法人税・節税

会社が地震や水害で被災したときの法人税
繰戻し還付と災害損失特別勘定

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 要件を満たせば、災害損失欠損金は青色申告でなくても前1年(青色は前2年)分の還付を請求できます
  • 被災から6か月以内に終わる上半期は、仮決算の中間申告で還付の請求を前倒しできます
  • 修繕等が確実なら、1年以内の見積額を限度額内で損金経理し災害損失特別勘定で被災した期の損金にできます
  • 期限の延長は理由がやんだ日から2か月以内で、地域指定なら申請は要りません

まず結論:被災した会社の法人税は「戻す・繰り越す・見積もる・延ばす」で考えます

地震や水害で被災した会社が法人税で使える主な取扱いは、次の4つです。

  • 戻す ― 赤字を前の年に繰り戻し、納めた法人税の還付を請求する
  • 繰り越す ― 白色申告(青色申告でない)の年の災害損失も繰り越す
  • 見積もる ― 翌期に払う修繕費を、被災した期の損金(税金の計算で差し引ける費用)にする
  • 延ばす ― 申告や納付の期限を延ばしてもらう

要件を満たせば、青色申告でない会社も、災害による赤字で前期の法人税の還付を請求できます。

被災した会社の法人税は4つの取扱いで整理します
被災した会社の法人税は4つの取扱いで整理します

申告や納付が間に合わないときは、期限の延長があります

災害で期限までに申告や納付ができないときは、期限を延長する制度があります(国税通則法11条)。

延長できる期間は、理由がやんだ日から2か月以内です。

延ばし方には、地域指定と、申請による個別指定などがあります(国税通則法施行令3条)。

地域指定の対象地域では、申請をしなくても期限が延びます。

指定の対象外なら、所轄税務署長に申請し、承認を受けます。申請は理由がやんだ後相当の期間内で、期限後でもできます。

個別の延長は、理由がやんだ後相当の期間内に申請します
個別の延長は、理由がやんだ後相当の期間内に申請します

災害損失に入るのは、資産の損害と復旧のための費用です

棚卸資産や固定資産などに生じた、次の損失が対象です(法人税法施行令155条の2第4項)。

  • 資産の滅失・損壊や価値の減少による損失(取壊しや除去の費用を含む)
  • 災害のやんだ日の翌日から1年以内に払う、土砂の除去や原状回復の修繕費など
  • 被害の拡大や発生を防ぐ、緊急の措置の費用

保険金や損害賠償金などで補塡される部分は、災害損失から除きます。

けが人への見舞金や被災者への弔慰金も含みません(法人税基本通達12-2-4・17-2-8)。

評価損(下がった価値を損金にする処理)をしない固定資産の原状回復費は、修繕費です(同7-8-6)。

工事の区分は修繕費と資本的支出の記事で扱っています。保険金で代わりの資産を買うときは保険差益の圧縮記帳の記事をご覧ください。

翌期に払う修繕費は、災害損失特別勘定で被災した期の損金にできます

被災した期の決算で、修繕費の見積額を災害損失特別勘定に繰り入れます(法人税基本通達12-2-6)。

限度額は、資産ごとに次の多いほうを合計し、保険金などで補塡される額を引いた額です(同12-2-7)。

  • 期末の時価が帳簿価額を下回る差額
  • 災害から1年以内に払う見込みの修繕費用等の見積額(翌期以後の分)

見積りは、修繕等を確実に行う資産につき、業者の見積額などで合理的に行います(同12-2-8)。

繰り入れた額は、繰戻し還付の基礎になる災害損失にも含まれます(同12-2-5・17-2-8)。

注意

損金経理(決算で費用として処理すること)が要件です。申告書の上だけの減算は、原則として認められません(国税庁の質疑応答事例)。明細書の添付も要ります(法人税基本通達12-2-9)。残額は益金(税の計算上の収益)に戻します。戻すのは、災害から1年を経過する日の属する事業年度です(同12-2-10)。やむを得ず修繕が遅れるときは、その事業年度末までに延長の確認を申請します(同12-2-12)。

特別勘定は、修繕費の見積額を先に損金にする取扱いです
特別勘定は、修繕費の見積額を先に損金にする取扱いです

災害損失欠損金は、青色申告でなくても繰戻し還付を請求できます

被災した期の赤字のうち、災害損失の額までを災害損失欠損金額といいます。

前の年に繰り戻して還付を請求でき、遡れる期間は次のとおりです。

前一年(当該欠損事業年度に係る確定申告書又は仮決算の中間申告書が青色申告書である場合には、前二年)

(法人税法80条5項による同条1項の読替え)

青色申告でなくても前1年、青色申告なら前2年に開始した年へ繰り戻せます。

対象は、災害から1年以内に終わる事業年度の赤字です。要件は3つです(タックスアンサーNo.5763)。

  1. 還付を受ける年から被災の前年まで、連続して確定申告書を出している
  2. 被災した年の確定申告書か、仮決算の中間申告書を出している
  3. その申告書と同時に、還付請求書を出す

資本金1億円超の会社なども使えます(租税特別措置法66条の12第1項ただし書)。通常の制度は欠損金の繰越控除と繰戻し還付の記事にまとめています。

計算例

例:欠損金額1,000万円のうち、保険金で補塡されない災害損失が800万円の会社

前々期 所得500万円・法人税75万円/前期 所得300万円・法人税45万円 災害損失欠損金額 1,000万円と800万円の少ない方 = 800万円 青色 75万円 × 500万円 ÷ 500万円 + 45万円 × 300万円 ÷ 300万円 = 120万円 白色 前期分だけ 45万円 × 300万円 ÷ 300万円 = 45万円(残り500万円は繰越し)

法人税額は仮定の数字で、地方法人税と地方税は含めていません。一定の前提を置いた目安です。

仮決算の中間申告を使えば、還付の請求を前倒しできます

被災から6か月以内に終わる上半期なら、確定申告を待たずに還付を請求できます(法人税法80条5項)。

上半期を1事業年度とみなして決算を組む、仮決算の中間申告を使います(同法72条1項)。

3月決算の会社が8月に被災したなら、9月30日までの上半期が対象です。

中間申告が不要な会社も、上半期に災害損失欠損金額があれば請求できます(法人税基本通達17-2-6)。

ポイント

還付請求書は、中間申告書と同時に、その提出期限までに出します(同通達の注)。提出期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です(法人税法71条1項)。中間で繰り戻した額は、確定申告で益金に算入します(同法27条)。残りは確定申告で繰り戻せます。

青色申告でない年の災害損失は、10年間繰り越せます

青色申告でない年の赤字は、災害損失金額を超える部分を繰り越せません(法人税法58条1項)。

災害損失金額までの部分は、翌期以後10年間の所得から差し引けます(同法57条1項)。

計算例の白色の会社なら500万円を繰り越せ、災害以外の200万円は繰り越せません。

赤字の年の申告書などに明細書の添付がないと、災害損失金額はないものとされます(同法58条3項)。

その後も連続して確定申告書を出し、帳簿書類を保存することが要件です(同法57条10項)。

使わなかった災害損失は、翌期以後に繰り越します
使わなかった災害損失は、翌期以後に繰り越します

要件から外れると認められない、6つの処理

次の処理は、要件から外れます。

  • 保険金で補塡される分まで入れた ― 災害損失から除きます
  • 見舞金や弔慰金を入れた ― 資産に直接関連しない費用は含みません
  • 特別勘定を申告書の上だけで減算した ― 損金経理が要件です
  • 還付請求書を申告書と別に出した ― 同時の提出が要件です
  • 仮決算の中間申告書を期限後に出した ― 還付請求書も提出期限までです
  • 中間で繰り戻した額を確定申告で戻していない ― 益金に算入します

損金経理と還付請求書の同時提出は、決算と申告の時点で済ませる手続です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身でできるのは、事実と数字をそろえるところまでです。

  1. 被害の状況を日付入りの写真で残し、り災証明書などをそろえる
  2. 被災した資産を台帳や在庫の記録で特定し、帳簿価額を確かめる
  3. 撤去や修繕の見積書と、保険金の請求の状況をまとめる
  4. 前2期の申告書から、所得金額と法人税額を書き出す

どの費用を災害損失に入れ、どの年にいくら繰り戻すかは、個別の判断です。

繰り戻す年は会社が選べます(法人税基本通達17-2-4)。一般に、税負担の割合が高い年に繰り戻すと還付額が多くなります(国税庁の記載例)。

評価損を計上するかで、その後の修繕費の扱いも変わります(同7-8-6・12-2-7)。

税理士が入ると変わるのは、損失の集計と還付額の試算です

小松公認会計士・税理士事務所では、被災後の決算に向けて次の作業を行います。

ひとつめは、災害損失の集計です。保険金で補塡される分や見舞金を除き、資産ごとに分けます。

ふたつめは、特別勘定の計算です。見積書から限度額を出し、明細書を作ります。

みっつめは、還付額の試算です。どの年にいくら繰り戻すかを比べます。

よっつめは、中間申告の判断です。前倒しするかを、提出期限から逆算して決めます。

いつつめは、期限延長の申請と、特別勘定の取崩しや繰越額の管理です。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 青色申告でない会社でも、災害による赤字で法人税は戻りますか?

災害損失欠損金額なら、青色申告でなくても繰戻し還付を請求できます(法人税法80条5項)。遡れるのは前1年で、青色申告なら前2年です。還付を受ける年から連続して確定申告書を出していることが要件です。還付請求書は、申告書と同時に出します(タックスアンサーNo.5763)。

Q2. 資本金1億円を超える会社でも使えますか?

使えます。資本金1億円超の会社などには、通常の繰戻し還付を使えない措置があります。ただし、災害損失欠損金額はその対象外です(租税特別措置法66条の12第1項ただし書)。要件は会社の規模を問わず、法人税法80条5項のとおりです。

Q3. 修繕が翌期にずれ込むと、被災した期の損金にはできませんか?

修繕等を確実に行うなら、できます。災害から1年以内に払う見込みの修繕費用等を、合理的に見積もります(法人税基本通達12-2-8)。限度額の範囲で、損金経理により災害損失特別勘定に繰り入れます(同12-2-6・12-2-7)。明細書を添付し、1年を経過する日の属する事業年度に残額を益金に戻します。

Q4. 被災して申告期限に間に合いません。どうすればよいですか?

国税庁長官が地域を指定した場合は、申請しなくても期限が延びます。それ以外は、所轄税務署長に申請して承認を受けます(国税通則法11条・同施行令3条)。延長は、理由がやんだ日から2か月以内の範囲です。申請は理由がやんだ後相当の期間内で、期限後でもできます。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法27条・57条1項・10項・58条1項・3項・71条1項・72条1項・80条1項・5項、法人税法施行令155条の2第4項、租税特別措置法66条の12第1項、国税通則法11条、国税通則法施行令3条、法人税基本通達7-8-6・12-2-4〜12-2-10・12-2-12・17-2-4・17-2-6・17-2-8、国税庁タックスアンサーNo.5763「欠損金の繰戻しによる還付」、国税庁「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(令和6年1月)、国税庁「災害損失特別勘定など災害関係諸費用に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」(平成29年3月)、国税庁の災害損失の繰戻しによる法人税額の還付に関する申告書等の記載例(平成29年6月)の内容を扱っています。地方法人税・法人住民税・法人事業税の還付と繰越し、グループ通算制度の計算、資産の評価損の要件と計算、修繕費と資本的支出の形式基準、保険差益の圧縮記帳、仮決算の中間申告による所得税額の還付、法人税法75条による申告期限の延長と利子税、納税の猶予、繰越控除の控除限度額、繰越しの災害損失金額で大規模な災害の場合に3年以内の支出まで含める取扱い(法人税法施行令116条2号)、還付請求書だけを期限後に出した場合の取扱い(法人税基本通達17-2-3)、保険金の額が決算までに確定しない場合の取扱い、帳簿書類を失った場合の取扱い、受け取った見舞金や義援金の取扱い、消費税と源泉所得税の取扱い、被災者を支援する側の法人の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、法人税額は仮定の数字です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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災害による赤字は、要件を満たせば青色申告でなくても前期の法人税の還付を請求できます。青色申告なら前2年まで遡れます。ただし、還付請求書は申告書と同時に出す必要があります。保険金で補塡される部分や見舞金は、災害損失に入りません。代表税理士が、災害損失の集計、特別勘定の計算と明細書、繰り戻す年の試算まで対応します。仮決算の中間申告の判断と、期限延長の申請も通して行います。被災後の最初の決算や中間申告の前にご相談ください。

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公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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