この記事のポイント
- 一括で買った代金は土地と建物に分けて計上し、土地は減価償却しません
- 契約書で建物の金額が明らかなら通常はその額、なければ固定資産税評価額の比などで分けます
- 売主に払う固定資産税の精算金は、租税公課ではなく取得価額とした裁決があります
- 当初から取り壊して土地を使う目的が明らかなら、建物の帳簿価額と取壊費用は土地の取得価額です
まず結論:一括で買った代金は、土地と建物に分けて計上します
中古の事務所や店舗、倉庫を土地ごと買うと、契約書の代金が総額だけのことがあります。
法人税では、この代金を土地と建物に分け、それぞれの取得価額(帳簿に載せる資産の金額)にします。
建物は減価償却(使う年数に分けて費用にする処理)の対象です。
土地は、法人税法施行令13条が挙げる減価償却資産に入っていません。
そのため、建物の割合が大きいほど、毎年の償却費が増えます。
建物の割合は、契約書や公的な評価額など、根拠のある方法で決める必要があります。
固定資産税の精算金や仲介手数料も、取得価額に含めるのが基本です。

取得価額は「代金」と「購入のために要した費用」の合計です
根拠の柱は、法人税法施行令54条1項1号です。
当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
(法人税法施行令54条1項1号イ)
これに、事業に使うために直接要した費用を加えます(同号ロ)。
土地の取得価額も、この規定の例によります(法人税基本通達7-3-16の2)。
不動産会社に払う仲介手数料は、購入のために要した費用として取得価額に含めます。
一方、不動産取得税や登録免許税などは、取得価額に含めないことができます(同通達7-3-3の2)。
買うための借入金の利子も、使用開始前の分を含め、含めないことができます(同通達7-3-1の2)。
詳しくは付随費用の記事をご覧ください。
土地と建物は、まず契約書の内訳で分けます
出発点は売買契約書です。
契約書等で建物の金額が明らかなら、通常はその額によります(令和5年6月21日裁決など)。
契約書に建物の消費税額だけがある場合も、建物の代金は計算で出せます。
土地の譲渡は非課税で、税率は10%だからです(タックスアンサー No.6201・No.6303)。
内訳も消費税額もないときは、合理的な方法で分けます。
裁決は、固定資産税評価額(固定資産税のための公的な評価額)の比を、一般的には合理的としています。
同じ機関が同じ時期に、土地と建物を評価しているためです(平成27年6月1日裁決)。
改修の価値が評価額に出ていない建物もあります。
そうした建物を、鑑定評価の積算価格の比で分けた裁決があります(令和5年6月21日裁決)。
計算例
例1:総額110,000,000円、契約書の消費税額3,000,000円
建物(税抜) 3,000,000円 ÷ 10% = 30,000,000円 建物(税込) 30,000,000円 + 3,000,000円 = 33,000,000円 土地 110,000,000円 - 33,000,000円 = 77,000,000円例2:総額100,000,000円、評価額が土地39,000,000円・建物10,000,000円
建物の評価額+消費税相当額 10,000,000円 × 110% = 11,000,000円 合計 39,000,000円 + 11,000,000円 = 50,000,000円 建物(税込) 100,000,000円 × 11,000,000円 ÷ 50,000,000円 = 22,000,000円 土地 100,000,000円 × 39,000,000円 ÷ 50,000,000円 = 78,000,000円例2は建物に消費税がかかる前提で、建物側に消費税相当額を加えます(平成27年6月1日裁決の考え方)。
金額は一定の前提を置いた目安です。実際の区分は、契約内容と資料で決まります。

固定資産税の精算金は、租税公課ではなく取得価額に入ります
固定資産税は、1月1日(賦課期日)の所有者に課されます(地方税法359条・343条)。
売買では、その年度の税額のうち引渡し後の分を、買主が売主に払う取決めをすることがあります。
この精算金を租税公課(税金)として損金にした法人の主張は、裁決で退けられています。
当該未経過固定資産税等相当額は取得関連費用ではなく、狭義の購入の代価として取得価額に含まれるとするのが相当である。
(平成25年8月30日裁決の要旨)
買主は固定資産税の納税義務者ではなく、精算金は売買の取引条件の一つだからです(同裁決)。
土地の分の精算金を、土地の取得価額に加えるとした裁決もあります(平成13年9月3日裁決)。
精算金は、土地と建物それぞれの取得価額に含めて考えます(平成24年7月5日裁決)。
ポイント
精算金のうち土地の分は、減価償却で費用にできません。建物の分は、償却を通じて費用になります。

取り壊すために買った建物の代金は、土地の取得価額です
古い建物付きの土地を買い、建て替える場合は扱いが変わります。
その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。
(法人税基本通達7-3-6)
この場合、建物の帳簿価額を除却損にしたり、取壊費用を損金にしたりはできません。
平成20年3月24日裁決の法人は、競売で取得した建物の取壊しに1年以内に着手しました。
建物の取得価額と解体費等は、土地の取得価額とされました。
目的が明らかかは、取得の経緯や建物の老朽度、取壊しの時期などを総合して判断されます(同裁決)。
建物の割合と精算金で、法人の申告が直された裁決があります
例を3つ挙げます。
- 評価額の比で建物を大きくした ― 契約書の建物は10,000,000円でした。評価額の比(約7対3)での区分は認められず、契約書の額によるとされました(平成20年5月8日裁決)。
- 路線価で土地を出し、残りを建物にした ― 合理的と認められませんでした。土地が時価より低く、建物が時価より高くなるためです(令和5年6月21日裁決)。
- 精算金を租税公課として損金にした ― 上で挙げた3件の裁決で、取得価額に算入すべきとされました。
建物の割合を争った上の2件では、法人税とともに消費税も更正されていました。
区分の基準は、法人税と消費税で異ならないとされています(令和5年6月21日裁決)。
注意
平成20年5月8日裁決は、特段の事情や特段不合理な点がない限り、契約書の内訳の額によるとしました。特段の事情の例は、当事者が通謀して実体と異なる内容を故意に書いた場合などです。内訳は、契約書に書く段階で根拠のある額にしておくことが大切です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
購入の前後にご自身でできるのは、次の4点です。
- 売買契約書で、土地と建物の内訳と消費税額の記載を確かめる
- 土地と建物の固定資産税評価額が分かる資料をそろえる
- 精算金・仲介手数料・登記費用・借入金の利子を、明細ごとに控える
- 建物を使い続けるか取り壊すかの予定と理由を、記録に残す
どの方法で分けるか、精算金や手数料をどう配分するかは個別判断です。
改修済みの建物や、評価額に入らない設備がある物件は、評価額の比をそのまま使えないことがあります。
中古の建物の耐用年数は、中古資産の耐用年数の記事で考え方を解説しています。
売るときの税金は、法人の不動産売却の記事で扱っています。
税理士が入ると変わるのは、区分の根拠と決算への反映です
小松公認会計士・税理士事務所では、会社が不動産を買う前から次の作業を行います。
ひとつめは、契約前の契約書案の確認です。内訳と消費税額の書き方を確かめます。
ふたつめは、区分の試算です。内訳、消費税額、評価額の比を並べて比べます。
みっつめは、付随費用の振り分けです。含めるものと、含めないことを選べるものに分けます。
よっつめは、取壊しの予定の確認です。通達7-3-6に当たるかを整理します。
いつつめは、決算での償却費の計算と申告書への反映です。根拠資料は調査に備えて保管します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 土地と建物の内訳がない契約書で買いました。どう分ければよいですか?
契約書に建物の消費税額があれば、10%で割り戻して建物の代金を出せます。それもなければ、固定資産税評価額の比などの合理的な方法で分けます(令和5年6月21日裁決)。改修の価値が評価額に出ていない建物は、鑑定評価の積算価格の比によりました(同裁決)。
Q2. 売主に払った固定資産税の精算金は、租税公課で経費にできますか?
公表裁決では認められていません。買主は1月1日の所有者でなく、納税義務者ではないためです。精算金は購入の代価として土地と建物の取得価額に含めます(平成25年8月30日裁決など)。
Q3. 建物の割合を大きくして、償却費を増やしてもよいですか?
根拠のない配分は認められません。契約書の建物価額を使わず評価額の比で分けた例は、認められませんでした(平成20年5月8日裁決)。路線価で土地を出し残りを建物にした例も、合理的と認められませんでした(令和5年6月21日裁決)。
Q4. 古い建物付きの土地を買い、すぐ取り壊す予定です。取壊し費用は損金になりますか?
当初から取り壊して土地を使う目的が明らかなときは、損金になりません。おおむね1年以内に取壊しに着手する場合などです。建物の帳簿価額と取壊費用は、土地の取得価額になります(法人税基本通達7-3-6)。廃材等の処分で得た額は差し引きます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法施行令13条・54条1項1号、法人税基本通達7-3-1の2・7-3-3の2・7-3-6・7-3-16の2、地方税法343条・359条、タックスアンサーNo.6201「非課税となる取引」・No.6303「消費税および地方消費税の税率」、国税不服審判所の平成13年9月3日・平成20年3月24日・平成20年5月8日・平成24年7月5日・平成25年8月30日・平成27年6月1日・令和5年6月21日の各裁決の内容を扱っています。中古建物の耐用年数と減価償却費の計算、建物と建物附属設備・構築物の区分、精算金や仲介手数料を土地と建物に配分する具体的な方法、消費税の経理方式(税込経理・税抜経理)による取得価額の違い、仕入税額控除の計算(適格請求書発行事業者以外から買う場合の経過措置を含む)、不動産鑑定評価の方法、借地権付き建物の取得、立退料や造成費、個人が土地と建物を取得・譲渡する場合の取得費、不動産取得税・登録免許税の税額は扱っていません。紹介した裁決は、それぞれの事実関係に基づく判断です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の区分は契約内容と資料によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(13条・54条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第3節第1款「固定資産の取得価額」(7-3-1の2・7-3-3の2・7-3-6・7-3-16の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_03_01.htm
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「固定資産の取得価額」https://www.kfs.go.jp/service/MP/03/0204040000.html
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「取得価額」(減価償却資産の償却等)https://www.kfs.go.jp/service/MP/03/0204050200.html
- 国税不服審判所 平成20年5月8日裁決(裁決事例集No.75・711頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/75/42/index.html
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会社が土地と建物を一括で買うと、代金を土地と建物に分けて計上します。土地は減価償却しません。契約書で建物の金額が明らかなら通常はその額、なければ評価額の比などの合理的な方法で分けます。売主に払う固定資産税の精算金は、取得価額に含めるとした裁決があります。代表税理士が、契約書案の確認から区分の試算、精算金や仲介手数料の振り分けまで行います。取壊し予定の整理、決算での減価償却と申告書への反映まで通して対応します。売買契約を結ぶ前の段階でご相談ください。
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