この記事のポイント
- 業務に使った分は会社の費用、私用の分は原則として社長への役員給与です
- 役員給与になる私用の分は、毎月おおむね一定でなければ損金になりません
- 損金になる場合も、社長の給与として所得税がかかり、源泉徴収が要ります
- 家族の回線や機種代を会社で払うと、社長への役員給与とされるおそれがあります
まず結論:業務の分は会社の費用、私用の分は原則として社長への役員給与です
社長の携帯電話の料金を会社が払うときは、業務の分と私用の分を分けて考えます。
業務に使った分の料金は、会社の損金になります(法人税法22条3項2号)。
損金とは、法人税の計算で差し引ける費用のことです。
私用の分を会社が払うと、原則として社長への役員給与になります。
この役員給与は、毎月おおむね一定でなければ損金になりません。
損金になる場合も、社長の側では、原則として給与所得として所得税がかかります。
私用の分を会社が払うと、会社の法人税と社長の所得税の両方に影響が出ます。

私用の分は、社長が受けた「経済的な利益」として役員給与に含まれます
役員給与には、お金で払う報酬だけでなく、経済的な利益も含まれます。
前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。
(法人税法34条4項)
経済的な利益とは、お金を受け取っていなくても、社長が得をした分のことです。
通達は、その例の一つに次の形を挙げています。
役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額
(法人税基本通達9-2-9(10))
損金になるかどうかは、毎月おおむね一定かどうかで分かれます。
役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当し、損金の額に算入されますが、その他のものは定期同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。
(国税庁 タックスアンサー No.5202)
定期同額給与は、1か月以下の一定の期間ごとに同じ額を払う給与です(法人税法34条1項1号)。
継続的に受ける経済的な利益で、毎月おおむね一定のものも含まれます(法人税法施行令69条1項2号)。
通達9-2-11は、毎月おおむね一定のものの例に、毎月負担する住宅の光熱費などを挙げます。ただし、その額が毎月著しく変動するものは除かれています。
携帯電話の料金は、名指しされていません。
計算例
例1:社長個人名義のスマートフォン(毎月8,000円の定額)を、会社が全額払う場合
業務の分 8,000円 × 60%(明細から確かめた割合と仮定)= 4,800円 私用の分 8,000円 - 4,800円 = 3,200円(社長への役員給与) 1年分の私用の分 3,200円 × 12か月 = 38,400円金額と割合は一定の前提を置いた目安で、60%は割合の基準ではありません。
私用の分が毎月おおむね一定なら、定期同額給与に当たり得ます。
損金になる場合も、38,400円は原則として社長の給与の収入金額に加わります。
経済的な利益の全体像は、社長の私的な支出の記事にまとめています。
会社名義でも社長個人名義でも、私用の分を会社が払えば給与の問題になります
どちらの名義でも、私用の分を会社が負担すれば、原則として社長の給与になります。
| 項目 | 会社名義の契約 | 社長個人名義の契約 |
|---|---|---|
| 料金を払う義務 | 会社 | 社長個人 |
| 業務に使った分 | 会社の費用 | 業務の分を示せる範囲で、会社が精算する費用 |
| 私用の分を会社が払うと | 社長への経済的な利益(原則として給与) | 社長の債務を会社が負担した利益(原則として給与) |
| 端末 | 会社のものを社長に貸す形 | 社長のもの |
社長個人の契約の料金を会社が払うのは、社長の債務を会社が肩代わりする形です。
所得税基本通達36-15(5)は、自分の債務を他人が負担した利益を、経済的利益の例に挙げます。
タックスアンサーNo.2508も、これを原則として給与所得の収入金額としています。
会社には、源泉徴収(所得税を差し引いて国に納める手続)の義務があります(所得税法183条1項)。
会社の端末を社長にあげると、その価額も経済的な利益です(法人税基本通達9-2-9(1))。
ポイント
名義を会社に変えるだけでは、私用の分の問題は消えません。業務用と私用で回線を分けるか、私用の分を誰が負担するかを先に決めておくことが出発点です。
名義より先に、私用の分を誰が負担しているかを確かめます。

在宅勤務の通信費のFAQは、従業員についての取扱いです
国税庁の在宅勤務のFAQ(令和8年4月1日更新)は、従業員についての取扱いです。
通話料は、通話明細書等で業務の通話の料金を確かめる形が示されています(問6)。
基本使用料などの算式は、従業員の1か月の在宅勤務日数を使うものです(問6)。
従業員本人のスマートフォンの本体代や、業務に使ったと認められないオプション代は別です。
企業が負担すると、従業員の給与として課税する必要があるとされています(問6の注)。
FAQの算式を社長の携帯にそのまま使ってよいとは、FAQには書かれていません。
従業員の在宅勤務の精算は、在宅勤務手当の記事で扱っています。
家族の回線や機種代を会社で払うと、社長への役員給与とされるおそれがあります
家族の私的な回線の料金を会社が払うと、社長への役員給与とされるおそれがあります。
携帯電話の事案ではありませんが、考え方の参考になる裁決があります(平成24年11月1日裁決)。
実質的な経営者(役員と認定)の妻が、会社が取得した車を専ら使っていた事案です。
審判所は、車の使用の対価に当たる経済的な利益を、経営者への役員給与と判断しました。
自動車保険料など継続的な分は、定期同額給与として損金とされました。
自動車税など一時の分は損金にならず、役員給与の分の源泉所得税も算定されています。
携帯電話で注意したいのは、たとえば次の5つの形です。
- 家族の回線 ― 社長個人の契約にまとまった家族の分まで、会社の口座から払っている
- 家族の機種代 ― 家族が使う端末の代金を、会社で一度に払っている
- オプション代 ― 動画などのサブスクや本体の補償料まで、会社で払っている
- 記録がない ― 料金を全額会社で払い、業務の分を示す明細を残していない
- 源泉徴収の漏れ ― 役員給与に当たる分を、社長の給与に含めていない
計算例
例2:家族2人の回線(各月3,000円)と、家族の機種代150,000円を会社が払った場合
回線の料金 3,000円 × 2回線 × 12か月 = 72,000円 機種代 150,000円(一度に払った分) 役員給与とされるおそれがある額 72,000円 + 150,000円 = 222,000円 機種代は毎月おおむね一定といえず、損金にならないおそれがあります金額は一定の前提を置いた目安です。回線の料金は、毎月おおむね一定かどうかで扱いが分かれます。
注意
紹介した裁決は車の事案で、携帯電話の料金について判断したものではありません。家族が会社の負担で使う分を経営者の利益とみた点を、通信費でも確かめておきます。
家族の私的な回線は、会社の支払から外しておきます。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
回線の整理までは、社内の資料で進められます。
- 回線ごとに、契約の名義・使う人・支払の口座を一覧にする
- 家族の私的な回線を、会社の支払から外す
- 業務用と私用で回線を分けるか、兼用の回線の私用の分を誰が負担するか決める
- 通話明細や利用明細を毎月保存し、業務の通話先が分かるようにする
ここから先は、使い方の事実によって判断が分かれます。
兼用の回線の私用の割合や、定額の料金の中の私用の分の見方は、個別の判断です。
毎月おおむね一定といえるかや、過去の期の分の直し方も同じです。
家族が会社の役員や従業員なら、職務の実態と回線の使い方から確かめます。

税理士が入ると変わるのは、回線ごとの区分と、会社と社長の申告のつながりです
小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。
- 契約書と請求書から、回線と端末の一覧を作る
- 使い方を伺い、業務の分と私用の分の区分の方法を決める
- 私用の分を社長が負担する形か、役員給与として扱う形かを決める
- 役員給与に当たる分の源泉徴収と、年末調整への反映を確かめる
- 損金にならない額を、法人税の申告書で所得に加算する
- 税務調査に備えて、明細と区分の根拠を保存する
回線の分け方と精算の仕組みの設計は、会社ごとに違います。弊所で組み立てます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社長の携帯電話の料金を、会社で全額払ってもよいですか?
業務に使った分は会社の費用です。私用の分を会社が払うと、原則として社長への役員給与になります(法人税法34条4項)。この分は毎月おおむね一定なら定期同額給与として損金になり、そうでなければ損金になりません。どちらでも社長には所得税がかかります。
Q2. 会社名義で契約すれば、私用の分は気にしなくてよいですか?
名義だけでは決まりません。会社名義でも、私用の分の料金を会社が負担すれば、経済的な利益とされるおそれがあります。会社の端末を社長にあげると、その価額も経済的な利益です(法人税基本通達9-2-9(1))。回線の分け方を先に決めておきます。
Q3. 在宅勤務の通信費のFAQの計算方法は、社長の携帯にも使えますか?
国税庁の在宅勤務のFAQは、企業と従業員の間の取扱いです。役員を名指しした問はなく、基本使用料の算式も在宅勤務の日数を使うものです。社長の携帯電話の私用の分の決め方は、使い方の事実に応じた個別の判断になります。
Q4. 家族のスマートフォンの料金も、会社で払ってよいですか?
家族の私的な回線の料金を会社が払うと、社長への役員給与とされるおそれがあります。車の事案ですが、家族が会社の車を専ら使った分を、経営者への役員給与とした裁決があります(平成24年11月1日裁決)。一度に払う機種代は、損金にならないおそれがあります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法22条3項2号・34条1項1号・4項、法人税法施行令69条1項2号、法人税基本通達9-2-9(1)・(10)・9-2-11、所得税法28条1項・36条1項・183条1項、所得税基本通達36-15(5)、タックスアンサーNo.5202「役員等に対する経済的利益」・No.2508「給与所得となるもの」、国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(令和8年4月1日更新)、国税不服審判所の平成24年11月1日裁決の内容を扱っています。携帯電話の料金を直接扱った裁決・質疑応答事例、定額の料金の中の私用の分の測り方、所得税で課税されない経済的な利益の扱い(法人税基本通達9-2-10)、携帯電話の手当を定額で払う場合の改定の時期、使用人兼務役員の扱い、不相当に高額な部分と隠蔽・仮装の扱い、消費税の仕入税額控除とインボイス、端末の取得価額と減価償却、源泉徴収税額の計算と年末調整の手順、加算税・延滞税、社会保険への影響、個人事業主の家事按分は扱っていません。紹介した裁決は車の事案で、携帯電話の料金について判断したものではありません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の扱いは契約の内容と使い方によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(22条・34条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第2款「経済的な利益の供与」(9-2-9・9-2-11)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5202.htm
- 国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
- 国税不服審判所 公表裁決事例(平成24年11月1日裁決)https://www.kfs.go.jp/service/JP/89/12/index.html
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社長の携帯電話の料金は、業務に使った分は会社の費用ですが、私用の分は原則として社長への役員給与になります。この分は毎月おおむね一定でなければ損金にならず、損金になる場合も社長には所得税がかかります。家族の回線や機種代を会社で払うと、社長への役員給与とされるおそれもあります。代表税理士が、回線と端末の一覧づくりから区分の方法、源泉徴収と申告書への反映まで通して対応します。回線の分け方の設計は会社ごとに違うため、決算を締める前の段階でご相談ください。
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