この記事のポイント
- 設立1期目・2期目は、期首の資本金が1,000万円以上だと消費税が免除されません
- 均等割は資本準備金を含む資本金等の額で区分し、1,000万円を超えると上がります
- 期末の資本金1億円以下なら軽減税率などが使えます(大法人の100%子会社などは除く)
- 増資にも登録免許税がかかり、消費税・均等割・1億円の判定が変わることもあります
まず結論:資本金の境目は「1,000万円」と「1億円」です
株主から出資を受けたお金そのものは、法人税の計算で収益に入りません(法人税法22条2項・5項)。
ただし、資本金の額で税金の扱いが変わる境目が2つあります。
- 1,000万円 ― 消費税の免除と、法人住民税の均等割(区分ごとに年額が決まった住民税)の区分
- 1億円 ― 法人税の軽減税率など、中小法人向けの特例が使えるか
同じ1,000万円でも、消費税は「以上」、均等割は「以下」で線を引いています。
このため、1,000万円ちょうどの扱いは税目で分かれます。

消費税:資本金1,000万円以上で設立すると、1期目から免除されません
設立時の資本金が1,000万円以上の会社は、1期目から消費税の納税義務があります。
消費税は、基準期間(前々事業年度)の課税売上高で免除を判定します(消費税法9条1項)。
設立1期目と2期目は基準期間がなく、原則として免除されます(タックスアンサーNo.6503)。
例外のひとつが、資本金の額で判定する「新設法人」です。
当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人
(消費税法12条の2第1項)
判定は、1期目と2期目それぞれの期首の資本金で行います(No.6503)。
1期目の途中で増資して1,000万円以上になると、2期目は課税事業者(消費税を納める事業者)です。
注意
資本金が1,000万円未満でも、免除されない場合があります。たとえば、インボイスの登録をしたときや、課税事業者を選ぶ届出書を出したときです(No.6503)。2期目は、特定期間(原則として1期目の最初の6か月)の課税売上高が1,000万円超でも同じです。支払った給与の合計額で判定することもできます。株主側の規模で決まる「特定新規設立法人」もあります(消費税法12条の3)。50%超を持つ株主側の課税売上高が5億円を超える場合などです。
あえて課税事業者を選ぶ考え方は、課税事業者選択届出書の記事で扱っています。

均等割:見るのは資本準備金も含む「資本金等の額」です
均等割は、「資本金等の額」などの区分で年額が決まります(地方税法52条1項・312条1項)。
資本金等の額は、株主等から出資を受けた金額です(法人税法2条16号)。
設立時に資本金にしなかった払込額も、これに含まれます(法人税法施行令8条1項1号)。
株式会社は、払込額の2分の1までを資本金にせず、資本準備金にできます(会社法445条2項・3項)。
払い込む総額が同じなら、資本準備金に回しても均等割の区分は下がりません。
| 資本金等の額 | 道府県民税 | 市町村民税(従業者50人以下) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 年2万円 | 年5万円 |
| 1,000万円超1億円以下 | 年5万円 | 年13万円 |
| 1億円超10億円以下 | 年13万円 | 年16万円 |
表は地方税法の標準税率(基準となる税率)です。市町村は、標準税率の1.2倍まで高い税率にできます(同法312条2項)。
区分は事業年度の末日現在で判定し、事務所などを置いた月数で月割りします(同法52条・312条)。
計算例
例:払込額と資本金の分け方を変えた場合(標準税率・従業者50人以下・12か月)
A 資本金1,200万円 → 新設法人に当たる/均等割 5万円+13万円 = 18万円 B 資本金600万円+資本準備金600万円 → 新設法人でない/均等割 18万円 C 資本金900万円 → 新設法人でない/均等割 2万円+5万円 = 7万円 AとCの差 18万円 - 7万円 = 11万円(年額)金額は一定の前提を置いた目安です。自治体の税率や月数で変わります。
1億円:中小法人の特例は、期末の資本金1億円以下が入口です
事業年度の終了の時の資本金が1億円以下なら、原則として中小法人向けの特例を使えます。
- 軽減税率 ― 所得のうち年800万円以下の部分は、23.2%でなく15%です。所得が年10億円を超える事業年度は17%です(租税特別措置法42条の3の2第1項)。
- 交際費の定額控除 ― 年800万円までの交際費を、損金(税金の計算で差し引ける費用)にできます。根拠は同法61条の4第2項です。
- 法人事業税 ― 原則として所得割(所得に応じた部分)だけです。1億円超だと、所得以外を基準にした付加価値割と資本割も加わります(地方税法72条の2第1項1号)。
15%と交際費の定額控除は、令和9年3月31日までに開始する事業年度の扱いです。
1年未満の事業年度は、どちらの800万円も月数で按分します(法人税法66条4項など)。
所得800万円なら、税率の差で法人税本体が65万6千円変わります(一定の前提を置いた目安)。
1億円以下かどうかは、期首ではなく事業年度の終了の時の資本金で判定します。
資本金5億円以上の会社などの100%子会社は、1億円以下でも軽減税率と交際費の定額控除が使えません。
根拠は法人税法66条5項と租税特別措置法61条の4第2項です。
株主に大きな会社がいるときの判定は、みなし大企業の記事で整理しています。
ポイント
判定の時点は税目で違います。消費税の新設法人は期首、法人税の1億円と均等割の区分は期末です。

登録免許税と増資:資本金を後から増やすときも税金がかかります
設立登記の登録免許税も、資本金の額で決まります。
株式会社の設立は資本金の額の1,000分の7で、15万円に満たないときは15万円です。
合同会社の設立も1,000分の7で、6万円に満たないときは6万円です(登録免許税法別表第一)。
資本金500万円の株式会社なら、計算上3万5千円なので15万円です。3,000万円なら21万円です。
増資の登記は、増えた資本金の額の1,000分の7で、最低3万円です(同表)。
700万円の増資なら、登録免許税は4万9千円です。
増資の額によっては、消費税の新設法人・均等割・1億円の判定も変わります。
資本金を減らすときの税金は、減資の税務の記事で扱っています。
失敗パターン:資本金を決めた後に気づく5つの例
次の5つは、資本金と株主を決める前に数字を並べれば気づける論点です。
- 見栄えで1,000万円にした ― 新設法人に当たり、1期目から消費税の申告が必要になりました。
- 資本金だけ小さくした ― 資本準備金込みで1,000万円超となり、均等割は上の区分でした。
- 1期目の途中で増資した ― 2期目の期首の資本金が1,000万円以上になり、課税事業者になりました。
- 高額の設備を買った ― 新設法人の期間に、税抜100万円以上の設備などを買いました。簡易課税でない期の購入なら、その期の初日から3年を経過する日を含む期まで免税に戻れません。根拠は消費税法12条の2第2項です。
- 資本金5億円以上の会社の100%子会社にした ― 1億円以下でも、軽減税率などが使えませんでした。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
資本金を決める前に、ご自身で整理できるのは次の4点です。
- 1期目と2期目の売上・仕入・設備投資の見込みを書き出す
- 払い込む総額と、資本金・資本準備金の分け方の案を作る
- 本店や事業所を置く自治体の均等割の税率を確かめる
- 株主の顔ぶれと持株の割合、親会社の資本金を書き出す
課税事業者になるほうがよいか、インボイスの登録をいつするかは個別判断です。
増資の時期や1期目の事業年度の長さも、消費税の判定や均等割の額に関わります。
特定新規設立法人の判定では、支配する株主とその関係法人の売上まで確かめます。

税理士が入ると変わるのは、資本金の額と分け方の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、設立の前に次の作業を行います。
ひとつめは、売上・仕入・設備投資の見込みから出す、2期分の消費税の試算です。
ふたつめは、資本金と資本準備金の分け方ごとの、均等割と登録免許税の一覧です。
みっつめは、株主構成から見た、特定新規設立法人と中小法人の特例の判定です。
よっつめは、法人設立届出書と消費税の届出書の、期限に合わせた準備です。
いつつめは、増資や減資の前に、税金の判定がどう変わるかを試算することです。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 資本金1,000万円ちょうどで設立すると、消費税はどうなりますか?
設立時の資本金が1,000万円以上なので、「新設法人」に当たります(消費税法12条の2第1項)。設立1期目から納税義務が免除されません。一方、資本準備金がなければ、法人住民税の均等割は「1,000万円以下」の区分です。同じ金額でも、税目によって扱いが分かれます。
Q2. 資本金を小さくして資本準備金に回せば、均等割は安くなりますか?
払い込む総額が同じなら、区分は変わりません。均等割は、資本準備金にした額も含む資本金等の額で区分します。根拠は地方税法52条1項・4項と法人税法施行令8条1項1号です。消費税の新設法人は資本金の額で判定するので、結果が分かれます。
Q3. 設立1期目の途中で増資すると、税金はどう変わりますか?
増資の登記に、増えた額の1,000分の7(最低3万円)の登録免許税がかかります。2期目の期首の資本金が1,000万円以上なら、2期目は消費税の課税事業者です。根拠はタックスアンサーNo.6503です。均等割の区分が上がることもあります。
Q4. 資本金1億円以下なら、どの会社でも軽減税率が使えますか?
使えない会社があります。資本金5億円以上の会社などに100%を持たれる子会社は対象外です(法人税法66条5項)。15%の税率は、令和9年3月31日までに開始する事業年度の扱いです。所得が年10億円を超える事業年度は17%です(租税特別措置法42条の3の2)。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。消費税法9条1項・9条の2・12条の2・12条の3、地方税法52条・312条・72条の2、法人税法2条16号・22条2項・5項・66条、法人税法施行令8条1項1号、租税特別措置法42条の3の2・61条の4、登録免許税法別表第一、会社法445条、タックスアンサーNo.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」・No.5759「法人税の税率」・No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」・No.7191「登録免許税の税額表」の内容を扱っています。特定新規設立法人の特定要件と特殊な関係にある法人の範囲、特定期間と短期事業年度の判定、調整対象固定資産・高額特定資産の細目、課税事業者選択届出書と簡易課税、インボイスの登録手続、自治体ごとの均等割の実際の税率と従業者数の数え方、無償増資・無償減資による資本金等の額の調整、法人事業税の外形標準課税の対象となる子会社と減資した法人の扱い、適用除外事業者・みなし大企業の判定、租税特別措置法の中小企業者等向けの特例、地方法人税・防衛特別法人税・法人税割、登録免許税の端数処理、減資の税務、融資の審査での資本金の見られ方、法人成りの時期の判断、現物出資は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は自治体の税率や事業年度の月数などによって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6503.htm
- e-Gov法令検索「地方税法」(52条・312条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
設立の前に、資本金の額と分け方を試算しませんか
設立時の資本金が1,000万円以上だと、1期目から消費税が免除されません。均等割は、資本準備金も含む資本金等の額で区分されます。資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の会社などの100%子会社は、軽減税率などを使えません。代表税理士が、2期分の消費税と、分け方ごとの均等割・登録免許税を試算します。株主構成の確認と届出の管理まで、通して対応します。払い込む金額と資本金の額を決める前の段階でご相談ください。
無料相談を申し込む 法人顧問サービスの詳細を見る 約60秒で料金を自動見積り決算と申告だけのご依頼は、決算申告のみのプランをご覧ください。