この記事の答え
- 内部留保・保険・2つの共済を誰のお金かといつ税金がかかるかで比べます。小規模企業共済は個人のお金です
- 保険や経営セーフティ共済を退職金の前の期に解約した会社は、その期の税金が増えることがあります
- 経営セーフティ共済は、自己都合の解約だと40か月未満で掛金総額を下回ります
役員退職金の原資は、どう準備しますか
社長の退職金を払う年に、会社に現金がなければ困ります。この記事では、退任に備える4つの方法を比べます。原資(退職金の支払いにあてるお金)になるのは3つです。
4つの違いは、誰のお金になるかと、いつ税金がかかるかです。

使える(会社のお金)
- 内部留保(預金で残した分)
- 法人の生命保険(会社が受取人の契約)
- 経営セーフティ共済(会社が解約して受け取る)
使えない(社長個人のお金)
- 小規模企業共済(社長本人が掛金を払い、本人が受け取る)
税金は、入れるときと受け取るときに分けて見ます。損金は税金の計算で差し引ける費用、益金は税金の計算で利益に足す金額です。
| 方法 | 入れるとき | 受け取るとき |
|---|---|---|
| 内部留保 | 税金を払った後の利益を残す | 現金を取り崩しても益金にならない |
| 法人の生命保険 | 保険料は契約により損金か資産 | 解約で戻る額のうち、資産の額を超える部分が益金 |
| 経営セーフティ共済 | 掛金は損金(明細書の添付が必要) | 掛金を損金にしていれば益金 |
| 小規模企業共済 | 掛金は全額、社長の所得から控除 | 一括は退職所得、分割は公的年金等の雑所得など |
ポイント
準備の段階では、退職金そのものは損金になりません。損金になるのは原則として、株主総会の決議などで額が確定した事業年度です。額の確定より前に、取締役会の内定額を未払金にしても損金になりません。
内部留保で準備すると、どうなりますか

内部留保は、税金を払った後の利益を、配当などで外に出さずに残すことです。保険料や掛金の支払いがないので、入れるときに税金は減りません。
その代わり、手元の現金をあてるだけなので、受け取るときの益金はありません。
気をつけたいのは、利益と現金は別のものだという点です。たとえば、製造業のA社長の会社は、毎年の利益を積み上げてきました。しかし、その利益は工場の建物と売掛金に変わっていました。退任の年になって、預金だけでは退職金を払えないと分かりました。
内部留保を原資にするなら、決算書の利益ではなく預金の額で見てください。
保険と経営セーフティ共済は、何に気をつけますか

保険と経営セーフティ共済で気をつけるのは、解約する期の益金です。入れるときに損金にした分の税金は、なくなるのではなく先に延びる形です。退職金の損金と同じ期に解約すれば、益金と損金が同じ期に並びます。解約と入金が決算をまたぐときは、どの期の益金かを確かめます。
法人の生命保険は、会社が受取人の契約で考えます。保険料は、全額が損金になるとは限りません。たとえば、死亡と満期の保険金をどちらも会社が受け取る養老保険は、保険料を資産として帳簿に載せます。解約で戻るお金(解約返戻金)のうち、資産に載せた額を超える部分が益金です。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備える共済制度です。掛金は月5,000円から20万円で、残高が800万円に達すると引き落としが止まります。法人は、確定申告書に明細書を付けて掛金を損金にします。掛金を損金にしていれば、解約で戻るお金(解約手当金)は益金です。
左は掛金を納めた月数、右は掛金総額に対する割合です。借入れがあると差し引かれる額があります。解散などの場合は割合が違います。
注意
たとえば、B社長は退任の前の期に保険を解約しました。退職金の決議は翌期になりました。解約の益金に当てる損金がなく、その期の税金が増えました。
経営セーフティ共済の入り直しにも注意します。令和6年10月1日以後の解約で入り直すと、解約の日から2年を経過する日までの掛金は損金になりません。
詳しくは法人保険の出口の記事と経営セーフティ共済の記事をご覧ください。
小規模企業共済は、退職金の原資になりますか

小規模企業共済は、会社が払う退職金の原資にはなりません。社長個人が掛金を払い、社長個人が受け取る、個人の退職金の制度だからです。
掛金は月1,000円から7万円で、全額を社長の所得から控除できます。どちらの共済にも、従業員数などの加入の条件があります。
税金の種類は、受け取り方で変わります。社長本人が一括で受け取る共済金は退職所得、分割は公的年金等の雑所得です。65歳未満で任意に解約すると一時所得です。240か月未満で任意に解約すると、受取額は掛金の合計を下回ります。
たとえば、C社長は会社の退職金と共済の一時金を同じ年に受け取りました。C社長は、退職金から引ける控除を別々に使えると考えていました。しかし、同じ年の2つは金額を合計します。控除は原則として、長いほうの年数で計算します(重ならない期間は足します)。受け取る年の考え方は小規模企業共済の受け取り方の記事をご覧ください。
どこまで自社で確かめられますか

手元の数字をそろえるところまでは、ご自身で進められます。
- 退任する時期の見込みと決算月を書き出す
- 預金の額と、毎年の利益の見込みを書き出す
- 保険証券と共済の書類で、今解約して戻る額を確かめる
ここから先の、どの方法で、いくらを、どの期に受け取るかは個別の判断です。原資を準備しても、退職金のうち相当な額を超える部分は損金になりません。相当な額の考え方は役員退職金規程の記事をご覧ください。
小松公認会計士・税理士事務所では、代表の公認会計士・税理士が直接担当します。適正額から逆算して、共済と保険を同じ物差しで比べます。事務所本体は、保険募集人・保険代理店ではありません。具体的な保険商品のご提案は、保険代理店登録のあるグループ会社・提携代理店を通じて行います。顧問契約では、決算と申告に合わせて毎年見直し、期限から逆算してご案内します。
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この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 内部留保が増えると、別の税金がかかりますか?
特定同族会社の留保金が一定額を超えると、法人税の上乗せがあります。ただし、資本金1億円以下の会社は、大法人の100%子会社などを除いて対象外です。判定は留保金課税の記事をご覧ください。
Q2. 経営セーフティ共済は、必要な分だけ解約できますか?
一部だけの解約はできません。解約は全部の解約になります。臨時に事業資金が要るときは、一時貸付金の制度があります。
Q3. 退職金で赤字になった年はどうなりますか?
青色申告などの要件を満たせば、赤字(欠損金)を翌期以後に繰り越して差し引けます。中小企業者等は、前期の法人税の還付を請求できる場合もあります。赤字の年の記事をご覧ください。
Q4. どの保険に入ればよいですか?
この記事は特定の商品を勧めません。令和元年7月8日以後の契約では、保険期間3年以上で解約で戻る割合の最高値が50%超の定期保険などは、原則として保険料の一部が資産になります。契約の前に、資産に載せる額と戻る額の推移を確かめてください。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条・34条2項・57条・67条・80条、法人税法施行令70条2号、租税特別措置法66条の11・66条の12、所得税法30条・31条・75条、所得税法施行令69条・72条3項3号、法人税基本通達9-2-28・9-3-4・9-3-5・9-3-5の2、タックスアンサーNo.1135・No.1420・No.2735・No.5208・No.5363・No.5364・No.5364-2・No.5762・No.5763・No.5800、中小企業基盤整備機構の共済制度の案内の内容を扱っています。役員退職金の適正額の計算、必要な原資の金額の試算、共済の加入の条件の細目、保険料を資産に載せる割合と取り崩し、保険商品の比較と選び方、保険金の受取人が役員本人や遺族の契約、死亡保険金の扱い、保険の名義変更、企業型・個人型の確定拠出年金、中小企業退職金共済、退職金の現物支給と分割支給、共済の貸付制度、掛金の前納と掛止め、個人事業主の扱い、共済金の額の計算、受け取る順序の細目、退職所得の税額の計算は扱っていません。本記事は特定の保険商品や共済への加入を勧めるものではありません。記事中の社長の例は説明のための架空の例で、実際の結果は会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 法人税法(第22条・第34条第2項・第67条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 タックスアンサー No.5208 役員の退職金の損金算入時期https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5208.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第3節 保険料等(9-3-4・9-3-5・9-3-5の2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- 中小企業基盤整備機構 共済サポートnavi 共済契約の解約(経営セーフティ共済)https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/tkyosai/cancellation/index.html
- 中小企業基盤整備機構 共済サポートnavi 共済金等請求・解約(小規模企業共済)https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/claim/index.html
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