不動産譲渡所得

不動産売却の確定申告はどの年分?
年をまたぐ売却は引渡日と契約日を選べます

この記事の答え

  • 売った日は原則、引渡日です。契約の効力が生じた日(一般的に契約日)でも申告できます。
  • 年末に契約して翌年に引き渡す人は、どちらの年分で申告するかを選べます。
  • 5年の境目をまたぐ例では、利益2,000万円で税額が約386万円変わります(特例なしの目安)。
小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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確定申告は、どの年の分で行いますか

売買契約書の上で鍵を引き渡す場面
売った日は、原則として買主に引き渡した日です

不動産を売ったときの確定申告は、「売った日」が入る年の分として行います。売った日は、原則として、買主に物件を引き渡した日(引渡日)です。申告の期間は、原則として、売った年の翌年2月16日から3月15日までです。

ただし、売主は、売買契約の効力が生じた日を「売った日」として申告することもできます。この日は、一般的には契約を結んだ日です。この記事では「契約日」と呼びます。

選ぶ意味があるのは、年末に契約して、年明けに引き渡す場合のように、2つの日の年が違うときです。

図1 どの年の分で申告する? 30秒チェック
質問1 売買契約と引渡しは、同じ年ですか?
はいその年の分で申告します
いいえ質問2へ進みます
質問2 契約の年の分で申告しますか?選ばなければ、原則どおり引渡しの年の分です。
はい契約の年の分で申告します
いいえ引渡しの年の分で申告します

契約の年とは、売買契約の効力が生じた日の年です。申告する年は、代金を全部受け取った年より後には、原則としてなりません。農地の売買など、別の扱いになる場合があります。

引渡しとは、物件を買主が自由に使える状態にすることです。たとえば、所有権を移す登記に必要な書類を買主に渡すことが、これに当たります。

ポイント

引渡日は、契約書に書いた予定日だけでは決まりません。買主が実際に使い始めた時期なども見て判断されます。

また、売った日は原則として、代金を全部受け取った日より後にはなりません。

年をまたぐと、税金はいくら変わりますか

12月31日から1月1日へめくる日めくりカレンダー
年をまたぐ売却は、申告する年で税額が変わることがあります

申告する年が変わると、税率が約2倍違うことがあります。不動産を売った利益(譲渡所得)の税率は、売った年の1月1日に何年持っていたかで決まるからです。

5年を超えていれば「長期譲渡所得」で、所得税と住民税などを合わせた税率は20.315%です。5年以下なら「短期譲渡所得」で、税率は39.63%です。どちらの年の1月1日でも5年を超えるかどうかが同じ人に、この税率の差は出ません。

会社員のAさんの例で見てみます。Aさんは、令和3年5月10日に買った土地を売ります。自宅を売るときの3,000万円の特例は使えない前提です。

売買契約は令和8年12月20日、引渡しは令和9年1月15日です。売却の利益は2,000万円とします。

図2 Aさんの2つの申告のしかた

引渡日で申告(原則)

  • 申告する年:令和9年分
  • 判定の日:令和9年1月1日
  • 持っていた期間:約5年8か月
  • 区分:長期(税率20.315%)

契約日で申告(選択)

  • 申告する年:令和8年分
  • 判定の日:令和8年1月1日
  • 持っていた期間:約4年8か月
  • 区分:短期(税率39.63%)
図3 Aさんの税額(利益2,000万円の場合)
所得税など住民税
短期
7,926,000円
長期
4,063,000円

利益2,000万円に税率を掛けた目安です。特例や所得控除は考えていません。

Aさんは、引渡日で申告すると、契約日で申告するより税額が3,863,000円少なくなります。

ただし、Aさんが引渡しも年内に済ませると、どちらの日でも令和8年分で、短期になります。引渡しの時期は、契約を結ぶ前に買主と話し合うことが大切です。

補足

令和9年分からは、所得税額に掛ける率が変わります。復興特別所得税が2.1%から1.1%になり、防衛特別所得税1%が加わります。合計の税率は同じです。

10年を超えて持っていた自宅を売る場合など、特例で税率が下がることもあります。5年の数え方は、長期と短期の判定の記事で説明しています。

税率のほかに、変わることはありますか

窓のあるキッチンとカップ
住まなくなった自宅を売る特例には、期限があります

特例の期限、家族の控除、税金を納める時期も変わることがあります。

特例の期限

住まなくなった自宅を売る3,000万円の特例には、売る期限があります。住まなくなった日から3年を経過する日が入る年の、12月31日までです。

年末に契約して翌年に引き渡す人は、選ぶ日によって、この期限に間に合うかが変わることがあります。

相続した空き家を売る特例には、国税庁の事例があります。12月に土地だけの売買契約を結び、翌年2月26日までに売主が家を取り壊す約束をした事例です。

国税庁は、この事例を契約日で申告すると、特例を使えないと回答しています。土地だけを売るときに契約日で申告するなら、契約の時までに取り壊しを終える必要があるからです。翌年2月15日までの取り壊しで足りるのは、家も一緒に売る契約の場合です。

家族の控除

売却の利益は、配偶者控除や扶養控除を使えるかを判定する「合計所得金額」に入ります。3,000万円の特例を使っても、特例を引く前の利益で判定します。

利益が入る年が変わると、控除を使える年も変わることがあります。

税金を納める時期

令和8年分で申告すると、所得税の納付は令和9年3月15日までです。令和9年分なら、令和10年3月15日までです。

どんな失敗がありますか

売却の書類をとじたファイルと鍵
売買契約書と入金の記録は、そろえて保管します

どちらの日で申告するかは、実際の日付に合わせ、後から変えられないものとして決めます。

失敗の例

  • 鍵だけ年明けに渡した例。代金を年内に全部受け取ると、鍵が年明けでも、売った日は原則として年明けになりません。
  • 申告の後で年を変えようとした例。契約の年の分で申告した人が、後から引渡しの年の分だと主張しました。国税不服審判所は認めませんでした。
  • 土地と建物で日を分けようとする例。1つの契約で売る土地と建物は、どちらも引渡日か、どちらも契約日で申告します。分けて申告することは認められないと、国税不服審判所は判断しています。

どこまで自分で判断できますか

売買契約書で日付を確かめ、5年を超えるかを数えるところまでは、ご自身でできます。次の場合は、個別の判断が必要です。

  • 3,000万円の特例など、期限のある特例を使う
  • 相続した不動産、賃貸していた不動産、農地を売る
  • 配偶者や家族の控除、国民健康保険料に影響する

税理士が入ると変わること

小松公認会計士・税理士事務所では、両方の年の分で税額を計算して比べます。特例の期限と条件は、売買契約書や住民票などの日付で確かめます。

引渡しを年内にするか年明けにするかの試算は、契約の前にお出しします。年末に売却の予定がある方は、日付を決める前にご相談ください。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 手付金だけ年内に受け取ったときは、どの年の分ですか?

手付金を受け取った日では決まりません。原則は引渡しの年の分で、契約の年の分を選ぶこともできます。代金を2年以上に分けて受け取っても、代金の全額が売った年の収入になります。

Q2. 買った日は、どの日で数えますか?

買った日は、原則として引渡しを受けた日です。契約の効力が生じた日で数えることもできます。完成前に契約した新築は、完成より前の日にはなりません。相続や贈与でもらった不動産は、原則として前の持ち主が買った日から数えます。

Q3. 確定申告の期限はいつですか?

売った日が入る年の翌年2月16日から3月15日までです。マイホームの売却損の特例などで還付申告になる人は、2月15日以前でも申告できます。

Q4. 売った人が亡くなったときや、出国するときの期限は?

亡くなったときは、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に申告します。出国するときは、納税管理人を選任する場合を除き、原則として出国の時までに申告します。

免責事項

本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。譲渡の日の判定は、個々の契約内容と事実関係によって結論が異なります。記載した計算例は、特例や所得控除を考えないなど、一定の前提を置いた目安です。具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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