法人税・節税

有姿除却とは
使わなくなった設備を捨てなくても除却損を損金にできる要件

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 「有姿除却」は解体・廃棄をしなくても除却損を損金にできる制度です(法人税基本通達7-7-2)
  • 金額は帳簿価額から処分見込価額を控除した金額。帳簿価額の全額ではありません
  • 対象は2つの類型:使用を廃止した固定資産と、生産を中止した専用金型等です
  • ソフトウエアは7-7-2の2、建替えで取り壊した建物は7-7-1が適用されます

まず結論:解体していなくても、除却損にできる場合があります

工場の隅で何年も動いていない機械や、いまも無形固定資産として残る前のシステム——決算では「使っていないのに帳簿に残ったままの資産」によく出会います。社長からは決まって「捨てないと経費にできないんでしょう」という答えが返ります。

結論からお伝えします。解体や廃棄をしていなくても、除却損として損金の額に算入することができる場合があります。法人税基本通達7-7-2が定める「有姿除却(ゆうしじょきゃく)」です。姿はそのままでも、税務上は除却したものとして扱います。ただし対象は2つの類型に限られます。順番に見ていきます。

使わなくなった設備が帳簿に残ったままになっていないかを確認します
使わなくなった設備が帳簿に残ったままになっていないかを確認します

通達の原文を読む ―― 有姿除却の2つの類型

まず原文をご覧ください。

7-7-2 次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。
(1) その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
(2) 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの(法人税基本通達7-7-2)

固定資産台帳と通達の条文を照らし合わせて確認します
該当する類型かどうかは、条文の要件と照らし合わせて判断します

類型1 使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないもの

「その使用を廃止し」かつ「今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる」——2つの条件が重なって初めて該当します。予備機として置いてある、繁忙期だけ動かしている、「たまたま今期は使わなかった」というものは使用を廃止したとはいえません

類型2 特定の製品の生産のために専用されていた金型等

こちらは3つの条件が重なります。

  • 特定の製品の生産のために専用されていた金型等であること(ほかの製品にも使い回せるものは対象外)
  • その製品の生産を中止したこと
  • 将来使用される可能性のほとんどないことが、その後の状況等からみて明らかであること

共通するのは、金額の出し方です

どちらの類型でも、除却損になるのは「帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額」です。帳簿価額の全額ではありません。

数字で見る ―― 除却損はいくらになるか

単純な例で確かめます。一定の前提を置いた目安で、実際の金額は取得価額・経過年数・処分見込価額の見積りで変わります。

  • 製造用の機械 取得価額 12,000,000円
  • これまでの減価償却累計額 8,400,000円
  • スクラップとして引き取ってもらえる見込みの金額 300,000円
項目金額
取得価額12,000,000円
減価償却累計額8,400,000円
帳簿価額(12,000,000円−8,400,000円)3,600,000円
処分見込価額△300,000円
除却損3,300,000円

除却損は3,300,000円です。帳簿価額の3,600,000円ではなく、処分見込価額の300,000円だけ少なくなります。

計算例

税率30パーセントと仮定した場合の目安

3,300,000円 × 30パーセント = 990,000円

実際の税率は法人の規模や所得の水準によって異なります。

なお、帳簿価額は取得価額から出発します。買ったときにどこまでを取得価額に入れたかで、いま残っている帳簿価額も変わります(減価償却資産の取得価額に含めなくてよい付随費用)。

分かれ目は「処分見込価額をいくらと見るか」

処分見込価額をゼロと見れば、除却損は3,600,000円になり300,000円増えます。ここが実務でいちばん議論になるところです。通達に計算式はありません。だからこそなぜその金額なのか説明できる状態にしておくことが大切です。

  • 中古機械の買取業者に見積りを取り、その回答書を保管する
  • スクラップとして引き取る業者の単価表や実際の引取伝票を残す
  • ゼロと見るのであれば、なぜゼロなのか(引き取り手が見つからなかった経緯、同型機の中古相場が付いていないこと等)を書き残す

注意

見積りが甘ければ、除却損が過大になります。「どうせ売れないから」と口頭で片づけてしまうのがいちばん危ないところです。金額の根拠は、後から作れません。

処分見込価額をいくらと見るかは、根拠となる資料をその時点で残しておきます
処分見込価額をいくらと見るかは、根拠となる資料をその時点で残しておきます

ソフトウエアは壊せない ―― だから別の定めがあります

機械と違い、ソフトウエアは物理的に壊せません。サーバーから消しても外から「廃棄」とは見えないため、別の通達が用意されています。

7-7-2の2 ソフトウエアにつき物理的な除却、廃棄、消滅等がない場合であっても、次に掲げるように当該ソフトウエアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、当該ソフトウエアの帳簿価額(処分見込価額がある場合には、これを控除した残額)を当該事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(1) 自社利用のソフトウエアについて、そのソフトウエアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され、当該ソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合、又はハードウエアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウエアを利用することになり、従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合
(2) 複写して販売するための原本となるソフトウエアについて、新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合(法人税基本通達7-7-2の2)

自社で使っているソフトウエアの場合

(1)は2つの場面です。その業務自体が廃止された場合と、ハードウエアやOSを変えて別のソフトに乗り換えた場合です。後者は中小企業でも起こりやすく、システムを入れ替えたとき、前システムの未償却残高が帳簿に残っていないかご確認ください。

複写して販売するための原本の場合

(2)はソフトを製品として売る会社の話です。「社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合」と、通達が書類の例まで挙げています。販売を打ち切る決裁と取引先への通知が残っているかが問われます。

数字で見る

ソフトウエアは減価償却資産(無形固定資産)です。耐用年数は国税庁タックスアンサーNo.5461によれば複写して販売するための原本または研究開発用のものは3年、その他のものは5年です。

計算例

会計システム6,000,000円を3年使って乗り換えた場合

6,000,000円 - 1,200,000円 × 3年 = 2,400,000円(3年経過後の帳簿価額)2,400,000円 × 30パーセント = 720,000円(税率30パーセントと仮定した目安)

耐用年数5年で均等に配分するという前提を置いた概算です。入れ替えを検討される段階でご相談いただくと、旧システムの残高と新しい投資の税務上の取扱いをあわせて整理できます(中小企業の設備投資に使える税制)。

建て替えのために取り壊した建物は、また別の話です

有姿除却と混同しやすいのが、建物を取り壊して建て替える場面です。こちらは7-7-1という別の通達が扱います。

7-7-1 法人がその有する建物、構築物等でまだ使用に耐えうるものを取り壊し新たにこれに代わる建物、構築物等を取得した場合(7-3-6《土地とともに取得した建物等の取壊し費等》に該当する場合を除く。)には、その取り壊した資産の取壊し直前の帳簿価額(取り壊した時における廃材等の見積額を除く。)は、その取り壊した日の属する事業年度の損金の額に算入する。(法人税基本通達7-7-1)

読みどころは3つです。

  • 「まだ使用に耐えうるもの」が対象です。ぼろぼろになったから壊した、という話ではありません
  • 「新たにこれに代わる建物、構築物等を取得した場合」、つまり建て替えです
  • 損金になるのは取壊し直前の帳簿価額から廃材等の見積額を除いた額です

計算例

取壊し直前の帳簿価額8,000,000円・廃材等の見積額200,000円の場合

8,000,000円 - 200,000円 = 7,800,000円(損金算入額)

通達の括弧書きにご注意ください。7-3-6(土地とともに取得した建物等の取壊し費等)に該当する場合は除かれています。土地を使う目的で建物付きの土地を買い、その建物を取り壊した場合は、この7-7-1の話ではありません。

使用を廃止したという事実は、その時点の書類でしか残せません
使用を廃止したという事実は、その時点の書類でしか残せません

実務の分かれ目 ―― 「使用を廃止した」ことをどう残すか

有姿除却で難しいのは金額の計算ではなく、「その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がない」という状態をどう示すかです。機械の見た目は去年と変わらず、変わったのは会社の意思と使い方だけです。実務では次のようなものを残していただくことが多いです。

  • 使用停止の決裁書・りん議書(いつ、どの資産の使用をやめると決めたのか)
  • 稼働記録・生産日報の停止(その日以降動かしていないと分かるもの)
  • 電源や配管の切離しの記録(すぐには動かせない状態にしたこと)
  • 現況の写真(撮影日が分かる形で)
  • 金型であれば、生産中止の決裁とその後の受注・生産実績
  • 処分見込価額の根拠(買取業者の見積り、スクラップ単価等)

ポイント

これらを揃えれば必ず認められる、というものではありません。通達が求めているのは書類そのものではなく「使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がない」という事実です。書類はその事実を示す手段にすぎません。

逆に言えば、事実はあるのに何も残していない状態がいちばんもったいないのです。決算後に「実はあの機械、去年から止めていました」と伺っても、裏づけがなければ説明の材料がありません。

決算の前に、帳簿の固定資産一覧を一度ご覧ください

ここまでを、実務の順番に並べ直します。

  • 固定資産台帳を上から順に見て、いま実際に使っているかを1件ずつ確認する
  • 使っていないものは、いつ使用をやめたのかを特定する。「一昨年から」なら当期の話ではないかもしれません
  • 予備機・繁忙期用と、本当に使わないものを分ける。前者は対象になりません
  • 処分見込価額を見積もり、その根拠を残す
  • 無形固定資産の欄も忘れずに見る。入れ替えたはずのシステムが残っていることがあります
  • 建替え予定があるなら、7-7-1と7-3-6のどちらの場面かを先に整理する

ここから先は個別判断です。同じ「使っていない機械」でも、止めた経緯や代替設備の有無、その後の使い方によって結論が変わります。

決算日を過ぎてからでは打てる手が限られます。期末の3か月前くらいから固定資産台帳を見ておくと、判断材料を集める時間が取れます決算対策は決算日の3か月前から)。「決算前に有姿除却をすれば必ず節税になる」という話ではありません。要件を満たす事実があるかを根拠づけて確かめる作業です。

有姿除却について小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 使っていない機械を捨てていないのですが、除却損にできますか?

解体・破砕・廃棄をしていなくても、法人税基本通達7-7-2により除却損を損金にできる場合があります(有姿除却)。対象は使用を廃止した固定資産か、生産を中止した専用金型等の2類型に限られます。

Q2. 除却損の金額は、帳簿価額の全額でよいのでしょうか?

全額ではありません。帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額が除却損です(法人税基本通達7-7-2)。処分見込価額をいくらと見るかが実務の分かれ目で、買取業者の見積りなど根拠を残すことが大切です。

Q3. 入れ替えて使わなくなった会計システムも、除却損にできますか?

できます。法人税基本通達7-7-2の2により、業務廃止やシステム変更で使わなくなったことが明らかなら、帳簿価額(処分見込価額控除後)を損金にできます。固定資産台帳の無形固定資産の欄をご確認ください。

Q4. 古い建物を取り壊して建て替えます。建物の帳簿価額はどうなりますか?

有姿除却ではなく法人税基本通達7-7-1の話です。まだ使用に耐える建物を取り壊し建て替えた場合、取壊し直前の帳簿価額(廃材等見積額を除く)を損金算入します。ただし7-3-6に該当する場合は対象外です。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は、法人税基本通達7-7-2が定める有姿除却の2つの類型と金額の計算方法、7-7-2の2によるソフトウエアの除却、および7-7-1による建て替えのために取り壊した建物の帳簿価額の取扱いという基本的な枠組みを扱っています。総合償却資産の除却価額の計算をはじめとする7-7-3以降の細目、7-3-6(土地とともに取得した建物等の取壊し費等)の詳細、資産の種類ごとの耐用年数や償却率、除却に伴う消費税の取扱い、償却資産税の申告、および個人事業主(所得税)における除却の取扱いについては、本記事では扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、税率を仮に置いた金額は実際に適用される税率とは異なります。有姿除却が認められるかどうかは、使用を廃止した経緯や代替設備の有無など、個々の事実関係によって判断が変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

固定資産台帳に、使っていない資産が残っていませんか

有姿除却は、解体や廃棄をしていなくても除却損を計上できる仕組みです。ただし対象は通達が挙げる2つの類型に限られ、金額も帳簿価額から処分見込価額を差し引いたものになります。難しいのは計算ではなく、「その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がない」という事実を、どのような記録で示すかという点です。ソフトウエアには別の定めがあり、建て替えのための取壊しはさらに別の通達が扱います。固定資産台帳と設備の使用状況をお聞かせいただければ、どの資産がどの規定の話なのか、いま何を残しておくべきかを整理してお伝えします。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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