融資・資金調達

補助金は後払いです
交付決定から入金までの立替えと、つなぎ資金の考え方

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 補助金は後払い。事業者が全ての経費をいったん立て替えます
  • 交付決定の前に発注した経費は、補助の対象になりません
  • つなぎ資金の保証制度は都道府県ごとで、全国一律ではありません
  • 受け取った補助金は収入(益金)として課税の対象になります

まず結論:採択されても、お金はすぐには入りません

補助金は、事業が終わってから支払われるのが原則です。

中小企業庁のミラサポplusは、こう書いています。

補助金は「後払い(清算払い)」が原則です。このため、事業者が自己資金で、全ての事業経費を立替えする必要があります。

採択は「補助金交付の候補に選ばれただけ」で、入金の約束ではありません。

流れは、交付申請、交付決定、事業実施、実績報告、確定検査、額の確定、請求、入金と続きます。

この間の支払いは、すべて自分のお金で行います。

融資と補助金は、お金が動く順番がまるで違う制度です。

補助金は後払いのため交付決定から入金までの間は事業者が経費を立て替えます
採択・交付決定から入金まで、事業経費はいったん自己資金で立て替えます

交付決定より前に発注すると、対象外になります

もっとも多い取り返しのつかない失敗が、発注の時期です。

ものづくり補助金の公募要領は、次のように定めています。

交付決定日よりも前に発注・契約・購入を行った経費はいかなる理由があっても補助対象外となります。

契約を結んだだけでも対象外になります。

デジタル化・AI導入補助金も「交付決定前にITツールを契約、発注した場合は補助対象とならない」としています。

小規模事業者持続化補助金でも、交付決定前の発注・契約・購入・支払は対象外です。

注意

採択の発表から交付決定までには時間がかかります。持続化補助金の公募要領は「採択後、詳細な見積書等が速やかに提出された場合でも、採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があります」としています。納期を急ぐあまり先に発注すると、補助金がまるごと消えます。なお同補助金では、展示会等への出展の申込みだけは例外とされています。

主な補助金の補助率と上限額

補助率は、経費の全額ではなく一部だけが戻る仕組みです。

補助金補助率補助上限額
ものづくり補助金
(製品・サービス高付加価値化枠・第23次締切)
中小企業2分の1
小規模企業・小規模事業者等3分の2
従業員1〜5人 750万円/6〜20人 1,000万円/21〜50人 1,500万円/51人以上 2,500万円
小規模事業者持続化補助金
(一般型 通常枠・第20回)
3分の250万円(インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円の上乗せ)
デジタル化・AI導入補助金2026
(通常枠)
2分の1以内5万円〜450万円以下(プロセス数による区分あり)

数値は令和8年9月時点で各公式サイトに掲載されていた枠のものです。

補助率が2分の1なら、半分は最後まで自己負担として残ります。

公募回によって枠も金額も変わるため、申込みの時点で必ず公募要領をご確認ください。

数字で見る:2,000万円の設備を補助率2分の1で導入したとき

立て替える金額は、補助金の額ではなく支払総額で決まります。

計算例

補助対象経費2,000万円(税抜)・補助率2分の1・上限1,000万円の場合

支払総額(消費税10%を含む) 20,000,000円 × 1.10 = 22,000,000円 後から入る補助金 20,000,000円 × 1/2 = 10,000,000円 入金までに用意する資金 22,000,000円 最終的な自己負担(税抜ベース) 20,000,000円 − 10,000,000円 = 10,000,000円

消費税は補助対象外です。補助金が入るまでは、消費税分も含めて自分で負担します。

2,200万円を用意できなければ、1,000万円の補助金は受け取れません。

支払方法にも制約があります。

ものづくり補助金は原則として銀行振込のみで、現金払いやクレジットカード払いは認められていません。

持続化補助金では、1取引10万円超(税抜)の現金支払が認められていません。

補助金が入金されるまでのつなぎ資金は信用保証協会の制度融資などで手当てします
入金までの資金は、自己資金か融資で手当てすることになります

つなぎ資金の制度は、都道府県ごとに違います

この立替期間を埋めるための保証制度が、各地の信用保証協会にあります。

千葉県信用保証協会の「補助金活用支援保証制度 セットアッパー」は、次のように説明しています。

補助金・助成金の交付決定を受けた中小企業・小規模事業者の皆さまに対して、補助金・助成金が交付されるまでの間の資金繰りを支援するための保証制度

山梨県信用保証協会にも「補助金連携支援保証」があり、資金使途を「補助金入金までのつなぎ資金」としています。

ただし、これは全国一律の制度ではありません。

お住まいの地域の信用保証協会に同じ制度があるとは限らず、内容も異なります。

制度がない地域では、通常の運転資金・設備資金の融資で手当てすることになります。

保証付融資の仕組みは信用保証協会の保証付融資、資金使途の考え方は融資の資金使途をご覧ください。

補助金は収入です ― 入った年に税金もついてきます

受け取った補助金は、非課税ではありません。

ものづくり補助金の公募要領は、はっきりこう書いています。

補助金は経理上、支払を受けた事業年度における収入として計上するものであり、法人税等の課税対象となります。

設備の代金は減価償却で数年に分かれ、補助金は入った年に一度に収入になります。

そのため、補助金が入った期だけ利益が膨らむことがあります。

固定資産の取得に充てた国庫補助金等については、法人税法42条の圧縮記帳という手当てがあります。

圧縮記帳の要件は補助金をもらったら税金がかかる?圧縮記帳で詳しく扱っています。

止まってしまう典型は、この4つです

実務で行き詰まるのは、資金と手続の両方です。

  • 交付決定前に発注した ― 補助対象外になり、取り返しがつきません
  • 立替資金を用意していなかった ― 採択されても事業を始められません
  • 証拠書類がそろわない ― 実績報告では領収書などの証拠書類が求められます
  • 支払方法の制約を見落とした ― 現金払いやカード払いが認められない補助金があります

とくに多いのが、採択の連絡で安心して先に発注してしまうことです。

実績報告にも期限があります。

ものづくり補助金は、補助事業の完了日から30日を経過した日か実施期間の終了日のいずれか早い日までに提出が必要です。

補助金の実績報告では領収書などの証拠書類の提出が求められます
実績報告では領収書などの証拠書類が求められ、確定検査を経て金額が決まります

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で進められるのは、次の4点です。

  1. 使いたい補助金の公募要領を取り寄せ、補助率と上限額を確認する
  2. 支払総額(消費税込み)と、入金までの期間を書き出す
  3. 交付決定の見込み時期と、発注できる最短の日を確認する
  4. 地域の信用保証協会につなぎ資金の制度があるかを調べる

ここから先は個別判断です。

立替資金を自己資金でまかなうのか、融資を組むのかで、事業計画そのものが変わります。

補助金が入った期の利益と税額をどう見込むかも判断が要ります。

融資を受けられるかどうかは、金融機関の審査で決まります。

税理士が入ると変わるのは、資金繰りと申告のつなぎ方です

ひとつめは、月ごとの資金繰り表です。支払と入金の時期を並べ、不足月を特定します。

ふたつめは、立替資金の調達計画です。必要額と時期から、融資の申込時期を逆算します。

みっつめは、補助金が入った期の税額の試算です。圧縮記帳を使う場合の効果も比べます。

よっつめは、証拠書類の整え方です。実績報告に耐える形で、見積書・契約書・領収書を残します。

いつつめは、決算と申告への反映です。補助金の収入計上時期と、資産の取得価額を確定させます。

補助金は、取ることよりも立て替えきることのほうが難しい制度です。

返済の組み方は据置期間と返済計画をご覧ください。

小松公認会計士・税理士事務所では、資金繰り表の作成から決算・申告まで続けて担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 採択されたら、すぐに補助金が振り込まれますか?

いいえ。中小企業庁のミラサポplusは「補助金は『後払い(清算払い)』が原則です」としており、事業者が自己資金で全ての事業経費を立て替える必要があります。入金は事業の完了後、実績報告と確定検査を経て金額が確定してからになります。

Q2. 採択の連絡をもらったので、先に発注してよいですか?

いけません。ものづくり補助金の公募要領は「交付決定日よりも前に発注・契約・購入を行った経費はいかなる理由があっても補助対象外となります」としています。契約を結んだだけでも対象外です。交付決定を待ってから発注してください。

Q3. つなぎ資金を借りられる制度はありますか?

信用保証協会によっては、補助金の入金までを支える保証制度を設けています。千葉県信用保証協会の「セットアッパー」、山梨県信用保証協会の「補助金連携支援保証」などです。ただし全国一律の制度ではなく、内容も地域によって異なります。

Q4. 受け取った補助金に税金はかかりますか?

かかります。ものづくり補助金の公募要領も「補助金は経理上、支払を受けた事業年度における収入として計上するものであり、法人税等の課税対象となります」としています。固定資産の取得に充てた国庫補助金等には、法人税法42条の圧縮記帳という手当てがあります。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の公表資料に基づく一般的な解説です。中小企業庁ミラサポplus「補助金入門」、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(第23次締切)、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>公募要領(第20回)、デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領、千葉県信用保証協会「補助金活用支援保証制度 セットアッパー」、山梨県信用保証協会「補助金連携支援保証」、法人税法42条の内容を扱っています。補助率・補助上限額・実施期間は記事に記載した公募回のものであり、公募回ごとに変わります。次回以降の公募の有無、各補助金の採択率、概算払(前払い)の可否、各地の信用保証協会の個別の取扱い、圧縮記帳の具体的な適用要件と申告書への記載方法は扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための設例であり、一定の前提を置いた目安です。補助金の採択および融資の可否は個別の審査で判断されるものであり、本記事はその結果を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

補助金は、立て替えきれるかどうかで決まります

補助金は後払いです。採択されても交付決定を待たずに発注すれば補助対象外となり、事業が終わって実績報告と確定検査を通るまで入金はありません。その間の支払いは消費税分も含めて自己資金か融資でまかなう必要があります。さらに入金した期には収入として課税されます。代表税理士が、支払と入金を月ごとに並べた資金繰り表の作成、立替資金の調達計画、補助金が入った期の税額の試算と圧縮記帳の検討、実績報告に耐える証拠書類の整え方まで、通して対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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