この記事のポイント
- 区分は契約書の名前ではなく雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価かで決まります
- 明らかでないときは消費税法基本通達1-1-1の4つの事項を総合勘案して判定します
- 給与とされると仕入税額控除が否認され、源泉所得税は会社から徴収されます
- 不納付加算税は10%、仮装があれば重加算税35%が加わります
まず結論:契約書の名前ではなく、働き方の実態で決まります
外注費として払ったつもりの支払が、調査で給与だと指摘されることがあります。
区分は契約書の名前ではなく、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価かどうかで決まります。
給与とされると、消費税の仕入税額控除が受けられなくなります。
源泉徴収していなかった所得税も、会社が徴収されます。
契約書を作っただけでは外注費になりません。契約書は判定材料の一つです。

区分の物差し ― 消費税法基本通達1-1-1が挙げる4つの事項
全業種に共通する物差しは、消費税法基本通達1-1-1です。
同通達は、事業者の意味をこう説明しています。
事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。
(消費税法基本通達1-1-1)
自己の計算とは、自分の危険と負担で仕事をすることです。
区分が明らかでないときは、次の4つを総合勘案して判定します。
(1)その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2)役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4)役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
注意
通達は「総合勘案して判定する」としか定めていません。「4つのうち3つで外注費」という点数表はありません。
大工、左官、とび職等には5つの事項を挙げた通達があります
所得税には、大工、左官、とび職等だけを対象にした通達があります。
課個5-5「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」(平成21年12月17日)です。
対象は建設業全般ではありません。通達1は、日本標準職業分類(総務省)の次の職業とこれらに類する者と定義しています。
「大工」「左官」「とび職」「窯業・土石製品製造従事者」「板金従事者」「屋根ふき従事者」「生産関連作業従事者」「植木職、造園師」「畳職」の9つです。
総合勘案する事項は、次の5つです。
(1)他人が代替して業務を遂行し、又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)作業時間を指定されるなど時間的な拘束を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について指揮監督を受けるかどうか。
(4)完成品が不可抗力で滅失した場合に、既に遂行した業務の報酬を権利として請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか。
(2)(3)(5)には、当然の拘束・指揮監督や軽微な材料・工具を除く括弧書きがあります。
1-1-1は消費税で全業種、課個5-5は所得税で上の職業です。混ぜて1つの表にしないでください。

誤るとどうなるか① 源泉徴収 ― 会社が納税告知を受けます
給与とされると、徴収していなかった所得税を会社が納めることになります。
所得税法183条1項は、給与等の支払者に、支払の際の徴収と翌月10日までの納付を義務づけています。
納付すべき者が納付しなかったときは、税務署長がその者から徴収します(所得税法221条1項)。
会社は、その所得税相当額をその後の支払から控除し、又は請求できます(所得税法222条)。
| 場面 | 根拠 | 率 |
|---|---|---|
| 源泉所得税を法定納期限までに完納しなかった | 国税通則法67条1項 | 不納付加算税10% |
| 告知を予知せず法定納期限後に自主納付した | 国税通則法67条2項 | 不納付加算税5% |
| 隠蔽又は仮装があった | 国税通則法68条3項 | 重加算税35% |
| 消費税の修正申告・更正で税額が増えた | 国税通則法65条1項 | 過少申告加算税10%(予知しない修正申告は5%) |
完納しないときは延滞税もかかります(国税通則法60条1項5号)。
なお、外注費であっても源泉徴収が必要な支払があります。
所得税法204条1項のデザインの報酬や、弁護士・税理士等への報酬です。
税率は10%、同一人に一回100万円を超える部分は20%です(所得税法205条1号)。
誤るとどうなるか② 消費税 ― その支払は課税仕入れでなくなります
給与とされた支払は、課税仕入れから外れます。
消費税法2条1項12号は、課税仕入れの定義から「給与等を対価とする役務の提供」を除いています。
消費税法30条1項が控除するのは、課税仕入れに係る消費税額です。
課税仕入れでなければ、控除する消費税額が生じません。
タックスアンサーNo.6451も、課税仕入れの例に外注費を挙げ、給与等は含まれないとしています。
加工賃や人材派遣料は労働やサービスの提供の対価なので、課税仕入れになります(No.6451)。
グループ会社への出向と給与負担金は別の扱いです。
計算例
例:外注費として税込1,200万円を支払い全額を課税仕入れとしていたが、調査で給与等と認定された
控除できなくなる消費税及び地方消費税 12,000,000円 × 10 ÷ 110 = 1,090,909円(1円未満切捨て) うち国税である消費税 12,000,000円 × 7.8 ÷ 110 = 850,909円(消費税法29条1号の7.8%) 差額 1,090,909円 - 850,909円 = 240,000円一定の前提を置いた目安です。実際の金額は取引の内容で変わります。
いつの事業年度の費用にするかは、未払計上と債務確定基準の論点です。

実際に否認された3つの失敗パターン
国税不服審判所の公表裁決を3つ見ます。
①店の設備で、店の時間割どおりに働いていた。
平成12年2月29日裁決(裁決事例集No.59-372頁)の事例です。
マッサージ師への外注費が給与等とされ、消費税と源泉所得税の処分を受けました。
契約書に営業時間、出勤・終了時刻、制服として貸与するポロシャツ、外出禁止がありました。
店舗も設備備品も店のもので、顧客からのクレームの責任も店側でした。
②機械も器具も会社持ちで、勤務時間内に指示を受けていた。
平成11年11月4日裁決(裁決事例集No.58-265頁)の事例です。
会社が労災保険に加入し給付手続きを行っていた点も挙げられ、雇用関係が認められました。
③給与を外注費であるかのように仮装していた。
平成21年1月19日裁決(裁決事例集No.77-207頁)の事例です。
従業員の一部への給与を、事業実態のない会社等への外注費であるかのように仮装していました。
源泉所得税の納税告知処分と、重加算税の賦課決定処分を受けています。
注意
いずれも個々の事実を総合勘案した結果です。「制服を貸せば給与」と、単独の要素で決まるわけではありません。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身でできるのは、判断材料となる事実を集めるところまでです。
- 契約書・注文書・請求書がそろっているかを確認します。
- 材料と用具を、どちらが用意しているかを書き出します。
- 作業時間の指定や、現場での指示が実際にあるかを確認します。
- その人が休んだとき、代わりの人を立てられるかを確認します。
ここから先は個別判断です。何個当てはまれば外注費という線はありません。
家族に払う場合は判定の軸が違います。家族に払う給与の取扱いをご覧ください。
社会保険の取扱いは税務とは別です。社会保険労務士・年金事務所にご確認ください。

税理士が入ると何が変わるか
変わるのは、支払う前に区分の判断が終わることです。
ポイント
①支払先ごとに働き方を聞き取り、1-1-1の4つの事項に当てはめます
②大工、左官、とび職等は課個5-5の5つの事項で別に検討します
③契約書・請求書・作業指示の記録が実態と合っているかを突合します
④所得税法204条1項に当たる報酬を洗い出し、源泉徴収の要否を確認します
⑤課税仕入れに入れる支払を区分し、帳簿等の保存状況を確認します
小松公認会計士・税理士事務所では、区分の根拠を支払先ごとに書き残しています。
支払ってしまうと、源泉所得税を本人から回収できないことがあります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 業務委託契約書を結んでいれば、外注費として処理してよいですか?
契約書だけでは決まりません。消費税法基本通達1-1-1は、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかで区分するとしています。契約書は判定材料の一つで、実際の働き方が雇用に近ければ給与と扱われます。
Q2. 4つの事項のうち、いくつ当てはまれば外注費と言えますか?
個数の基準はありません。消費税法基本通達1-1-1も課個5-5も、総合勘案して判定するとしか定めていません。点数表のような一律の線引きは通達にないため、支払先ごとの事実関係で判断します。
Q3. 外注費なら源泉徴収はしなくてよいのですか?
そうとは限りません。所得税法204条1項が挙げるデザインの報酬や、弁護士・税理士等への報酬は源泉徴収の対象です。税率は10%で、同一人に一回に支払う金額が100万円を超える部分は20%です(所得税法205条1号)。
Q4. 人材派遣会社に払う派遣料も、給与として扱われますか?
扱われません。タックスアンサーNo.6451は、加工賃や人材派遣料のような労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されるとし、委託料などは課税仕入れになるとしています。給与等の支払とは区別されます。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。消費税法基本通達1-1-1、課個5-5「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」(平成21年12月17日)、消費税法2条1項12号・29条1号・30条1項、所得税法28条1項・183条1項・204条1項・205条1号・221条1項・222条、国税通則法60条1項5号・65条1項・67条1項2項・68条3項、国税庁タックスアンサーNo.6451、国税不服審判所 平成11年11月4日裁決、平成12年2月29日裁決、平成21年1月19日裁決の内容を扱っています。給与所得の源泉徴収税額表による具体的な税額、復興特別所得税の税率、延滞税の実際の割合、加算税の端数処理、地方消費税の税率、インボイス制度に関する取扱い、社会保険・労働保険の取扱い、出向と給与負担金、家族・親族への支払、役員給与の損金算入、未払計上と債務確定基準、出張旅費の取扱いは扱っていません。記事中の計算例は制度の理解のための仮の設例であり、一定の前提を置いた目安です。実際の税額を示すものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 消費税法基本通達 1-1-1(個人事業者と給与所得者の区分)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm
- 国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」(課個5-5・平成21年12月17日)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/091217/01.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.6451「仕入税額控除の対象となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm
- 国税不服審判所 平成12年2月29日裁決(裁決事例集No.59-372頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/59/30/index.html
- 国税不服審判所 平成21年1月19日裁決(裁決事例集No.77-207頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/77/14/index.html
外注費の区分は、最初の1件を払う前にご相談ください
外注費と給与の区分は、契約書の名前ではなく働き方の実態で決まります。給与とされると、消費税の仕入税額控除が受けられなくなり、源泉徴収していなかった所得税は会社が徴収されます。不納付加算税や重加算税、延滞税も加わります。支払先ごとの実態の聞き取り、通達の事項への当てはめ、契約書と請求書と作業実態の突合、源泉徴収の要否の確認まで、代表税理士が通して対応します。
無料相談を申し込む 法人顧問サービスの詳細を見る 約60秒で料金を自動見積り