法人税・節税

使途秘匿金には40パーセントの追加課税
相手先を帳簿に書けない支出が会社に残す負担

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 相手先の氏名・住所・事由を帳簿に書いていない支出が使途秘匿金です
  • 支出額の40パーセントが通常の法人税に上乗せされ、損金にもなりません
  • 使途不明金は損金不算入、使途秘匿金はそれに加えて40パーセントの追加課税です
  • 帳簿の破棄や科目のごまかしがあると重加算税の対象にもなります

まず結論:相手先を帳簿に書けない支出には、法人税に40パーセントが上乗せされます

相手の名前を帳簿に書かずに払ったお金は、使途秘匿金になります。

使途秘匿金とは、相当の理由なく相手先を帳簿に書いていない支出のことです。

使途秘匿金には、通常の法人税に加えて、支出額の40パーセントが上乗せされます。

根拠は租税特別措置法62条1項です。平成6年4月1日以後の支出が対象です。

さらに、その支出は損金にもなりません。損金とは、税金の計算で経費として引ける金額のことです。

経費にならないうえに40パーセントが追加される、二重の負担です。

相手先を帳簿に書いていない支出には支出額の40パーセントが法人税に上乗せされます
相手先を帳簿に書いていない支出には支出額の40パーセントが法人税に上乗せされます

使途秘匿金とは「相手先の氏名・住所・事由」を帳簿に書いていない支出です

判定の軸は、支出の中身ではなく、帳簿に相手先を書いているかどうかです。

租税特別措置法62条2項は、使途秘匿金の支出を次のように定めています。

相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由(…「相手方の氏名等」という。)を当該法人の帳簿書類に記載していないもの

(租税特別措置法62条2項)

氏名・住所・事由の3つをそろえて書くのが、条文の求める「相手方の氏名等」の記載です。

資産の譲受けなど、相当な対価の支払として明らかなものは除かれます。

ポイント

「相手方の氏名等を秘匿するためでないと認めるとき」は、使途秘匿金に含めないことができます。根拠は租税特別措置法62条3項です。認めるのは税務署長です。会社の側で、経緯を説明できる資料を残しておく必要があります。

使途不明金との違いは「相手先を帳簿に書けるか」です

使途不明金は損金にならず、使途秘匿金はそれに加えて40パーセントの追加課税を受けます。

使途不明金とは、何に使ったか(費途)が明らかでない支出のことです。

法人税基本通達9-7-20は次のように定めています。

「法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入しない。」

使途不明金は「説明できない」、使途秘匿金は「帳簿に相手先がない」。根拠になる条文が違います。

支出の状態根拠扱い
交際費・機密費・接待費等の名義で支出し、費途が明らかでない(使途不明金)法人税基本通達9-7-20損金の額に算入しない
相当の理由なく、相手先の氏名等を帳簿書類に記載していない(使途秘匿金)租税特別措置法62条1項・2項損金不算入に加え、支出額×40%を法人税に加算
役員等に機密費・交際費等の名義で支給し、業務に使ったことが明らかでない法人税基本通達9-2-9(9)役員等に対する経済的な利益(役員給与)として扱う
従業員等に同様の名義で支給し、業務に使ったことが明らかでない租税特別措置法関係通達61の4(1)-12(3)給与の性質を有するものとして交際費等に含まれない

交際費として処理できる範囲は、交際費はいくらまで経費になるかで確認してください。

使途不明金は損金不算入となり使途秘匿金はそれに加えて40パーセントの追加課税を受けます
使途不明金は損金不算入となり使途秘匿金はそれに加えて40パーセントの追加課税を受けます

500万円の使途秘匿金なら、200万円が法人税に上乗せされます

追加課税の額は、支出額に40パーセントを掛けた金額です。

62条1項は、通常どおり計算した法人税の額にこの金額を加算すると定めています。

計算例

例:相手先を帳簿に書いていない支出が500万円あった場合

追加課税=500万円 × 40% = 200万円(通常の法人税の額に加算) 損金不算入=500万円(法人税基本通達9-7-20により経費にならない) → 500万円が所得に残ったまま、さらに200万円の法人税が上乗せされます

一定の前提を置いた目安です。税率を使った負担の合計額は、本記事では扱いません。

経費として引けない500万円と、上乗せの200万円。負担は二重にかかります。

帳簿の破棄や科目のごまかしがあると、重加算税の対象にもなります

使途秘匿金の追加課税に、重加算税が重なる場合があります。

重加算税とは、事実の隠ぺいや仮装があったときに上乗せされる、罰則的な性格の税です。

事務運営指針「法人税の重加算税の取扱いについて」は、次の2つを不正事実としています。

注意

(1) 帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん等があること。
(2) 取引の慣行、取引の形態等から勘案して通常その支出金の属する勘定科目として計上すべき勘定科目に計上されていないこと。
このいずれかがあれば不正事実です。「使途秘匿金課税を行う場合の当該使途秘匿金に係る税額に対しても重加算税を課す」とされています。

領収書を捨てる、本来と違う科目に紛れ込ませる。この2つが重加算税の入口になります。

税務調査でどこを見られるかは、税務調査で狙われやすいポイントと対策にまとめています。

なお、調査官は相手方の氏名等について質問や検査をすることができます(租税特別措置法62条9項)。

40パーセントを納めれば相手先を明かさなくてよい、という制度ではありません。

帳簿書類の破棄や本来と違う勘定科目への計上があると使途秘匿金に係る税額にも重加算税が課されます
帳簿書類の破棄や本来と違う勘定科目への計上があると使途秘匿金に係る税額にも重加算税が課されます

よくある失敗は「交際費で処理」「領収書の紛失を放置」「相手先の未記載」の3つです

使途秘匿金の指摘は、意図して隠した会社だけに起きるものではありません。

失敗何が起きるか
相手を書けない支出を交際費として処理した交際費の名義でも、費途が明らかでなければ損金になりません(法人税基本通達9-7-20)。相手先がなければ、使途秘匿金の判定にも乗ります。
領収書をなくしたまま、帳簿にも相手先を書かなかった領収書がなくても、相手の氏名・住所・事由は帳簿に書けます。書かないまま決算を迎えると、相手先不記載の支出が残ります。
摘要欄に「諸経費」「雑費」とだけ書いた本来の科目に計上していない状態は、重加算税の不正事実に当たり得ます(事務運営指針)。

帳簿に書いた相手を通じて別の人に渡ったと認められる支出は、相手先を書いていないものと扱われます。

根拠は租税特別措置法施行令38条3項です。名義を借りた支払いは通用しません。

補足

令和5年12月14日の国税不服審判所の裁決に、1億4,000万円超の「使途不明金」の例があります。会社はこれを代表者への役員貸付金に振り替え、退職慰労金と相殺するなどして処理していました。

相手先を書ける協賛金や寄贈金にも、別の判定があります。法人の寄附金の損金算入限度額を確認してください。

ここまではご自身で、ここからは個別判断です

ご自身でできるのは、帳簿に相手先を書き切ることです。

支出のたびに、相手の氏名または名称、住所または所在地、支出の事由の3つを摘要に残してください。

判定の時点は、事業年度終了の日の現況です(租税特別措置法施行令38条1項)。

ただし、申告書の提出期限までに帳簿に相手先を書けば、期末に記載があったものとみなされます。

根拠は同施行令38条2項です。期末に気づいても、申告期限までに実際の相手先を書けば救われます。

ここから先は個別判断です。

相手先を書いていないことに「相当の理由」があるかどうか、条文に具体例はありません。

過去の事業年度の支出が見つかったときの直し方も、個別の検討が要ります。

申告書の提出期限までに帳簿に相手先を記載すれば事業年度終了の日に記載があったものとみなされます
申告書の提出期限までに帳簿に相手先を記載すれば事業年度終了の日に記載があったものとみなされます

税理士が入ると、帳簿の記載ルールと証憑の整備が仕組みになります

税理士が関与すると、相手先の記載が「気をつけること」から「仕組み」に変わります。

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

①摘要欄の記載ルールを決め、氏名等の3項目をどの科目でも書く形にします。

②月次で、相手先の記載がない支出を抽出します。期末を待たずに、その月のうちに確認します。

③領収書のない支出は、支払記録や相手先への確認など、代わりの証憑(裏づけ書類)を集めます。

④決算では、申告期限までに帳簿の記載を確定し、使途秘匿金に当たる支出が残っていないかを確認します。

40パーセントの追加課税は、帳簿に相手先を書く習慣があれば起きにくい負担です。

相手を明かせない支出が本当に必要かどうかは、その支出をする前にご相談ください。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 領収書をなくした支出は、使途秘匿金になりますか?

領収書の有無ではなく、帳簿に相手方の氏名等を書いているかで判定します(租税特別措置法62条2項)。相手の氏名・住所・事由を帳簿に書いていれば、相手先不記載には当たりません。ただし、費途を説明できる資料は別に必要です。

Q2. 使途不明金と使途秘匿金は何が違いますか?

使途不明金は費途が明らかでない支出で、損金の額に算入されません(法人税基本通達9-7-20)。使途秘匿金は相手先の氏名等を帳簿に書いていない支出で、損金不算入に加えて支出額の40パーセントが法人税に加算されます。

Q3. 期末に相手先の記載漏れに気づきました。もう手遅れですか?

申告書の提出期限までに帳簿に記載すれば、事業年度終了の日に記載があったものとみなされます(租税特別措置法施行令38条2項)。ただし、書いた相手を通じて別の人に渡ったものは記載がない扱いです(同3項)。

Q4. 40パーセントを納めれば、相手先を明かさなくてよいのですか?

そうではありません。使途秘匿金課税の適用があっても、税務署は相手方の氏名等について質問や検査をすることができます(租税特別措置法62条9項)。帳簿書類の破棄や隠匿があれば、重加算税の対象にもなります。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法62条1項・2項・3項・9項、租税特別措置法施行令38条1項から4項、法人税基本通達9-7-20、9-2-9(9)、租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)-12(3)、国税庁事務運営指針「法人税の重加算税の取扱いについて」、国税不服審判所 令和5年12月14日裁決の内容を扱っています。法人税率・地方税率・重加算税の税率、これらを用いた税額の合計、「相当の理由」の具体的な事例、法人税法55条(不正行為等に係る費用等)の取扱い、使途秘匿金に関する消費税の取扱い、令和5年12月14日裁決における第二次納税義務の論点は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の税額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

相手を書けない支出は、払う前にご相談ください

使途秘匿金の40パーセントは、帳簿に相手先を書いていないという一点で決まります。領収書をなくした支出、名義を借りた支払い、摘要が「雑費」だけの取引は、決算後に見つかると直しにくくなります。申告期限までに帳簿の記載を確定する方法、代わりの証憑の集め方、役員や従業員に渡した機密費の扱いは、御社の取引の実態によって変わります。代表税理士が帳簿の状態を確認し、記載ルールの設計から決算での確認まで通して対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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