この記事のポイント
- 判定は工事の名目ではなく、その実質で行います
- 維持管理・原状回復は修繕費、価値の増加・期間の延長は資本的支出です
- 迷ったときは20万円・おおむね3年周期・60万円・10パーセントの形式基準を使います
- 資本的支出は新たな減価償却資産を取得したものとして償却します
まず結論:工事の名目ではなく、工事の実質で分けます
店舗や機械に手を入れた費用は、2つに分かれます。
ひとつは修繕費です。支出した事業年度の損金になります。
もうひとつは資本的支出です。資産に計上し、減価償却で少しずつ費用にします。
分け方は、請求書の名目ではなく、その工事の実質によって判定します。
国税庁も「修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定」すると示しています。
維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、修繕費です。
固定資産の使用可能期間を延長させ、または価値を増加させる部分は、資本的支出です。
根拠は法人税法施行令132条と、法人税基本通達7-8-1から7-8-6、7-8-10です。
同じ100万円でも、どちらに入るかでその期の利益と税額が変わります。

資本的支出になるのは「価値を高める」「長く使えるようにする」部分です
資産の価値が高まる部分と、耐久性が増す部分が資本的支出です。
根拠は通達7-8-1です。
「価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分」に対応する金額と定められています。
国税庁は、具体的な例を3つ挙げています。
ポイント
①建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
②用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
③機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合の、通常の取替えの金額を超える部分の金額
③は支出額の全部ではありません。
通常の部品に取り替えていたらいくらだったかを出し、それを超える部分だけが資本的支出です。
注意
建物の増築、構築物の拡張、延長等は資本的支出ではありません。建物等の取得に当たります(法人税基本通達7-8-1の注)。既存の資産への上乗せではなく、新しい資産を買ったのと同じ扱いになります。
修繕費になるのは「元に戻す」「今の状態を保つ」費用です
通常の維持管理と原状回復の費用が修繕費です。根拠は通達7-8-2です。
「通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復する」ために要した部分の金額と定められています。
例示も置かれています。機械装置の移設費用は修繕費です。解体費も含みます。
現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う、砂利、砕石等の敷設費用も修繕費です。
砂利道や砂利路面への補充費用も同じ扱いです。
壊れたものを元どおりにするだけなら、金額が大きくても修繕費です。
逆に、金額が小さくても価値を高めていれば資本的支出です。
借りている事務所に手を入れた場合は、借りた事務所の内装工事の耐用年数の考え方も合わせて確認します。

迷ったときの形式基準 ― 20万円・おおむね3年周期・60万円・10パーセント
実質で決めきれないときのために、通達に形式的な基準が置かれています。
対象は「一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等」です。これを一の修理、改良等といいます。
| 通達 | 当てはまる場合 | 効果 |
|---|---|---|
| 7-8-3(1) | 一の修理、改良等に要した費用が20万円に満たない(2以上の事業年度にわたるときは各事業年度ごとに要した金額で見ます) | 修繕費として損金経理できます |
| 7-8-3(2) | おおむね3年以内の期間を周期として行われることが、既往の実績その他の事情からみて明らかである | |
| 7-8-4(1) | 資本的支出か修繕費かが明らかでない金額が60万円に満たない | |
| 7-8-4(2) | その明らかでない金額が、その資産の前期末における取得価額のおおむね10パーセント相当額以下 |
7-8-3は費用の全体を見ますが、7-8-4は「明らかでない金額」だけを見ます。
資本的支出だとはっきりしている部分は、7-8-4の判定には乗りません。
3年周期のほうは既往の実績が要ります。前回いつ、いくらで行ったかの記録を残してください。
計算例
例1:外壁の塗替え80万円/その建物の前期末における取得価額3,000万円
80万円 ≧ 20万円・3年周期の実績もなし → 7-8-3は使えません 10パーセント相当額=3,000万円 × 10% = 300万円 300万円 ≧ 80万円 → 7-8-4(2)により80万円の全額を修繕費にできます一定の前提を置いた目安です。

それでも分けられないときは、30パーセントと10パーセントの少ない方
7-8-3も7-8-4も使えないときのために、区分の特例があります。7-8-5です。
明らかでない金額について、法人が継続して次の経理をしているときは、それが認められます。
比べるのは2つです。その金額の30パーセント相当額と、その資産の前期末における取得価額の10パーセント相当額です。
このいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理です。
計算例
例2:内装工事500万円/同じ建物(前期末における取得価額3,000万円)
500万円 ≧ 60万円・3,000万円 × 10% = 300万円 < 500万円 → 7-8-4は使えません 500万円 × 30% = 150万円 3,000万円 × 10% = 300万円 少ない方の150万円が修繕費、残りの350万円が資本的支出一定の前提を置いた目安です。継続経理が前提になります。
「継続して」が条件です。有利な年だけ使うことはできません。
また、これらの取扱いは、それぞれが優先して適用されます。順番を都合で選べるものではありません。
補足
7-8-5の対象からは、7-8-3・7-8-4の適用を受けるものが除かれています。先に少額・周期や60万円・10パーセントの基準に当てはまる支出は、この特例の話にはなりません。
災害・ソフトウエア・古い資産の取扱い
場面ごとに、別の定めが置かれています。
まず災害です。被災資産(評価損を計上したものを除きます)に7-8-6があります。
原状を回復するために支出した費用は、修繕費に該当します。
被災前の効用を維持するための補強工事や排水、土砂崩れの防止等の費用も、修繕費経理が認められます。
明らかでないものは、30パーセント相当額を修繕費とする経理が認められます。
ただし、復旧に代えて資産を取得した場合は、新たな資産の取得に当たります。
借りている資産にも定めがあります。修繕等の補修義務がない場合です。
災害による原状回復の補修費を修繕費として経理したときは、これが認められます(7-8-10)。
次にソフトウエアです。機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に当たるときは修繕費です。
新たな機能の追加、機能の向上等に当たるときは資本的支出になります(7-8-6の2)。
古い資産にも特別扱いはありません。耐用年数を経過した減価償却資産でも、区分は一般の例により判定します(7-8-9)。

資本的支出になったら、どう償却するか
資本的支出は、新しい資産を取得したものとして償却します。
国税庁タックスアンサーNo.5405が、その支出金額を固有の取得価額として扱うと示しています。
既存の資産と種類および耐用年数を同じくする、新たな減価償却資産を取得したものとして償却します。
この新たな資産を追加償却資産といいます。
既存の資産(旧減価償却資産)のほうは、現に採用している償却方法による償却をそのまま続けます。
資産計上になる支出があるときは、少額減価償却資産の特例を使える部分がないかも併せて確認します。
ここまではご自身で、ここからは個別判断です
ご自身でできるのは、資料をそろえるところまでです。
用意していただきたいのは4点です。見積書、内訳の分かる請求書、工事前後の写真、前回の同種工事の記録です。
「何をどう直したか」が書かれた内訳がないと、実質の判定ができません。
「工事一式」とだけの請求書は、内訳を出してもらってください。
ここから先は個別判断です。同じ工事名でも資産の状況で結論は変わります。
小松公認会計士・税理士事務所では、工事の見積り段階から内訳の取り方をご案内しています。
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この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 請求書に「修繕工事」と書いてあれば修繕費になりますか?
なりません。国税庁は「修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定する」と示しています(タックスアンサーNo.5402)。何をどう直したかが分かる内訳が必要です。
Q2. 20万円未満なら、どんな工事でも修繕費にできますか?
一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等の費用が20万円に満たない場合は、修繕費として損金経理できます(法人税基本通達7-8-3)。2以上の事業年度にわたるときは各事業年度ごとに要した金額で見ます。
Q3. 60万円と10パーセントは、どちらを使ってもよいのですか?
7-8-4は、資本的支出か修繕費かが明らかでない金額について、60万円未満か、前期末取得価額のおおむね10パーセント相当額以下のいずれかに当たれば修繕費にできる定めです。明らかに資本的支出の部分は対象外です。
Q4. 古くなって耐用年数が過ぎた機械の修理はどうなりますか?
通常どおり判定します。耐用年数を経過した減価償却資産について修理、改良等をした場合であっても、区分は一般の例により判定すると定められています(法人税基本通達7-8-9)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサーNo.5402「修繕費とならないものの判定」、No.5405「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」、法人税法施行令132条、法人税基本通達7-8-1、7-8-2、7-8-3、7-8-4、7-8-5、7-8-6、7-8-6の2、7-8-9、7-8-10の内容を扱っています。個人(不動産所得・事業所得)における修繕費と資本的支出の取扱い、耐用年数省令に定める具体的な耐用年数、少額減価償却資産の特例の金額要件や適用要件の細目、追加償却資産の償却方法の具体的な計算、資本的支出をした資産の除却・売却時の処理、消費税の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の税額や区分を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5402.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5405「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5405.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第8節「資本的支出と修繕費」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm
- e-Gov法令検索 法人税法施行令https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
工事の請求書は、支払う前にお見せください
修繕費か資本的支出かは、工事が終わってからでは判定材料が足りなくなることがあります。見積り段階で内訳の取り方を決めておくと、実質による判定を資料で裏づけられます。20万円・60万円・10パーセントのどの基準に乗るのか、継続適用の特例を使うべきかは、御社の資産の状況によって変わります。代表税理士が工事の中身を伺い、区分の考え方から償却の処理まで通して対応します。
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