法人税・節税

社長の死亡保険はいくら必要?
経営者保険の必要保障額と法人税の落とし穴

この記事の答え

  • 会社受取の保険は、借入金・ご遺族に渡すお金・事業資金の合計から預金を引き、税金の分を足します
  • 借入金の残高に合わせて保険に入った社長は、保険金だけでは足りないことがあります
  • 例:保険金1億円、退職金3,000万円なら法人税だけで約1,558万円(一定の前提の目安)
小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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社長の死亡保険は、いくら必要ですか

社長の死亡保険がいくら必要かは、保険金の使い道から考えます。主な使い道は、借入金の返済、ご遺族に渡すお金、事業を続ける資金の3つです。この記事では、会社が保険料を払い、会社が保険金を受け取る契約を取り上げます。

ただし、3つを足した額では足りないことがあります。会社が受け取る保険金は、法人税の対象になるからです。

万一に備える額は、使い道から考えます
万一に備える額は、使い道から考えます
図1 必要な額を考える順番
  1. 借入金の返済、ご遺族に渡すお金、事業を続ける資金を足す
  2. 手元の預金など、すぐ使えるお金を引く
  3. 保険金にかかる税金の分を足す

図1で求めた額を、この記事では必要保障額と呼びます。3つの中身は次のとおりです。

  • 借入金の返済:今の借入金の残高です。
  • ご遺族に渡すお金:死亡退職金と弔慰金です。相続税の扱いは死亡退職金と弔慰金の記事をご覧ください。
  • 事業を続ける資金:給料や家賃など毎月の固定費と、立て直しに要る月数で考えます。

保険金には、なぜ法人税がかかるのですか

受け取った保険金の全額が、手元に残るとは限りません
受け取った保険金の全額が、手元に残るとは限りません

会社が受け取った死亡保険金は、会社の収益になるからです。税金の計算では、益金(収益として計上する金額)になります。

保険料を資産として帳簿に載せている契約は、その額を差し引いた残りが益金です。資産に載せていない契約は、保険金の全額が益金です。受け取るときの経理は会社が受け取る死亡保険金の記事をご覧ください。

益金と相殺できるのは、損金(税金の計算で差し引ける費用)だけです。

図2 保険金の使い道と、受け取った期の損金

損金になる

  • 死亡退職金のうち相当な額(その期に額が確定するか、その期に支払って費用にしたもの)

損金にならない

  • 借入金の元本の返済
  • 事業資金として残すお金(給料などに使えば、使った期の費用です)

弔慰金は、この図に含めていません。

計算例

例:3つの使い道の合計と同じ1億円の保険に入っていたA社長

使い道は、借入金6,000万円、死亡退職金3,000万円、事業資金1,000万円です。

税金の対象:保険金1億円-退職金3,000万円=7,000万円法人税:800万円×15%+6,200万円×23.2%=1,558万4千円残るお金:1億円-3,000万円-1,558万4千円=5,441万6千円足りない額:7,000万円-5,441万6千円=1,558万4千円

一定の前提を置いた目安です。保険料は資産に載せていません。退職金は全額が同じ期の損金になり、ほかの損益や繰り越した赤字はない前提です。

税率は令和8年11月時点で、資本金1億円以下の会社の率が当てはまる前提です。地方法人税・防衛特別法人税・住民税・事業税は含んでいないので、実際の不足はさらに大きくなります。

図3 A社長の例で、保険金1億円の行き先
保険金
1億円
退職金
3,000万円
法人税
約1,558万円
残る額
約5,442万円
要る額
7,000万円

要る額は、借入金と事業資金の合計です。

ポイント

必要な額は、使い道を2つに分けて見ます。同じ期の損金になる退職金の分は、益金と相殺できます。借入金の返済と残す資金の分は、税金の分まで見込みます。足した保険金にも税金がかかるので、足す額は不足額より大きくなります。

退職金で相殺できるのは、どこまでですか

ご遺族に渡す退職金にも、損金になる額の限度があります
ご遺族に渡す退職金にも、損金になる額の限度があります

相殺できるのは、相当な額までの退職金で、損金になる期が保険金の益金と同じ期のものです。保険金に合わせて退職金を決めても、全額が損金になるとは限りません。

1つめは額の限度です。退職金のうち相当な額を超える部分は、損金になりません。相当かどうかは、業務に従事した期間、退職の事情、同業で規模の近い会社の支給状況などで判断します。

注意

ある会社は代表者の死亡で保険金約1億8,818万円を受け取り、ご遺族に退職金1億円を払いました。

税務署は相当な額を4,293万円としました。最終の月額報酬50万円×勤続27年×同業で規模の近い4社の平均の倍率3.18です。超える5,707万円は、損金と認められませんでした。

熊本地方裁判所の平成25年1月16日の判決も、この額を認めました。保険金の収入と退職金の支給は、別々に考えるものだとしています。控訴審も同じ結論で、判決は確定しています。

2つめは時期です。退職金は原則として、株主総会の決議などで額が確定した期の損金です。ただし、実際に支払った期に費用として処理すれば、その期の損金にできます。

たとえば、B社長が決算の直前に亡くなり、決議も支払いも翌期になったとします。保険金の益金が亡くなった期に入ると、相殺する退職金がなく、その期の税金が大きくなります。翌期の赤字を繰り越すなどで調整できることはありますが、納税は先に来ます。

どこまで自社で確かめられますか

数字をそろえて、税理士と確かめます
数字をそろえて、税理士と確かめます

手元の数字をそろえるところまでは、ご自身で進められます。

  • 返済予定表(借入金の残高)
  • 役員退職金規程(死亡退職の定め)
  • 保険証券と決算書(受取人、保険金額、資産に載せた保険料の額)
  • 毎月の固定費と手元の預金の額

必要な額は、会社の数字とともに変わります。たとえば、C社長は10年前の借入金に合わせて保険に入りました。その後、借入金は減り、役員報酬と固定費は増えましたが、保険金額はそのままでした。

ここから先の、相当な額の見積り、税金の試算、保険金額の決め方は個別の判断です。

小松公認会計士・税理士事務所では、代表の公認会計士・税理士が直接担当します。役員退職金の適正額を算定し、受け取るときの税金は個別に試算のうえでご提案します。規程の整備と株主総会の段取りも支援します。

顧問契約では、保険の「入りすぎ」「不足」「受け取り時期のズレ」を毎年の決算と一体で確かめます。弊所本体は保険募集人・保険代理店ではありません。具体的な保険商品のご提案は、保険代理店登録のあるグループ会社・提携代理店を通じて行います。やり取りは全国オンラインで完結します。

設計は会社ごとです。弊所で組み立てます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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  • お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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よくある質問(FAQ)

Q1. 保険金の全額を死亡退職金にすれば、法人税はかかりませんか?

かかることがあります。退職金のうち相当な額を超える部分は損金になりません。保険金が元手でも、相当な額を増やす事情とは認められなかった判決があります。考え方は役員退職金規程の記事をご覧ください。

Q2. 受取人をご遺族にすれば、会社の法人税は増えませんか?

保険金は会社に入らないので、会社の益金にはなりません。その代わり、会社の借入金の返済に直接は使えません。保険料が給与になることもあります。遺族受取の定期保険の記事をご覧ください。

Q3. 生前に退任するときの退職金も、死亡保険で準備できますか?

死亡保険金は、社長が亡くなったときに支払われるお金です。生前の退任には使えないので、預金や解約で戻るお金など、別の準備を考えます。役員退職金の原資の記事をご覧ください。

Q4. 必要な額は、いつ見直しますか?

決算のたびに確かめることをおすすめします。借入金の残高、役員報酬、固定費、資産に載せた保険料の額は、毎年変わることがあるからです。

免責事項

本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条・34条2項・57条・66条・80条、法人税法施行令70条2号、租税特別措置法42条の3の2、法人税基本通達9-2-28・9-3-4・9-3-5・9-3-5の2、タックスアンサーNo.5208・No.5759、熊本地方裁判所平成25年1月16日判決、福岡高等裁判所平成25年6月18日判決、最高裁判所平成26年1月17日の上告不受理決定の内容を扱っています。必要な保険金額の具体的な算式と設計、固定費の月数の目安、保険商品の比較と選び方、役員退職金の適正額の計算、弔慰金の法人税の扱い、死亡保険金をどの期の益金にするかの判断、受取人が遺族の契約の細目、遺族の相続税、自社株の評価、社長の連帯保証、地方法人税・防衛特別法人税・地方税の税額の計算は扱っていません。本記事は特定の保険商品への加入を勧めるものではありません。記事中の社長の例は説明のための架空の例で、実際の結果は会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

社長の死亡保険の必要額を、自社の数字で確かめませんか

社長の死亡保険の必要額は、使い道と税金で変わります。弊所は役員退職金の適正額を算定し、保険の不足や受け取り時期のズレまで確かめます。設計は会社ごとです。弊所で組み立てます。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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