この記事のポイント
- 天引きされた所得税は、別表六(一)を付けて申告すれば法人税から引けます
- 法人税より多い分は、赤字の年でも申告書に書けば還付されます
- 配当と一定の投資信託の分配金は持っていた期間で按分。預金利息は全額です
- 書き漏らしは法定申告期限から5年以内なら更正の請求で控除できます
まず結論:天引きされた所得税は、申告すれば法人税から差し引けます
会社の預金利息や配当からは、原則として所得税が天引き(源泉徴収)されます(所得税法212条3項)。
この所得税は、その期の法人税から差し引けます。これを「所得税額控除」といいます。
政令で定めるところにより、当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する。
(法人税法68条1項)
差し引ききれない分は、赤字の年でも申告すれば還付されます。
ただし、申告書に明細書(別表六(一))を付けた金額しか控除されません。

天引きの率は15.315%で、令和9年からは内訳が変わります
法人の預金利息から天引きされるのは、合計15.315%です。
内訳は所得税15%です(所得税法213条2項1号)。これに所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わります(復興財確法28条2項)。
住民税の利子割5%は個人だけに課され、法人にはかかりません(地方税法24条1項5号・71条の6)。
配当は原則として、上場株式が合計15.315%、それ以外が合計20.42%です。
所得税が15%と20%で異なるためです(租税特別措置法9条の3・所得税法213条2項2号)。
令和8年度改正で、令和9年1月1日以後に生ずる所得から内訳が変わります。合計の率は同じです。
| 天引きされる税 | 現在 | 令和9年1月1日以後に生ずる所得 |
|---|---|---|
| 所得税 | 15% | 15% |
| 復興特別所得税 | 所得税額の2.1% | 所得税額の1.1% |
| 防衛特別所得税 | なし | 所得税額の1% |
| 合計(預金利息) | 15.315% | 15.315% |
復興特別所得税と防衛特別所得税も、控除の対象です。根拠は復興財確法33条2項と防衛財確法5条の31第2項(令和9年1月1日施行)です。
赤字の年も、控除しきれない所得税は還付されます
法人税額より控除する額が多いときは、その差額が還付されます(法人税法78条1項)。
確定申告書には、控除しきれなかった金額も記載します(同法74条1項3号)。
計算例
例1:定期預金の利息200,000円(税込)を受け取った場合
天引き 200,000円 × 15.315% = 30,630円 内訳(令和8年中に生ずる利子) 所得税30,000円 + 復興特別所得税630円 手取り 200,000円 - 30,630円 = 169,370円 法人税額が12,000円なら 30,630円 - 12,000円 = 18,630円を還付 赤字で法人税額が0円なら 30,630円の全額を還付金額は一定の前提を置いた目安です。
控除や還付を受けた所得税は、損金(税金の計算で差し引ける費用)になりません。
費用に計上していれば、別表四(所得の計算表)で足し戻します(法人税法40条)。
赤字の年の欠損金の扱いは、欠損金の繰越控除と繰戻し還付の記事で解説しています。

控除されるのは、申告書の明細に書いた金額までです
控除を受けるには、明細書の添付が要件です。
第一項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。
(法人税法68条4項)
控除される金額は、書類に記載した金額が上限です(同項後段)。この明細書が別表六(一)です。
書き漏らしても、期限内なら更正の請求(税額を正す手続き)で控除を受けられます。
国税庁も、別表六(一)を付けた更正請求書で新たに控除を受けられるとしています(法人課税課情報 問3)。
更正の請求の期限は、法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項)。
注意
別表六(一)の収入金額は、天引き前の税込の金額で書きます。国税庁の申告書作成上の留意点も、所得税額が収入金額のおおむね15.315%かを確認点にしています。
配当と一定の投資信託の分配金は、持っていた期間で按分します
配当や投資信託の分配金は、元本(株式など)を持っていた期間の分だけが対象です。この割合計算を按分といいます。
ただし、公社債投資信託の分配金やみなし配当などは除きます(法人税法施行令140条の2第1項)。
預金や公社債の利子の所得税は、全額が控除の対象です。
株の配当の期間は、前回の配当の基準日等の翌日から、今回の基準日等までです。基準日等は、配当を受け取る株主を決める日などです。1年が上限です(同条2項)。
月数は暦で数え、1か月未満は1か月とします(同条6項)。割合は小数点以下3位未満を切り上げます(同条2項)。
計算方法は2つあり、事業年度ごとに選べます(国税庁タックスアンサーNo.5760)。
- 原則法 ― 銘柄・所有期間ごとに、所得税等の額 × 所有月数 ÷ 計算期間の月数です。
- 簡便法 ― 期間の初めの元本の数Aと終わりの数Bで、所得税等の額 ×(A+(B-A)×1/2)÷ Bです。期間が1年を超えるものは1/12です。
簡便法は、元本の種類と計算期間の長さで分けた区分ごとに、全ての銘柄に使います(同条3項)。
計算例
例2:上場株式の配当800,000円(税込・年1回)。期間の初めに1,000株、途中で1,000株を買い増し、終わりに2,000株
天引き 800,000円 × 15.315% = 122,520円(1,000株分は61,260円) 原則法 61,260円 × 12/12 + 61,260円 × 3/12(買い増し分は所有3か月)= 76,575円 簡便法の割合 (1,000 + (2,000 - 1,000) × 1/2)÷ 2,000 = 0.750 簡便法 122,520円 × 0.750 = 91,890円この例では、簡便法の方が15,315円多く控除できます。買い増し分の所有が9か月なら、原則法が107,205円で逆転します。
金額は一定の前提を置いた目安です。控除できなかった部分は損金になります(No.5760)。
配当そのものに課税されるかは、受取配当等の益金不算入の記事で扱っています。

入れ忘れを防ぎたいのは、次の3つの場面です
どれも入金額が手取りなので、天引きされた税額を別の書類で拾います。
- 証券口座の配当 ― 入金は天引き後です。銘柄ごとの税額と、期間の初めと終わりの株数を確かめます。
- 投資信託の分配金 ― 計算期間の数え方が、株の配当と異なります(法人税基本通達16-2-8)。
- 少額の預金利息 ― 普通預金の利息も源泉徴収の対象です。小さな入金も税込で集めます。
控除漏れ・控除しすぎになる5つの形
次の形は、控除額の誤りにつながります。
- 手取り額だけを受取利息にする ― 天引きされた税額が帳簿に出ず、別表六(一)から漏れます。
- 預金利息まで按分する ― 預金利息は全額が対象です。国税庁の留意点も確認点にしています。
- 途中で買った株の配当を全額控除する ― 所有期間に対応しない部分は控除できません。
- 赤字の年に別表六(一)を付けない ― 還付を受けられません。法定申告期限から5年以内なら、更正の請求を検討します。
- 控除した所得税を費用のままにする ― 別表四での足し戻しが漏れます(法人税法40条)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
決算の前に、ご自身で整えられるのは次の4点です。
- 通帳と証券会社などの書類から、利息・配当・分配金を一覧にする
- それぞれの税込の金額と、天引きされた税額を書き出す
- 預金利息と、配当・分配金を分けておく
- 配当・分配金は、銘柄ごとに計算期間の初めと終わりの株数・口数を控える
計算期間の判定と、原則法・簡便法の選択は個別判断です。
設立や取得から1年以内の銘柄、投資信託の期間、過去の期の更正の請求も、事実に応じて判断が分かれます。

税理士が入ると変わるのは、別表六(一)の根拠と過去分の見直しです
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
ひとつめは、源泉税の集計です。通帳や証券会社の書類から一覧を作り、帳簿と照らします。
ふたつめは、按分の計算です。銘柄ごとに原則法と簡便法を試算し、区分ごとに使う方法を検討します。
みっつめは、申告書の整合です。別表六(一)を別表四・別表一とそろえ、赤字の期は還付まで確かめます。
よっつめは、過去分の見直しです。法定申告期限から5年以内の申告書を確かめ、漏れがあれば更正請求書を作ります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 会社の預金利息から天引きされる税金は、何%ですか?
合計15.315%です。所得税15%(所得税法213条2項1号)と、その2.1%の復興特別所得税です。住民税の利子割は個人だけに課され、法人にはかかりません(地方税法24条1項5号)。令和9年1月1日以後に生ずる利子は内訳が変わり、合計は同じです。
Q2. 赤字の年でも、天引きされた所得税は戻りますか?
戻ります。控除しきれない金額を確定申告書に記載すれば還付されます(法人税法74条1項3号・78条1項)。ただし、別表六(一)を付けた金額が上限です(同法68条4項)。控除や還付を受けた所得税は損金になりません(同法40条)。
Q3. 前の期の申告で、所得税額控除を入れ忘れました。取り戻せますか?
国税庁は、別表六(一)を付けた更正請求書で新たに控除を受けられると説明しています。出典は平成24年2月29日の法人課税課情報(問3)です。期限は法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項)。
Q4. 期の途中で買った株の配当も、全額控除できますか?
全額とは限りません。配当と一定の投資信託の分配金は、持っていた期間の分だけが対象です(法人税法施行令140条の2)。原則法か簡便法で計算し、事業年度ごとに選べます(国税庁タックスアンサーNo.5760)。控除できなかった部分は損金になります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法40条・68条1項・4項・74条1項3号・78条1項、法人税法施行令140条の2第1項・2項・3項・6項、法人税基本通達16-2-8、所得税法212条3項・213条2項、租税特別措置法9条の3、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財確法)28条・33条2項、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防衛財確法)5条の26・5条の31第2項(令和9年1月1日施行)、地方税法24条1項5号・71条の6第1項、国税通則法23条1項、国税庁タックスアンサーNo.5760「所得税額控除」、国税庁の法人課税課情報「いわゆる当初申告要件及び適用額の制限の改正について」(平成24年2月29日)、「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」、別表六(一)の記載の仕方と申告書作成上の留意点の内容を扱っています。源泉徴収されない配当(所得税法177条)、公共法人等(所得税法11条)や金融機関等(租税特別措置法8条)が受ける利子等の扱い、按分の対象となる配当等の範囲の細目(資本剰余金の減少に伴う配当・特定公社債等運用投資信託など)、公益法人等・人格のない社団等の扱い(法人税法68条2項)、仮決算の中間申告による還付、還付加算金、計算期間の特例(設立や発行会社からの取得から1年以内の銘柄の初回配当・株式移転後の初回配当)、簡便法で期末の元本の数が期首より少ない場合、適格合併等による元本の移転、投資信託の計算期間の細目と元本払戻金、割引債の償還差益、国外株式・国外投資信託の配当、分配時調整外国税相当額と外国税額控除、外国法人と租税条約、受取配当等の益金不算入の計算、別表一・別表四の記載欄、防衛特別所得税の別表への書き方、地方法人税・防衛特別法人税・法人住民税・事業税との関係、欠損金の繰越控除と繰戻し還付の要件は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の控除額は銘柄ごとの計算期間・所有期間・元本の数によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(40条・68条・74条・78条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(140条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 タックスアンサー No.5760「所得税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5760.htm
- 国税庁「いわゆる当初申告要件及び適用額の制限の改正について(情報)」(平成24年2月29日)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/120229/index.htm
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0026005-024_02.pdf
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