この記事のポイント
- 同一の大規模法人に2分の1以上持たれていると外れます
- 複数の大規模法人に3分の2以上でも同じく外れます
- 前3年の平均所得が15億円超なら適用除外事業者です
- 判定は事業年度終了の時の現況で行います
まず結論:資本金だけでは決まりません
中小企業向けの税制には、資本金1億円以下という入口があります。
ところが、それだけでは足りません。
租税特別措置法施行令27条の4第17項は、資本金1億円以下の法人のうち一定の法人を除くと定めています。
除かれるのは、次の法人です。
その発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。次号において同じ。)の総数又は総額の二分の一以上が同一の大規模法人(…)の所有に属している法人
前号に掲げるもののほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二以上が大規模法人の所有に属している法人
実務では、これを「みなし大企業」と呼びます。
条文上の用語ではなく、国税庁の質疑応答事例でも括弧書きで使われている呼び方です。

「大規模法人」の範囲は、思ったより広いです
相手が誰なら該当するのか。
国税庁は、大規模法人を次の3つとしています(中小企業投資育成株式会社を除きます)。
- 資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
- 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
- 大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人など)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人 ほか
3つめが、見落としの温床です。
親会社の資本金が1億円以下でも、その親会社が資本金5億円以上の法人の100パーセント子会社なら、親会社自身が大規模法人になります。
注意
持株割合は間接保有まで見ます。国税庁の質疑応答事例は「令和元年度の税制改正前は、大規模法人が直接にその株式又は出資を有する法人(その大規模法人を親法人とする子法人のみ)がみなし大企業に該当することとされていましたが、同改正後は、大規模法人が直接又は間接にその株式又は出資を有する法人がみなし大企業に該当することとなり、みなし大企業の範囲が拡大されています」としています。
もうひとつの入口 ― 前3年の平均所得15億円超
株主に大規模法人がいなくても、外れる場合があります。
租税特別措置法42条の4第19項第8号は、適用除外事業者をこう定めています。
当該事業年度開始の日前三年以内に終了した各事業年度(以下この号において「基準年度」という。)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額(…)が十五億円を超える法人
国税庁は、判定のしかたをこう説明しています。
単純に、合計で36月以上となる各基準年度の所得金額の合計額をその合計月数で除し、12を乗じて計算した金額が15億円を超えるかどうかで判定することとなります。
単年ではなく、3年の平均で見ます。
なお国税庁は「設立の日の翌日以後3年を経過していない場合には、原則的には適用除外事業者に該当しません」としています。

外れると、何が使えなくなるのか
失うものは、2つの系統に分かれます。
| 判定 | 主に影響する制度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 措置法の中小企業者から外れる (2分の1・3分の2) | 研究開発税制、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、少額減価償却資産の特例 ほか | 措令27の4⑰ |
| 適用除外事業者に該当する (前3年平均15億円超) | 上記に加えて、法人税の軽減税率15パーセント、貸倒引当金の法定繰入率 | 措法42の4⑲八 |
| 中小法人等から外れる (大法人の100パーセント子会社) | 軽減税率、交際費の800万円定額控除、欠損金の繰越控除の所得制限の不適用 | 法法66⑤、措法61の4② |
国税庁は「適用除外事業者に該当する法人は、中小企業向け租税特別措置の適用を受けることができませんのでご注意ください」としています。
3つの判定は、それぞれ別の条文です。
「中小企業者から外れる=全部が使えなくなる」ではありません。
数字で見る:税率だけでいくら変わるか
年800万円以下の部分の税率で比べます。
計算例
所得のうち年800万円以下の部分にかかる法人税額
中小企業者等の特例(15%) 8,000,000円 × 15% = 1,200,000円 適用除外事業者(19%) 8,000,000円 × 19% = 1,520,000円(+320,000円) 中小法人等から外れた場合(23.2%) 8,000,000円 × 23.2% = 1,856,000円(+656,000円)法人税額のみの比較で、地方法人税・法人住民税・法人事業税は含めていません。所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります。
税率の区分が変わるだけで、年65万円の差がつきます。
欠損金があると、差はさらに開きます。
補足
法人税法57条1項ただし書は、繰越欠損金の控除限度額を「当該各事業年度の所得の金額の百分の五十に相当する金額」としています。中小法人等はこの制限を受けず、所得の全額まで控除できます。所得1,000万円・繰越欠損金1,000万円なら、中小法人等は課税所得ゼロ、そうでなければ500万円が残ります。欠損金そのものは会社の赤字は10年間使えますで扱っています。
中小企業庁の「中小企業」とは別ものです
補助金の書類と税務申告で、答えが違うことがあります。
中小企業庁は、自ら注記しています。
上記にあげた中小企業の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」であり、法律や制度によって「中小企業」として扱われている範囲が異なることがあります。
法人税法における中小企業軽減税率の適用範囲は、資本1億円以下の企業が対象です。
補助金で中小企業でも、税務で中小企業者とは限りません。
製造業なら資本金3億円以下、卸売業なら1億円以下といった中小企業基本法の区分は、税務の判定には使いません。

後から気づく典型は、この5つです
申告のやり直しにつながるのは、だいたいこの形です。
- 親会社の資本金しか見ていない ― 親会社の上に資本金5億円以上の法人がいると結論が変わります
- 増資や株主の異動を反映していない ― 判定は事業年度終了の時の現況によります
- 複数の大規模法人を合算していない ― 合わせて3分の2以上なら該当します
- 自己株式を分母に入れている ― 条文は自己の株式を除くとしています
- 好調な3年が続いた ― 平均15億円を超えると適用除外事業者になります
いちばん多いのは、株主の上の会社を見ていないことです。
税額控除を取った後で該当が判明すると、その事業年度の申告をやり直すことになります。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身で確認できるのは、次の4点です。
- 直近の株主名簿で、法人株主とその持株数を書き出す
- 法人株主それぞれの資本金の額を、登記簿や決算書で確認する
- 法人株主の上に、さらに親会社がいないかを聞く
- 過去3期の所得金額(別表四の最終値)を並べる
ここから先は個別判断です。
完全支配関係の有無、間接保有の計算、基準年度の調整は、資本関係の図を描かないと判断できません。
また措置法の「中小企業者」の定義は制度ごとに分かれており、ひとつの答えで全制度を通すことはできません。
税理士が入ると変わるのは、判定を先にやることです
ひとつめは、資本関係図の作成です。株主とその上の会社まで1枚に描きます。
ふたつめは、持株割合の計算です。自己株式を除いた分母で、2分の1と3分の2の両方を確かめます。
みっつめは、適用除外事業者の判定です。過去3期の所得を月数で割り、12を掛けます。
よっつめは、制度ごとの適用可否の整理です。措置法の優遇と法人税法の中小法人等を分けて判断します。
いつつめは、設備を発注する前の確認です。使えない制度を前提に投資を決めないようにします。
判定は、申告書を作る前ではなく、投資を決める前に行います。
小松公認会計士・税理士事務所では、資本関係の整理から決算・申告まで続けて担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 資本金1億円以下なら、中小企業向けの税制は使えますか?
株主構成によります。租税特別措置法施行令27条の4第17項は、資本金1億円以下の法人のうち「発行済株式又は出資の総数又は総額の二分の一以上が同一の大規模法人の所有に属している法人」「三分の二以上が大規模法人の所有に属している法人」を中小企業者から除いています。実務では、これをみなし大企業と呼びます。
Q2. 親会社の資本金が1億円以下なら大丈夫ですか?
そうとは限りません。大規模法人には「大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人など)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人」も含まれます。親会社が資本金5億円以上の法人の100パーセント子会社なら、その親会社自身が大規模法人になります。国税庁は令和元年度改正で間接保有も対象になったとしています。
Q3. 適用除外事業者とは何ですか?
前3年の平均所得が大きい法人です。租税特別措置法42条の4第19項第8号は「事業年度開始の日前三年以内に終了した各事業年度」の所得金額の合計を月数の合計で割り、12を掛けた金額が「十五億円を超える法人」としています。国税庁は、設立の日の翌日以後3年を経過していない場合は原則として該当しないとしています。
Q4. 中小企業者かどうかは、いつの時点で判定しますか?
事業年度終了の時です。租税特別措置法関係通達42の4(3)-1は、通算法人以外の法人について「当該法人の当該事業年度終了の時の現況による」としています。期中に増資や株主の異動があった場合は、期末の状態で判定します。期首の状態で決算対策を組むと、結論が変わることがあります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令等に基づく一般的な解説です。租税特別措置法42条の4第19項第7号・第8号、租税特別措置法施行令27条の4第17項、租税特別措置法関係通達42の4(3)-1・42の4(3)-2、法人税法57条・66条、租税特別措置法42条の3の2・61条の4、国税庁タックスアンサーNo.5432・No.5759・No.5762、国税庁「中小企業者の判定等フロー(令和7年10月)」、国税庁質疑応答事例「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却の対象となる中小企業者の範囲」、中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」の内容を扱っています。措置法上の「中小企業者」の定義は制度ごとに異なり、本記事は研究開発税制(措置法42条の4)の定義を中心に説明しています。適用を受けようとする制度ごとに定義と要件を確認する必要があります。グループ通算制度を適用する法人の判定、外形標準課税の対象となるかどうか、種類株式がある場合の持株割合の計算、基準年度の所得金額に調整を加える5つの事由の具体的な計算方法は扱っていません。個別の制度の適用金額・適用期限は改正されることがあります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行令」https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043
- e-Gov法令検索「法人税法」https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁タックスアンサーNo.5432「措置法上の中小法人及び中小企業者」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm
- 国税庁「中小企業者の判定等フロー」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2025/pdf/03.pdf
- 国税庁 質疑応答事例「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却の対象となる中小企業者の範囲」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/27/02.htm
- 中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html
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中小企業向けの税制が使えるかどうかは、資本金だけでは決まりません。株主に大規模法人がいないか、その上にさらに親会社がいないか、前3年の平均所得が15億円を超えていないか。判定は事業年度終了の時の現況で行うため、期中の増資や株主の異動でも結論が変わります。代表税理士が、資本関係図の作成、持株割合の計算、適用除外事業者の判定、制度ごとの適用可否の整理まで、通して対応します。設備を発注する前にご相談ください。
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