法人税・節税

会社に利益をためると別の税金がかかることがあります
特定同族会社の留保金課税のしくみ

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 課税留保金額に10・15・20パーセントの税額が上乗せされます
  • 判定は株主1グループで50パーセント超の被支配会社かどうかです
  • 資本金1億円以下でも大法人の完全支配関係があれば対象です
  • 留保控除額は所得・定額・積立金の3基準で最も多い金額です

まず結論:会社に利益をためると、もう一段の税金がかかることがあります

会社にお金を残すと、法人税法67条の「特定同族会社の特別税率」がかかることがあります。

一般には留保金課税と呼ばれます。

通常の法人税に加えて、10・15・20パーセントの税額が上乗せされます。

かかるのは、次の3つがそろったときだけです。

  • 特定同族会社に当たること
  • 資本金1億円以下という除外にあてはまらないこと
  • 留保金額が留保控除額を超えること

実際に当たるのは、資本金1億円超の会社と、大法人の完全支配下にある会社です。

会社に利益をためると、法人税とは別に特定同族会社の特別税率がかかることがあります
会社に利益をためると、もう一段の税金がかかることがあります

対象は「株主1グループで50パーセント超」の会社です

ふつうの同族会社は、上位3グループで50パーセント超の会社です(法人税法2条10号)。

留保金課税は、これより狭い「被支配会社」を対象にします。

株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の一人並びにこれと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。

(法人税法67条2項)

数えるのは「株主等の一人」とその特殊関係者です。

親族や、生計を維持されている人が入ります(法人税法施行令139条の7第1項)。

社長と家族で50パーセント超を持つ会社は、まず被支配会社に当たります。

ポイント

該当するかどうかは、その事業年度の終了の時の現況で判定します(法人税法67条8項)。

行為計算の否認は別の条文です。同族会社の行為計算否認の記事をご覧ください。

資本金1億円以下でも、大法人の子会社は外れません

資本金1億円以下の会社は、原則として対象外です。

根拠は、法人税法67条1項のかっこ書きです。

(資本金の額又は出資金の額が一億円以下であるものにあつては、前条第五項第二号から第五号までに掲げるもの及び同条第六項に規定する大通算法人に限る。)

(法人税法67条1項)

「前条第五項第二号」は、資本金5億円以上の大法人などによる完全支配関係がある普通法人です。

親会社の資本金が5億円以上なら、子会社の資本金が1,000万円でも対象です。

投資法人と特定目的会社も、同じく外れません(同項4号・5号)。

同時に、ほかの中小企業向けの特例も使えなくなります(タックスアンサーNo.5800)。

その範囲はみなし大企業の記事をご覧ください。

資本金1億円以下でも大法人による完全支配関係があれば留保金課税の対象になります
資本金1億円以下でも、大法人の子会社は除外されません

税額は、課税留保金額を3つに区切って計算します

税率は金額で段階が変わります(法人税法67条1項1号から3号まで)。

課税留保金額の区分税率上乗せされる税額
年3,000万円以下の部分10パーセント最大300万円
年3,000万円超1億円以下の部分15パーセント最大1,050万円
年1億円超の部分20パーセント上限なし

計算例

例1:課税留保金額が1億5,000万円の場合

3,000万円 × 10% = 300万円 7,000万円 × 15% = 1,050万円 5,000万円 × 20% = 1,000万円 上乗せされる税額 合計 2,350万円

注意

事業年度が1年に満たない会社は、3,000万円・1億円・2,000万円の区切りを月数で按分します(法人税法67条6項)。6か月なら1,500万円・5,000万円・1,000万円です。

課税の対象となる留保金額は、1,000円未満を切り捨てます。

(法人税基本通達16-1-8)

留保控除額は、3つの基準のうち最も多い金額です

上乗せの対象は、留保金額から留保控除額を引いた残りです。

第一項に規定する留保控除額とは、次に掲げる金額のうち最も多い金額をいう。

(法人税法67条5項)

  • 所得基準額 ― 所得等の金額の40パーセント
  • 定額基準額 ― 年2,000万円
  • 積立金基準額 ― 期末の利益積立金額(当期の所得等の金額に係る部分を除く)が資本金の25パーセントに満たない部分

この3つのうち、最も多い金額を引きます。

計算例

例2:資本金1,000万円、所得等の金額6,000万円、期末利益積立金額3,000万円、留保金額5,000万円

所得基準額 6,000万円 × 40% = 2,400万円 定額基準額 2,000万円 積立金基準額 1,000万円 × 25% = 250万円 < 3,000万円 のため 0円 留保控除額 最も多い 2,400万円 課税留保金額 5,000万円 - 2,400万円 = 2,600万円 上乗せされる税額 2,600万円 × 10% = 260万円

利益積立金額がマイナスのときは、引かずに足します。

例えば、資本金の額の25%相当額が1,000万円で、利益積立金額がマイナスの500万円である場合には、同号に規定する金額は1,500万円となる。

(法人税基本通達16-1-7 注)

補足

留保金額は税引後で計算します。法人税・地方法人税のほか、法人税額の10.4パーセントとして計算した道府県民税と市町村民税も差し引きます(法人税法施行令139条の10第1項)。

留保控除額は所得基準額・定額基準額・積立金基準額のうち最も多い金額です
留保控除額は、3つの基準のうち最も多い金額です

社外に出すか、ためるかは、金額を見てから決めます

留保金額は、役員報酬・役員退職金・配当で社外に出した分だけ減ります。

計算例

例3:例2の会社が配当1,000万円を支払った場合

留保金額 5,000万円 - 1,000万円 = 4,000万円 課税留保金額 4,000万円 - 2,400万円 = 1,600万円 上乗せされる税額 1,600万円 × 10% = 160万円 例2との差 260万円 - 160万円 = 100万円

ただし、これで得をすると決まるわけではありません。

配当1,000万円には、受け取った個人に所得税と住民税がかかります。

役員報酬なら、会社と本人の社会保険料も増えます。

報酬の決め方は役員報酬の設計の記事をご覧ください。

注意

期末配当は、決議の日ではなく基準日の属する事業年度の留保した金額から控除します(法人税法67条4項)。決算確定の日までに決議したものが対象です。

指摘を受けるのは、だいたいこの5つです

  • 所得が0だから関係ないと考える ― 益金不算入額や繰越欠損金の控除額は所得等の金額に戻します
  • 別表二を上位3グループだけで見る ― 特定同族会社は株主1グループで判定します
  • 親会社の資本金を確かめない ― 5億円以上なら子会社の資本金にかかわらず対象です
  • 株主資本等変動計算書の配当額をそのまま書く ― 基準日と決議日で期がずれます
  • 積立金基準額をマイナスのまま使う ― 0とし、利益積立金額が負なら加算します

国税庁も別表三(一)の冒頭で注意しています。

当期の所得の金額の計算上、次に掲げるような益金不算入額、損金算入額又は特別控除額がある場合には、当期の所得金額が0であっても、当期の留保金額について法第67条⦅特定同族会社の特別税率⦆の規定による特定同族会社の特別税率が適用されることがありますのでご注意ください。

(国税庁「令和7年版 申告書作成上の留意点」別表三(一))

所得が0でも、留保金課税だけが発生することがあります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で確認できるのは、次の4点です。

  1. 期末時点の株主名簿を出し、株主ごとの持株数を並べる
  2. 社長と親族をひとつのグループにまとめ、持株割合を計算する
  3. 期末の資本金の額が1億円を超えているかを確認する
  4. 株主に法人がいれば、その法人の資本金の額を登記簿で確認する

ここから先は個別判断です。

親族の範囲、議決権による判定、株式の持ち合いがあると結論が変わります。

持株の評価そのものは、自社株評価の記事で扱います。

株主構成と資本金の確認まではご自身でできますが、判定と計算は個別判断になります
株主構成の確認まではご自身で、判定と計算は個別に見ます

税理士が入ると変わるのは、判定と別表の計算です

ひとつめは、別表二による特定同族会社の判定です。議決権と持ち合いまで見ます。

ふたつめは、株主である法人の資本金の確認です。登記簿で5億円の線を確かめます。

みっつめは、所得等の金額の組み直しです。

よっつめは、別表三(一)と付表一の作成です。

いつつめは、社外流出の試算です。会社と個人の合計で比べます。

留保金課税は、決算を締めてからでは動かせません。

小松公認会計士・税理士事務所では、判定から別表の作成まで担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 資本金1,000万円の会社です。留保金課税はかかりますか?

株主に資本金5億円以上の法人がいなければ、原則としてかかりません。法人税法67条1項のかっこ書きが、資本金1億円以下の会社を対象から外しているためです。ただし大法人による完全支配関係がある普通法人は、資本金が1億円以下でも対象になります。まず株主である法人の資本金をご確認ください。

Q2. 赤字で所得が0でも、留保金課税がかかることはありますか?

あります。留保金額の計算は、所得の金額に受取配当等の益金不算入額、受贈益の益金不算入額、繰越欠損金の損金算入額などを加算した「所得等の金額」から出発するためです。国税庁も別表三(一)の冒頭で、所得金額が0でも特別税率が適用されることがあると注意しています。

Q3. 留保控除額の3つの基準は、合計して引けますか?

合計はできません。法人税法67条5項は「次に掲げる金額のうち最も多い金額」と定めています。所得等の金額の40パーセント、年2,000万円、積立金基準額の3つを計算し、いちばん大きい1つだけを留保金額から差し引きます。事業年度が1年未満なら、年2,000万円は月数で按分します。

Q4. 配当を出せば留保金課税を減らせますか?

留保金額は社外流出した分だけ減るため、上乗せされる税額は小さくなります。ただし配当を受け取った個人には所得税と住民税がかかります。会社の減少額と個人の増加額を合計して比べないと、有利かどうかは判断できません。決算確定の日までに決議するなど、時期の要件もあります。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条10号・66条・67条、法人税法施行令4条・139条の6から139条の10まで、法人税基本通達16-1-1から16-1-8まで、国税庁タックスアンサーNo.5800、国税庁「令和7年版 申告書作成上の留意点」別表三(一)・別表三(一)付表一の内容を扱っています。通算法人における留保金額の調整(法人税法施行令139条の8)、大通算法人に該当する場合の取扱い(法人税法66条6項)、法人課税信託に係る調整、適格合併・適格分割型分割があった場合の利益積立金額の引継ぎ、清算中の法人の取扱い、住民税額の計算の基礎となる法人税額の詳細、特定寄附金税額控除がある場合の調整、防衛特別法人税の取扱い、地方税における留保金額の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は株主構成・資本金の額・所得等の金額・利益積立金額によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

自社が留保金課税の対象かどうか、株主名簿から確かめませんか

特定同族会社の特別税率は、株主1グループで50パーセント超という被支配会社の判定から始まります。資本金1億円以下なら原則として対象外ですが、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係があると除外されません。留保控除額は所得基準額・定額基準額・積立金基準額の3つのうち最も多い金額をとり、超えた部分に10・15・20パーセントが上乗せされます。代表税理士が、別表二による判定、株主である法人の資本金の確認、所得等の金額の組み直し、別表三(一)と付表一の作成、役員報酬や配当で社外に出す場合の試算まで、通して対応します。決算を締める前にご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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