この記事のポイント
- 帳簿・領収書の保存期間は原則7年です(法人税法施行規則67条、所得税法施行規則63条)
- 記帳・保存の不備は青色申告の取消しにつながります(所得税法150条、法人税法127条)
- 令和6年1月から電子データは電子のまま保存が義務です(電子帳簿保存法)
- タイムスタンプや検索性など保存ルールは税務調査で重点確認されます
まず結論:帳簿と領収書の残し方で、調査の負担が決まります
帳簿と領収書をきちんと残しているかどうかで、税務調査の負担は大きく変わります。調査は「申告書→帳簿→証憑」の順に数字の一致を確認し、帳簿や領収書が欠けると税務署は見積もりで課税する「推計課税」を使えます(所得税法156条、法人税法131条)。記録があいまいだと、大きな追加納税につながります。
保存すべき書類と保存期間(一覧表)
| 書類区分 | 具体例 | 法人 | 個人(青色) |
|---|---|---|---|
| 帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など | 7年(10年) | 7年 |
| 決算関係書類 | 貸借対照表・損益計算書・棚卸表 | 7年(10年) | 7年 |
| 取引証憑 | 請求書・契約書・領収書・納品書 | 7年 | 5年(青色は7年) |
| 電子取引データ | メールPDF請求書・EDI・クラウド明細 | 7年(電子保存必須) | 7年(電子保存必須) |
※法人の赤字(欠損金)事業年度は、赤字を繰り越せる期間(10年)に合わせて保存期間も10年になります(法人税法施行規則67条1項柱書)。
青色申告の取消し——判例から学べること
次の場合、青色申告の承認を取り消せます(所得税法150条1項、法人税法127条1項)。
- 備付け・記録・保存がルールどおりでないこと
- 税務署長の指示に従わなかったこと
- 取引を隠す・偽って記載したこと など
参考になる判例:帳簿の不備で青色申告が取り消された例
東京高裁平成3年6月6日判決では①現金出納帳の未記帳②棚卸表なし③領収書の欠落が重なり、取消しが適法とされました。
注意
取消し後は30万円未満資産の即時経費化・赤字の10年繰越し・青色専従者給与などの優遇が使えず、再承認まで長期間かかります。
ポイント
「会計ソフト入力だけで大丈夫」とは限りません。取引と領収書を後から紐づけられる状態が必要です。摘要欄に証憑番号を書く方法をおすすめします。
電子帳簿保存法——電子データは「電子のまま」残します
令和6年1月1日以降に受け取った請求書・領収書の電子データは、印刷して保存するだけでは認められません。電子データのまま、決められた条件で保存する義務があります。
電子帳簿保存法の3区分
| 区分 | 対象 | 義務 or 任意 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿等 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙の請求書・領収書のスキャン保存 | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メールPDF・クラウド明細等の電子取引データ | 義務(令和6年1月〜) |
電子取引データの保存要件(手順4ステップ)
- 真実性の確保 ― 改ざんされていないと示すことです。タイムスタンプ、訂正・削除履歴が残るシステム、社内ルール(事務処理規程)のいずれかで足ります
- 可視性の確保 ― 画面やプリンタですぐ表示・印刷できることです
- 検索要件 ― 「日付・金額・取引先」でデータを探せることです
- システム関係書類の備付け ― 概要書や操作説明書を備えておくことです
※基準期間(前々年)の売上高5,000万円以下などの小規模事業者は、検索条件がゆるめられます(電子帳簿保存法施行規則4条1項3号但書)。
わが社は大丈夫?保存のチェックリスト
次の項目にチェックが付くか、確かめてみてください。
- □ 仕訳帳・総勘定元帳を会計ソフトで継続記録している
- □ 領収書・請求書を月ごと・取引先ごとに整理し、通帳等と突き合わせている
- □ 棚卸表を期末日付で作成し、在庫・固定資産の現物と帳簿を一致させている
- □ 電子取引を電子データのまま「日付・金額・取引先」で探せる状態にしている
- □ 電子帳簿保存法用の事務処理規程を作り、クラウド会計は訂正・削除の履歴が残る設定にしている
よくある質問(FAQ)
Q1. メールで届いたPDF請求書を印刷して保存していますが、これでも問題ないですか?
A. 紙の保存だけでは令和6年1月以降は要件を満たしません。PDFデータを電子帳簿保存法のルールで保存する必要があり、紙は補助バックアップで構いません。
Q2. 取引証憑をクラウドストレージに保存すれば検索要件を満たしますか?
A. 満たせます。ファイル名を「20260331_株式会社○○_330000.pdf」のように「日付_取引先_金額」でそろえれば、フォルダ内検索で要件をクリアできます。
Q3. 電子帳簿保存法に対応しないとどうなりますか?
A. 青色申告の取消しにつながるおそれがあり、調査での裏づけも認められず推計課税のリスクがあります。早めの体制づくりをおすすめします。
免責事項
本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。税法は頻繁に改正され、また個別事案により取扱いが異なるため、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁「電子帳簿保存法の概要」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/01.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5930「帳簿書類等の保存期間」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
- 所得税法150条・法人税法127条(青色申告承認の取消)
- 法人税法施行規則67条、所得税法施行規則63条(帳簿書類の保存期間)
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)e-Gov法令検索
- 裁判所ウェブサイト 判例検索https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
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