法人税・節税

会社の電子取引データの保存要件
メールの請求書は印刷だけでは足りません

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • メールやネットで受け取った請求書はデータのまま保存する義務があります
  • 要件は改ざん防止の措置と、画面に出して日付・金額・取引先で探せる状態です
  • 前々事業年度の売上高5,000万円以下なら、ダウンロードの求めに応じる条件で検索不要です
  • 印刷した紙だけの保存は認められず、青色申告の承認の取消しの対象になり得ます

まず結論:メールやネットで受け取った請求書は、データのまま保存します

メールで届いたPDFの請求書や、ネットで買った物の領収書データにも保存の義務があります。

所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

(電子帳簿保存法7条)

電磁的記録とは、電子データのことです。

紙に印刷して綴じるだけでは、保存したことになりません。

受け取った請求書は、データのまま保存します
受け取った請求書は、データのまま保存します

メール・ダウンロード・クラウドでの受け渡しは、電子取引に当たります

注文書や領収書などに書かれる内容を、データでやり取りするのが電子取引です(電子帳簿保存法2条5号)。

国税庁の一問一答(令和8年7月)は、次を電子取引としています(問5)。

  • メールに添付されたPDFの請求書や領収書
  • サイトからダウンロードした領収書や、その画面のスクリーンショット
  • 請求書を受け渡すクラウドサービスや、クレジットカードの利用明細データ
  • EDI(取引先とデータを直接やり取りする仕組み)や、紙に出さないFAX

ネットバンキングの振込(問10)や、会社の業務で従業員が立て替えた領収書データ(問12)も対象です。

送った請求書のデータも残します(問30)。取引の内容を含まないメールまで残す必要はありません(問6)。

契約書を電子で交わすときの印紙税は、印紙税と電子契約の記事で扱っています。

ネットで買った物の領収書データも保存の対象です
ネットで買った物の領収書データも保存の対象です

保存の要件は「改ざんを防ぐ」と「すぐ見せて探せる」の2つです

データは、改ざんを防ぐ措置(真実性)と、見て探せる状態(可視性)を整えて保存します(問18)。

区分求められること根拠
改ざん防止(どれか1つ)①タイムスタンプ(改ざんされていない証明)付きで受け取る ②受け取り後、速やかにタイムスタンプを付す ③訂正・削除の記録が残る(またはできない)システムで受け取り、保存する ④訂正・削除を防ぐ事務処理規程を定め、備え付けて運用する電子帳簿保存法施行規則4条1項
見られるディスプレイやプリンタ等を備え、画面と紙に速やかに出せる同規則2条2項2号
探せる日付・金額・取引先で検索でき、範囲指定と組合せもできる同規則2条6項5号
説明書自社開発のプログラムなら、システムの概要書を備える同規則2条2項1号イ

専用システムがなくても、規程のひな形(問33)や表計算ソフトの一覧表(問50)で対応できます。

前々事業年度の売上高5,000万円以下なら、条件つきで検索の要件は不要です

調査でデータを求められたとき(ダウンロードの求め)に応じられれば、範囲指定と組合せは不要です。

さらに売上高が5,000万円以下なら、検索の要件そのものが不要です。印刷した書面を日付と取引先ごとに整理して出せる場合も同じです(同規則4条1項)。

法人は、電子取引をした事業年度の前々事業年度の売上高で判定します(同条2項)。

売上高は税抜で、消費税のかからない売上も含め、営業外収益や特別利益は含めません(一問一答 問51)。

計算例

例:3月決算の会社が令和8年10月7日に受け取った請求書データ

判定に使う事業年度 令和6年4月1日〜令和7年3月31日 本業の売上高(税抜)4,600万円 + 本業として貸す住宅の家賃(非課税)600万円 = 5,200万円 受取利息200万円と固定資産の売却益300万円は含めない 5,200万円 > 5,000万円 → 売上高の基準は使えません

金額は一定の前提を置いた目安です。家賃を外して4,600万円と見ると、判定を誤ります。

不要になるのは検索の要件だけで、改ざん防止の措置などは残ります。

紙に印刷して残すだけでは、保存したことになりません

令和6年1月1日以後の電子取引は、印刷した書面でデータの保存に代えられません(一問一答 問98)。

対応が間に合わない会社には、猶予措置があります(施行規則4条3項)。

条件は、税務署長が相当の理由を認め、データと印刷した書面の両方を求めに応じ提示・提出できることです。

人手不足や資金不足、システム整備の遅れも相当の理由に当たるとされています。事前の届出は要りません(国税庁リーフレット 令和6年11月)。

ただし、システムが整っているのに理由なく要件に従わない場合は、適用がありません(問93)。事情が解消した後の電子取引にも、適用はありません(問94)。

注意

猶予措置でも、データ自体は消さずに残します。印刷した書面だけでは、データの保存とは扱われません(電子帳簿保存法取扱通達7-13)。

猶予措置があっても、データの保存そのものは省けません。

印刷して綴じるだけでは、保存になりません
印刷して綴じるだけでは、保存になりません

要件どおりでないと、青色申告の取消しの対象になり得ます

法人税法127条1項1号の取消事由には、電子取引の保存違反も入ります(電子帳簿保存法8条3項3号)。

国税庁は、次のように答えています。

災害その他やむを得ない事情又は税務署長が相当の理由があると認める事由がなく、その電磁的記録が保存時に満たすべき要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。

(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問98)

取消しは違反の程度などを総合的にみて判断されますが、要件どおりの保存が前提です(同)。

承認と取消しの全体像は、法人の青色申告の記事にまとめています。

ポイント

経費の扱いも示されています(問98)。取引が正しく記帳されて申告に反映され、内容を電子データ以外から確認できる場合です。特段の事由がなければ、直ちに支出がなかったと判断されるものではないとされています。ただし、要件どおりでないデータや印刷した書面は、保存書類とされません(同)。申告の内容は、追加の説明や資料などで確認されます(同)。

電子インボイスは、消費税では印刷でも足り、法人税ではデータが要ります

電子インボイス(データで受け取るインボイス)は、税目で保存の扱いが違います。

仕入税額控除(仕入れの消費税を差し引く仕組み)は、原則として帳簿と請求書等の保存が要件です。

電子インボイスも、この請求書等に含まれます(消費税法30条7項・9項2号)。

消費税では、整然と明瞭に印刷した書面での保存も認められます(消費税法施行規則15条の5第2項)。

一方、法人税では、印刷でデータの保存に代えられません(一問一答 問29)。

データを電子取引の要件どおりに残せば、消費税の保存方法も満たします(同規則15条の5第1項)。

国税庁が「認められない」としている保存のしかた

次の形は、一問一答で要件を満たさない、または認められないとされています。

  • メールソフトで見られるだけ:十分とは言えないとされています(問5)
  • 会計ソフトへの手入力だけ:元のデータを残さないと保存になりません(問36)
  • 訂正・削除の記録が残るシステムに後から入れるだけ:受け取りもそこで行う必要があります(問43)
  • 印刷した書面をスキャナで保存:認められません(問99)

保存したつもりでも、要件に合わない形があります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で進められるのは、次の4点です。

  1. データで受け取る書類を、受け取る経路ごとに書き出す
  2. 保存先を決め、ファイル名に日付・金額・取引先を同じ順で入れる
  3. 国税庁のひな形を参考に、事務処理規程を定める
  4. 前々事業年度の決算書で、売上高を確かめる

ここから先は個別判断です。売上高に何を含めるか、相当の理由に当たるかは会社の事実で変わります。

過去に要件を満たしていなかった分の手当ても、個別の判断です。

保存の手順は、決算の前に整えておきます
保存の手順は、決算の前に整えておきます

税理士が入ると変わるのは、保存方法の設計と調査への備えです

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

ひとつめは、電子取引の棚卸しです。取引先ごとに受け取り方を一覧にします。

ふたつめは、保存方法と規程の設計です。会社の規模に合う措置を選びます。

みっつめは、売上高5,000万円の判定です。前々事業年度の決算書で確かめます。

よっつめは、電子インボイスの点検です。保存の状態と帳簿を突き合わせます。

いつつめは、税務調査への備えです。ダウンロードの求めに応じる手順を確かめます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. メールで届いたPDFの請求書は、印刷して保存すれば足りますか?

法人税では足りません。令和6年1月1日以後の電子取引は、印刷した書面でデータの保存に代えられません(一問一答 問98)。データを要件どおりに保存したうえで、管理のために印刷して綴じるのは問題ないとされています(問31)。

Q2. 売上高が5,000万円以下なら、何もしなくてよいのですか?

不要になるのは検索の要件だけです。データの保存、改ざん防止の措置、画面と紙に出せる備えなどは必要です。ダウンロードの求めに応じられることも条件です(電子帳簿保存法施行規則4条1項)。判定は前々事業年度の売上高で行います。

Q3. 要件どおりに保存できていないと、経費として認められないのですか?

国税庁は、次の場合は直ちに支出がなかったと判断されるものではないとしています(一問一答 問98)。取引が正しく記帳されて申告に反映され、内容を電子データ以外から確認できる場合です。このとき、青色申告の承認も直ちに取り消されるものではないとされています。特段の事由がある場合は別です。ただし、猶予措置などに当たらない要件違反は、取消しの対象になり得ます。

Q4. 対応が間に合わない場合は、どうすればよいですか?

猶予措置があります(電子帳簿保存法施行規則4条3項)。税務署長が相当の理由を認め、データと印刷した書面の両方を求めに応じて提示・提出できることが条件です。その場合、検索などの要件なしで保存できます。事前の届出は要りません。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)2条5号・7条・8条3項3号、同法施行規則2条2項・6項5号・4条1項〜3項、法人税法127条1項1号、消費税法30条7項・9項2号、消費税法施行規則15条の5、電子帳簿保存法取扱通達7-13、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)の問5・問6・問10・問12・問18・問29・問30・問31・問33・問36・問43・問50・問51・問60・問93・問94・問98・問99、同庁リーフレット「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」(令和6年11月)の内容を扱っています。電子取引データに関する重加算税の加重措置(電子帳簿保存法8条5項)と、令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用される加重措置の除外措置、スキャナ保存と電子帳簿等保存(優良な電子帳簿を含む)、タイムスタンプの技術的な要件と付与の期限、前々事業年度が1年未満の法人や設立間もない法人の判定、令和5年12月31日以前の電子取引に適用された宥恕措置、災害その他やむを得ない事情がある場合の取扱い、青色申告の承認の取消しの事務運営指針の内容、消費税の仕入税額控除の少額特例や経過措置などの細目、個人事業者の取扱い(青色申告特別控除を含む)、公益法人等の取扱い、印紙税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、売上高に含める収益は会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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メールやネットで受け取った請求書は、改ざん防止の措置と検索の要件を満たして、データのまま保存します。前々事業年度の売上高が5,000万円以下でも、不要になるのは検索の要件だけです。ダウンロードの求めに応じられることも条件です。猶予措置などに当たらない要件違反は、青色申告の承認の取消しの対象になり得ます。代表税理士が、電子取引の棚卸しから保存方法と規程の設計まで担当します。売上高の判定、電子インボイスの点検、調査への備えも続けて行います。決算や調査の前の段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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