申告書に、貯蔵品の計上と消耗品費の内訳を反映します
小松公認会計士・税理士事務所では、決算前に消耗品費の内訳と期末の在庫数量を確認します。そのうえで処理の方針を決め、翌期の管理まで引き継ぎます。
期末の一時的な判断ではなく、毎期同じ基準で処理を続けることが、この特例を使い続ける条件です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 決算前にコピー用紙を大量に買えば、全額その期の経費になりますか?
なりません。消耗品は消費した日の属する事業年度の損金が原則です(法人税基本通達2-2-15)。取得時の損金が認められるのは、毎期おおむね一定数量を取得し、経常的に消費するものを、継続して取得時の損金にしている場合に限られます。
Q2. 期末に使わずに残った消耗品は、どう処理しますか?
貯蔵品として棚卸資産に計上し、翌期に繰り越します。法人税法施行令10条6号に「消耗品で貯蔵中のもの」が棚卸資産として明記されています。期末の価額は、法人が選定した評価の方法で評価します(法人税法29条1項)。
Q3. 「おおむね一定数量」とは、何%くらいまでなら増えてもよいのですか?
通達に数値の基準はありません。御社の過去の購入量と当期の購入量を比べて判断します。決算月にだけ通常の数量を超えてまとめ買いした分は、要件に当たらない可能性があります。個別の判断は税理士にご相談ください。
Q4. 今期だけ取得時に損金にして、来期は元に戻すことはできますか?
できません。通達は「継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合」に認めると定めています。利益が出た期だけ取得時の損金にする処理は、この要件に反します。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税基本通達2-2-15「消耗品費等」、法人税法2条20号、22条3項1号、22条4項、29条1項、法人税法施行令10条の内容を扱っています。少額減価償却資産の特例や一括償却資産の金額要件・適用要件、短期の前払費用(法人税基本通達2-2-14)の要件、棚卸資産の評価方法の具体的な名称や選定手続、棚卸資産の評価損の要件、消費税の仕入税額控除の時期、法人税率を用いた税額の計算は扱っていません。「おおむね一定数量」「経常的に消費」の数値基準は通達に定めがなく、本記事でも示していません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の損金の額や税額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 2-2-15「消耗品費等」(第2章第2節第2款)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_02_02.htm
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(10条 棚卸資産の範囲)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- e-Gov法令検索 法人税法(2条20号・22条・29条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
決算前の消耗品の買い方は、買う前にご相談ください
期末にまとめ買いした消耗品を取得時の損金にできるかは、品目・毎期の購入量・処理の継続という要件で決まります。買ってしまってからでは、貯蔵品として翌期に繰り越す結論しか残らないことがあります。代表税理士が御社の消耗品費の内訳と過去の購入実績を伺い、原則と特例のどちらで処理するかの方針決めから、期末の在庫数量の確認、翌期以降の継続管理まで通して対応します。
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