法人税・節税

会社の外貨建て取引の円換算と為替差損益
TTMの原則と期末換算の届出

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 外貨建て取引は取引日のTTMで換算が原則。継続適用を条件にTTB・TTSも使えます
  • 期末に残る外貨は区分ごとに換算。届出がなければ短期の債権債務・外貨預金は期末の相場です
  • 為替予約は締結の日に帳簿書類へ記載すれば予約の円の金額で換算でき、差額は原則として期ごとに配分します
  • 消費税の仕入れは計上した日の円の金額のままで、為替差損益は消費税の対象外です

まず結論:外貨建て取引は、取引の日と期末に円へ換算します

取引の日には、原則としてTTM(銀行の売りと買いの相場の真ん中の値)で換算します。

期末には、残る外貨建ての売掛金や外貨預金を区分ごとの方法で換算します。

入金や支払の日の相場とのずれは、為替差損益(為替の動きで出る損益)になります。

期末の換算の方法は、届出をしなければ法令が決めた方法になります。

海外出張の旅費の扱いは、海外視察旅行の記事をご覧ください。

為替が動くと、同じ外貨でも円の金額が変わります
為替が動くと、同じ外貨でも円の金額が変わります

取引の日は、原則としてTTMで換算します

外貨建取引は、取引を計上すべき日のTTMで換算するのが原則です(法人税基本通達13の2-1-2)。

外貨建取引とは、支払が外国の通貨で行われる売買や貸し借りなどです(法人税法61条の8第1項)。

支払を円で行う取引は、外貨表示でも外貨建取引ではありません(法人税基本通達13の2-1-1)。

ただし書もあります。

ただし、継続適用を条件として、売上その他の収益又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の費用(原価及び損失を含む。以下この章において同じ。)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。

(法人税基本通達13の2-1-2)

電信買相場がTTB、電信売相場がTTSで、原則は主な取引銀行の相場です(同通達の注1)。

ポイント

継続適用を条件に、取引に応じた合理的な前月末や前月の平均の相場なども使えます(同通達の注2)。

取引日は計上すべき日なので、売上なら売上の計上時期で決まります。

TTB・TTSや前月末の相場を使うなら、同じ方法を続けることが条件です。

期末に残る外貨は、区分ごとに換算の方法が決まります

期末の換算の方法は、区分と届出で決まります(法人税法61条の9第1項、同法施行令122条の7)。

発生時換算法は取引の日の相場のまま、期末時換算法は期末の相場で換算し直す方法です。

期末の相場は、原則として期末日のTTMです(法人税基本通達13の2-2-5)。

期末に残るもの選べる方法届出がないとき
外貨建ての売掛金・買掛金・貸付金・借入金など(決済の期限が期末の翌日から1年以内)発生時・期末時期末時換算法
同上(期限が1年超)発生時・期末時発生時換算法
外貨預金(満期日が期末の翌日から1年以内)発生時・期末時期末時換算法
同上(満期が1年超)発生時・期末時発生時換算法
外国の通貨(現金)期末時だけ期末時換算法

期末時換算法の差額は、その期の益金か損金です(法人税法61条の9第2項)。

益金・損金は、税金の計算上の収益・費用です。

翌期には、同じ金額を戻し入れます(同法施行令122条の8第1項)。

注意

届出は、通貨の種類と区分ごとに行います(同令122条の4)。期限は、同じ通貨・区分のものを初めて取得した事業年度の確定申告書の提出期限です(同令122条の5)。仮決算の中間申告書を出すときは、その提出期限です。

方法を変えるには、変えたい事業年度が始まる日の前日までに承認の申請が要ります。

届出をしていない会社も同じです(同令122条の6)。

換算の方法は、届出書で選びます
換算の方法は、届出書で選びます

計算例:外貨建ての売掛金は、入金前でも期末に差益や差損が出ます

届出がない短期の売掛金は、入金前でも期末の相場で差益や差損が出ます。

計算例

例:3月決算の会社が2月10日に10,000ドルで販売し、5月31日に入金。届出なし

取引の日(TTM 145円) 10,000ドル × 145円 = 1,450,000円(売上) 期末(TTM 150円) 10,000ドル × 150円 = 1,500,000円 当期の為替差益 1,500,000円 - 1,450,000円 = 50,000円 翌期 期首に50,000円を戻し、入金1,470,000円で差益20,000円 翌期の差し引き -50,000円 + 20,000円 = -30,000円 2期の合計 50,000円 - 30,000円 = 20,000円

入金の期限が期末の翌日から1年以内なので、短期に当たります。

届出で発生時換算法を選んでいれば、当期は0円、翌期に20,000円の差益です。

2期の合計は同じで、所得に入る期がずれます。

金額は一定の前提を置いた目安です。

為替予約をしたら、予約で決めた円の金額で換算できます

予約で円の金額を確定させたときは、その金額で換算できます(法人税法61条の8第2項)。

為替予約は、将来の外貨と円の交換相場を、前もって決める契約です。

条件は、予約の締結の日に、その旨を帳簿書類に記載することです。

取引の日の相場との差(為替予約差額)は、決済までの各期に配分します(同法61条の10第1項)。

短期のものは、その期に一括で計上することもできます(同条3項)。

届出は、その期の確定申告書の提出期限などまでです(同法施行令122条の10)。

消費税は、計上した日の円の金額で計算します

外貨建ての売上げの消費税は、法人税で計上する円の金額によります(消費税法基本通達10-1-7)。

課税仕入れ(消費税がかかる仕入れ)は、通達がこう定めます。

当該課税仕入れに係る支払対価の額は課税仕入れを行った時において当該課税仕入れの支払対価の額として計上した額となるのであるから留意する。

(消費税法基本通達11-4-4)

決済で出た為替差損益は、消費税の対象外です(同通達10-1-7の注3)。

例として、200ドルの課税仕入れを1ドル150円で30,000円と計上したとします。

1ドル152円で30,400円を払っても、課税仕入れは30,000円のままです。差額400円は為替差損です(一定の前提を置いた目安)。

本則課税(実額で計算する方法)では、輸入品に課された消費税額が控除の対象です(消費税法30条1項)。

令和10年4月1日以後は、国外からの通信販売で届く1万円(税抜き)以下の資産の扱いが変わります。

補足

海外のクラウドサービスは、事業者向けかどうかで扱いが分かれます(タックスアンサーNo.6118)。広く消費者も申し込めるものを本則課税で控除するには、原則、登録した国外事業者のインボイスが要ります。例外は少額特例です(国税庁Q&A)。一定規模以下の事業者は、令和11年9月30日までの税込1万円未満の仕入れを帳簿のみで控除できます。

消費税は、計上した日の円の金額で計算します
消費税は、計上した日の円の金額で計算します

こう処理すると、法令や通達の扱いと食い違います

次の5つは、法令や通達と食い違う処理の例です。

  • 短期の外貨建ての売掛金を、届出なしに据え置く ― 法令の方法は期末時換算法です。差額は益金・損金に入れます(法人税基本通達13の2-2-11)。
  • 前受金・前渡金を期末に換算し直す ― 資産の代金に充てるものは換算の対象外です(同13の2-2-1)。
  • 設備代の外貨建て未払金の換算差益で、取得価額を減らす ― 減額はできません(同13の2-1-9)。
  • 予約の締結日に帳簿書類へ記載していない ― 予約の金額を使う条件を欠きます(法人税法61条の8第2項)。
  • 為替差損益を消費税の課税対象に含める ― 対価に含まれません(消費税法基本通達10-1-7の注3)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で整えられるのは、次の4点です。

  1. 外貨建ての取引を、通貨・相手先・取引日・決済の期限ごとに一覧にする
  2. 取引日の相場を、主な取引銀行の公表値で記録する
  3. 期末に残る外貨建ての債権債務や外貨預金を、期限で短期と長期に分ける
  4. 換算の方法の届出書と、為替予約の契約書の控えを探す

どの換算の方法を選ぶかは、所得に入る期が変わる個別判断です。

外貨預金の区分、為替予約差額の配分、海外のサービスの消費税も個別判断です。

取引の一覧と届出の控えを確かめます
取引の一覧と届出の控えを確かめます

税理士が入ると変わるのは、換算の決まりと期末の処理です

小松公認会計士・税理士事務所では、決算で次の作業を行います。

ひとつめは、取引と残高の通貨別・期限別の一覧表の作成です。

ふたつめは、換算の方法ごとの所得の試算と、届出書・承認申請書の作成です。

みっつめは、使う相場(TTM・TTB・TTSなど)の社内の決まりの文書化です。

よっつめは、期末の換算と翌期の戻し入れの仕訳、為替予約差額の配分の計算です。

いつつめは、輸入や海外のサービスの消費税の区分の確認と、申告書への反映です。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 外貨建ての取引は、どのレートで円に換算すればよいですか?

原則は、取引を計上すべき日のTTMです(法人税基本通達13の2-1-2)。継続適用を条件に、収益・資産はTTB、費用・負債はTTSも使えます。取引に応じた合理的な前月末や前月の平均の相場なども、継続適用を条件に使えます(同通達の注2)。

Q2. 期末に残った外貨建ての売掛金は、換算し直すのですか?

届出がない会社では、決済の期限が期末の翌日から1年以内の短期の売掛金は期末時換算法です。換算の差額は益金・損金になります。届出をすれば、発生時換算法も選べます(法人税法施行令122条の5・122条の7)。期限は、初めて取得した期の確定申告書の提出期限などです。

Q3. 為替予約をしたら、どのレートで換算しますか?

締結の日にその旨を帳簿書類に記載すれば、予約の円の金額で換算します(法人税法61条の8第2項)。取引の日の相場との差は、為替予約差額として各期に配分します。短期のものは、届出により一括で計上することもできます(同法61条の10)。

Q4. 外貨建ての仕入れで為替差損が出たら、消費税の仕入れの額も直しますか?

直しません。課税仕入れの額は、課税仕入れを行った時に計上した円の金額のままです(消費税法基本通達11-4-4)。為替差損益は、課税仕入れの支払対価の額に含まれません(同通達10-1-7の注3)。海外のサービスは、まず控除の対象になるかを確かめます。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法61条の8第1項・2項、61条の9第1項・2項、61条の10第1項・3項、法人税法施行令122条の4・122条の5・122条の6・122条の7・122条の8第1項・122条の10、法人税基本通達13の2-1-1・13の2-1-2・13の2-1-9・13の2-2-1・13の2-2-5・13の2-2-11、消費税法30条1項、消費税法基本通達10-1-7・11-4-4、タックスアンサーNo.6325「外貨建取引の取扱い」・No.6118「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係」、国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(令和8年6月改訂)、国税庁「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税関係について」の内容を扱っています。外貨建有価証券の換算、為替相場が著しく変動した場合の換算(法人税法施行令122条の3)、為替予約差額の配分額の具体的な計算、帳簿書類への記載事項の細目(法人税法施行規則27条の11)、通貨スワップ・繰延ヘッジ処理、多通貨会計、海外支店の財務諸表の換算、組織再編成に伴う引継ぎ、期限を過ぎた外貨建債権の区分、満期の定めがない外貨預金の区分、クレジットカードで外貨建ての支払をした場合の換算、輸入の消費税の課税標準の計算と控除に要る書類、令和10年4月1日以後の特定少額資産の譲渡に係る登録制度・輸入免税の要件・プラットフォーム課税、事業者向けの電気通信利用役務の提供に係るリバースチャージ方式の申告、少額特例の対象となる事業者の要件の細目、簡易課税制度などを選んでいる場合の消費税の計算、会計基準上の処理、所得税(個人事業者)の外貨建取引、地方税の扱いは扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の相場や決済の条件によって金額は変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

外貨建ての取引の換算と届出を、決算の前に確かめませんか

外貨建ての取引は、原則として取引日のTTMで換算します。期末に残る売掛金や外貨預金は、区分と届出の有無で換算の方法が変わります。届出がなければ、短期のものは期末の相場で換算します。為替予約は、締結の日に帳簿書類へ記載したときに予約の金額で換算できます。代表税理士が、取引と残高の一覧表、換算の方法の比較と届出、相場の決まりの文書化まで対応します。期末の仕訳と消費税の区分の確認も、通して行います。外貨建ての取引が始まった期の決算の前にご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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