法人税・節税

法人税の申告を間違えたら
修正申告と更正の請求、地方税の連動と前期損益修正

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求(原則5年)です
  • 調査通知の前に自主的に直せば過少申告加算税はかかりません(延滞税は別)
  • 法人税を直したら住民税・事業税・消費税も確かめます
  • 粉飾で多く納めた法人税は原則すぐには還付されません

まず結論:税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求で直します

法人税の申告に誤りが見つかったら、直し方は税額の向きで決まります。

税額が増えるときは修正申告(国税通則法19条)、減るときは更正の請求(同法23条)です。

法人税を直すと、法人住民税と法人事業税も直します。消費税への影響も確かめます。

粉飾で多く申告していた場合は、還付に特別な定めがあります。

前期の誤りを当期の決算で直しただけでは、前期の法人税は直りません。

税額が増えるか減るかで、直す手続が分かれます
税額が増えるか減るかで、直す手続が分かれます

修正申告と更正の請求は、使う場面と期限が違います

違いは次の表のとおりです。

項目修正申告更正の請求
使う場面税額が少なすぎた・欠損金が多すぎた税額が多すぎた・欠損金が少なすぎた
根拠国税通則法19条国税通則法23条
いつまで税務署の更正があるまで法定申告期限から原則5年
その後出した日が納期限(同法35条2項1号)税務署が調査し、更正するか通知(同法23条4項)

欠損金(翌期以後に繰り越す赤字)を直す更正の請求は、期限が10年です。

当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り

(国税通則法23条1項)

国税庁の手続案内C1-12は、平成30年4月1日以後開始の期を10年、それより前を9年とします。

申告期限の延長の承認がある法人は、承認された申告期限から数えます(同案内)。

赤字の使い方は欠損金の記事に、個人の場合は確定申告の訂正の記事にまとめています。

修正申告の負担は、調査の通知の前か後かで変わります

調査の通知の前に、自主的に出した修正申告には、過少申告加算税がかかりません(国税通則法65条6項)。

過少申告加算税は、申告不足にかかる上乗せの税金です。

割合は原則10%で、調査の通知の後・更正を予知する前は5%です(同条1項)。

増える税額が、期限内申告税額と50万円の多い方を超える部分には5%が加わります(同条2項)。

令和8年中の延滞税は、納期限までと、その翌日から2か月を経過する日までが年2.8%です。

その後は年9.1%です(タックスアンサーNo.9205)。

期限内申告で、法定申告期限から1年を過ぎた修正申告は、延滞税の期間を一部除きます(61条1項)。

不正の行為で税を免れ、更正を予知して出したものは除きます。

計算例

例:期限内に申告した法人税300万円に、修正申告で100万円が増える場合

通知の前に自主的に修正 過少申告加算税 0円 通知の後・更正の予知前 100万円 × 5% = 50,000円 調査の後(更正を予知) 100万円 × 10% = 100,000円 延滞税(法定納期限の翌日から納付の日まで200日・すべて令和8年中・提出日に納付) 100万円 × 2.8% × 200日 ÷ 365日 ≒ 15,300円(100円未満切捨て)

300万円を超えないため、5%の加算はありません。金額は一定の前提を置いた目安です。

申告をしていなかった場合は、無申告加算税の記事をご覧ください。

法人住民税・法人事業税・消費税も、あわせて直します

法人税の修正は、地方税の申告にも連動します。

法人住民税は、法人税の修正申告で不足が出たら、修正申告と納付をします。

期限は、法人税の修正申告書を出した日までです(地方税法53条35項・321条の8第35項)。

法人事業税は、不足があれば遅滞なく修正申告をします(同法72条の31第2項)。

法人税で更正・決定を受けたときの事業税は、その通知の日から1か月以内です(同条3項)。

税額が減る側は、法人税の更正の通知の日から2か月以内に、地方税の更正の請求をします。

根拠は地方税法53条の2・321条の8の2(住民税)、72条の33第2項(事業税)です。

消費税は別の申告です。売上の計上漏れなどは、消費税の修正申告も要ることがあります。

消費税の更正の請求も、法定申告期限から5年以内です(国税庁の手続案内D1-29)。

ポイント

地方法人税も、法人税とあわせて直します(国税庁の手続案内C1-12)。令和8年4月以後に始まる期は、防衛特別法人税も確かめます。

地方税と消費税の手続もあわせて確かめます
地方税と消費税の手続もあわせて確かめます

粉飾で多く申告していた場合は、すぐには戻りません

粉飾(事実を仮装した経理)で多く申告した場合は、法人税法に特例があります。

後の期で修正の経理をし、その期の申告書を出すことが先です(法人税法129条1項)。

それまでは、税務署長は減額の更正をしないことができます。

修正の経理は、後の期の決算で「前期損益修正損」などとして直す処理とされてきました。

当期の決算で期首残高を直す修正再表示も、修正の経理と認められます(国税庁の平成23年の情報 問8)。

減額の更正があっても、減った法人税は原則として還付されません(同法135条1項)。

  • 更正の日を含む期の開始前1年以内に始まった期の、確定した法人税額までは還付されます(同条2項)。
  • 残りは、更正の日以後に終わる期の法人税額から差し引かれます(同法70条)。
  • それでも残る分は還付されます(135条3項)。時期は、更正の日を含む期の開始から5年を経過する日を含む期の申告期限です。
  • 更生手続や再生手続の開始の決定などがあれば、1年以内に還付を請求できます(同条4項)。

注意

修正の経理をしないまま更正の請求をしても、減額されないことがあります(129条1項)。

前期損益修正は会計の直し方で、法人税は誤った期の申告を直します

前期の誤りを、当期の決算で「前期損益修正損(益)」として計上する処理があります。

法人税では、前期の所得計算に誤りがあれば、前期の申告を直します。

会計上の修正再表示を行うとともに、税務上も修正申告を行って、過年度の課税所得計算を是正することになります。

(国税庁の平成23年の情報 問7。売上の計上漏れなどの場合)

国税不服審判所の平成17年2月24日裁決は、過去の粉飾を当期の特別損失にした事案です。

仮装経理に基づく過大申告額を修正経理した事業年度において損金の額に算入できる法令の規定はない

(同裁決・裁決事例集No.69)

損失は、粉飾をした各期の更正で確定するとされました。

更正の期間を過ぎた期の分は、損金にも欠損金にもなりませんでした(当時の規定による事案)。

一方、後から起きた事実による損失は、その事実が起きた期の損金にします。

前期に売上を計上した取引で、当期に契約の解除や返品があった場合です(法人税基本通達2-2-16)。

補足

見分けの目安は、誤りが最初からあったか、後から起きた出来事かです。後の出来事を起きた期で処理する考え方は、昭和63年4月8日裁決にもあります。

誤りが最初からか、後の出来事かを資料で確かめます
誤りが最初からか、後の出来事かを資料で確かめます

注意したいのは、次の4つです

  • 前期の売上の計上漏れを、当期の売上に入れて済ませる ― 前期の修正申告が要ります(情報 問7)。
  • 粉飾の修正額を当期の損金にする ― 損金にできないとした裁決があります。
  • 法人税だけ直して、住民税・事業税・消費税を忘れる ― 税目ごとに手続が要ります。
  • 調査の通知の後に修正申告をする ― 更正の予知前でも5%かかります(65条1項)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で整理できるのは、次の4つです。

  1. 誤りの期・金額・原因(計算の誤り、粉飾、後から起きた出来事)を書き出す
  2. 期ごとに、法人税が増えるか減るかを確かめる
  3. 法定申告期限と延長の有無から、5年・10年の期限を数える
  4. 法人住民税・法人事業税・消費税への影響を一覧にする

更正の請求には、理由の基礎となる事実を証明する書類を添付します(C1-12)。

粉飾に当たるか、後から起きた出来事かの判断は、個別の事実で分かれます。

加算税の「正当な理由」(国税通則法65条5項1号)の有無も、個別の判断です。

期ごと・税目ごとに、直す範囲を決めます
期ごと・税目ごとに、直す範囲を決めます

税理士が入ると変わるのは、直す範囲と順番の決め方です

小松公認会計士・税理士事務所では、申告の誤りのご相談で次の作業を行います。

  • 期ごと・税目ごとの影響額の一覧表の作成
  • 修正申告・更正の請求・当期の処理への振り分け
  • 各税目の修正申告書と更正の請求書の作成
  • 加算税・延滞税の試算と、納付の時期の確認
  • 粉飾の修正の経理と、申告書に添える書類の確認(情報 問9)
  • 誤りの原因と再発防止策の、税務署への説明資料の準備

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 法人税の更正の請求は、何年前の申告まで出せますか?

原則として法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項)。欠損金の額を直す場合は、平成30年4月1日以後開始の事業年度分が10年、それより前が9年です(国税庁の手続案内C1-12)。申告期限の延長の承認がある法人は、承認された申告期限から数えます。

Q2. 調査の連絡が来る前に自分で修正申告すれば、加算税はかかりませんか?

調査の通知の前で、更正を予知したものでない修正申告なら、過少申告加算税はかかりません(国税通則法65条6項)。延滞税はかかります。通知の後は5%、更正を予知した後は10%が原則で、期限内申告税額と50万円の多い方を超える部分は5%が加わります。

Q3. 前期の誤りを、当期の決算で前期損益修正損として処理すれば足りますか?

法人税では足りないことがあります。売上の計上漏れなど前期の所得計算の誤りは、前期の申告を修正申告などで直します(国税庁の平成23年の情報 問7)。粉飾の修正額を当期の損金にした処理が認められなかった裁決もあります。

Q4. 粉飾で多く納めた法人税は、更正されればすぐ戻りますか?

原則としてすぐには戻りません。修正の経理をして申告するまで更正されないことがあり(法人税法129条1項)、更正後も原則として還付されず(135条1項)、以後の法人税から差し引かれます(70条)。一定の範囲で還付される定めもあります(135条2項から4項)。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税通則法19条1項・23条1項・23条4項・35条2項1号・60条2項・61条1項・65条1項・2項・5項1号・6項・118条3項・119条4項、法人税法70条・129条1項・135条1項から4項、地方税法20条の9の3第1項・53条35項・53条の2・72条の31第2項・3項・72条の33第2項・321条の8第35項・321条の8の2、租税特別措置法94条1項、法人税基本通達2-2-16、国税庁タックスアンサーNo.9205「延滞税について」、国税庁の手続案内C1-12・D1-29、国税庁「法人が『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準』を適用した場合の税務処理について(情報)」(平成23年10月20日)、国税不服審判所の平成17年2月24日・昭和63年4月8日の各裁決の内容を扱っています。重加算税・無申告加算税・期限後申告、帳簿の提示がない場合などの過少申告加算税の加算(国税通則法65条4項)、加算税の「正当な理由」の判断基準、延滞税の計算期間の特例のうち減額更正後の修正申告の扱い、後発的理由による更正の請求(国税通則法23条2項)、法人税法81条の更正の請求の特例、通算法人、防衛特別法人税の修正申告・更正の請求、仮装経理があった場合の消費税・地方税の取扱い、法人住民税・法人事業税の延滞金・加算金、地方消費税の手続の細目、更正の期間制限の細目(偽りその他不正の行為がある場合を含む)、修正申告書・更正請求書の書き方と様式の選び方、会社法・金融商品取引法上の決算の訂正の手続は扱っていません。紹介した裁決はいずれも当時の規定による事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の加算税・延滞税は納付日や個別の事情によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

法人税の申告の誤りに気づいたら、直す範囲と順番を確かめませんか

法人税の誤りは、税額が増えるなら修正申告、減るなら原則5年以内(欠損金は原則10年以内)の更正の請求で直します。調査の通知の前に自主的に直せば過少申告加算税はかかりませんが、延滞税はかかり、住民税・事業税・消費税の手続も別に要ります。粉飾の修正は還付が制限され、前期損益修正の経理だけでは前期の法人税は直りません。代表税理士が、誤りの洗い出し、手続の振り分け、各税目の申告書の作成、加算税・延滞税の試算、税務署への説明資料の準備まで通して対応します。修正申告や更正の請求を出す前の段階でご相談ください。

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公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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