この記事のポイント
- 生命保険の契約者配当金は、原則として通知を受けた日の事業年度の益金です
- 積み立てた配当は積立ての通知を受けた日が基準で、付いた利息も通知の期の益金です
- 保険金の受取人が会社だけの養老保険等(9-3-4(1)の形)は、資産計上額から差し引くこともできます
- 契約者貸付は保険会社からの借入れなので、受け取っても益金になりません
まず結論:生命保険の契約者配当金は、通知を受けた期の益金です
会社の生命保険から、配当金の通知が届くことがあります。
この契約者配当金は、原則として通知を受けた日の事業年度の益金です。
益金とは、法人税の計算で利益に加える金額のことです。根拠は法人税基本通達9-3-8です。
配当金を保険会社に積み立てたままでも、原則として通知を受けた期の益金です。
例外は、死亡保険金と生存保険金の受取人がどちらも会社の養老保険などの場合です。この場合は、資産計上額から差し引く方法も選べます。
保険会社からお金を借りる契約者貸付は、借入れなので益金になりません。

契約者配当金は、保険料を後から精算する性格のお金です
配当金は、保険料の事後精算としての性格を持つお金です(生命保険文化センター)。
保険料は3つの予定率をもとに計算され、予定と実際の差で剰余金が生じると契約者に分配されます。
配当金は保証されたものではなく、ゼロになることもあります。
| 受取方法 | 中身 | 原則の扱い(法人税基本通達9-3-8) |
|---|---|---|
| 積立 | 保険会社に積み立て、所定の利息が付きます | 積立ての通知を受けた期の益金(据置配当) |
| 現金支払 | 現金で受け取ります | 通知を受けた期の益金 |
| 買増 | 一時払の保険料として保険を買い増します | 通知の期の益金。買い増した保険の保険料は9-3-4〜9-3-6の定めによります(注1) |
| 相殺 | 配当金と保険料を相殺します | 通知の期の益金(9-3-8本文)。相殺の個別の定めはありません |
補足
個人年金保険には、平成2年5月30日付の別の通達(直審4-19)があります。同通達は、9-3-4と9-3-8を「そのまま準用することは適当でない」としています。配当の扱いは、年金支払開始日の前と以後で分けて定めています(同通達3・4)。詳しくは法人契約の個人年金保険の記事をご覧ください。
益金にする時期は、入金の日ではなく通知を受けた日で決まります
時期の基準は、保険会社から通知を受けた日です。
契約者配当の額については、その通知(据置配当については、その積立てをした旨の通知)を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する
(法人税基本通達9-3-8)
3月決算の会社が3月25日に通知を受け、4月10日に入金されたら、3月に終わる期の益金です。
積み立てた配当(据置配当)は、積立てをした旨の通知を受けた日が基準です。引き出した日ではありません。
据置配当や、まだ受け取っていない配当に付く利息も、通知のあった期の益金です(同通達の注2)。
計算例
例:3月決算の会社が、配当を積み立てている場合
令和8年7月 配当60,000円を積み立てた旨の通知 令和9年2月 据置配当の利息1,200円の通知 令和9年3月期の益金 60,000円 + 1,200円 = 61,200円 令和9年5月に引き出しても、令和9年3月期の益金のままです金額は一定の前提を置いた目安で、資産計上額から差し引かない場合です。

受取人が会社だけの養老保険などは、資産計上額から差し引けます
死亡保険金と生存保険金の受取人がどちらも会社の養老保険は、扱いを選べます。
生存保険金とは、被保険者が満期の日などに生きていると支払われる保険金です。
この形の契約は、保険料を契約が終わるまで資産に計上します(9-3-4(1))。費用にせず、資産として帳簿に残す処理です。特約の保険料は別に扱います。
9-3-8の定めは次のとおりです。
当該契約者配当の額を資産に計上している保険料の額から控除することができるものとする
(法人税基本通達9-3-8)
定期付養老保険(養老保険に定期保険などを付けたもの)も、対象になる場合があります。保険証券に保険料の区分がなく、9-3-4(1)の例による場合です(9-3-6(2))。
死亡保険金の受取人が遺族の養老保険や、定期保険には、この控除の定めはありません。
これらの配当は、原則どおり通知を受けた期の益金です。
計算例
例:9-3-4(1)の形の養老保険で、配当60,000円を現金で受け取った場合
A 益金にする 通知の期の益金 60,000円/資産計上額 4,800,000円 B 差し引く 通知の期の益金 0円/資産計上額 4,800,000円 - 60,000円 = 4,740,000円 終了時に5,000,000円を受け取ると、差額はA 200,000円、B 260,000円 通知の期の益金+終了時の差額は、A・Bとも 260,000円金額は一定の前提を置いた目安です。Bでは、配当の分だけ終了時の差額が大きくなります。
定期保険などの保険料の資産計上と損金の区分は、法人保険と税の記事をご覧ください。
終了時の差額の扱いは、法人保険の出口の記事で解説しています。
契約者貸付は借入れなので、受け取っても益金になりません
契約者貸付で受け取ったお金は、保険会社からの借入れです。
契約者貸付は、解約返戻金の一定範囲内で、保険会社から貸付けを受ける制度です。解約返戻金とは、解約したときに戻るお金のことです。
借りたお金はいつでも返済でき、返さなければ満期保険金などから元金と利息が差し引かれます。
貸付金には所定の利息(複利)が付きます(生命保険文化センター)。返さなければ、利息は元金に繰り入れられます。
国税不服審判所の裁決(令和6年8月23日・所得税の事案)も、契約者貸付を借入金としています。法人税法22条2項は、益金の額を、取引に係る「収益の額」と定めています。
借りたお金は返済か差引きで精算されるので、収益に当たらず、益金になりません。
注意
保険金から差し引かれたとき、振り込まれた額だけを記帳すると、借入金が帳簿に残ります。元利金が解約返戻金を超え、通知された額を期日までに払い込まないと、契約は失効します。
計算例
例:満期保険金3,000,000円、貸付の元金1,000,000円、利息45,000円
振込額 3,000,000円 - 1,000,000円 - 45,000円 = 1,955,000円 振込額だけを記帳すると、借入金1,000,000円が帳簿に残ります金額は一定の前提を置いた目安です。

通達や条文とずれる処理の例を5つ挙げます
どれも、通知の日付・契約の形・借入れの区別を確かめずに処理したものです。
- 引き出した期や入金の期に計上している ― 基準は通知を受けた日です(9-3-8)。
- 据置配当の利息を計上していない ― 利息も通知のあった期の益金です(同注2)。
- 死亡保険金の受取人が遺族の養老保険で、配当を差し引いている ― 控除の定めはありません。
- 契約者貸付を雑収入にしている ― 借入れなので、益金ではありません。
- 満期保険金から引かれた元利金を記帳していない ― 借入金が帳簿に残ります。
配当と貸付の通知書を、決算の前に契約ごとにそろえることが出発点です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
保険会社の通知書と帳簿を突き合わせるところまでは、ご自身で進められます。
- 保険証券で、死亡保険金と生存保険金の受取人を確かめる
- 有配当か無配当か、配当の受取方法が積立・現金支払・買増・相殺のどれかを確かめる
- 配当・利息・契約者貸付の通知書を集め、通知の日がどの事業年度に入るかを書き出す
- 総勘定元帳で、配当・利息・貸付の残高と処理を突き合わせる
ここから先は個別判断です。
9-3-4(1)の形の契約で差し引くかどうかは、解約や満期の時期とあわせて決めます。
配当を保険料と相殺する契約や、契約者貸付の利息の扱いも、契約ごとに確かめます。

税理士が入ると変わるのは、契約ごとの一覧表と通知書の突合です
小松公認会計士・税理士事務所では、決算の前に次の作業を行います。
ひとつめは、契約の一覧表です。受取人・資産計上額・配当の受取方法・貸付残高を並べます。
ふたつめは、通知書と決算日の照合です。配当と利息を計上する期を確かめます。
みっつめは、差し引く場合と差し引かない場合の比較です。資産計上額と終了時の差額を並べます。
よっつめは、契約者貸付の照合です。保険会社から毎年届く残高通知と帳簿を合わせます。
いつつめは、決算の仕訳と申告書への反映です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 配当金を積み立てたままで、引き出していません。それでも益金ですか?
積み立てた配当(据置配当)は、積立ての通知を受けた日の事業年度の益金です(9-3-8)。引き出した期ではありません。保険金の受取人が会社だけの養老保険などは、配当を資産計上額から差し引く方法もあります。付いた利息は、配当を差し引く場合も通知のあった期の益金です(同注2)。
Q2. 養老保険の配当金は、資産計上額から差し引いてよいですか?
差し引けるのは、死亡保険金と生存保険金の受取人がどちらも会社の養老保険です(9-3-4(1)の形)。保険料の区分がない定期付養老保険で、9-3-4(1)の例によるものも同じです(9-3-6(2))。死亡保険金の受取人が遺族の養老保険には、この控除の定めはありません。
Q3. 契約者貸付で受け取ったお金は、益金になりますか?
なりません。契約者貸付は、解約返戻金の一定範囲内で保険会社から借りる制度で、所定の利息が付きます。法人税法22条2項は益金を「収益の額」としています。返済するか保険金から差し引かれる借入れは、収益に当たりません。
Q4. 配当で保険を買い増す契約は、どう処理しますか?
配当そのものは、原則として通知を受けた期の益金です(9-3-8)。買い増した保険(増加保険)の保険料は、9-3-4から9-3-6までの定めで扱います(同注1)。買い増した保険の種類と受取人で、資産に計上するか損金にするかなどが変わります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条2項、法人税基本通達9-3-4(1)・9-3-6(2)・9-3-8、「法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて」(平成2年5月30日 直審4-19)の趣旨と3・4、公益財団法人生命保険文化センターの「配当金の仕組み」「配当金の引出し・契約者貸付」、国税不服審判所の令和6年8月23日裁決の内容を扱っています。保険の種類ごとの保険料の資産計上と損金算入の区分(9-3-5・9-3-5の2など)、解約・満期・死亡で契約が終わるときの益金と損金の計算、払済保険への変更と契約転換、個人年金保険の契約者配当と資産計上額の取崩しの詳細、配当を保険料と相殺する場合の処理、契約者貸付の利息の損金算入の時期、保険料の自動振替貸付、損害保険の契約者配当、受取配当等の益金不算入との関係、適格退職年金契約、役員や使用人の給与とされる場合の所得税、消費税、相続税・贈与税の論点は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の配当の額・資産計上額・受取額は契約ごとに異なります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節「保険料等」(9-3-4・9-3-6・9-3-8)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁「法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて」(平成2年5月30日 直審4-19)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/900530/01.htm
- 公益財団法人 生命保険文化センター「配当金の仕組み」https://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/insurance/17.html
- 公益財団法人 生命保険文化センター「配当金の引出し・契約者貸付」https://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/continuance/93.html
- 国税不服審判所 公表裁決事例(令和6年8月23日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/136/03/index.html
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生命保険の契約者配当金は、原則として通知を受けた日の事業年度の益金です。積み立てた配当は積立ての通知の日が基準で、付いた利息も通知の期の益金です。保険金の受取人が会社だけの養老保険等(9-3-4(1)の形)は、配当を資産計上額から差し引けます。契約者貸付は借入れで、益金にはなりません。代表税理士が、契約の一覧表の作成と、通知書と帳簿の突合を行います。差し引く場合と差し引かない場合の比較から、決算の仕訳と申告書への反映まで通して対応します。決算を締める前にご相談ください。
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