税務調査

税務調査で狙われやすい個人事業主の特徴と対策

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 帳簿・領収書の保存期間は原則7年です(法人税法施行規則67条、所得税法施行規則63条)
  • 記帳・保存の不備は青色申告の取消しにつながります(所得税法150条、法人税法127条)
  • 令和6年1月から電子データは電子のまま保存が義務です(電子帳簿保存法)
  • タイムスタンプや検索性など保存ルールは税務調査で重点確認されます

まず結論:帳簿と領収書の残し方で、調査の負担が決まります

帳簿と領収書をきちんと残しているかどうかで、税務調査の負担は大きく変わります。調査は「申告書→帳簿→証憑」の順に数字の一致を確認し、帳簿や領収書が欠けると税務署は見積もりで課税する「推計課税」を使えます(所得税法156条、法人税法131条)。記録があいまいだと、大きな追加納税につながります。

帳簿を細かく確認する様子
現金商売や経費率の偏りは注目されやすいポイントです

保存すべき書類と保存期間(一覧表)

書類区分 具体例 法人 個人(青色)
帳簿 仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など 7年(10年) 7年
決算関係書類 貸借対照表・損益計算書・棚卸表 7年(10年) 7年
取引証憑 請求書・契約書・領収書・納品書 7年 5年(青色は7年)
電子取引データ メールPDF請求書・EDI・クラウド明細 7年(電子保存必須) 7年(電子保存必須)

※法人の赤字(欠損金)事業年度は、赤字を繰り越せる期間(10年)に合わせて保存期間も10年になります(法人税法施行規則67条1項柱書)。

青色申告の取消し——判例から学べること

次の場合、青色申告の承認を取り消せます(所得税法150条1項、法人税法127条1項)。

  • 備付け・記録・保存がルールどおりでないこと
  • 税務署長の指示に従わなかったこと
  • 取引を隠す・偽って記載したこと など

参考になる判例:帳簿の不備で青色申告が取り消された例

東京高裁平成3年6月6日判決では①現金出納帳の未記帳②棚卸表なし③領収書の欠落が重なり、取消しが適法とされました。

注意

取消し後は30万円未満資産の即時経費化・赤字の10年繰越し・青色専従者給与などの優遇が使えず、再承認まで長期間かかります。

ポイント

「会計ソフト入力だけで大丈夫」とは限りません。取引と領収書を後から紐づけられる状態が必要です。摘要欄に証憑番号を書く方法をおすすめします。

整理された帳簿と未整理の領収書
日頃の記帳と証憑の保存が最大の調査対策です

電子帳簿保存法——電子データは「電子のまま」残します

令和6年1月1日以降に受け取った請求書・領収書の電子データは、印刷して保存するだけでは認められません。電子データのまま、決められた条件で保存する義務があります。

電子帳簿保存法の3区分

区分 対象 義務 or 任意
電子帳簿等保存 会計ソフトで作成した帳簿等 任意
スキャナ保存 紙の請求書・領収書のスキャン保存 任意
電子取引データ保存 メールPDF・クラウド明細等の電子取引データ 義務(令和6年1月〜)

電子取引データの保存要件(手順4ステップ)

  1. 真実性の確保 ― 改ざんされていないと示すことです。タイムスタンプ、訂正・削除履歴が残るシステム、社内ルール(事務処理規程)のいずれかで足ります
  2. 可視性の確保 ― 画面やプリンタですぐ表示・印刷できることです
  3. 検索要件 ― 「日付・金額・取引先」でデータを探せることです
  4. システム関係書類の備付け ― 概要書や操作説明書を備えておくことです

※基準期間(前々年)の売上高5,000万円以下などの小規模事業者は、検索条件がゆるめられます(電子帳簿保存法施行規則4条1項3号但書)。

税務署からの封筒
税務署からの封筒

わが社は大丈夫?保存のチェックリスト

次の項目にチェックが付くか、確かめてみてください。

  • □ 仕訳帳・総勘定元帳を会計ソフトで継続記録している
  • □ 領収書・請求書を月ごと・取引先ごとに整理し、通帳等と突き合わせている
  • □ 棚卸表を期末日付で作成し、在庫・固定資産の現物と帳簿を一致させている
  • □ 電子取引を電子データのまま「日付・金額・取引先」で探せる状態にしている
  • □ 電子帳簿保存法用の事務処理規程を作り、クラウド会計は訂正・削除の履歴が残る設定にしている

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よくある質問(FAQ)

Q1. メールで届いたPDF請求書を印刷して保存していますが、これでも問題ないですか?

A. 紙の保存だけでは令和6年1月以降は要件を満たしません。PDFデータを電子帳簿保存法のルールで保存する必要があり、紙は補助バックアップで構いません。

Q2. 取引証憑をクラウドストレージに保存すれば検索要件を満たしますか?

A. 満たせます。ファイル名を「20260331_株式会社○○_330000.pdf」のように「日付_取引先_金額」でそろえれば、フォルダ内検索で要件をクリアできます。

Q3. 電子帳簿保存法に対応しないとどうなりますか?

A. 青色申告の取消しにつながるおそれがあり、調査での裏づけも認められず推計課税のリスクがあります。早めの体制づくりをおすすめします。

免責事項

本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。税法は頻繁に改正され、また個別事案により取扱いが異なるため、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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