この記事のポイント
- 家屋を取り壊して敷地だけを売ると、原則は3,000万円特別控除の対象外です
- 3つの要件をすべて満たせば、更地で売っても控除を受けられます
- 要件は①1年以内の売却契約②3年目年末までの譲渡③貸付けなしの3つです
- 要件を満たせないと、控除ゼロで6,094,500円の税負担になり得ます
まず結論:更地にして売ると、原則は使えません
住んでいた家を取り壊して土地だけを売った場合、3,000万円の特別控除は原則として使えません。国税庁は次のように説明しています。
この特例は原則として家屋の所有者がマイホームを譲渡した場合に受けられるものです。家屋を取り壊してその敷地だけを売った場合には、原則としてこの特例の適用は受けられません。しかし、家屋を取り壊して、その敷地だけを売った場合でも次の要件すべてに当てはまるときは、この特例の適用を受けることができます。(国税庁タックスアンサーNo.3320「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」)
制度の主役は「家屋」です。家屋が先になくなると原則の対象外になりますが、取り壊したあとの動き方が3つの要件に収まっていれば、更地で売っても適用を受けられます。
本記事はご自身が住んでいた家を取り壊した場合が対象です。相続した親の家なら空き家特例の検討になります。相続した実家を売ったときの税金をご覧ください。特例の一般的な要件はマイホームを売ったときの3,000万円特別控除の要件にまとめています。
3つの要件を1つずつ見ます
国税庁が挙げる要件は3つで、すべてに当てはまる必要があります。
(1) 家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地を売る契約をしていること。
(2) その家屋に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
(3) その家屋を取り壊してから、その敷地を売る契約をした日まで、貸付けその他の用に使用していないこと。(国税庁タックスアンサーNo.3320)
ポイント
3つの要件はどれか1つではなく、すべて同時に満たす必要があります。1つでも外れると特例は使えません。
要件① 取り壊した日から1年以内に「契約」
数え始めは家屋を取り壊した日です。期限までにすべきことは敷地を売る契約で、引渡しや代金受取りではありません。解体の日と契約の日は、必ず書面で残してください。解体工事の請負契約書や建物滅失登記の書類が手がかりになります。
要件② 住まなくなった日から3年目の年末まで
数え始めはその家屋に住まなくなった日で、取り壊した日ではありません。期限は3年を経過する日が属する年の12月31日です。
要件①と②は両方とも満たす必要があります。解体から1年以内でも、住まなくなった日からの期限が先に切れることがあるため、取り壊す前に2つの期限を並べて確認してください。
要件③ 貸付けその他の用に使用していない
取り壊してから契約の日までの間、その土地を貸付けその他の用に使用していないことが必要です。
注意
買主が決まるまでの間、更地を人に貸すとこの要件から外れます。短期間・知り合いという事情は考慮されません。契約が済むまで土地に手を付けないでください。判断に迷う場合は契約前にご相談ください。
一部だけ取り壊したときの但し書き
建物の一部だけを取り壊して敷地の一部を売る場合は、別の定めがあります。
ただし、家屋の一部を取り壊してその敷地の一部を売ったときに、残った家屋が居住できる状態になっている場合には、この特例の適用は受けられません。(国税庁タックスアンサーNo.3320)
見られているのは売ったあとに残った家屋が居住できる状態かどうかです。住み続けられる家が残っていれば、住まいを手放したことにはなりません。分筆の線や母屋を残すかを決める前に、税務上の扱いを確認してください。
跡地を区画して売った場合はどうなるか
更地を区画して道路や水道を通してから売る進め方もあります。国税庁の質疑応答事例が答えを示しています。
【照会要旨】居住の用に供していた家屋を取壊し、その取壊し跡地840に区画形質の変更(4区画に区画し、道路及び水道施設を設けた。)を加え、家屋の取壊し後1年以内に譲渡します。この場合の譲渡による所得は、所得税基本通達33-4(注)1の取扱いにより譲渡所得となりますが、これについて租税特別措置法第35条第1項(同条第3項の規定により適用する場合を除きます。以下同じです。)(第31条の3)を適用してよろしいですか。(国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「居住用家屋を取り壊し、跡地に区画形質の変更を加えて譲渡した場合」)
【回答要旨】照会に係る譲渡が、租税特別措置法関係通達35-2(31の3-5)の要件を満たす場合には、当該譲渡所得について租税特別措置法第35条第1項(第31条の3)の規定を適用して差し支えありません。(国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「居住用家屋を取り壊し、跡地に区画形質の変更を加えて譲渡した場合」)
区画形質の変更を加えたこと自体は、特例の適用を妨げません。ただし「要件を満たす場合には」という条件付きです。取り壊した日から1年以内に売る契約をしているかは区画工事の間も同じように進みます。工事の日程と1年の期限の関係を先に確かめてください。
要件を満たせたかどうかで、税額はどれだけ違うか
3要件を満たせるかどうかは、そのまま税額に跳ね返ります。次は一定の前提を置いた目安で、実際の税額を計算したものではありません。
所有期間が5年を超える長期譲渡所得で、譲渡所得の金額が3,000万円だったとします。税率は20.315パーセント(所得税15パーセント・復興特別所得税0.315パーセント・住民税5パーセント)とします。
| 区分 | 特別控除の適用を受けられた場合 | 受けられなかった場合 |
|---|---|---|
| 譲渡所得の金額 | 30,000,000円 | 30,000,000円 |
| 特別控除額 | 30,000,000円 | 0円 |
| 課税される譲渡所得の金額 | 0円 | 30,000,000円 |
| 税額(20.315パーセント) | 0円 | 6,094,500円 |
控除を受けられなかった場合の内訳は、所得税4,500,000円・復興特別所得税94,500円・住民税1,500,000円で、合計6,094,500円です。解体の順番や更地を貸したかという段取りの違いだけで、これだけの差が生まれます。差がつくのは解体を決める段階で、あとから直せません。
建物の取壊し費用の取扱い(取得費か譲渡費用か)は別の論点です。不動産を売ったときの費用は取得費・譲渡費用・どちらでもないの3つに分かれますで整理しています。
取り壊す前に確かめておきたいこと
失敗の多くは解体を決めた時点で起きます。工事の前に、次の点を確かめてください。
- 住まなくなったのはいつか(住民票でなく実際に住まなくなった日)
- 住まなくなった日から3年目の年末はいつか
- 解体予定日と売買契約の見込み時期(1年に収まるか)
- 2つの期限のうち先に来るのはどちらか
- 取り壊してから契約までに土地を貸す予定がないか
- 建物を一部だけ残す計画になっていないか
- 区画して売るなら造成工事が1年の期限に収まるか
- 解体・工事完了・滅失登記の書類を日付が分かる形で保管しているか
ここから先は個別判断です
要件に収まるかどうかは、住まなくなった経緯・解体の日程・買主との交渉を並べてみないと決まりません。一般的な要件のどれかを欠いても適用は受けられないため、両方の確認が必要です。買主から更地での引渡しを求められたときが、相談していただきたいタイミングです。
自宅を取り壊して土地を売る場合について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 買主から更地での引渡しを求められました。先に取り壊してしまって大丈夫ですか?
取り壊す前に、解体日と契約日の期限を確認してください(①1年以内の売却契約②3年目年末までの譲渡③貸付けなし、国税庁タックスアンサーNo.3320)。この1年以内は契約日で判定します。申告する年分の考え方は契約日と引渡日どちらの年分かをご覧ください。
Q2. 更地にしたあと、買主が決まるまでの間だけ月極駐車場として貸してもよいですか?
要件から外れます。取り壊してから契約の日までの間に土地を貸すと、3つ目の要件を満たしません。期間の長短や賃料は問われないため、契約が済むまで手を付けないのが安全です。
Q3. 住まなくなってから何年か経っています。今から取り壊して売っても間に合いますか?
2つの期限を並べて確認してください。解体から1年以内でも、住まなくなった日から3年目の年末という期限が先に来ることがあります。数え始めは実際に住まなくなった日です。
Q4. 跡地を分けて、道路を通してから複数区画で売る予定です。特例は使えますか?
区画形質の変更を加えたこと自体は適用を妨げません(国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》)。ただし通達の要件を満たす場合に限られます。造成工事が1年の期限に収まるかを先にご確認ください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.3320および質疑応答事例《譲渡所得》「居住用家屋を取り壊し、跡地に区画形質の変更を加えて譲渡した場合」は、ご自身が住んでいた家屋を取り壊して敷地を譲渡した場合の取扱いを示したものです。本記事は取り壊した場合の3つの要件と一部取壊しの取扱いだけを扱っており、3,000万円の特別控除の一般的な要件(譲渡の相手方、前年・前々年の特例適用の有無、添付する明細書等)、取壊し費用が取得費と譲渡費用のどちらになるかの区分、相続により取得した被相続人の居住用家屋に係る3,000万円の特別控除の要件、軽減税率の特例・買換えの特例・譲渡損失の特例の要件、住宅ローン控除との併用の可否は扱っていません。これらは別記事で解説しています。また、根拠として番号を挙げた租税特別措置法関係通達31の3-5・31の3-10・31の3-18・35-2・35-6および所得税基本通達33-4の内容、更地にした場合の固定資産税の取扱い、解体工事の進め方や売買条件の交渉についても扱っていません。本記事の数値例は、特別控除の適用を受けられた場合と受けられなかった場合の差を示すために一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3320「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3320.htm
- 国税庁 質疑応答事例《譲渡所得》「居住用家屋を取り壊し、跡地に区画形質の変更を加えて譲渡した場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/10.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第31条の3・第35条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
解体を決める前に、日程を並べてご相談ください
更地にして売る場合の可否は、解体の日と契約の日、そして住まなくなった日の並びで決まります。取り壊してしまったあとでは動かせるものが少なくなります。売買の話が進み始めた段階でお声がけいただければ、要件に収まる日程をご一緒に組み立てられます。代表税理士が直接ご対応します。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り