この記事のポイント
- 無償減資では法人税法上の資本金等の額は変わりません
- 均等割は、減資の剰余金を欠損てん補に充てた額を一定の範囲で差し引きます
- 軽減税率などは期末の資本金1億円以下で判定します(大法人の100%子会社などを除く)
- 有償減資の払戻しはみなし配当と株式の譲渡に分けて計算します
まず結論:減資で税金が変わるのは3か所です
減資とは、会社の資本金の額を減らすことです。株主にお金を払わない無償減資と、払う有償減資があります。
- 無償減資では、法人税法上の「資本金等の額」(株主から出資を受けた額)が変わりません。住民税の均等割(所得に関係ない定額の税)が下がらないことがあります。
- 資本金が1億円以下になると、軽減税率などの判定が変わります。軽減税率は期末の資本金で判定します。
- 有償減資では、株主の側でみなし配当(配当とみなす額)と株式の譲渡損益を計算します。
登記上の資本金と、税金の計算に使う「資本金等の額」は別の数字です。

無償減資と有償減資の違いは、株主にお金を払うかどうかです
減らした資本金は、原則としてその他資本剰余金に移ります(会社計算規則27条1項1号)。有償減資は、ここから株主にお金を払います(会社法453条)。
| 項目 | 無償減資 | 有償減資 |
|---|---|---|
| 株主へのお金 | 払わない | 払う |
| 法人税法上の資本金等の額 | 変わらない | 払戻しに対応する部分が減る |
会社法の手続は、次の流れです。
- 株主総会で、減らす額と効力発生日を決めます。原則は特別決議です(会社法447条1項・309条2項9号)。
- 官報で公告し、知れている債権者に個別に催告します。異議を述べる期間は1か月以上です(449条2項)。
- 資本金の額は登記事項です。2週間以内に変更の登記をします(911条3項5号・915条1項)。
債権者保護の手続が終わらないと、効力発生日が来ても減資の効力は生じません(449条6項)。

無償減資だけでは、法人税法上の資本金等の額は変わりません
無償減資で資本金が減っても、法人税法上の資本金等の額は同じ額のままです。
資本金等の額は、株主から出資を受けた金額として政令で定める金額です(法人税法2条16号)。政令は、次の額を加算します。
資本金の額又は出資金の額を減少した場合(第十四号に規定する場合を除く。)のその減少した金額に相当する金額
(法人税法施行令8条1項12号)
法人住民税の均等割は、この額をもとにした区分で決まります。
| 資本金等の額 | 道府県民税 | 市町村民税(従業者50人以下) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 2万円 | 5万円 |
| 1,000万円超1億円以下 | 5万円 | 13万円 |
| 1億円超10億円以下 | 13万円 | 16万円 |
年額の標準税率です(地方税法52条1項・312条1項)。区分は事業年度の末日現在の額で決めます(23条1項4号の2イ・52条2項)。
税率は条例で定め、東京都の特別区では都がまとめて課税します(3条1項・734条)。
欠損てん補に充てた額は、均等割の判定で差し引きます
減資で生じた剰余金を欠損てん補(赤字の穴埋め)に充てると、その額を差し引いて判定します。
根拠は地方税法23条1項4号の2イ(3)などで、差し引ける額には次の2つの枠があります。
- てん補に充てた日以前1年間に、減資などで剰余金に計上した額が対象です。
- その日のその他利益剰余金のマイナス額が上限です。
(地方税法施行規則1条の9の6・9条の19)
判定に使う額は、資本金と資本準備金の合計額を下回りません(52条4項・312条6項)。
計算例
例:資本金1億5,000万円、その他利益剰余金△8,000万円の会社が7,000万円を無償減資
減資前 13万円+16万円=29万円 減資だけ 資本金等の額は変わらず → 29万円 欠損てん補後 1億5,000万円-7,000万円=8,000万円 → 5万円+13万円=18万円 年額の差 11万円減資とてん補は期末前に終えたものとします。資本金等の額=資本金・資本準備金なし・従業者50人以下・標準税率・12か月という前提の目安です。
軽減税率など4つの特例は、期末の資本金の額で判定します
次の4つの特例は、事業年度終了の時(日)の資本金の額で判定します。
| 特例 | 判定の時点 | 根拠 |
|---|---|---|
| 軽減税率(年800万円以下の所得) | 事業年度終了の時 | 法人税法66条2項・措置法42条の3の2 |
| 交際費の定額控除(年800万円) | 適用年度終了の日 | 措置法61条の4第2項 |
| 繰越欠損金を所得の全額まで控除 | 事業年度終了の時 | 法人税法57条11項1号 |
| 外形標準課税がかからない | 事業年度終了の日 | 地方税法72条の2第1項1号ロ・2項1号 |
期末までに減資の効力が生じれば、その期の判定に反映されます。設備の特別償却などは取得日と事業供用日で判定します(措置法通達42の6-1の2)。
資本金5億円以上の法人の100%子会社などは、法人税の3つの特例を使えません。根拠は法人税法66条5項などです。中小企業の特例が使えない会社の記事もご覧ください。
注意
前事業年度に外形標準課税の対象で、期末の資本金と資本剰余金の合計が10億円超の会社は対象のままです。令和7年4月1日以後に開始する事業年度からです(地方税法附則8条の3の3)。払込資本の大きい法人の100%子会社にも、別の規定があります(同法72条の2第1項1号ロ)。
有償減資では、株主の側でみなし配当と譲渡損益を計算します
有償減資で払い戻したお金は、みなし配当と株式の譲渡収入に分けて課税されます。
資本剰余金を減らす配当は、税法上の「資本の払戻し」です(所得税法25条1項4号)。
払戻しのうち、資本金等の額に対応する部分を超える額がみなし配当(配当所得)です。残りは株式の譲渡収入とみなされます(措置法37条の10第3項4号・措置法通達37の10-3)。
対応額は、直前の資本金等の額×払戻等割合を持株数で按分した額です(所得税法施行令61条2項4号イ)。割合は、減らした資本剰余金を前期末の純資産(帳簿価額)で割ります。小数点以下3位未満は切り上げます。
計算例
例:資本金3,000万円、前期末の純資産1億円の会社が、全株を持つ社長に1,000万円を払い戻す
払戻等割合 1,000万円÷1億円=0.100 対応する部分 3,000万円×0.100=300万円 みなし配当 1,000万円-300万円=700万円 譲渡収入 1,000万円-700万円=300万円 取得価額 3,000万円×0.100=300万円 → 譲渡損益0円社長が設立時に3,000万円を払い込み、ほかに資本金等の額などの増減がない前提の目安です。
取得価額が2,000万円の株主なら、譲渡益は100万円(300万円-200万円)です。

見落とすと結果が変わるのは、日付と金額の詰めです
次の4つは、見落とすと結果が変わります。
- 無償減資だけで均等割が下がると考える ― 例の会社は29万円のままです。
- 欠損てん補を後回しにする ― 剰余金の計上から1年を超えて充てた分は、差し引けません。
- 効力が期末に間に合わない ― 異議の期間は1か月以上です。期末に効力がなければ、減資前の資本金で判定します。
- 源泉徴収と通知を落とす ― 個人株主へのみなし配当は、支払時に源泉徴収をします(所得税法181条1項)。納付は翌月10日までです。払戻等割合は株主に通知します(所得税法施行令114条2項)。
ポイント
期末の日から逆算して、総会・公告・催告・効力発生日の順に日程を組みます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
次の4点は、ご自身で確かめられます。
- 決算書で、資本金・資本準備金・その他利益剰余金の額を確かめる
- 法人税の申告書の別表五(一)で、資本金等の額を確かめる
- 前期の法人住民税の申告書で、均等割の額を確かめる
- 事業年度の末日と、減資の効力発生日の候補を並べる
欠損てん補の額、払戻等割合、外形標準課税の判定は、数字を並べて決める個別判断です。

税理士が入ると変わるのは、効力発生日と金額の決め方です
小松公認会計士・税理士事務所では、減資の決議の前に次の作業を行います。
- 別表五(一)と決算書を突き合わせ、資本金等の額を確かめます。
- 均等割・法人税の特例・外形標準課税を、減資の前後で試算します。
- 欠損てん補の額を、1年以内の計上とマイナス額の上限に照らして決めます。
- 債権者保護の手続の期間と期末から逆算し、効力発生日の候補を示します。
- 有償減資では、払戻等割合、みなし配当、株主ごとの譲渡損益を計算します。
- 減資の結果を、別表五(一)と住民税の申告書に反映します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 無償減資をすれば、法人住民税の均等割は下がりますか?
資本金等の額で区分が決まる会社は、無償減資だけでは下がりません。資本金等の額は、減らした資本金を加算して計算するためです(法人税法施行令8条1項12号)。欠損てん補に充てた額は、一定の範囲で差し引きます(地方税法23条1項4号の2イ(3))。
Q2. 欠損てん補に充てれば、いくらでも差し引けますか?
枠があります。てん補に充てた日以前1年間に、減資などで剰余金に計上した額が対象です。その日のその他利益剰余金のマイナス額が上限です(地方税法施行規則1条の9の6)。判定に使う額は、資本金と資本準備金の合計額を下回りません(地方税法52条4項)。
Q3. 期の途中で資本金を1億円以下にすれば、その期から特例を使えますか?
この記事の4つの特例は、事業年度終了の時(日)の資本金の額で判定します。期末までに減資の効力が生じていれば、その期の判定に反映されます。設備の特別償却などは取得日などで判定します。ただし、法人税の3つの特例は大法人の100%子会社などには使えません。外形標準課税にも、10億円の規定などがあります。
Q4. 有償減資で株主にお金を戻すと、どんな税金がかかりますか?
払戻しのうち、資本金等の額に対応する部分を超える額はみなし配当(配当所得)です。残りは株式の譲渡収入とみなされます(所得税法25条1項4号・措置法37条の10第3項4号)。個人株主には、会社が支払の際に源泉徴収をし、払戻等割合を通知します。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法2条16号・57条11項1号・66条2項・5項、法人税法施行令8条1項12号・18号、所得税法25条1項4号・181条1項、所得税法施行令61条2項4号イ・114条2項、租税特別措置法37条の10第3項4号・42条の3の2・61条の4第2項、租税特別措置法関係通達37の10-3・42の6-1の2、地方税法3条1項・23条1項4号の2イ・52条1項・2項・4項・72条の2第1項1号・2項1号・292条1項4号の2イ・312条1項・3項・6項・734条・附則8条の3の3、地方税法施行規則1条の9の6・9条の19、会社法309条2項9号・447条1項・449条2項・6項・453条・911条3項5号・915条1項、会社計算規則27条1項1号の内容を扱っています。特別決議を要しない減資の要件、定款の公告方法による催告の省略、分配可能額、準備金の減少、種類株式を発行している会社や上場会社の払戻し、払戻等割合と対応額の調整(前期末後の増減、中間申告書を出した場合、減少した資本剰余金の額による上限など)、払戻し後の株式の取得価額、法人が株主である場合の課税、みなし配当の源泉徴収の税率と配当控除、株式の譲渡損と他の所得との通算、外形標準課税の税額の計算、令和6年度改正の経過措置と完全子法人に対する外形標準課税の規定の詳細、グループ通算制度を適用する法人、中間申告での均等割の区分、自治体ごとの税率、措置法上の中小企業者・適用除外事業者の要件、登録免許税と公告・登記の実務、増資と減資を同時に行う場合は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は会社と株主ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「地方税法」(23条・52条・72条の2・312条・附則8条の3の3)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- e-Gov法令検索「地方税法施行規則」(1条の9の6・9条の19)https://laws.e-gov.go.jp/law/329M50000002023
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(8条1項12号)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(61条2項4号・114条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税庁 措置法第37条の10《一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》関係(37の10-3)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/020624/sanrin/1273/37_10/01.htm
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無償減資では、法人税法上の資本金等の額が変わりません。欠損てん補をしないと、均等割の区分が下がらないことがあります。法人税の軽減税率などは期末の資本金で判定しますが、大法人の100%子会社などは使えません。外形標準課税には10億円の規定もあります。有償減資では、株主ごとにみなし配当と株式の譲渡損益を計算します。代表税理士が、資本金等の額の確認から、減資前後の試算、みなし配当の計算まで通して対応します。株主総会の招集や公告の前の段階でご相談ください。
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