この記事のポイント
- 国が示す要件は資産分離・財務基盤・透明性の3つです
- 金融機関には保証を求める理由の説明と記録が求められています
- 要件を満たさなくても保証料の上乗せで外せる制度があります
- 実務で効くのは役員貸付金と決算書の定期提出です
まず結論:外せるかどうかは、決算書の中身で決まります
経営者保証は、社長個人が会社の借入を保証する契約です。
会社が返せなくなれば、個人の財産で払うことになります。
国は、この慣行を見直す方針を明確にしています。
経済産業省・金融庁・財務省が策定した「経営者保証改革プログラム」は、次の3要件を挙げています。
経営者保証ガイドラインの要件(①法人・個人の資産分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性確保)
この3つは、どれも決算書と日々の経理に表れます。

金融機関には、説明する責任があります
保証を求められたとき、黙って判を押す必要はありません。
同プログラムは、金融機関が個人保証契約を締結する場合に、事業者・保証人に対して次の点を個別具体的に説明し、その結果等を記録することを求めています。
どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか
どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか
つまり「何を直せば外せるのか」を聞く権利があります。
この取扱いは令和5年4月から始まっています。
金融庁には経営者保証専用の相談窓口も設けられました。
ポイント
説明を受けたら、指摘された点をそのまま記録してください。「債務超過だから」「役員貸付金があるから」といった具体的な理由が分かれば、次の決算までに何を直すかがはっきりします。抽象的な回答しか得られない場合は、改めて具体的な説明を求めてください。
3要件を満たさなくても、外せる道があります
信用保証協会の保証付融資には、別の選択肢が用意されています。
改革プログラムは、次の制度の創設を挙げています。
経営者の取組次第で達成可能な要件(法人から代表者への貸付等がないこと、決算書類等を金融機関に定期的に提出していること等)を充足すれば、保証料の上乗せ負担(事業者の経営状態に応じて上乗せ負担は変動)により経営者保証の解除を選択できる信用保証制度の創設
これが「事業者選択型経営者保証非提供制度」です。
東京信用保証協会は、要件を次のように示しています。
- 「過去2年間において、決算書等を申込金融機関の求めに応じて提出していること」
- 「代表者への貸付金等がなく、役員報酬等が社会通念上適切な範囲を超えていないこと」
- 「直近の決算において債務超過でない」「直近2期連続で減価償却前経常利益が赤字でない」のいずれか、または両方
赤字でも債務超過でも、片方を満たせば道があります。
数字で見る:上乗せはいくらになるか
外す代わりに、保証料が上がります。
東京信用保証協会は、両方の財務要件を満たす場合は所定の保証料率に0.25パーセント、いずれか一方または法人の設立後2事業年度の決算がない場合は0.45パーセントを上乗せするとしています。
計算例
保証付融資2,000万円で、上乗せ率を単純に掛けた場合の1年あたりの目安
上乗せ0.25%のとき 20,000,000円 × 0.25% = 50,000円 上乗せ0.45%のとき 20,000,000円 × 0.45% = 90,000円実際の信用保証料は保証協会の定める算式で計算され、上乗せ率は協会ごとに異なります。ここでは上乗せの大きさをつかむための目安として計算しています。
年5万円で個人保証を外せるなら、検討する価値があります。
社長の自宅を守れるかどうかという話です。
保証付融資そのものの仕組みは信用保証協会の保証付融資をご覧ください。

創業5年以内なら、別の制度もあります
創業期には、専用の保証制度が用意されています。
改革プログラムは、創業から5年以内の者に対する経営者保証を徴求しない信用保証制度について、次のように記載しています。
保証割合:100%/保証上限額:3500万円/無担保
創業融資で保証を求められたら、この制度の有無を確認してください。
創業融資の全体像は創業融資の全体像で扱っています。
なお、日本政策金融公庫にも経営者保証を求めない取扱いがあり、要件は別に定められています。
公庫側の要件は融資を受けるための決算書の見え方をご覧ください。
ほかにも、道は用意されています
経営者保証を外す方法は、ひとつではありません。
改革プログラムは、信用保証付融資について次の施策も挙げています。
流動資産(売掛債権、棚卸資産)を担保とする融資(ABL)に対する信用保証制度において、経営者保証の徴求を廃止
売掛金や在庫を担保にすることで、個人保証に代える考え方です。
さらに、次の制度も挙げられています。
プロパー融資における経営者保証の解除等を条件に、プロパー融資の一部に限り、借換を例外的に認める保証制度(プロパー借換保証)の時限的創設
保証協会を通さない融資の保証を外すために、借換えを使う仕組みです。
いずれも取扱いの有無や条件は金融機関と信用保証協会によって異なります。
まずは「どの制度が使えるか」を金融機関に確認してください。

外せない会社に共通する4つの点
要件を読むと、落ちる理由はほぼ決まっています。
- 役員貸付金が残っている ― 法人と個人の資産が分離されていない証拠と見られます
- 決算書を出していない ― 「定期的に提出」が要件です。決算後に一度だけでは足りません
- 債務超過が続いている ― 2期連続の減価償却前経常利益も見られます
- 役員報酬が利益とかけ離れている ― 社会通念上適切な範囲かどうかが問われます
いちばん多いのは、社長への貸付金です。
役員貸付金の扱いは役員貸付金と役員借入金で詳しく扱っています。
注意
役員貸付金は、決算書の資産に残り続けます。一度に返せない場合は、役員報酬から計画的に返済するなど、解消の道筋を決算書で示すことになります。期末だけ一時的に消す処理は、翌期に元に戻れば意味がありません。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 今の借入について、保証契約があるかどうかを契約書で確認する
- 金融機関に「どの部分が足りないために保証が必要か」を聞く
- 直近の決算書で、役員貸付金の残高と純資産の額を確認する
- 決算書や試算表を、どの頻度で提出しているかを振り返る
ここから先は個別判断です。
役員貸付金をどう解消するか、役員報酬をどう設定するかは、税務の影響と一緒に決める必要があります。
保証を外せるかどうかは、最終的に金融機関と保証協会の判断です。
税理士が入ると変わるのは、要件を満たす決算の作り方です
ひとつめは、役員貸付金の解消計画です。残高と返済原資を並べ、何年で消えるかを示します。
ふたつめは、役員報酬の設計です。会社の利益と社長の手取りの両方を見て金額を決めます。
みっつめは、減価償却前経常利益の確認です。決算前に数字を出し、赤字になりそうなら手を打ちます。
よっつめは、試算表の定期提出の仕組みづくりです。毎月の月次決算を、提出できる形に整えます。
いつつめは、金融機関への説明資料です。要件のどこを満たしたかを、決算書の数字で示します。
経営者保証は、交渉ではなく決算書で外します。
小松公認会計士・税理士事務所では、月次決算から決算・申告、金融機関への説明まで続けて担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 経営者保証は、お願いすれば外してもらえますか?
お願いだけでは外れません。経営者保証改革プログラムは、ガイドラインの要件として「①法人・個人の資産分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性確保」を挙げています。ただし金融機関には、保証が必要な理由と、どう改善すれば解除の可能性が高まるかを説明することが求められています。まず説明を求めてください。
Q2. 赤字や債務超過だと、絶対に外せませんか?
そうとは限りません。東京信用保証協会の事業者選択型経営者保証非提供制度では、「直近の決算において債務超過でない」「直近2期連続で減価償却前経常利益が赤字でない」のいずれか一方を満たせば対象になり、保証料率に0.45パーセントを上乗せする取扱いとされています。両方を満たす場合の上乗せは0.25パーセントです。
Q3. 役員貸付金があると、なぜ問題になるのですか?
法人と個人の資産が分離されていないと見られるためです。東京信用保証協会は要件として「代表者への貸付金等がなく、役員報酬等が社会通念上適切な範囲を超えていないこと」を挙げています。期末だけ一時的に消す処理ではなく、解消の道筋を決算書で示すことが求められます。
Q4. 創業したばかりでも、保証なしで借りられますか?
創業から5年以内の方を対象に、経営者保証を徴求しない信用保証制度が設けられています。経営者保証改革プログラムは、その内容を「保証割合:100%/保証上限額:3500万円/無担保」と記載しています。取扱いの有無や条件は、お住まいの地域の信用保証協会にご確認ください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の公表資料に基づく一般的な解説です。経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」、金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」、東京信用保証協会「保証料の上乗せで経営者保証が不要となる制度(事業者選択型経営者保証非提供制度)」の内容を扱っています。信用保証制度の要件・保証料率・上乗せ率・保証限度額・取扱期間は信用保証協会ごとに異なり、本記事に記載した要件と上乗せ率は東京信用保証協会が公表しているものです。必ずお住まいの地域の信用保証協会および取引金融機関にご確認ください。「経営者保証に関するガイドライン」の全文の解釈、保証債務の整理(廃業時の取扱い)、事業承継時の二重徴求の扱い、日本政策金融公庫の個別制度の要件は扱っていません。記事中の計算例は上乗せの大きさをつかむための目安であり、実際の信用保証料は保証協会の定める算式で計算されます。経営者保証を外せるかどうかは金融機関および信用保証協会の判断によるものであり、本記事はその結果を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-3/01.pdf
- 金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」https://www.fsa.go.jp/policy/hoshou_jirei/index.html
- 東京信用保証協会「保証料の上乗せで経営者保証が不要となる制度について」https://www.cgc-tokyo.or.jp/institution/guideline_2024/jigyoshasentakugata_20243015.html
- 東京信用保証協会「経営者保証を不要とする保証の取扱いについて」https://www.cgc-tokyo.or.jp/institution/guideline_2024/index.html
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