法人税・節税

税込経理と税抜経理、法人はどっち?
10万円判定と控除対象外消費税の違い

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • どちらの方式でも納める消費税は同じですが、法人税の判定と時期が変わります
  • 10万円・20万円・1人1万円の判定は、採用した方式の金額で行います
  • 免税事業者の法人は、税抜で記帳していても税込経理で法人税を計算します
  • 令和8年10月から2年間、インボイス未登録先からの仕入れは税額の70%を区分します(税抜経理の原則)

まず結論:消費税は同じでも、法人税の判定と時期が変わります

税抜経理は消費税を分けて記帳し、税込経理は含めたまま記帳する方法です。

どちらでも、納める消費税の額は同じです(タックスアンサーNo.6375)。

差が出るのは法人税で、10万円などの判定に使う金額が変わります。

税込経理では、消費税を損金(法人税で差し引ける費用)にする時期にも注意します。

同じ買い物でも、方式によってその期に全額を損金にできるかが分かれます。

法人税の判定と時期が、方式で変わります
法人税の判定と時期が、方式で変わります

方式は全取引でそろえるのが原則で、免税事業者は税込経理です

課税事業者は方式を選べますが、全取引でそろえるのが原則です。

根拠は国税庁の「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(経理通達)の2です。

売上げが税抜なら、固定資産等の取得か経費等の一方を税込にできます。

個々の資産や経費ごとの使い分けはできません(同注)。売上げが税込なら、全体を税込経理で計算します(経理通達3)。

免税事業者(消費税の納税を免除される法人)は、税抜で記帳しても税込経理で計算します(経理通達5)。

比べる点税抜経理税込経理
メリット税抜の金額で判定できる区分の手間が少ない
納める消費税原則、損益に影響しない租税公課として損金になる

10万円・20万円の判定は、採用した方式の金額で行います

法人税法施行令133条の10万円と133条の2の20万円は、方式の金額で判定します(経理通達9)。

計算例

例1:税込107,800円のパソコン(インボイス発行事業者から購入)

税抜経理 107,800円 × 100/110 = 98,000円 → 10万円未満 税込経理 107,800円 → 10万円未満に当たらない

税抜経理なら、損金経理(決算で費用として処理すること)で全額をその期の損金にできます。

税込経理でも20万円未満のため、3年で均等に損金にする一括償却資産を選べます。中小企業者等は40万円未満の特例も使えます(下の補足)。

国税庁No.5403の例で、消費税10%の前提の目安です。

貸付け用の資産(主要な事業を除く)は対象外です。

免税事業者の法人は、税込の107,800円で判定するため10万円未満に当たりません。

補足

中小企業者等は、青色申告などを要件に40万円未満の特例も使えます(措置法67条の5)。令和8年4月1日以後の取得分の基準で、改正前は30万円未満でした(No.5408)。年300万円が上限で、令和11年3月31日までの取得分が対象です。個人事業者の特例は少額の減価償却資産の記事で扱っています。

交際費の「1人1万円以下」も、採用した方式の金額で判定します

1人1万円以下の判定も、方式の金額で行います(経理通達9)。

得意先など社外の人との飲食費は、1人1万円以下なら交際費等から除かれます(書類の保存が要件)。

根拠は措置法61条の4第6項2号と同法施行令37条の5です。

計算例

例2:得意先と4人で会食し、税込44,000円を払った場合

税抜・登録店 40,000円 → 1人10,000円 → 1万円以下 税込経理 44,000円 → 1人11,000円 → 1万円超 税抜・未登録店(令和8年10月〜令和10年9月) 41,200円 → 1人10,300円 → 1万円超

税込額から4,000円か2,800円(4,000円の70%)を引いた、消費税10%の前提の目安です。

超えても、資本金1億円以下の法人(一部を除く)は年800万円まで損金にできます(措置法61条の4)。

詳しくは交際費の記事をご覧ください。

仮払消費税等は相手の登録の有無で変わります
仮払消費税等は相手の登録の有無で変わります

未登録の相手からの仕入れは、令和8年10月から2年間は税額の70%で区分します

税抜経理の原則では、インボイス未登録の相手(免税事業者など)からの仕入れは税額の一部だけ区分します。

原則は控除できず、経過措置で帳簿などの要件のもと一定割合だけ控除できるためです。

令和8年度改正で、期限が2年延びて割合が見直されました(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

仕入れの時期控除できる割合
令和5年10月〜令和8年9月80%
令和8年10月〜令和10年9月70%
令和10年10月〜令和12年9月50%
令和12年10月〜令和13年9月30%
令和13年10月以後控除できない

(国税庁「インボイス制度 基礎編」)

税抜経理では、本来の税額(支払額の10/110)に割合を掛けた額を仮払消費税等にします。

残りは、仕入れや資産の価額に含めるのが原則です(No.6375)。区分しない方法も認められます。

注意

令和8年10月〜令和10年9月に、未登録の相手から例1のパソコンを買う場合です。仮払消費税等は9,800円の70%で6,860円、取得価額は100,940円です。10万円未満から外れます。令和8年9月までの80%(7,840円)なら99,960円でした。税抜経理の原則による目安です。

控除対象外消費税額等は、資産の分だけ扱いが分かれます

控除できない消費税は、資産の分だけ損金にする時期が分かれます。

課税売上割合(売上げに占める課税売上げの割合)が95%未満の期などに生じます。

課税売上高5億円超の期も同じです(消費税法30条2項)。税込経理なら特別な処理は要りません(No.6921)。

資産以外の分は、その期の損金です(交際費の分は交際費等に加算)。

資産の分も、課税売上割合80%以上なら損金経理でその期の損金にできます。

80%未満でも、棚卸資産の分と1つの資産で20万円未満の分は同じです(施行令139条の4)。

それ以外は繰延消費税額等として、5年以上かけて損金にします。

計算例

例3:課税売上割合60%で、税込1,100万円(消費税100万円)の建物を買った場合

控除対象外 1,000,000円 × (1 - 60%) = 400,000円 1年目の限度額 400,000円 ÷ 60 × 12 × 1/2 = 40,000円 2年目以後の限度額 400,000円 ÷ 60 × 12 = 80,000円(毎年)

仕入れの税額に課税売上割合を掛けて控除する、12か月の事業年度の目安です。

控除対象外消費税額等は資産の分に注意します
控除対象外消費税額等は資産の分に注意します

税込経理は、未払消費税を計上した期の損金にできます

税込経理の消費税は、未払金に計上するかで損金の期が変わります。

原則は、申告書を出した日の属する事業年度の損金です(経理通達7)。

ただし、申告期限前の消費税を損金経理で未払金に計上すれば、計上した期の損金です(同)。

中間申告の分は、中間申告書を出した事業年度の損金です。

方式の混在や割合の誤りで、判定と時期がずれます

次の処理は、判定や時期がずれる原因です。

  • 期の途中で方式が混ざる:どちらかにそろえて計算し直します(経理通達2)。
  • 免税事業者が税抜の金額で判定する:税込の金額で判定します(経理通達5)。
  • 未登録の相手からの仕入れを全額区分する:多すぎる分は資産や経費の額に含めます(経理通達3の2)。簡易課税の法人の特例は除きます。
  • 税込経理で未払消費税を計上し忘れる:確定申告分の損金が翌事業年度にずれます。
  • 飲食の参加者などの記録がない:1人1万円以下でも交際費等から除けません(措置法61条の4第8項)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

次の4つは、ご自身で確かめられます。

  1. 決算書と会計ソフトで、自社の方式を確かめる
  2. 免税事業者か課税事業者かを確かめる
  3. 10万円・20万円・1人1万円を、自社の方式の金額で判定する
  4. 取引先のインボイス登録の有無と、仕入れの日付を記録する

40万円の特例や控除対象外消費税額等の計算は、個別の判断です。

修繕費の目安(法人税基本通達7-8-3の20万円など)は、経理通達9に挙がっていません。

修繕費の金額基準そのものは、修繕費の記事で確かめられます。

方式を変えるなら、期の途中で混ざらない時期を選び、影響を先に試算します。

方式と判定の根拠を、決算の前に確かめます
方式と判定の根拠を、決算の前に確かめます

税理士が入ると変わるのは、方式の選び方と判定の根拠です

小松公認会計士・税理士事務所では、決算の前に次の5つを行います。

  • 方式ごとの手間と判定への影響を比べます。
  • 会計ソフトの税区分と取引先の登録の有無を点検します。
  • 10万円・20万円・40万円・1人1万円の判定表を作ります。
  • 控除対象外消費税額等を計算し、申告書に反映します。
  • 期末の未払消費税と中間申告分を確かめます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 法人は税込経理と税抜経理のどちらを選べばよいですか?

どちらでも納める消費税は同じです(タックスアンサーNo.6375)。税抜経理は、10万円・20万円・1人1万円の判定を税抜の金額で行えます(経理通達9)。税込経理は区分の手間が少なく済みます。免税事業者の法人は税込経理で計算します。

Q2. 免税事業者の法人が、税抜で記帳していたらどうなりますか?

税抜で記帳していても、法人税は税込経理で計算します(経理通達5)。10万円未満かどうかも、消費税込みの金額で判定します(タックスアンサーNo.5403の質疑応答)。課税事業者であれば、方式を選べます。

Q3. インボイス未登録の相手からの仕入れは、税抜経理でどう記帳しますか?

令和8年10月から令和10年9月までは、本来の税額(10/110)の70%を仮払消費税等にします。残りは仕入れや資産の価額に含めるのが原則です(No.6375)。区分しない方法もあり、簡易課税の法人は継続適用を条件に10/110で区分できます(経理通達1の2)。

Q4. 税込経理で、期末に未払消費税を計上しないとどうなりますか?

確定申告で納める消費税は、申告書を出した日の属する事業年度の損金になります(経理通達7)。申告期限前の消費税を損金経理で未払金に計上すれば、計上した期の損金です。中間申告で納めた分は、中間申告書を出した事業年度の損金です。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法施行令133条・133条の2・139条の4、租税特別措置法61条の4・67条の5、租税特別措置法施行令37条の5、消費税法30条2項を扱っています。国税庁の「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日付直法2-1)の1の2・2・3・3の2・5・7・9も扱っています。タックスアンサーNo.6375・No.5403・No.5408・No.6901・No.6921、「消費税経理通達関係Q&A」(令和5年12月改訂・経過措置の割合は改正前のもの)、「インボイス制度 基礎編」(令和8年5月)、「令和8年度税制改正特集」も参照しています。修繕費の20万円・60万円の目安と、措置法67条の5の40万円基準を、税込と税抜のどちらの金額で判定するかは扱っていません。個別対応方式による控除対象外消費税額等の計算、課税売上割合に準ずる割合、特定課税仕入れは扱っていません。資産に係る控除対象外消費税額等を取得価額に含める方法、繰延資産、期末一括税抜経理方式、2割特例も扱っていません。登録事業者から受け取るべきインボイスを保存していない場合、同じ相手からの仕入れが年1億円を超える場合の経過措置の制限、軽減税率、令和9年4月1日から予定されている飲食料品の消費税率の引下げも扱っていません。交際費等の定額控除限度額と接待飲食費の50%のどちらを選ぶか、措置法61条の4の適用期限後の扱い、個人事業者の所得税、償却資産税、加算税・延滞税も扱っていません。記事中の計算例は、消費税10%・12か月の事業年度など一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

税込経理か税抜経理か、法人税への影響を確かめませんか

どちらの方式でも、納める消費税は同じです。一方で法人税では、10万円・20万円・1人1万円の判定と、消費税を損金にする時期が変わります。令和8年10月1日に、インボイス未登録の相手からの仕入れの控除割合が70%に下がりました。代表税理士が、方式の比較と会計ソフトの税区分の点検から確認します。少額資産と交際費の判定表、控除対象外消費税額等の計算、期末の未払消費税の計上まで通して対応します。決算を迎える前の段階でご相談ください。

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公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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