この記事のポイント
- 保険料の扱いは死亡給付金と年金の受取人の組合せで決まります
- 死亡給付金は遺族、年金は会社の形は90%を資産に計上し、残りは損金です
- この形でも役員など特定の人だけが被保険者なら、残りは給与です
- 会社が年金を受け取るときは年金の割合に応じて資産計上額を取り崩します
まず結論:保険料の扱いは、死亡給付金と年金の受取人の組合せで決まります
会社が役員や従業員に掛ける個人年金保険の扱いは、国税庁の個別通達が定めています。
平成2年5月30日付の直審4-19で、令和8年9月時点も掲載されています。
表題は「法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて」です。
死亡給付金を遺族、年金を会社が受け取る形なら、保険料の90%を資産に計上します。残りは期間の経過に応じて損金です。
損金は、税金の計算で差し引ける費用です。資産に計上した分は、その期の費用になりません。
ただし、役員や部課長など特定の人だけを被保険者にすると、残りの10%は給与になります。被保険者は、その人の生死で年金や死亡給付金の支払が決まる人です。

養老保険の「2分の1」とは違い、資産に計上するのは90%です
通達の趣旨は、養老保険の通達(9-3-4)などをそのまま準用するのは適当でないとしています。理由は仕組みの違いです。
いわゆる満期保険金はなく、死亡給付金の額が保険料払込期間の経過期間に応じて逓増するなど、同じく被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険である養老保険とはその仕組みが異なっている。
(直審4-19 趣旨)
逓増は、だんだん増えることです。
養老保険で死亡保険金を遺族、満期保険金を会社にすると、資産計上は2分の1です。
根拠は法人税基本通達9-3-4(3)です。養老保険で退職金を準備する記事をご覧ください。
個人年金保険では、同じ形でも資産に計上する割合が90%と大きくなります。
補足
対象は、会社が契約者で、役員・使用人(親族を含む)が被保険者の個人年金保険です。9-3-4や法人税法施行令135条の適用があるものは対象外です(通達1の注)。
受取人の組合せで、全額資産計上・全額給与・90%資産計上に分かれます
区分は、死亡給付金の受取人と年金の受取人の組合せで決まります(通達2)。
死亡給付金は年金支払開始日前の死亡で、年金は同日の生存で支払われます。
| 区分 | 死亡給付金の受取人 | 年金の受取人 | 支払った保険料の扱い |
|---|---|---|---|
| (1) | 会社 | 会社 | 全額を資産に計上 |
| (2) | 被保険者・遺族 | 被保険者・遺族 | 全額がその人への給与 |
| (3) | 被保険者の遺族 | 会社 | 90%を資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金 |
その支払った保険料の額のうち、その90%に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。
(直審4-19 2(3))
特約の保険料は区分から除き、法人税基本通達9-3-6の2を準用します(通達2の注)。
計算例
例1:1人あたり年120,000円、全員12名(役員3名・従業員9名)が(3)の形で加入
年間保険料 120,000円 × 12名 = 1,440,000円 資産に計上 1,440,000円 × 90% = 1,296,000円 損金 1,440,000円 - 1,296,000円 = 144,000円例2:同じ形の契約に、役員3名だけが加入した場合
資産に計上 120,000円 × 3名 × 90% = 324,000円 残額 120,000円 × 3名 × 10% = 36,000円 → 役員3名への給与金額は一定の前提を置いた目安です。契約者配当と特約はないものとしています。

役員など特定の人だけを加入させると、残りの10%は給与になります
(3)の形には、次のただし書があります。
ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の遺族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(直審4-19 2(3))
90%を資産に計上する点は変わりません。給与に変わるのは、損金になるはずだった残額の10%です。
(2)の形は、特定の人だけかどうかに関係なく、保険料の全額が給与です。
年金を受け取る本人の課税は、保険料の負担者と受取人で変わります(タックスアンサーNo.1610)。
「特定の使用人のみ」の判定基準は、個人年金保険の通達には書かれていません。
養老保険の目安は、所得税基本通達36-31の(注)2にあります。定期保険の受取人を遺族にする記事で扱っています。
注意
ただし書に当たる残額や、(2)の形の保険料は給与として処理します。役員の分は、役員給与として損金になるかを別に確かめます。
年金の受取り・解約・名義変更のときに、資産計上額を取り崩します
会社が年金を受け取るときは、支払通知を受けた期に、年金の割合に応じて取り崩します(通達5(3))。
取崩額は、年金積立保険料×受け取る年金÷年金支払総額で求めます。一時金で受け取る場合は別の定めです(通達5(5))。
年金積立保険料は、年金支払開始日までの資産計上額などの合計です。年金支払総額は次のとおりです。
| 年金の種類 | 年金支払総額 |
|---|---|
| 確定年金(保証期間中は生死を問わず支払われる) | 保証期間中の年金の合計額 |
| 保証期間付終身年金 | 保証期間と余命年数の、長いほうの期間中の年金の合計額 |
| 有期年金 | 被保険者の生存を前提に、保証期間中の年金の合計額 |
余命年数は、年金支払開始日における所得税法施行令の別表「余命年数表」の年数です。
計算例
例3:(3)の形で1名分を20年払い込み、会社が確定年金を受け取る
年金積立保険料 120,000円 × 90% × 20年 = 2,160,000円 年金支払総額 年額250,000円 × 保証期間10年 = 2,500,000円 取崩額 2,160,000円 × 250,000円 ÷ 2,500,000円 = 216,000円 差額 250,000円 - 216,000円 = 34,000円(保険差益)金額は一定の前提を置いた目安で、契約者配当はないものとしています。
年金支払開始日の前に被保険者が亡くなると、資産計上額の全額を取り崩して損金にします(通達5(1))。
死亡給付金を会社が受け取るときは、その額を益金(収益として数える額)にします(同注)。
解約したときも全額を取り崩し、解約返戻金などを益金にします(通達5(6)・注)。
退職などで、年金支払開始日前に契約者と年金受取人を本人へ変えることもあります。
このときは、解約返戻金に相当する額の退職給与か賞与を払ったものとして扱います(通達6)。
契約者配当等があれば加算し、会社は資産計上額の全額を取り崩します(通達5(6))。

5つの失敗パターン
どれも、通達の定めを読み違えた処理です。
- 養老保険と同じ「2分の1損金」で処理した ― (3)の形は90%を資産に計上します。
- 役員だけを加入させ、残額を損金にした ― ただし書により、残額はその役員への給与です。
- 年金を全額収益にし、取崩しをしていない ― 支払通知を受けた期に、年金の割合で取り崩します。
- 退職時に契約を本人へ移し、何も処理しなかった ― 解約返戻金に相当する額が、退職給与か賞与です。
- 契約者配当を益金に入れていない ― 原則として、通知を受けた期の益金です(通達3・4)。
区分は受取人と被保険者の範囲で決まるため、契約の前に確かめます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
保険証券と帳簿の突き合わせまでは、ご自身で進められます。
- 保険証券で、契約者・被保険者・死亡給付金と年金の受取人を確かめる
- 被保険者の一覧を作り、役員や部課長だけになっていないかを見る
- 年金の種類(確定・保証期間付終身・有期)と保証期間を確かめる
- 総勘定元帳で、資産計上の割合・取崩額・契約者配当の処理を突き合わせる
加入基準が「特定の使用人のみ」に当たるかは、人員構成を見ての個別判断です。
役員の給与とされた部分や名義変更の時期と金額も、契約ごとに確かめます。

税理士が入ると変わるのは、区分の判定の根拠と取崩しの計算表です
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 保険証券と被保険者の一覧から区分を判定し、ただし書に当たるかを検討します
- 給与とされる部分の源泉徴収と、役員給与としての扱いを確認します
- 年金の種類と保証期間から、毎年の取崩額の計算表を作ります
- 解約や名義変更の時期を、決算と退職金の予定に合わせて試算します
- 決算書と申告書に反映し、税務調査での想定問答を用意します
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 会社で個人年金保険に入ると、保険料は損金になりますか?
死亡給付金と年金の受取人で変わります。ともに会社なら全額を資産に計上し、ともに本人や遺族なら全額が給与です。死亡給付金は遺族、年金は会社なら、90%を資産に計上し、残額は損金です。役員など特定の人だけが被保険者なら、残額は給与です(直審4-19の「2」)。
Q2. 養老保険のように、2分の1を損金にできませんか?
個人年金保険では、できません。満期保険金がなく、死亡給付金が逓増するなど、養老保険と仕組みが違うためです。通達の趣旨は、法人税基本通達9-3-4などをそのまま準用するのは適当でないとしています。死亡給付金を遺族、年金を会社にする形でも、資産に計上するのは90%です。
Q3. 役員だけを被保険者にしています。どうなりますか?
受取人の形で変わります。死亡給付金が遺族、年金が会社の形なら、90%の資産計上は変わりません。残額は役員への給与です(通達2(3)ただし書)。部課長など特定の使用人だけの場合も同じです。受取人がともに会社なら全額資産計上、ともに本人や遺族なら全額給与です。
Q4. 退職する役員に、契約をそのまま渡すとどうなりますか?
年金支払開始日前に、契約者と年金受取人を本人へ変えた場合です。解約返戻金に相当する額の退職給与または賞与を払ったものとして扱います(通達6)。契約者配当等があれば加算します。会社は資産計上額の全額を取り崩して損金にします(通達5(6))。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁の個別通達「法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて」(平成2年5月30日 直審4-19)の趣旨・1・2・3・4・5(1)(3)(6)・6、法人税基本通達9-3-4・9-3-6の2、所得税基本通達36-31(注)2、タックスアンサーNo.1610の内容を扱っています。通達2の(1)から(3)に当たらない受取人の組合せ、契約者配当を益金に算入しない例外の要件、増加年金・買増年金の取崩し、年金の一時支払を受けた場合の取崩し、保証期間付終身年金で被保険者が亡くなった場合の取崩額の調整、特約の保険料の区分、契約転換や払済保険への変更、名義変更時の評価の細目、給与とされた保険料の源泉徴収と生命保険料控除、役員給与・役員退職給与としての損金算入の可否と限度、年金を受け取る役員・従業員の所得税・贈与税・相続税の計算、特定の保険商品の内容は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は契約の内容と会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁「法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて」(平成2年5月30日 直審4-19)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/900530/01.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節「保険料等」(9-3-4・9-3-6の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- 国税庁 所得税基本通達「〔給与等に係る経済的利益〕」(36-31)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1610「保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1610.htm
個人年金保険など法人保険の区分を、加入の前に確かめませんか
会社で入る個人年金保険の保険料は、死亡給付金と年金の受取人の組合せで扱いが分かれます。全額資産計上・全額給与・90%資産計上の3つです。死亡給付金を遺族、年金を会社にする形でも、特定の人だけが被保険者なら残額は給与です。代表税理士が、保険証券と被保険者の一覧から区分を判定します。ただし書の当てはめ、取崩しの計算表、解約や名義変更の時期の試算まで通して対応します。加入や受取人の変更、退職時の契約の引継ぎを決める前にご相談ください。
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