この記事のポイント
- 賃借した建物への造作はその期の経費ではなく資産に計上して償却します
- 耐用年数は建物の耐用年数ではなく合理的に見積もるのが原則です(耐通1-1-3)
- 建物附属設備に対する造作は建物附属設備の耐用年数によります
- 同一の建物にした造作は全てを一の資産として総合して見積もります
まず結論:借りた事務所の内装工事は、その期の経費にはなりません
賃借した事務所や店舗に内装工事をしたとき、その工事代金は原則としてその期の経費になりません。
賃借した建物に、自己の用に供するため造作をしたときは、その造作を一の資産として資産に計上します。
そのうえで、耐用年数にわたって償却していきます。
造作とは、内装や間仕切り、床・壁・天井の仕上げなど、借りた建物に手を加える工事のことです。
償却とは、支出した金額を一度に費用にせず、年数で分けて費用にしていく処理をいいます。
「工事代を今期の経費に入れて、利益を抑えたい」というご相談は少なくありません。
けれども造作は、建物と同じように長く使うものです。だから年数で分けます。
では、その年数は何年になるのでしょうか。ここが本記事の主題です。
| 造作の対象 | 耐用年数の決め方 | あてはまる場面 |
|---|---|---|
| 賃借した建物への造作 | その造作を一の資産として合理的に見積もる | 引き渡しを受けた建物の全部が賃借している建物である場合 |
| 建物附属設備に対する造作 | 建物附属設備の耐用年数による | 電気設備や給排水設備などへの造作 |
| 更新のできない賃借期間の定めがあるもの | その賃借期間を耐用年数として償却できる | 有益費の請求・買取請求ができない場合に限る |
根拠は、国税庁タックスアンサーNo.5406と、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3です。

耐用年数は「合理的に見積もる」― 建物の耐用年数そのものではありません
賃借した建物への造作の耐用年数は、その建物の耐用年数をそのまま使うのではなく、合理的に見積もります。
見積もりにあたって勘案するとされている要素は、次のとおりです。
ポイント
勘案するのは①その造作をした建物の耐用年数、②その造作の種類、③用途、④使用材質等です。これらを勘案して、合理的に耐用年数を見積もります。
「一の資産」とは、その工事全体をまとめて1つの資産として扱う、という意味です。
建物の耐用年数は、その見積もりの材料の1つにすぎません。
同じ「内装工事」という言葉でも、建物の構造や工事の中身が違えば年数は変わります。
一律に何年、と法令で決まっている年数はありません。
本記事では、具体的な年数を書きません。年数は工事の内容ごとに見積もるものだからです。
なお、この取扱いが適用されるのは、引き渡しを受けた建物の全部が賃借している建物である場合に限られます。
自社所有の建物の一部を賃借しているような形は、前提が異なります。
建物附属設備への造作は、建物附属設備の耐用年数によります
建物附属設備に対する造作については、建物附属設備の耐用年数により償却します。
建物附属設備とは、電気設備や給排水設備、空調設備など、建物に付属する設備をいいます。
ここは見積もりではありません。設備としての耐用年数によることになります。
建物への造作と建物附属設備への造作では、年数の決め方そのものが違うということです。
前者は合理的な見積もり、後者は建物附属設備の耐用年数です。
したがって、1回の内装工事であっても、この2つは分けて考えます。
工事の見積書や請求書の内訳が、そのまま判断の材料になります。
内訳が「内装工事一式」としか書かれていない場合は、業者に内訳を出してもらうところから始まります。
着工前であれば、内訳を分けて出してもらうよう先に伝えておくと確実です。

賃借期間で償却できるのは、2つの条件をどちらも満たすときだけです
賃借期間そのものを耐用年数として償却できる場合もあります。
ただし、条件は2つです。まず、更新のできない賃借期間の定めがあること。
そして、有益費の請求または買取請求をすることができないことです。
有益費とは、借りた物の価値を高めるために借主が支出した費用のことをいいます。
注意
この2つは「どちらか」ではなく「どちらも」満たす必要があります。更新ができる契約は対象になりません。契約書の期間と更新の定め、有益費の請求・買取請求に関する条項の両方を確認してください。
定期建物賃貸借のように、更新のない形の契約が想定されます。
更新ができる一般的な賃貸借契約では、この取扱いは使えません。
つまり、同じ工事でも契約の形によって償却する年数が変わる、ということです。
計算例
例:取得価額300万円の造作を、年数だけを仮に置いて均等に償却した場合
仮に10年で償却=3,000,000円 ÷ 10年 = 1年あたり300,000円 仮に賃借期間5年で償却=3,000,000円 ÷ 5年 = 1年あたり600,000円 同じ工事でも、年数の置き方で1年あたりの金額は変わる年数はあくまで仮定であり、一定の前提を置いた目安です。実際の年数は工事の内容ごとに見積もります。償却の方法によっても各年の金額は変わります。

同一の建物にした造作は、全てを一の資産として総合して見積もります
同一の建物についてした造作は、その全てを一の資産として総合して耐用年数を見積もります。
個々の造作ごとに見積もることはできない、とされています。
「総合して見積もる」とは、工事全体で1つの年数を見積もる、という意味です。
床の工事、壁の工事、間仕切りの工事を、それぞれ別の資産として扱うことはできません。
別々の年数を当てる組み立ても同じです。
工事を複数の業者に分けて発注した場合も変わりません。
同一の建物にした造作であれば、まとめて1つの資産として見ます。
1件あたりの金額を小さく見せる目的で資産を分けることは、この取扱いと合いません。
金額の小さい資産をまとめて費用にできる制度は、これとは別にあります。少額減価償却資産の特例をご覧ください。本記事では金額の基準は扱いません。

実務で確認すること ― 契約書と工事の内訳書
最初に見るのは、賃貸借契約書と工事の内訳書の2つです。
順番は次のとおりです。
- 契約書で、賃借期間の定めと更新の可否を確認する
- 契約書で、有益費の請求や買取請求に関する条項を確認する
- 内訳書で、建物への造作と建物附属設備への造作が分かれているかを確認する
この3つがそろって、はじめて年数の検討に入れます。
内装工事のほかにも、事務所を借りるときに払うお金があります。礼金や権利金は税務上の繰延資産として、造作とは別に扱います。
補足
根拠は国税庁タックスアンサーNo.5406と、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3です。年数が決まったあと、どの償却方法で計算するかは別の論点になります。定額法・定率法などの区分によります(タックスアンサーNo.5410)。
小松公認会計士・税理士事務所では、契約書と工事の内訳をあわせて確認します。
そのうえで、資産の区分と年数を組み立てます。
契約書の条項を読み、工事の内訳を分けるところまでは、ご自身でもできます。
ここから先、合理的な見積もりとして何年を採るかの判断は、個社ごとに異なります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 借りている事務所の内装工事は、その年の経費にできますか?
原則としてできません。建物を賃借し、自己の用に供するため造作をした場合は、その造作を一の資産として資産に計上し、耐用年数にわたって償却します。根拠は国税庁タックスアンサーNo.5406です。
Q2. 造作の耐用年数は、建物の耐用年数と同じですか?
同じではありません。その造作をした建物の耐用年数、造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に見積もります。一律に決まった年数はなく、工事の内容ごとの見積もりになります。
Q3. 賃借期間を耐用年数として償却することはできますか?
更新のできない賃借期間の定めがあり、かつ有益費の請求または買取請求ができない場合に限りできます。どちらか一方では足りず、2つをどちらも満たす必要があります。
Q4. 床・壁・間仕切りを別々の資産に分けて償却できますか?
できません。同一の建物についてした造作は、その全てを一の資産として総合して耐用年数を見積もることとなり、個々の造作ごとに見積もることはできないとされています。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁タックスアンサーNo.5406「他人の建物に対する造作の耐用年数」、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3、および国税庁タックスアンサーNo.5410の償却方法の区分の範囲を扱っています。建物・建物附属設備の具体的な耐用年数の年数、定額法・定率法の具体的な償却率、少額減価償却資産・一括償却資産の金額基準、修繕費と資本的支出の区分の基準、原状回復義務や敷金の処理、賃借建物を明け渡したときの未償却残高の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は年数を仮に置いた目安であり、実際の耐用年数の見積もりを示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5406「他人の建物に対する造作の耐用年数」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5406.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5410「減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5410.htm
- e-Gov法令検索 法人税法https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索 法人税法施行令https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
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造作の耐用年数は、契約書の期間と更新の定め、有益費の条項、工事の内訳の分け方で結論が変わります。工事が終わり、支払いも済ませてからでは、選べる形が限られます。代表税理士が、御社の契約と工事の中身を踏まえて資産の区分と年数を組み立てます。
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