この記事のポイント
- 軽減税率の年800万円の枠は、資本金1億円以下の会社ごとに判定します(一部の会社を除く)
- 名義だけの2社目の売上は、実際に収益を受ける会社のものとして課税されます
- 2社目の消費税は最初の2期が原則免除ですが、資本金1,000万円以上などは例外です
- 令和8年4月1日以後に始まる期から、経営指導料などの計算方法の書類が要る場合があります
まず結論:会社を分けても、税金が必ず下がるわけではありません
「会社を2つにすれば税金が減るのでは」というご質問をいただくことがあります。
答えは、会社ごとに使える枠と、否認・失敗の場面の両方を見て決まります。
法人税の軽い税率などは、会社ごとに判定します。一方で、会社が増えると増える税や費用もあります。
名義だけの会社に売上を移しても、実際に収益を受ける会社のものとして課税されます(法人税法11条)。
分社化の効果は、2社目に事業の実体があり、2社の取引が相場どおりであることが前提です。
ポイント
会社ごとに判定する主な制度は、軽減税率・交際費・防衛特別法人税・消費税の4つです。問題になる場面の主な根拠は、法人税法11条・37条・132条です。

会社ごとに判定する主な制度は4つです
2社目をつくると、次の4つの制度は会社ごとに判定します。
| 制度 | 会社ごとの内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法人税の軽減税率 | 期末の資本金1億円以下の会社は、所得のうち年800万円以下の部分が15% | 法人税法66条2項・措法42条の3の2 |
| 交際費の定額控除限度額 | 期末の資本金1億円以下の会社は、交際費のうち年800万円までを損金にできる | 措法61条の4第2項 |
| 防衛特別法人税の基礎控除 | 一定の税額控除前の法人税額から年500万円を引いた残りに4% | 防衛財源確保法13条・14条 |
| 消費税の免除の判定 | 売上高などで会社ごとに判定。新しい会社の1期目・2期目は原則免除 | 消費税法9条など |
損金とは、税金の計算で差し引ける費用のことです。
資本金1億円以下の会社なら、軽減税率と交際費の枠は、どちらも会社ごとに年800万円です。
資本金5億円以上の法人などの100%子会社は、この2つの枠を使えません(法人税法66条5項など)。
15%は、令和9年3月31日までに開始する事業年度の特例です(本来は19%)。年800万円を超える部分は23.2%です。
防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から課されます(防衛財源確保法11条)。
計算例
例:所得1,600万円を1社で得る場合と、2社で800万円ずつ得る場合
1社 800万円×15%+800万円×23.2%=3,056,000円 2社 800万円×15%×2社=2,400,000円 差額 3,056,000円-2,400,000円=656,000円 増える均等割(標準税率) 2万円+5万円=70,000円令和9年3月31日までに開始する事業年度の税率で、法人税の本税を比べた、一定の前提を置いた目安です。
2社の所得が実態どおりに分かれる前提です。地方法人税や事業税、申告の費用は入れていません。
均等割は、所得に関係なくかかる住民税です。事務所などを持つ会社ごとにかかります(地方税法24条1項3号・294条1項3号)。
上の70,000円は標準税率です(同法52条1項・312条1項)。資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下で計算しました。
補足
グループ通算制度(グループの損益を通算して申告する制度)の承認を受けると、計算が変わります。15%の特例は使えず、800万円や500万円の枠はグループで分けて使います(法人税法66条7項など)。

2社目の消費税は、最初の2期でも免除されないことがあります
新しい会社の1期目・2期目には、基準期間(前々事業年度)がありません。そのため、原則として消費税が免除されます(タックスアンサーNo.6503)。
ただし、次の場合は免除されません。
- 期首の資本金が1,000万円以上の会社(消費税法12条の2)
- インボイス(適格請求書)の発行事業者として登録している会社(同法9条1項)
- 2期目で、特定期間の課税売上高と給与の額がどちらも1,000万円を超える会社(同法9条の2)
- 課税事業者を選ぶ届出を出している会社
- 親族などと株の50%超を持つ株主や、その株主が全株を持つ会社の売上高が5億円超など(同法12条の3)
特定期間は、原則として前の事業年度の最初の6か月です。
会社分割などで作った会社には、分割前の会社の売上高で判定する定めもあります(同法12条)。
インボイスの登録をすると、2社目でも消費税の免除は受けられません。
否認・失敗につながる4つの場面を、根拠とともに確かめます
否認や失敗は、実体・値決め・付け替え・書類の4つの場面で起こり得ます。
1つめは、名義だけの会社に売上を移すことです。
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(法人税法11条)
人・事務所・契約・口座が1社目のままでは、2社目が収益を受けていると説明しにくくなります。
2つめは、2社の間で相場から離れた料金をやり取りすることです。
名義を問わず、金銭や経済的な利益の贈与・無償の供与は寄附金です(法人税法37条7項)。広告宣伝費や交際費などとされるものは除きます。
時価より低い対価で譲った場合などの差額のうち、実質的に贈与と認められる金額も含まれます(同条8項)。寄附金は、一定の限度額を超える部分が損金になりません(同条1項)。
株主が法人か個人かで扱いが変わる点は、グループ会社間の寄附金と受贈益の記事で扱っています。
同族会社には、別の規定もあります。同族会社とは、株主3人以下とその親族などが株の50%超を持つ会社などです(法人税法2条10号)。
法人税の負担を不当に減少させる行為・計算は、税務署長が引き直して課税できます(法人税法132条1項)。
詳しくは同族会社の行為計算の否認の記事をご覧ください。
3つめは、費用の付け替えです。交際費は、その会社の得意先など、事業に関係のある者への接待などの支出です(措法61条の4第6項)。
枠の空いている会社へ費用を移しても、その会社の事業のための支出でなければ前提を欠きます。
注意
4つめは、令和8年度改正で加わった書類の保存です。令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
関連者から、経営の指導など一定の役務を受けた場合などが対象です。関連者には、同じ個人(親族などを含む)が株の50%以上ずつを持つ会社どうしも含まれます。
契約書などに、対価の計算方法などの記載がないことがあります。その場合は、記載のない事項を明らかにする書類を申告期限までに用意します。これを原則7年間(欠損金の生じた期は10年間)保存します(法人税法施行規則59条の2・67条の2)。
国税庁は、青色申告法人の保存の不備が、青色申告の承認の取消事由に当たるとしています。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
2社目をつくる前に、ご自身で整理できるのは次の4点です。
- 2社目で行う事業・担当者・事務所・取引先を書き出す
- 2社の間で生じる取引(業務委託・家賃・経営指導など)を一覧にする
- 2社目の資本金・事業年度・インボイス登録の要否を確かめる
- 均等割や申告の費用など、会社が増えて増える負担を見積もる
売上・費用・人件費の分け方、2社間の料金、消費税の判定は、事実に応じて判断が分かれます。
所得の分け方は、事業の実態に沿っているかが問われる個別判断です。

税理士が入ると変わるのは、比べる順番と書類の残し方です
小松公認会計士・税理士事務所では、2社目をつくる前から次の作業を行います。
ひとつめは、1社のままの場合と2社の場合の試算です。法人税・住民税・消費税を並べて比べます。
ふたつめは、2社目の事業の整理です。人・事務所・口座・契約の分け方を決めます。
みっつめは、2社間の契約書と料金の根拠づくりです。令和8年度改正の書類の保存にも対応します。
よっつめは、設立時の資本金・事業年度・インボイス登録の検討と、届出の期限の管理です。
いつつめは、決算ごとの検証です。2社間の取引と所得の分かれ方を確かめます。
むっつめは、税務調査に備えた説明資料の準備です。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 会社を2つに分ければ、法人税は必ず安くなりますか?
必ず安くなるわけではありません。資本金1億円以下の会社(一部を除く)の軽減税率などは、会社ごとに判定します。ただし、名義だけの会社の収益は、実際に収益を受ける会社のものとして課税されます(法人税法11条)。均等割など、会社ごとにかかる税や費用も増えます。
Q2. 新しくつくった2社目は、2年間は消費税がかかりませんか?
基準期間がない1期目・2期目は原則免除です(タックスアンサーNo.6503)。ただし、期首の資本金が1,000万円以上の会社や、インボイス登録をした会社などは免除されません。2期目は、特定期間の課税売上高と給与の額がどちらも1,000万円を超えると課税されます。
Q3. 2社の間で経営指導料や業務委託料を払うときの注意点は?
相場から離れた料金は、寄附金や同族会社の行為計算の否認の対象になり得ます(法人税法37条・132条)。令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、書類保存の特例も加わりました。関連者から経営の指導など一定の役務を受ける場合、計算方法などを示す書類が要ることがあります。
Q4. 交際費の800万円や、防衛特別法人税の500万円の控除も会社ごとですか?
期末の資本金1億円以下の会社は、交際費の定額控除限度額(年800万円)を会社ごとに使えます。大法人の100%子会社などは除きます。防衛特別法人税の基礎控除(年500万円)も、通算法人以外は会社ごとです。交際費は、その会社の事業に関係のある相手への支出が前提です。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条10号・11条・37条1項・7項・8項・66条1項・2項・5項・7項・132条1項・150条の2第1項、法人税法施行規則59条の2・67条の2、法人税法施行規則等の一部を改正する省令(令和8年財務省令第18号)附則1条・8条、租税特別措置法42条の3の2第1項・61条の4第1項・2項・6項、消費税法9条1項・9条の2・12条・12条の2・12条の3、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法11条・13条・14条、地方税法24条1項3号・52条1項・294条1項3号・312条1項、タックスアンサーNo.5759「法人税の税率」・No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」・No.6501「納税義務の免除」・No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」、国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」の内容を扱っています。会社分割の適格要件と組織再編税制、100%グループ内の取引(グループ法人税制)の細目、グループ通算制度を選んだ場合の税率と計算の細目、適用除外事業者とみなし大企業の判定、所得が年10億円を超える事業年度の税率、接待飲食費の50%基準と1人1万円以下の飲食費の要件、寄附金の損金算入限度額の計算、防衛特別法人税の基準法人税額の計算と申告の手続、特定新規設立法人の特定要件と特殊関係法人の範囲、特定期間の細目、課税事業者選択届出書の期限と継続適用、高額特定資産、簡易課税と2割特例、地方法人税・事業税・法人税割と自治体ごとの超過課税、関連者間取引の書類の記載事項の細目と電子取引の扱い、法人税法132条の判断基準と裁判例・裁決例、役員報酬の分け方と社会保険は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「法人税法」(11条・37条・66条・132条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(42条の3の2・61条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(11条・13条・14条)https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000069
- 国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6503.htm
- 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2026/01.htm
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