この記事のポイント
- 売却益は本業の損益と合算します。個人の長期・短期やマイホームの3,000万円控除はありません
- 青色申告の期の繰越欠損金と、要件を満たせば相殺できます。中小法人等以外は原則、所得の50%までです
- 課税事業者なら建物部分の対価に消費税。土地は非課税で、価額を区分します
- 土地重課は令和11年3月31日までの譲渡は適用停止。計上は引渡しの日が原則です
まず結論:会社の売却益は、その期のほかの損益と合算して所得を計算します
会社の所得は、その事業年度の益金から損金を差し引いて計算します。
内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
(法人税法22条1項)
益金(税金の計算上の収益)には、資産の譲渡による収益も入ります(同条2項)。
不動産の売却益は、本業の利益や赤字と合算して、その期の法人税の計算に入ります。
| 違い | 個人 | 会社 |
|---|---|---|
| 税金の計算 | 他の所得と分けて計算 | その期の益金・損金と合算 |
| 所有期間 | 売った年の1月1日で5年超か以下かで税率が違う | 通常の法人税では区分しない |
| 3,000万円控除 | マイホームの売却に特例がある | 個人の特例のため使えない |
(個人:租税特別措置法31条1項・32条1項・35条1項)

売却益は帳簿価額を引いて計算し、繰越欠損金と相殺できます
売却益は、売った金額から帳簿価額(帳簿上の資産の額)と売却費用を引いた額です。
建物の帳簿価額は、取得価額から償却費の累計を引いた額です。
土地は減価償却資産と別に定められ、償却しません(法人税法2条22号・23号)。
償却しなかった分(償却不足)は、帳簿価額に残ります(同法31条1項)。
売却益の出た期は、繰越欠損金(過去の赤字)を所得から差し引けます(同法57条1項)。
対象は前10年以内に開始した期の欠損金です(平成30年4月1日前開始の期は9年)。
赤字の期の青色申告と、その後の連続した確定申告が要件です(タックスアンサーNo.5762)。
帳簿書類の保存も必要です(法人税法57条10項)。
中小法人等は所得の全額まで、それ以外の会社は原則として所得の50%までです(同条1項・11項)。
中小法人等は、資本金1億円以下の会社などです(大法人の100%子会社などを除く)。
計算例
例:土地5,000万円・建物3,000万円で買い、税抜8,000万円で売った場合
建物の帳簿価額 30,000,000円 - 償却累計18,000,000円 = 12,000,000円 売却益 80,000,000円 -(土地50,000,000円 + 建物12,000,000円)- 費用2,500,000円 = 15,500,000円 本業の赤字と合算 15,500,000円 - 3,000,000円 = 12,500,000円 中小法人等 欠損金10,000,000円を全額控除 → 所得 2,500,000円 それ以外の会社 12,500,000円 × 50% = 6,250,000円まで控除 → 所得 6,250,000円(残り3,750,000円は翌期以降へ)数値は一定の前提を置いた目安で、欠損金は青色申告の期に生じた期限内のものとします。
課税事業者なら、建物部分の対価に消費税がかかります
消費税では土地の譲渡は非課税ですが、建物は非課税に含まれません(消費税法6条1項・別表第二)。
法人の資産の譲渡は、その全てが「事業として」に当たります(消費税法基本通達5-1-1の注2)。
社宅や遊休の建物でも、建物部分は課税売上げです。
土地と建物を一括で売るときは、対価を合理的に区分します(消費税法基本通達10-1-5)。
補足
土地の売却代金は、課税売上割合(売上げに占める課税売上げの割合)の計算に入ります。本業の課税売上げが1億円なら、土地7,000万円・建物1,000万円(税抜)の売却で約61%です。ほかに非課税売上げがない、一定の前提を置いた目安です。簡易課税以外は、95%未満だと仕入れの消費税を全額控除できないことがあります(消費税法30条2項)。単発の土地の譲渡なら、個別対応方式で「課税売上割合に準ずる割合」の承認を受けられる場合があります。95%の判定は、承認を受けても実際の課税売上割合で行います(消費税法基本通達11-5-9)。個別対応方式は、仕入れを用途で分ける計算です(消費税法30条2項1号・3項)。承認は、事業の実態に変動がないことなどが条件です。その期に使うなら、期末までの申請と翌日から1か月以内の承認が要ります(国税庁 質疑応答事例)。

土地の重課は、令和11年3月31日までの譲渡には適用されません
法人税を上乗せする「土地重課」は、令和11年3月31日までの譲渡には適用されません。
本来の上乗せは、譲渡利益金額の5%です(租税特別措置法62条の3第1項)。
売った年の1月1日で所有期間5年以下の土地は、10%です(同法63条1項・2項)。
第一項の規定は、法人が平成十年一月一日から令和十一年三月三十一日までの間にした土地の譲渡等については、適用しない。
(租税特別措置法62条の3第15項。令和10年1月1日以後は第16項)
10%の重課も、同じ期限まで停止されています(同法63条8項)。
令和8年度改正で、停止の期限は令和8年3月31日から3年延長されました。
(財務省「令和8年度税制改正の解説」)
令和11年4月1日以後の譲渡は、その時点の法令を確かめます。
売却益を計上する期は、引渡しの日が原則です
売却の収益は、原則として引渡しの日を含む事業年度の益金です(法人税法22条の2第1項)。
固定資産の譲渡に係る収益の額は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。
(法人税基本通達2-1-14)
土地・建物などは、契約の効力発生の日の収益計上も認められます(同通達ただし書)。
引渡しの日が明らかでない土地は、次のうち早い日を引渡しの日にできます(同通達の注・2-1-2)。
- 代金のおおむね50%以上を受け取った日
- 所有権移転登記の申請(必要書類の交付を含む)をした日
ポイント
3月決算の会社が3月に契約し、4月に引き渡すと、原則は4月を含む期の益金です。契約の効力が3月に生じ、その日に収益計上すれば、3月までの期の益金にできます。
どちらの期に入れるかで、欠損金の使い方や納税の時期が変わります。

見落とすと税額が変わる3つの失敗パターン
次の3つは、確かめないと売却益や消費税の額がずれます。
- 契約書に土地と建物の価額の区分がない ― 建物部分の消費税が決まりません。合理的な区分がないときは、時価の比で按分します(消費税法施行令45条3項)。
- 償却と台帳を確かめない ― 帳簿価額を誤ります。償却不足をまとめて償却しても、限度額を超える分は損金になりません(法人税法31条1項)。その償却超過額は、帳簿価額に含めて計算します(同法施行令62条1項)。一緒に売る附属設備・構築物の落とし漏れにも注意します。
- 社長などの役員に時価より安く売る ― 会社の収益は時価で計算します(法人税法22条の2第4項)。差額は役員への経済的な利益として給与に含まれます(法人税基本通達9-2-9)。
注意
役員給与は、定期同額給与などの形に当たらないと損金になりません(法人税法34条1項)。相手が関係会社や取引先でも、差額のうち実質的に贈与した部分は寄附金に含まれます(同法37条8項)。建物部分の消費税は、役員への対価が時価のおおむね50%未満なら時価で計算します。根拠は消費税法28条1項と同法基本通達10-1-2です。
どれも、売買契約の前に確かめたい点です。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
売る前にご自身で確かめられるのは次の4点です。
- 売買契約書の案で、土地と建物の価額・消費税額・引渡日を見る
- 固定資産台帳で、建物・附属設備・構築物の帳簿価額を見る
- 前期の申告書の別表で、繰越欠損金と償却超過額の残高を見る
- 買主が役員やその親族、関係会社に当たらないかを見る
価額の区分の方法、時価の根拠、計上する期の判断は、個別の判断になります。

税理士が入ると変わるのは、売る前の試算と申告書への反映です
小松公認会計士・税理士事務所では、売却の前から次の作業を行います。
- 売却益・欠損金・消費税を並べた期ごとの試算
- 契約書の案での、価額の区分と引渡日の確認
- 台帳と別表の照合と、税務上の帳簿価額の確定
- 役員などに売る場合の時価の根拠と、準ずる割合の申請書の準備
法人税と消費税の申告書への反映まで、適正申告として一貫して担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 会社の土地を売っても、個人と同じ3,000万円控除は使えますか?
使えません。マイホームの3,000万円控除は、個人の資産についての特例です(租税特別措置法35条1項)。会社の売却益は、その期の益金・損金と合算して所得を計算します(法人税法22条1項)。所有期間による長期・短期の区分も、通常の法人税にはありません。
Q2. 売却益が出た期に、過去の赤字と相殺できますか?
前10年以内に開始した期の欠損金なら差し引けます(平成30年4月1日前開始の期は9年)。要件は、赤字の期の青色申告、その後の連続した確定申告、帳簿書類の保存です(法人税法57条10項)。中小法人等以外は原則として所得の50%までです(タックスアンサーNo.5762)。
Q3. 3月に売買契約を結び、4月に引き渡すと、どちらの期の売上げですか?
原則は引渡しの日を含む期の益金です(法人税法22条の2第1項・法人税基本通達2-1-14)。土地・建物などは、契約の効力発生の日に収益計上する方法も認められています(同通達ただし書)。その場合は、効力発生の日を含む期の益金になります。
Q4. 社長個人に、会社の不動産を時価より安く売るとどうなりますか?
会社の収益は時価で計算します(法人税法22条の2第4項)。時価との差額は、役員への経済的な利益として給与に含まれます(法人税基本通達9-2-9)。定期同額給与などに当たらなければ、損金になりません(法人税法34条1項)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条22号・23号、22条1項・2項、22条の2第1項・第4項、31条1項、34条1項・4項、37条8項、57条1項・10項・11項、法人税法施行令62条1項、法人税基本通達2-1-2・2-1-14・9-2-9、租税特別措置法31条1項・32条1項・35条1項・62条の3第1項・第15項・63条1項・2項・8項、消費税法6条1項・別表第二・28条1項・30条2項・3項、消費税法施行令45条3項、消費税法基本通達5-1-1・10-1-2・10-1-5・11-5-9、国税庁タックスアンサーNo.5762、国税庁の質疑応答事例「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」、財務省「令和8年度税制改正の解説」の内容を扱っています。法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の税率と税額、収用等の特別控除や買換え・圧縮記帳など法人向けの特例、土地重課の適用除外と譲渡利益金額の計算、欠損金の繰越控除の制限と繰戻し還付、消費税の納税義務の判定と仕入税額控除の計算方法、課税売上割合に準ずる割合の承認要件の細目、未経過固定資産税の精算金の扱い、時価の算定方法、社長個人側の所得税、不動産業の会社が棚卸資産として売る場合の扱いは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得価額・償却の状況・売却価額・費用・会社の規模によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・22条の2・57条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(62条の3・63条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第1節第2款「固定資産の譲渡等に係る収益」(2-1-14)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_02.htm
- 国税庁 消費税法基本通達 第10章第1節「課税資産の譲渡等」(10-1-5)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/10/01.htm
- 財務省「令和8年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(法人税関係)の改正https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/explanation/PDF/p0504-0716.pdf
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