法人税・節税

在宅勤務手当は給与になる?
通信費・電気代は業務分の精算なら課税されません

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 毎月決まった額を渡し切りで払う在宅勤務手当は、給与として課税されます
  • 通信費・電気代は、業務分を合理的に計算して精算すれば給与として課税されません
  • パソコンや机は会社のものを貸すなら課税されず、所有権を移す支給は現物給与です
  • 社長の自宅の光熱費を会社が全額払うと、家事の部分は役員への経済的な利益です

まず結論:渡し切りの手当は給与、業務分の精算は給与として課税されません

在宅勤務の費用をお金で渡す方法は、大きく「手当」と「精算」の2つです。

使わなくても会社に返さなくてよい手当は、給与として課税されます。

業務に使った部分を計算して精算する分は、給与として課税する必要がありません。

根拠は、国税庁のFAQ(よくある質問と回答)です(令和8年4月1日更新)。

在宅勤務の費用は、渡し切りの手当か業務分の精算かで扱いが分かれます
在宅勤務の費用は、渡し切りの手当か業務分の精算かで扱いが分かれます

分かれ目は、使わなかったお金を会社に返すかどうかです

使わなくても返さなくてよいお金は給与、業務に使った分の精算は給与として課税されません。

企業が従業員に在宅勤務手当(従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が従業員に対して毎月5,000円を渡切りで支給するもの))を支給した場合は、従業員に対する給与として課税する必要があります。

(国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」問1)

精算の形は、問5が2つ示しています。

  • 仮払い型:先にお金を渡し、領収証や計算した額の報告を受けて、余りを返してもらう
  • 立替え型:従業員が先に払い、領収証や計算した額の報告を受けて会社が支払う

仮払いの余りを返してもらわないと、余りの部分が給与になります(問5の注2)。

在宅勤務の費用は、旅費や通勤手当と違い、所得税法9条1項の非課税の列挙にありません。

通勤手当の限度額は、通勤手当の非課税の記事で扱っています。

通信費と電気代は、FAQの算式で業務に使った部分を計算します

家庭と仕事の分が混ざった費用は、業務に使った部分を合理的に計算します。

算式の例は、次のとおりです。

費用業務に使った部分の計算の例
通話料通話明細書で確かめた業務の通話の料金(会社が認めた通話の多い業務は下の算式も可)(問6)
基本使用料・インターネットの通信料1か月の料金 × 在宅勤務日数 ÷ その月の日数 × 1/2(問6)
電気料金1か月の料金 × 業務に使った部屋の床面積 ÷ 自宅の床面積 × 在宅勤務日数 ÷ その月の日数 × 1/2(問8)

「1/2」は、1日24時間から睡眠8時間を除いた時間に占める、法定労働時間8時間の割合です。

より精緻な方法で計算した金額でも、給与として課税しなくて差し支えありません(問6・問8の注)。

計算例

例:30日の月に18日在宅勤務し、光回線5,500円・電気代9,000円を払った場合

通信費 5,500円 × 18日 ÷ 30日 × 1/2 = 1,650円 電気代 9,000円 × 1/6(仕事部屋の床面積の割合)× 18日 ÷ 30日 × 1/2 = 450円 精算する額 1,650円 + 450円 = 2,100円(給与として課税しない) 5,000円を仮払いし、余りを返さない場合 5,000円 - 2,100円 = 2,900円が給与 毎月5,000円の渡し切りの手当の場合 5,000円が給与

金額は一定の前提を置いた目安です。

通信費と電気代は、在宅勤務の日数などで業務の部分を計算します
通信費と電気代は、在宅勤務の日数などで業務の部分を計算します

パソコンや机は、「貸与」か「支給」かで扱いが分かれます

会社のパソコンなどを貸すだけなら、給与として課税する必要はありません(問2)。

所有権が従業員に移る「支給」は、物で渡す給与(現物給与)として課税されます。

次の場合は、「支給」の形でも「貸与」とみて差し支えないとされます。

企業が従業員に専ら業務に使用する目的で事務用品等を「支給」という形で配付し、その配付を受けた事務用品等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要する場合も、「貸与」とみて差し支えありません。

(同FAQ問2)

椅子・机・間仕切り・空気清浄機なども、同じ考え方です(問3)。

勤務で使うマスクなどの消耗品の精算も、給与として課税する必要はありません(問4)。

会社側では、給与か精算かで源泉徴収と消費税の扱いが変わります

従業員に払う手当も、通信費・電気代の精算分も、会社の費用です(法人税法22条3項2号)。

給与になる手当は、支払のときに源泉徴収をする対象です(所得税法183条1項)。

消費税では、給与は課税仕入れ(仕入れの消費税を差し引ける取引)に入りません。

給与等を対価とする役務の提供が、課税仕入れの定義から除かれているためです(消費税法2条1項12号)。

従業員が立て替えて買った消耗品等は、国税庁のインボイスQ&A問94-2が扱っています。

宛名が従業員名の適格簡易請求書と従業員名簿等の保存で、請求書等の保存の要件を満たすとされます。

名簿等がなく従業員を特定できないときは、従業員が作る立替金精算書も要ります。

通信費・電気代の精算分は、FAQにも問94-2にも扱いがないため、個別に確認します。

補足

社会保険でも、基本的な考え方として、渡し切りの在宅勤務手当は報酬等に含まれます。実費弁償に当たる手当は含まれません(厚生労働省 令和5年6月27日事務連絡)。通信費・電気代は、就業規則等に算出方法を明示していることが条件です。

社長・役員への支給は、役員給与のルールとあわせて確かめます

社長の自宅の電気代を会社が全額払うと、家事の部分は役員への経済的な利益です。

FAQに役員を名指しした問はありません。

役員に払う手当も、原則として給与所得です(所得税法28条1項・タックスアンサーNo.2508)。

法人税では、役員への給与は原則として定期同額給与などでないと損金になりません(法人税法34条1項)。

損金は、税金の計算で差し引ける費用です。この給与には、経済的な利益も含まれます(同条4項)。

役員の個人的な費用を会社が払った額は、経済的な利益です(法人税基本通達9-2-9(10))。

毎月負担する住宅の光熱費は、通達で定期同額給与の例とされます(同9-2-11(4))。

ただし、額が毎月著しく変動するものは除かれます。

所得税でも、個人的な債務の負担は原則として給与所得の収入金額です(No.2508)。

役員に渡し切りの手当を期の途中から払うと、毎月の支給額が変わります。

定期同額とされる改定は、原則として期首から3か月以内のものなどです(法人税法施行令69条1項1号)。

期中の改定は、役員報酬の期中改定の記事で扱っています。

注意

役員に旅費などの名義で渡しても、業務での使用が明らかでなければ経済的な利益です(9-2-9(9))。在宅勤務の費用も、業務に使った記録で説明できるようにします。

社長・役員への支給は、役員給与のルールとあわせて確かめます
社長・役員への支給は、役員給与のルールとあわせて確かめます

給与として課税が必要になる、5つの失敗パターン

次の5つは、FAQが給与として課税が要るとしている形です。

  • 毎月定額を渡し切りで払い、非課税として扱っている。手当は給与で、源泉徴収の対象です(問1)。
  • 仮払いの余りを返してもらっていない。余りの部分は給与です(問5の注2)。
  • パソコンや椅子をあげてしまい、返却の決まりもない。現物給与として課税されます(問2・問3)。
  • 従業員のスマートフォンの本体代や、動画などのサブスクまで払っている。その分は給与です(問6の注)。
  • 家族の分のマスクなども一緒に精算している。従業員以外の分は給与です(問4)。

どれも、精算のルールと記録を先に決めておくことで避けやすくなります。

精算のルールと記録の方法を、先に文書にしておきます
精算のルールと記録の方法を、先に文書にしておきます

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で整えられるのは次の4点です。

  1. 在宅勤務の費用を、手当で払うか精算で払うかを決める
  2. 精算の方法と算式を、社内のルールとして文書にする
  3. 在宅勤務の日数と、仕事部屋・自宅の床面積を記録する
  4. 貸すパソコンや机の一覧を作り、返却の決まりを書いておく

自社の計算方法が合理的といえるかは、個別判断です。

役員への支給や精算分の消費税も、事実に応じて確かめます。

税理士が入ると変わるのは、精算の設計と給与・申告への反映です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

  • いまの支給の実態を、給与明細と経費精算の記録から確かめます
  • 通信費・電気代の算式、在宅勤務日数の記録方法、精算書の様式を決めます
  • 給与になる部分の源泉徴収と、年末調整への反映を確認します
  • 社長・役員への支給を、定期同額給与の要件と照らして確認します
  • 消費税の区分と保存書類を決め、決算書と申告書に反映します

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 在宅勤務手当として毎月5,000円を渡しています。給与になりますか?

使わなくても会社に返さなくてよい手当は、給与として課税されます(国税庁FAQ問1)。支払のときの源泉徴収の対象です(所得税法183条1項)。通信費・電気代の業務分を計算して精算する形なら、その分は給与として課税する必要がありません。

Q2. 通信費や電気代の業務分は、どう計算すればよいですか?

FAQは例として、1か月の料金×在宅勤務日数÷その月の日数×1/2の算式を示しています(問6)。電気代は、業務に使った部屋の床面積÷自宅の床面積も掛けます(問8)。より精緻な方法で計算した金額でも、給与として課税しなくて差し支えありません。

Q3. 在宅勤務用にパソコンを渡しても、給与になりませんか?

会社のパソコンを貸すだけなら、給与として課税する必要はありません(FAQ問2)。所有権が従業員に移る「支給」は現物給与です。業務専用で配り、自由に処分できず、使わなくなったら返す決まりなら「貸与」とみて差し支えありません。

Q4. 社長の自宅のネット代や電気代を、会社で払ってもよいですか?

FAQは従業員向けですが、業務に使った部分を計算して精算するのが出発点です。全額を会社が払うと、家事の部分は役員への経済的な利益です(法人税基本通達9-2-9(10))。役員給与として、定期同額給与に当たるかも確かめます(同9-2-11)。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(令和3年1月・令和8年4月1日更新)の問1〜問6・問8、所得税法9条1項・28条1項・183条1項、法人税法22条3項・34条1項・4項、法人税法施行令69条1項、法人税基本通達9-2-9・9-2-11、消費税法2条1項12号、国税庁タックスアンサーNo.2508「給与所得となるもの」、国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問94-2、厚生労働省の令和5年6月27日事務連絡の内容を扱っています。FAQの問9(レンタルオフィス)、問10・問11(新型コロナウイルス感染症に関するホテルの利用料・消毒の委託費用・PCR検査費用等)、問12・問13(在宅勤務者への食券の支給)、通勤手当の非課税限度額、源泉徴収税額の計算と年末調整、使用人給与と役員給与の過大な部分の判定、定期同額給与の改定の細目と改定の時期を外れた場合の損金不算入額の計算、事前確定届出給与、給与として扱わない経済的な利益(法人税基本通達9-2-10)、通信費・電気代の精算分の仕入税額控除の可否、パソコン等の備品を資産に計上するかどうか(減価償却)、消費税の簡易課税・2割特例での計算、社会保険料の額と随時改定、就業規則の作成と労働法上の論点、個人事業主の家事按分は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、業務に使った部分の金額は料金・在宅勤務日数・床面積などの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

在宅勤務の手当を払う前に、給与・手当の設計を確かめませんか

在宅勤務手当を毎月決まった額で渡し切りにすると、給与として課税され、源泉徴収の対象になります。通信費・電気代の業務分を計算して精算すれば、その分は給与として課税されません。代表税理士が、いまの支給の実態を確かめ、算式・記録方法・精算書の様式を決めます。源泉徴収と年末調整への反映、社長・役員の定期同額給与、消費税の区分まで通して対応します。在宅勤務の手当を始める前、見直す前にご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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