この記事のポイント
- 美術品は1点100万円未満なら原則として減価償却資産です
- 1点100万円以上は原則として償却しません。価値の減少が明らかなものは例外です
- 中小企業者等の特例は令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満(年300万円まで)
- 社長の自宅に置くと、事業の用か問われ、役員給与とされるおそれもあります
まず結論:会社で買う美術品は、1点100万円と飾る場所で扱いが分かれます
美術品は、まず「減価償却資産」に当たるかで扱いが分かれます。
減価償却資産とは、買った金額を何年かに分けて費用にしていく資産です。
判断の軸は3つです。1点の取得価額、時の経過で価値が減るか、事業に使っているかです。
取得価額は、作品の代金に運送費や購入手数料などを足した金額です。
100万円未満の作品でも、全額をその期の経費にできるとは限りません。

1点100万円未満は原則として減価償却資産、100万円以上は原則として償却しません
美術品の扱いは、まず1点ごとの取得価額で分かれます(法人税基本通達7-1-1)。
| 1点の取得価額 | 原則 | 例外 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 減価償却資産 | 価値が減らないことが明らかなら償却しない |
| 100万円以上 | 償却しない | 価値が減ることが明らかなら償却できる |
取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱う。
(法人税基本通達7-1-1(注)2)
古美術品などで、歴史的価値や希少価値をもち代わりのないものもあります。これらは金額を問わず償却しません(同通達(1))。
100万円未満でも償却しない例は、高価な素材が大部分を占める小型の工芸品です(通達の趣旨説明)。
100万円以上でも償却できる例は、次の3つを全て満たすものです(国税庁FAQ Q2)。
- 会館のロビーなど、不特定多数が使う場所の装飾用・展示用(有料公開を除く)
- 移設が難しく、その用途にしか使わないことが明らか
- 転用すると、設置や使用の状況から美術品としての市場価値が見込まれない
ガラスケースで保護して展示するものは、3つ目に当たらないとされています(趣旨説明)。
償却する年数は絵画で8年が目安、少額なら一度に費用にできる場合もあります
減価償却資産になった作品は、耐用年数(費用にする年数)で償却します。
室内装飾品に当たる場合の年数は、次のとおりです(国税庁FAQ Q7)。
- 主として金属製のもの(例:金属製の彫刻):15年
- その他のもの(例:絵画、陶磁器、金属製以外の彫刻):8年
償却方法を選んでいない会社は、残りの額に一定率をかける定率法で償却します(法人税法施行令53条)。
少額なら、次の制度もあります。
| 1点の取得価額 | 費用にするしかた | 主な条件 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | その期に全額 | 使い始めた期に損金経理(施行令133条) |
| 20万円未満 | 3年で均等に | 一括償却資産を選ぶ(施行令133条の2) |
| 40万円未満 | その期に全額 | 中小企業者等の特例。年300万円まで(措置法67条の5) |
損金経理は、確定した決算で費用として処理することです(法人税法2条25号)。
40万円未満の特例は、令和8年4月1日以後に取得した作品が対象です(改正前は30万円未満)。
使えるのは資本金1億円以下などの青色申告法人で、従業員400人以下などの条件もあります。
令和11年3月31日までの取得分が対象で、明細書の添付も必要です(タックスアンサーNo.5408)。
計算例
例1:3月決算の会社が、令和8年4月1日に絵画3点を買って応接室に飾った場合
絵画A 350,000円 → 40万円未満の特例で 350,000円 絵画B 800,000円 → 8年・定率法 800,000円 × 0.250 = 200,000円 絵画C 1,500,000円 → 100万円以上のため償却しない 0円 その期に損金にできる額 350,000円 + 200,000円 = 550,000円例2:作品代950,000円の絵画に、額縁代80,000円がかかった場合
取得価額 950,000円 + 80,000円 = 1,030,000円 → 1点100万円以上会社は特例の要件を満たし、3点とも古美術品などではない室内装飾品の絵画とした前提です。金額は一定の前提を置いた目安です。
「100万円未満なら全部経費」と考えると、例1では損金が600,000円多くなります。

応接室や店舗での展示は通常は事業の用、社長の自宅に置くと役員給与とされるおそれがあります
減価償却するには、作品を事業に使っていることも必要です。
事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。
(法人税法施行令13条)
事業の用に供していない作品は、減価償却資産になりません。
国税庁のFAQでは、装飾や展示に使う美術品は、通常、事業の用に供していると考えられます(Q9)。
展示を休止して倉庫で保管中でも、いつでも展示できるよう維持管理していれば、事業の用です(同Q9)。
社長の自宅で個人が楽しむ作品は、事業の用に供しているかが問われます。
会社の資産を役員が私的に使えば、役員給与の問題にもなりえます。
前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。
(法人税法34条4項)
法人税基本通達9-2-9は、資産の贈与や無償での用役の提供、個人的な費用の負担などを例に挙げます。
注意
会社名義の作品を社長の自宅に置くと、役員への経済的な利益(役員給与)とされるおそれがあります。置き場所と使い方は、購入前に決めておきます。
社長個人の課税は、役員の経済的利益の記事で扱っています。

失敗パターン:次の5つで判断を誤ると、損金の額が変わります
どれも、損金の額や役員給与の扱いに直結します。
①「100万円未満なら全部経費」と考える
少額の制度に当たらなければ、100万円未満でも耐用年数で償却します。
②額縁や運送費を除いて判定する
一般的に、額縁はその絵画の一部として取得価額に含まれるものと考えられます。
(国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」Q8)
運送費や据付費なども取得価額に含めます(法人税法施行令54条)。
例2のように、額縁代を足すと1点100万円以上になることがあります。
③組で売られる作品を、1点ずつに分けて判定する
10万円・20万円・40万円の判定は、通常の取引単位(1個・1組・1そろい)ごとです。
根拠は、法人税基本通達7-1-11と措置法関係通達67の5-2です。
④使い始めた期に処理しない
少額の制度は、使い始めた期の損金経理が条件です(施行令133条、措置法67条の5)。
後の期に一時に損金経理をしても、損金に算入できません(タックスアンサーNo.5403)。
⑤社長の自宅に置く
事業の用か問われ、役員給与とされるおそれもあります。
補足
100万円の基準は、平成27年1月1日以後の取得分に適用されます。それより前の取得分で、改正前の基準では償却できなかった作品もあります。再判定は、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度に行う必要がありました。この年度の再判定で減価償却資産とした作品に限り、償却できます(国税庁FAQ Q6)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
購入前に、ご自身で確かめられるのは次の4点です。
- 額縁・運送費・手数料を含めた1点ごとの金額を、見積書で確かめる
- 飾る場所(応接室・店舗など)を決め、展示の写真と日付を残す
- 会社が特例の条件(資本金・従業員数・青色申告)を満たすかを確かめる
- 作品が古美術品などに当たらないかを、販売元の資料で確かめる
100万円以上の作品が例外に当たるかや、価値が減らないことが明らかかは個別判断です。
組や対の作品の数え方や、自宅・別荘に置く場合の扱いも、事実に応じて判断が分かれます。

税理士が入ると変わるのは、購入前の区分の判定と申告書への反映です
小松公認会計士・税理士事務所では、美術品の購入前から次の作業を行います。
ひとつめは、見積書の段階で1点ごとの区分を判定することです。
ふたつめは、耐用年数と償却方法を確かめ、償却額を試算することです。
みっつめは、特例の要件と、年300万円の枠の残りを管理することです。
よっつめは、損金経理の仕訳と明細書を作り、申告書に反映することです。
いつつめは、置き場所と使い方が私的な利用に当たらないかの点検です。
むっつめは、取得の経緯と事業との関係を示す資料をそろえ、税務調査に備えることです。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 35万円の絵画を会社で買いました。全額をその期の経費にできますか?
1点100万円未満なので、原則として減価償却資産です。事業に使う作品で、会社が中小企業者等の青色申告法人なら、特例を使えます。令和8年4月1日以後の取得分は、40万円未満まで全額を損金にできます。使い始めた期の損金経理と明細書の添付が必要で、年300万円までです。
Q2. 150万円の絵画を本社のロビーに飾れば、減価償却できますか?
1点100万円以上は、原則として償却しません。例外の例は、不特定多数が使う場所(有料公開を除く)に飾るもので、移設が困難でその用途専用のものです。転用時に市場価値が見込まれないことも含め、3つ全てを満たすものです。ガラスケースで保護して展示するものは当たらないとされています。
Q3. 額縁代は、絵画とは別に経費にできますか?
国税庁のFAQは、額縁は一般的に絵画の一部として取得価額に含まれると考えられる、としています。引取運賃や購入手数料、据付費なども含めます(法人税法施行令54条)。合計で1点100万円以上になると、原則として償却しません。
Q4. 社長の自宅に飾る絵を、会社のお金で買ってもよいですか?
事業の用に供していない資産は、減価償却資産から除かれます(法人税法施行令13条)。会社の資産を役員が私的に使うと、役員給与とされるおそれもあります(法人税法34条4項)。置き場所と使い方は、購入前に決めておきます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条25号・34条4項、法人税法施行令13条・48条の2・53条・54条・133条・133条の2、租税特別措置法67条の5、同法施行令39条の28、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則65条、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一・第十、法人税基本通達7-1-1・7-1-3・7-1-11・9-2-9、租税特別措置法関係通達67の5-2、国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」、平成26年12月の通達改正の趣旨説明、タックスアンサーNo.5403・No.5408の内容を扱っています。古美術品等に当たるかの具体的な判定、組や対で取引される作品の100万円の数え方、消費税の経理方式による取得価額の判定、複製品や建物と一体の彫刻の扱い、役員給与とされた場合の経済的な利益の額の計算・定期同額給与への該当・源泉徴収、美術品の売却・除却・寄附・評価損、リース・レンタル、固定資産税(償却資産)の申告、消費税の仕入税額控除、個人事業主の取扱い、相続税・事業承継の論点は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の損金の額は会社の要件、取得の時期、償却方法によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/bijutsuhin_FAQ/index.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第1節第1款「減価償却資産」(7-1-1)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_01_01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第2款「経済的な利益の供与」(9-2-9)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(13条・53条・54条・133条・133条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
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会社で買う絵画などの美術品は、1点の取得価額と飾る場所で税務の扱いが分かれます。100万円未満は原則として減価償却資産で、少額の制度に当たらなければ耐用年数で償却します。100万円以上は原則として償却しません。社長の自宅に置くと、役員給与とされるおそれもあります。代表税理士が、1点ごとの取得価額の確認から償却額の試算、特例の要件確認まで行います。明細書の作成と申告書への反映まで通して対応します。見積書の段階でご相談ください。
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