この記事のポイント
- 青色申告は届出ではなく税務署長の承認を受ける制度です
- 申請期限は原則としてその事業年度開始の日の前日までです
- 新設法人は設立の日以後3月を経過した日と第1期末の早い日の前日までです
- 白色だと赤字の繰越しも特別償却も使えません
まず結論:青色申告は届出ではなく「承認」です
法人の青色申告は、出せば済む届出ではありません。
法人税法121条1項は、こう定めています。
内国法人は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、次に掲げる申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。
承認を受けていない会社は、どれだけ帳簿が整っていても白色申告です。
そして承認の申請には、過ぎたら取り返せない期限があります。
期限を1日過ぎると、その事業年度は白色のまま確定します。
設立時の届出全般は開業・設立時の届出で扱っています。

申請期限 ― 原則は「事業年度開始の日の前日」まで
期限は、法人税法122条が定めています。
原則は、青色で出そうとする事業年度が始まる日の前日までです。
| 場面 | 提出期限 |
|---|---|
| すでに事業を行っている法人 | 青色で申告しようとする事業年度開始の日の前日まで |
| 設立の日の属する事業年度 | 設立の日以後3月を経過した日とその事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで |
| 設立から第1期末までが3月に満たない場合 | 翌事業年度について、設立の日以後3月を経過した日と翌事業年度終了の日のうち早い日の前日まで |
新設法人は「設立から3か月以内」ではなく、第1期が短ければもっと早く締め切られます。
たとえば設立から2か月で第1期が終わる会社は、その期末の前日が期限です。
提出先は納税地の所轄税務署長で、書類名は「青色申告の承認申請書」です。
ポイント
法人税法125条は、事業年度終了の日までに承認も却下もなかったときは、その日に承認があったものとみなすとしています(中間申告書を提出すべき法人は事業年度開始の日以後6月を経過する日)。承認の通知が来ないまま期末を迎えても、申請が期限内であれば青色として扱われます。
白色のままだと使えなくなるもの
失うのは「少し得をする特典」ではありません。
会社の税負担そのものを左右する制度が、まとめて使えなくなります。
| 制度 | 根拠 | 白色だと |
|---|---|---|
| 欠損金の繰越控除(10年) | 法人税法57条・58条 | 災害損失金額を超える部分はないものとされます |
| 欠損金の繰戻し還付 | 法人税法80条 | 青色申告書である確定申告書が要件で使えません |
| 少額減価償却資産の特例 | 租税特別措置法67条の5 | 条文が「青色申告書を提出するもの」に限定 |
| 中小企業投資促進税制 | 租税特別措置法42条の6 | 同上。特別償却も税額控除も使えません |
| 中小企業経営強化税制 | 租税特別措置法42条の12の4 | 同上 |
とくに大きいのが、赤字を翌期以降に持ち越せないことです。
法人税法58条1項は、青色申告書を提出する事業年度でない事業年度に生じた欠損金額のうち、災害損失金額を超える部分は「ないものとする」と定めています。
繰越控除の詳しい仕組みは欠損金の繰越控除と繰戻し還付をご覧ください。
数字で見る:第1期の赤字500万円が消えるかどうか
創業期の赤字は、青色かどうかで扱いが正反対になります。
計算例
第1期に500万円の欠損金、第2期の所得が800万円の中小法人
青色 8,000,000円 − 5,000,000円 = 3,000,000円が課税所得 白色 控除できず 8,000,000円がそのまま課税所得 課税所得の差 5,000,000円この差額に、法人税・地方法人税・法人住民税・事業税がまとめてかかります。
資本金1億円以下の中小法人等は、所得の全額まで欠損金を控除できます。
それ以外の法人は、所得金額の50パーセントが上限です(法人税法57条1項・11項)。
承認申請書1枚を出したかどうかで、この差が生まれます。
計算例
1台38万円のパソコンを8台(合計304万円)買った場合
青色 少額減価償却資産の特例で 3,000,000円まで即時に損金(年300万円が上限) 白色 特例を使えず、耐用年数にわたって減価償却令和8年4月1日以後に取得した資産は、1件あたり40万円未満が対象です。

承認は、取り消されることがあります
承認を受けた後も、条件を満たさなければ取り消されます。
法人税法127条1項は、帳簿書類の備付け・記録・保存が定めどおりでないとき、隠ぺい・仮装があるとき、確定申告書を提出期限までに提出しなかったときを取消事由としています。
取消しは、その事業年度までさかのぼって行われます。
国税庁の事務運営指針は、運用の基準を具体的に示しています。
- 期限内に申告しない ― 「2事業年度連続してその提出期限内に…申告書の提出がない場合」に取消しを行うとされています
- 帳簿書類を見せない ― 「単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、これを税務職員に提示することを含む」とされ、提示の拒否は取消事由にあたります
注意
法人税法123条3号は、取消しの通知を受けた日や青色申告を取りやめる届出書を提出した日以後1年以内に再び申請書を提出したことを、却下できる事実として挙げています。いったん失うと、すぐには戻せません。

青色にしかない守り ― 帳簿を調べずに更正されません
青色申告の価値は、節税の制度だけではありません。
法人税法130条1項は、青色申告書に係る更正について次のように定めています。
その内国法人の帳簿書類を調査し、その調査により当該青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の計算に誤りがあると認められる場合に限り、これをすることができる。
さらに131条は、推計による更正・決定について、青色申告書に係る更正をする場合を除くとしています。
白色だと、売上高や従業員数から所得を推計して課税されることがあります。
青色の会社には、この推計課税が及びません。
補足
「理由が書かれるのは青色だけ」と説明されることがありますが、現在は正確ではありません。国税通則法74条の14第1項は、行政手続法の適用除外から理由の提示に関する規定を明示的に除いており、白色の法人への処分にも理由の提示が及びます。青色に固有なのは、上記の帳簿調査の要件と推計課税の排除です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で進められるのは、次の4点です。
- 登記事項証明書で設立の日を確認する
- 定款で事業年度を確認し、第1期の終了日を特定する
- 設立の日以後3月を経過した日と第1期末を比べ、早いほうの前日を書き出す
- 過去の申告書の控えで、すでに青色の承認を受けているかを確認する
ここから先は個別判断です。
すでに白色で申告してきた会社は、次の事業年度が始まる日の前日が最後の機会になります。
決算期の変更と組み合わせるかどうかも、状況によります。
承認を受けた後は、帳簿書類の備付けと保存が続く義務になります。
税理士が入ると変わるのは、期限の逆算と帳簿の体制です
ひとつめは、申請期限の特定です。設立の日と第1期末から、いずれか早い日の前日を確定します。
ふたつめは、白色で進んだ場合の損失の試算です。繰り越せない欠損金の額を金額で示します。
みっつめは、帳簿書類の体制づくりです。取消事由にならない記帳と保存の形を整えます。
よっつめは、期限内申告の管理です。2事業年度連続の期限後申告を避ける日程を組みます。
いつつめは、使える特例の棚卸しです。設備投資の予定から、特別償却や税額控除を選びます。
白色のまま決算を重ねた会社ほど、失っている金額は大きくなります。
設備投資の制度は中小企業の2つの設備投資税制をご覧ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 設立したばかりですが、いつまでに申請すればよいですか?
法人税法122条2項により、設立の日以後3月を経過した日と、その事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までです。第1期が3か月より短い会社は、期末の前日が期限になります。「設立から3か月以内」と覚えていると間に合わないことがあります。
Q2. 白色で申告してしまった期の赤字は、後から繰り越せますか?
できません。法人税法58条1項は、青色申告書を提出する事業年度でない事業年度に生じた欠損金額のうち災害損失金額を超える部分は「ないものとする」としています。承認を受けられるのは、申請した事業年度以後です。
Q3. 承認の通知が来ません。青色で申告してよいですか?
法人税法125条により、その事業年度終了の日までに承認も却下もなかったときは、その日に承認があったものとみなされます(中間申告書を提出すべき法人は事業年度開始の日以後6月を経過する日)。期限内に申請していれば、通知を待たずに青色として扱われます。
Q4. 期限後申告をすると、青色は取り消されますか?
法人税法127条1項4号は期限内に申告しなかったことを取消事由としています。国税庁の事務運営指針は、この規定による取消しを「2事業年度連続してその提出期限内に…申告書の提出がない場合」に行うとしています。1期でも期限後になれば、次は後がありません。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法121条・122条・123条・125条・126条・127条・57条・58条・80条・130条・131条、租税特別措置法67条の5・42条の6・42条の12の4、国税通則法74条の14、国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」、国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」の内容を扱っています。外国法人・公益法人等・人格のない社団等・通算法人に固有の取扱い、青色申告の取りやめの手続、承認申請書の具体的な記載方法、欠損金の繰戻し還付における中小企業者等以外の法人に対する不適用措置の適用期間、各特別償却・税額控除の個別の要件は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための設例であり、一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(121条・122条・123条・125条・127条・57条・58条・80条・130条・131条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(67条の5・42条の6・42条の12の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_14.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm
- 国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm
青色申告の承認申請は、期限を1日でも過ぎると戻せません
法人の青色申告は届出ではなく承認です。申請期限は原則としてその事業年度開始の日の前日まで、新設法人は設立の日以後3月を経過した日と第1期終了の日のうちいずれか早い日の前日までで、1日でも過ぎればその事業年度は白色のまま確定します。白色では欠損金の繰越控除も繰戻し還付も少額減価償却資産の特例も使えず、推計による課税も及びます。代表税理士が、設立の日と事業年度から申請期限を逆算し、承認申請書の作成、取消事由にならない帳簿書類の体制づくり、期限内申告の管理まで、通して対応します。
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