この記事のポイント
- 会社が管理をしていないとされ、必要経費になる管理料が零円とされた裁決があります
- 高すぎる管理料や低すぎる借上げ賃料は所得税法157条で計算し直されることがあります
- 地主が株主でなくても、株主の親族なら所得税法157条の対象になります
- 家族役員の報酬は高すぎる部分が損金にならず、会社には均等割もかかります
まず結論:管理会社へ払う額は、管理の実態と金額の水準で判断されます
賃貸物件の収入の一部を、家族が役員の会社へ移す方法があります。
本記事では、管理委託方式とサブリース(一括借上げ)方式の2つを扱います。
会社が管理をしていないとされ、必要経費になる管理料を零円とした裁決があります。
管理をしていても、払う額が高すぎれば、所得税法157条で計算し直されることがあります。
問われるのは契約書の形ではなく、管理の中身と金額の根拠です。
建物を会社へ売る方式もありますが、建物の売却には譲渡所得の論点があります。本記事では扱いません。

2つの方式では、問われる金額の向きが違います
不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します(所得税法26条2項)。
管理委託方式は必要経費を増やし、サブリース方式は総収入金額を減らします。
| 方式 | お金の流れ | 問われる金額 |
|---|---|---|
| 管理委託方式 | 地主が入居者から家賃を受け取り、会社へ管理料を払う | 管理料が高すぎないか |
| サブリース方式 | 会社が建物を借り上げて入居者へ又貸しし、地主へ借上げ賃料を払う | 借上げ賃料が低すぎないか |
会社が家族役員に報酬を払うと、家族側では給与所得になります(所得税法28条1項)。
どちらの方式でも、会社に残る金額を管理の対価として説明できるかが問われます。
所得税法157条は、地主個人の所得税を計算し直す規定です
株主3人以下とその親族などで、株式の50%超を持つ会社を同族会社といいます(法人税法2条10号)。
家族だけで株式を持つ管理会社は、これに当たります。
所得税法157条1項は、同族会社の行為又は計算のうち、次のものを対象にしています。
所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの
(所得税法157条1項)
このとき税務署長は、その行為又は計算にかかわらず、個人の所得を計算し直せます。
対象は、株主である個人と、その親族など特殊の関係のある個人です(所得税法施行令275条)。
地主ご本人が株主でなくても、株主の親族であれば対象になります。
「不当に」は、経済的合理性を欠くかどうかで判断するとした裁決があります(平成23年7月8日裁決)。
規定の全体像は、同族会社の行為計算の否認の記事で解説しています。
ポイント
平成元年7月5日裁決は、不当に減少させるかの判断で、次の2つを考慮しないとしました。役員として受け取った報酬の額と、会社の法人税の額です。会社を作らなかった場合の税額と比べる必要もないとされています(平成14年4月24日裁決)。
公表裁決に見る失敗の型は「実態なし」「高すぎる」「低すぎる」です
国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の公表裁決から、3つの型を紹介します。
- ①管理の実態がない(平成18年6月13日裁決) ― 清掃などは別の管理会社に委託済みでした。看板もその会社の名前で、同族会社の側には管理の記録がありません。必要経費になる管理料は零円とされました。
- ②管理料が高すぎる(平成4年11月19日裁決) ― 同業者の管理料割合で適正額が出されました。その額で計算した税額と申告額が著しくかい離し、157条の適用が相当とされました。
- ③借上げ賃料が低すぎる(平成6年6月24日裁決) ― 会社は建物を又貸ししていました。地主への賃料は、又貸し収入の半額以下か零円でした。会社に残る額の割合は、同業者の平均管理料割合をはるかに超えていました。157条による更正は適法とされました。
反対に、管理料が必要経費と認められた裁決もあります(平成25年3月4日裁決)。
会社が設備の点検や修理の発注を行い、業者と連絡を取っていた事例です。
取締役だった妻の業務ノートも、管理の実態を示す証拠になりました。
実態の判断では、業務の必要性と、会社がしたことを示す客観的な証拠が見られました。

否認されると、地主の不動産所得が増えます
影響の大きさを、一定の前提を置いた数字で確かめます。
計算例
例1:管理委託方式で、年間家賃12,000,000円から管理料2,400,000円を払った場合
適正な管理料(仮定) 900,000円 必要経費にならない額 2,400,000円 - 900,000円 = 1,500,000円 管理の実態がないとされると 2,400,000円の全額が必要経費になりません例2:サブリース方式で、又貸し収入12,000,000円、借上げ賃料6,000,000円の場合
適正な管理料(仮定) 900,000円 適正な借上げ賃料 12,000,000円 - 900,000円 = 11,100,000円 地主の収入に加わる額 11,100,000円 - 6,000,000円 = 5,100,000円金額は一定の前提を置いた目安です。900,000円は仮定で、相場を示す数字ではありません。
例2は、会社が負担した実費や保証金がない前提です。
会社が負担した管理費の実費を差し引いて比べた裁決があります(平成6年6月24日裁決)。
保証金の運用益に当たる額を差し引いた裁決もあります(平成19年6月19日裁決)。
家族役員の報酬と、会社側のコストも見込みます
会社から家族へ払う役員報酬にも、法人税の関門があります。
役員報酬のうち不相当に高額な部分は、損金になりません(法人税法34条2項)。
高すぎるかは、職務の内容などに照らして判断します(法人税法施行令70条1号イ)。
働いていない家族役員への報酬は、高すぎるとされるおそれがあります。
判定の詳しい考え方は、家族を非常勤役員にした報酬の記事で解説しています。
家族役員が実際に管理を担い、その記録を残すことが、管理料と報酬の説明の土台になります。
会社側では、事業年度ごとに決算と申告が必要です(法人税法74条1項)。会社の所得には法人税がかかります(法人税法5条)。
法人住民税の均等割の額は、所得ではなく資本金等の額などで決まります。
注意
資本金等の額が1,000万円以下で、従業者が50人以下の会社の均等割です。標準税率で、道府県民税が年2万円、市町村民税が年5万円です(地方税法52条1項・312条1項)。会社に所得が出ない年もかかります。自治体によって税率が異なることがあります。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
管理会社を使う前に、ご自身で確かめられるのは次の4点です。
- 会社が行う業務を、物件ごとに書き出す(清掃・点検・入居者対応・修繕の手配など)
- 別の管理会社に委託している業務と、重なっていないかを確かめる
- 業者への連絡・発注・支払いを、会社の名前で行った記録を残す
- 家族役員が担当した業務を、日付と内容で記録する
記録は後からまとめて作るのではなく、その都度残します。
適正な管理料や借上げ賃料がいくらかは、同業者との比較が要る個別判断です。
同業者の選び方などに誤りがあり、処分が一部取り消された例もあります(平成12年1月31日裁決)。
方式の選び方や、今の契約を見直す時期も、物件とご家族の事情で判断が分かれます。

税理士が入ると変わるのは、金額の根拠と記録の残し方です
小松公認会計士・税理士事務所では、管理会社を使う前から次の作業を行います。
ひとつめは、お金の流れの確認です。契約の方式と、別の管理会社との業務の重なりを見ます。
ふたつめは、管理料・借上げ賃料の水準の検討です。業務の中身と並べて説明できる額を探ります。
みっつめは、業務記録の様式づくりです。点検・発注・入居者対応を、会社の名前で残す形にします。
よっつめは、家族役員の職務と報酬の整理です。議事録と支給の形もそろえます。
いつつめは、地主様の確定申告と会社の決算申告を、同じ前提でそろえて作ることです。
むっつめは、税務調査の想定問答の準備です。管理の記録と金額の根拠を、事前にまとめます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 管理会社に払う管理料は、家賃の何%までなら認められますか?
所得税法157条や37条は、管理料の割合を定めていません。裁決では、同業者の管理料の割合などから算定した適正額と比べています(平成4年11月19日裁決など)。管理の実態がないとして、必要経費になる管理料を零円とした裁決もあります(平成18年6月13日裁決)。
Q2. サブリースにすれば、管理料の問題はなくなりますか?
なくなりません。裁決は、又貸し収入から会社の実費と地主への賃料を引いた額を、管理料に当たる額とみています。その額を同業者と比べました(平成6年6月24日裁決など)。借上げ賃料が低すぎると、所得税法157条で地主の収入が計算し直されることがあります。
Q3. 地主本人が管理会社の株主でなければ、157条の対象外ですか?
対象外とは限りません。所得税法157条1項は、株主である個人のほか、これと特殊の関係のある個人も対象にしています。株主の親族は、この特殊の関係のある個人に当たります(所得税法施行令275条1号)。奥様やお子様が株主の会社でも同じです。
Q4. 会社で法人税を払っていれば、否認されないのではありませんか?
そうとは限りません。平成元年7月5日裁決は、不当に減少させるかの判断で、次の2つを考慮しないとしました。役員として受け取った報酬の額と、会社の法人税の額です。平成14年4月24日裁決も、役員報酬を考慮する必要はないとしています。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。扱った条文は、所得税法26条2項・28条1項・37条1項・157条1項と所得税法施行令275条です。法人税法2条10号・5条・34条2項・74条1項、法人税法施行令70条1号イも扱っています。地方税法1条1項5号・52条1項・312条1項も扱っています。紹介した国税不服審判所の公表裁決は、次の9件です。平成元年7月5日・平成4年11月19日・平成6年6月24日の各裁決です。平成12年1月31日・平成14年4月24日・平成18年6月13日の各裁決です。平成19年6月19日・平成23年7月8日・平成25年3月4日の各裁決です。建物を会社へ売る方式と譲渡所得、適正な管理料・借上げ賃料の算定方法の細目は扱っていません。否認された場合の会社側の処理と、役員給与の細目(定期同額給与や形式基準など)も扱っていません。法人税などの税率と税額(地方法人税・法人事業税・法人住民税法人税割を含みます)は扱っていません。防衛特別法人税と均等割の超過課税も扱っていません。給与所得控除額(令和8年度改正による見直しを含みます)も扱っていません。消費税・相続税・贈与税、社会保険、加算税・延滞税も扱っていません。紹介した裁決は、それぞれの事実関係に基づく判断です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、適正な管理料の額は仮定です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(26条・37条・157条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(275条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- e-Gov法令検索「地方税法」(52条・312条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「不動産管理料」https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0402090000.html
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨「同族会社の行為又は計算の否認」https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/1001000000.html
管理会社へ払う額の根拠を、契約の前に確かめませんか
家族が役員の管理会社への管理料は、会社が実際に管理をしていることが前提です。管理料や借上げ賃料の水準も、根拠を説明できる形にしておきます。公表裁決では、管理の必要性も記録も認められず、必要経費になる管理料が零円とされた例があります。同業者の水準と比べて、所得税法157条が適用された例もあります。代表税理士が、お金の流れと契約の確認から、管理料・借上げ賃料の水準の検討まで行います。業務記録の整え方、家族役員の報酬の整理、地主様の確定申告と会社の決算申告まで通して対応します。管理会社の設立や契約の見直しの前にご相談ください。
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