この記事のポイント
- 保険料は期間の経過に応じて損金にするのが原則です
- 終身保障は116歳までを保険期間とみて配分します
- 短期払の支払時損金は1人あたり年30万円以下が条件です
- 役員だけ加入で受取人が本人や家族なら給与になります
まず結論:払った年に全額が損金になるとは限りません
「医療保険やがん保険は会社で入れば経費になります」と勧められる社長は多くいます。
保険料は、損金(税金の計算で差し引ける費用)になり得ます。
ただし、損金にする時期と、損金にできる相手には決まりがあります。
原則は「期間の経過に応じて」損金にすることで、払った年に全額とは限りません。
役員だけが加入し、受取人が本人や家族なら、保険料は役員の給与になります。

医療保険・がん保険は「第三分野保険」として扱います
税務では、医療保険やがん保険を「第三分野保険」と呼びます。
病気やけがなど一定の事由で、保険金や給付金が出る保険です(タックスアンサー No.5364)。
根拠は法人税基本通達9-3-5と9-3-5の2で、令和元年6月28日に改正されました。
改正後のルールは、令和元年7月8日以後に契約した保険に適用されます。
後で出てくる短期払の特例だけは、令和元年10月8日以後の契約が対象です(国税庁FAQ Q1)。
それより前の契約は、今も改正前の取扱いによります。令和元年7月8日前の法人保険の記事をご覧ください。
法人保険全体の考え方は法人保険と節税の記事にまとめています。
原則は「期間の経過に応じて損金」、終身なら116歳までで配分します
給付金の受取人が会社の場合、通達は次のように定めています。
(1) 保険金又は給付金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。
(法人税基本通達9-3-5)
終身保障には満期がないため、通達の注が計算上の期間を決めています。
保険期間が終身である第三分野保険については、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とする。
(法人税基本通達9-3-5(注)1)
終身払いで毎年同じ額を払う保険なら、その年の保険料がほぼその年の損金になります。
差が出るのは、払込期間が保険期間より短い「短期払」の保険です。
計算例
例:45歳の社長を被保険者に、解約返戻金のない終身がん保険(年払600,000円・10年払)に加入
計算上の保険期間 116歳 - 45歳 = 71年 保険料の総額 600,000円 × 10年 = 6,000,000円 1年あたりの損金 6,000,000円 ÷ 71年 ≒ 84,507円(円未満切捨て) 払込中の毎年の前払(資産) 600,000円 - 84,507円 = 515,493円 10年後の前払の残高 515,493円 × 10年 = 5,154,930円金額は、保険料総額を71年で均等に配分する前提の目安です。
払込が終わった11年目以降は、この残高を116歳まで少しずつ損金にしていきます。
保険期間3年以上で、最高解約返戻率が50%を超える保険は、原則として9-3-5の2の別ルールです。
最高解約返戻率とは、払った保険料に対する解約返戻金の割合の、最も高い時点の値です(No.5364-2)。
ただし、最高解約返戻率70%以下で、1人あたりの年換算保険料相当額の合計が30万円以下なら、9-3-5の扱いです(9-3-5の2ただし書)。

短期払でも、1人あたり年30万円以下なら払った年の損金にできます
支払った年に損金とする処理を認める特例があります(9-3-5(注)2)。
対象は、次の3つをすべて満たす保険です。
- 保険期間を通じて解約返戻金がない(ごく少額の払戻金は含む)
- 保険料の払込期間が、保険期間より短い
- 1人の被保険者について、その事業年度に払った保険料の合計が30万円以下
30万円は1契約ごとではなく、同じ人を被保険者にした対象の保険の合計で判定します。
対象の保険とは、解約返戻金のない短期払の保険です。保険会社や加入時期が違っても合算します(FAQ Q17)。
ただし、令和元年10月8日前の契約と、給与になる保険料は含めません(同Q17)。
計算例
例:社長を被保険者に、解約返戻金のない終身保障・短期払の保険を2本契約
医療保険の年払保険料 180,000円(単独なら30万円以下) がん保険の年払保険料 150,000円(単独なら30万円以下) 合計 180,000円 + 150,000円 = 330,000円 → 30万円超 → 2本とも特例は使えず、それぞれ116歳までの期間で配分一定の前提を置いた目安です。
事業年度の途中で追加加入し、合計が30万円を超えることがあります。
その場合は、その期に払った保険料のどれにも特例を使えません(同Q17)。
注意
払込期間中だけ解約返戻金がなく、払込終了後に解約返戻金が出る商品は対象外です(FAQ Q16)。「ごく少額」かどうかも、保険料や給付金の額に対する割合などで個別に判断するとされています。
役員だけが加入し、受取人が本人や家族なら「給与」になります
受取人が本人や遺族でも、全員が加入していれば、原則は期間の経過に応じた損金です。
ただし、次のただし書があります。
役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(法人税基本通達9-3-5(2))
社長や家族役員だけが加入し、受取人も本人なら、保険料は役員の給与です。
経常的に負担する保険料は、定期同額給与(毎月同額の役員給与)になります(No.5364)。
給与になった保険料は、その役員の生命保険料控除の対象になります(同)。
給与になる保険料には、30万円の特例は使えません(FAQ Q15)。
ポイント
受取人が会社なら、役員だけが被保険者でも、ただし書は適用されません。保険料は期間の経過に応じた損金です(9-3-5(1))。

会社が給付金を受け取ったら、会社の収益になります
受取人が会社なら、入院給付金や診断給付金は会社に入ります。
資本等取引以外の取引による収益は、益金(税金の計算で足し込む収入)になります(法人税法22条2項)。
受け取った給付金は、会社の収益として申告に含めます。
主契約とは別に給付がある特約は、特約ごとに内容に応じて扱います(9-3-6の2)。
保険料払込免除特約のように給付のない特約は、主契約の保険料に含めます(FAQ Q18)。
誤ると税務調査で修正を求められる4つの処理
次のような処理は、通達や法令の取扱いと食い違います。
- 短期払の保険料を毎年全額損金にしている ― 1人あたりの合計が30万円を超えるのに特例を使った例です。前払分は損金に算入できません。
- 別の保険会社の契約を合算していない ― 医療保険とがん保険を別々に入り、1本ずつ判断した例です。
- 社長だけ加入・受取人は社長なのに保険料で経費処理 ― 本来は役員の給与です。本人の所得税の扱いにも影響します。
- 給付金を受け取ったのに収益に入れていない ― 会社の口座以外に入金された場合に起きやすい漏れです。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
契約の前に、社長ご自身で確認できるのは次の4点です。
- 契約日が令和元年7月8日以後か(短期払の特例は10月8日以後か)
- 被保険者は誰か。全員か、役員や特定の人だけか
- 給付金の受取人は会社か、本人や家族か
- 払込期間と保険期間、解約返戻金の推移を設計書で見る
「ごく少額の払戻金」か、複数契約の合算で30万円を超えるかは個別判断です。
期の途中の加入・解約でも結論が変わります。
補足
保険の設計は個社ごとに異なります。保障の必要性と税務上の扱いは分けて考えます。
税理士が入ると変わるのは、損金の時期の根拠と仕訳の組み方です
小松公認会計士・税理士事務所では、契約の前後で次の作業を行います。
ひとつめは、設計書の確認です。解約返戻金の推移、払込期間、特約の有無を読み取ります。
ふたつめは、被保険者ごとの合算表の作成です。既存の契約も含めて30万円を判定します。
みっつめは、損金と前払の配分の計算です。116歳までの期間で、毎期の仕訳を組みます。
よっつめは、役員の給与になるかの判定です。給与になる場合は、役員報酬の設計とあわせて整理します。
いつつめは、給付金を受け取ったときの処理です。入金先の確認と、決算書・申告書への反映を行います。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 会社で入った医療保険の保険料は、全額その年の経費になりますか?
原則は期間の経過に応じて損金です(法人税基本通達9-3-5)。終身払いで毎年同額なら、その年の保険料がほぼその年の損金になります。終身保障の短期払の保険は、原則として116歳までの期間で配分します。払った年に全額が損金になるのは、Q2の特例に当たる場合です。
Q2. 短期払のがん保険を、払った年に全額損金にできる条件は?
保険期間を通じて解約返戻金がなく(ごく少額は含む)、払込期間が保険期間より短く、1人の被保険者についてその事業年度に払った保険料の合計が30万円以下であることです(9-3-5(注)2)。令和元年10月8日以後の契約が対象です。
Q3. 社長だけが医療保険に加入しても、会社の経費になりますか?
給付金の受取人が会社なら、期間の経過に応じた損金です。受取人が社長本人や家族なら、役員だけが被保険者の場合は保険料が役員の給与になります(9-3-5(2))。給与になった保険料は、社長の生命保険料控除の対象です。
Q4. 会社が入院給付金を受け取ったら、どう処理しますか?
会社が受取人なら、受け取った給付金は会社の収益として益金に算入します(法人税法22条2項)。契約上の受取人と実際の入金先が一致しているかも確認してください。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項、法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2・9-3-6の2・9-2-9・9-2-11、国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」(Q1・Q15〜Q18)、タックスアンサーNo.5364・No.5364-2の内容を扱っています。最高解約返戻率が50%を超える保険の資産計上割合と取崩期間の細目、令和元年7月8日前(短期払の特例は令和元年10月8日前)の契約の取扱い、解約・払済保険への変更・契約転換の処理、給付金の計上時期の細目、受け取った給付金を役員や従業員に見舞金として支払う場合の扱い、受取人が役員本人の場合の所得税の扱い、保険料と消費税の関係、全員加入かどうかの具体的な判定基準は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の損金の額は契約内容と事業年度の月数によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節「保険料等」(9-3-5・9-3-5の2・9-3-6の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- 国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/teikihoken_FAQ/pdf/03.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.5364「定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第2款「経済的な利益の供与」(9-2-9・9-2-11)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
医療保険・がん保険に入る前に、損金の時期を確かめませんか
会社で入る医療保険・がん保険の保険料は、期間の経過に応じて損金にするのが原則です。終身保障は116歳までを保険期間とみるため、短期払では払った年の損金は一部にとどまります。30万円以下の特例は、同じ人を被保険者にした、解約返戻金のない短期払の保険の合計で判定します。役員だけが加入して受取人が本人なら給与になります。代表税理士が、設計書の確認、被保険者ごとの合算、損金と前払の配分、給与になるかの判定、給付金の処理まで通して対応します。契約書に署名する前の段階でご相談ください。
無料相談を申し込む 法人顧問サービスの詳細を見る 約60秒で料金を自動見積り決算と申告だけのご依頼は、決算申告のみのプランをご覧ください。