この記事のポイント
- 住んでいた家なら、期限は災害の日から3年を経過する日の属する年の12月31日(東日本大震災は15年)
- 以前に住んでいた家が後から滅失したときは、住まなくなった日から数えます
- 取り壊した場合と違い、1年以内の契約や跡地を他に使わない要件はありません
- 軽減税率は、土地と持ち続けたとみなした家屋が、売った年の1月1日にともに10年超かで判定
まず結論:住んでいた家が滅失したら、災害の日から3年後の年末が期限です
自宅が災害で滅失しても、敷地を売るときに3,000万円の特別控除を使える場合があります。
マイホームを売った利益から、最高3,000万円を引ける特例です(租税特別措置法35条)。
災害の時に住んでいた家なら、期限は災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日です。
以前に住んでいた家が後から滅失したときは、住まなくなった日から数えます。
要件を満たせば、税率が下がる軽減税率の特例も重ねて使えます。

期限は「災害の日」か「住まなくなった日」から数えます
どちらから数えるかは、災害の時にその家に住んでいたかで決まります。
ホ 家屋が災害により滅失した場合のその敷地で、次の区分に応じた期限までに売るもの(これらの土地の場合は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用していてもかまいません。)
(イ) 上記イの家屋の敷地の場合は、災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
(ロ) 上記ロの家屋の敷地の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
(国税庁 タックスアンサー No.3302)
上記イは現に住んでいる家屋、上記ロは以前に住んでいた家屋のことです。
計算例
例1:令和7年9月10日の豪雨で、住んでいた家が流失した
災害の日から3年を経過する日は令和10年9月 → 期限は令和10年12月31日例2:令和6年4月20日に転居し、令和7年9月10日に旧宅が流失した
住まなくなった日から3年を経過する日は令和9年4月 → 期限は令和9年12月31日例2を災害の日から数えると、期限を1年遅く見誤ります。
家屋が残っている場合は住まなくなった自宅の3年の記事をご覧ください。
補足
東日本大震災で自宅が滅失したら、期限の「三年」は「十五年」です(震災特例法11条の6第4項)。滅失には「通常の修繕によっては原状回復が困難な損壊」を含みます。平成23年3月11日に住めなくなった場合、期限は令和8年12月31日です。
国税庁No.8011の特定非常災害の延長措置は、買換資産等の取得期限等が対象です。
その対象に、3,000万円控除と軽減税率は挙がっていません。

自分で取り壊した場合とは、要件が3つ違います
違いは次の3点です。
| 比べる点 | 災害で滅失した場合 | 自分で取り壊した場合 |
|---|---|---|
| 売買契約の時期 | 期限内に譲渡すればよい | 取り壊した日から1年以内に契約 |
| 跡地の使い方 | どのような用途でもかまわない | 契約まで貸付けその他の用に使用しない |
| 軽減税率の10年の判定 | 売った年の1月1日に、家屋(持ち続けたとみなす)と敷地がともに10年超 | 取り壊した年の1月1日に、家屋と敷地がともに10年超 |
(国税庁 タックスアンサー No.3302・No.3305・No.3320)
滅失した家屋の敷地は、期限内に売れば、それまで駐車場などに使っていても構いません。
注意
家屋が残り、ご自身で解体してから売るときは、取り壊した場合の要件に当たるかを確かめます。解体から1年以内の契約と、契約まで跡地を使わないことが要件になり得ます。解体の前に日程を並べてください。
軽減税率は、家屋を持ち続けたとみなして10年を判定します
軽減税率(措置法31条の3)は、10年を超えて持っていたマイホームを売ったときの低い税率です。
課税長期譲渡所得金額の6,000万円以下の部分は、所得税10%・住民税4%です。一般の長期譲渡所得は、所得税15%(措置法31条1項)・住民税5%です。
住民税の率は、地方税法附則34条・34条の3によります。
売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること(家屋が災害により滅失した場合は、その家屋を引き続き所有していたならば、売った年の1月1日において所有期間が10年を超える家屋の敷地に限ります。)。
(国税庁 タックスアンサー No.3305。根拠は措置法31条の3第2項4号)
所有期間は、取得した日の翌日から数えます(措置法31条2項)。
土地と家屋を平成28年5月20日に取得したなら、令和8年1月1日では10年以下です。令和9年1月1日には10年を超えます。
10年に少し足りないときは、期限の範囲内で、売る年によって判定が変わります。
期限を過ぎると、2つの特例がともに使えなくなります
期限を過ぎて売ると、3,000万円の特別控除も軽減税率も使えません。
次は、令和8年中に売った場合の、一定の前提を置いた目安です。
計算例
例:売った金額5,500万円、土地の取得費1,300万円、譲渡費用200万円
譲渡所得 5,500万円 - 1,300万円 - 200万円 = 4,000万円 期限内・10年超:課税1,000万円 → 所得税100万円+復興21,000円+住民税40万円 = 1,421,000円 期限内・5年超10年以下:課税1,000万円 → 所得税150万円+復興31,500円+住民税50万円 = 2,031,500円 期限後:課税4,000万円 → 所得税600万円+復興126,000円+住民税200万円 = 8,126,000円期限内(10年超)と期限後では、6,705,000円の差になります。
復興は復興特別所得税で、令和8年分は所得税額の2.1%です。
令和9年分以後は1.1%に下がり、別に防衛特別所得税1%がかかる改正があります。
家の損害は雑損控除、敷地の売却は譲渡所得で計算します
住宅や家財の損害は、要件を満たせば雑損控除で所得から差し引けます(国税庁 No.1110)。
その計算では、保険金等の額をまず損害金額から差し引きます。
災害で滅失した住宅の取壊しや除去の費用は、「災害関連支出」の例に挙がっています。
自宅の損害に基因して受け取る損害保険金は、非課税所得とされています。
根拠は所得税法9条1項18号と、同法施行令30条2号です。
敷地の譲渡所得は、売った金額から土地の取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
撤去費用や保険金をどの計算にどう入れるかは、資料をそろえて個別に整理します。
繰越しや災害減免法との選び方は雑損控除の記事で解説しています。

次の5つの場面では、特例を使えなくなります
どれも特例を失う原因になります。
- 以前の家なのに、災害の日から数えた ― 起点は住まなくなった日です
- 自分で解体したのに、滅失として扱った ― 取壊しの要件を確かめます
- 10年を土地だけで判定した ― 家屋も持ち続けたとみなして判定します
- 親子や夫婦などに売った ― 特別の関係がある人への売却は対象外です
- 前年か前々年にこの特例を受けていた ― 3,000万円控除は使えません
マイホームの譲渡損失や買換え・交換の特例との関係でも、使えない場合があります(No.3302)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
日付と書類を集めるまではご自身でできますが、特例の当てはめは個別判断です。
- 災害があった日と、住まなくなった日を書き出す
- 期限の年の12月31日を計算し、売買の日程と並べる
- 土地と家屋の取得日を、売買契約書や登記事項証明書で確かめる
- 受け取った保険金と、撤去費用の領収書をまとめる
ここから先は、資料と事情で結論が変わります。
家屋が残っていた場合の扱い、雑損控除と災害減免法の選択、撤去費用と保険金の整理です。
特例の一般的な要件は3,000万円特別控除の記事にまとめています。

税理士が入ると変わるのは、期限の確定と特例の当てはめです
ひとつめは、災害の日・転居の日・解体の日を資料で並べ、期限を確定することです。
ふたつめは、登記と契約書から取得日を確かめ、軽減税率の10年を判定することです。
みっつめは、雑損控除と災害減免法の比較と、保険金・撤去費用の整理です。
よっつめは、東日本大震災の15年の特例を当てはめる場合の確認です。
いつつめは、譲渡所得の内訳書と確定申告書への反映、添付書類の準備です。
小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから申告書の作成、適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 災害のあと、更地を月極駐車場として貸していました。特例は使えますか?
国税庁 No.3302は、災害で滅失した家屋の敷地について、用途を問わないとしています。住まなくなった日以後に駐車場として貸していても、それ自体は妨げになりません。期限内の譲渡で、特別の関係がある人への売却でないなど、他の要件も満たす必要があります。
Q2. 東日本大震災で家が流され、土地が残っています。今からでも使えますか?
東日本大震災で自宅が滅失したら、期限の「三年」は「十五年」です(震災特例法11条の6第4項)。滅失には「通常の修繕によっては原状回復が困難な損壊」を含みます。平成23年3月11日に住めなくなった場合、期限は令和8年12月31日です。他の要件も満たす必要があります。
Q3. 家が半壊で残り、自分で解体してから売る予定です。同じ扱いですか?
自分で取り壊した場合は、期限に加えて取り壊した日から1年以内の契約が要件です。契約まで、貸付けその他の用に使用していないことも必要です(No.3320)。どちらに当たるかは被害の状況を見て判断するため、解体の前に確認が必要です。
Q4. 自宅の火災保険金を受け取りました。税金はかかりますか?
自宅の損害に基因して受け取る損害保険金は、非課税所得とされています。根拠は所得税法9条1項18号と、同法施行令30条2号です。雑損控除を受けるときは、保険金等の額をまず損害金額から差し引いて計算します(No.1110)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法31条1項・2項、31条の3第1項・第2項4号、35条1項・2項、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律11条の6第4項、所得税法9条1項18号、同法施行令30条2号、地方税法附則34条・34条の3、措置法関係通達31の3-14・31の3-15・35-2・35-6、国税庁タックスアンサーNo.3302・No.3305・No.3314・No.3320・No.1110・No.3252・No.8011の内容を扱っています。3,000万円の特別控除と軽減税率のその他の要件と添付書類の詳細、譲渡の日(引渡日・契約日)の判定、どのような被害が「滅失」に当たるかの判定基準、災害後の撤去費用を譲渡費用にできるか、保険金と敷地の取得費との関係、雑損控除の計算と災害減免法との有利判定、同じ年に雑損控除と譲渡所得がある場合の計算、震災特例法11条の6第1項(警戒区域)・第5項(相続人)の特例、阪神・淡路大震災の特例、相続・贈与で取得した土地の所有期間、概算取得費、譲渡所得の内訳書の書き方、住民税の申告と納付の時期、令和9年分以後の復興特別所得税・防衛特別所得税の計算は扱っていません。記事中の計算例は、令和8年中の譲渡を前提に一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得費・譲渡費用・所有期間などによって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1110「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第31条の3・第35条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(第11条の6)https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000029
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